行先票

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クモハ40072保存車の先頭に掲げられた行先票
津軽線の行先標
めくり式
名古屋鉄道パノラマカー」の横めくりのものはブック式とも呼ばれる
側面行先票の交換作業(人吉駅

行先票(いきさきひょう)は、鉄道列車バスに掲出される行き先などを示した板。方向板行先板系統板ともいう。幕式のものについては方向幕の項を参照されたい。

概要[編集]

列車やバスなど、交通機関に乗車する場合には必ず、自分がどこに向かうのかを確認し、乗車する列車などを確認しなければならないが、そのときに車体前面や側面に掲出されている行先票を見て行き先を確認する。

列車の場合、日本国有鉄道(以下国鉄)では「列車行先札」の電報略号を「サボ」としていた[1]。これは、「サインボード」の略称といわれる。中・長距離列車では、かつては機関車牽引の客車列車が中心だったこともあり、電車化・気動車化された後も車体側面に表示されるのが一般的で、それを意味する「サイドボード」の略や、「サービスボード」の略であるとの説もある。

大都市近郊の電車列車では、側面には設けず、前後面にのみ掲示する例(ヘッドボード)が多かった。かつての日本国有鉄道では、東京圏が落とし込み式(サボ受け)、大阪圏が吊り下げ式(サボ掛け)で、それぞれ前面窓下中央に掲示していた。私鉄の一部では、上下あるいは左右が半分ずつ分かれたものが束ねてあり、本のようにめくって切り替えられるようになった物も見られた(めくり式)。方向幕を装備した車両が一般的になると、方向幕非装備の車両では助士席窓内側に行先票を吊り下げる例も多く見られるようになった。

列車側面に表示されるサボの設置方式(「サボ受け」の形状)には差込式、落し込み式、吊り下げ式の3種類があり、また、サボ受けの設置場所も車両により様々で、国鉄車両については、電車の場合は側扉横上部の差込式、一般形気動車は車体中央窓下の落し込み式、特急・急行形気動車は側扉横上部の差込式、10系客車以前のいわゆる旧形客車は車体中央窓下の吊り下げ式が標準となっている。

1950年代末から新たに登場した特急形急行形の電車と気動車では、出入り口(客扉)脇の高い位置に横から指し込む方式のものが採用された。これらは自動ドアを装備していたことから、車掌スイッチで両側のドアを一斉開放するだけですぐに交換作業が行え、作業員は窓を開け閉めする手間から開放され[2]、固定式で窓の開かない車両にも対応できた。急行形の一部には車体中央窓下に落し込み式を取り付けたものもあった。

サインボードは、琺瑯引きの板が多かったが、重く取り扱いが大変である(5両分10枚ともなると、両手でないと持てないほど重い)ことと、琺瑯の剥げや腐食などの問題があったため、後にプラスチック製のものが主流となった。終着地での折り返しの際などに、すべての車両のサボを次の行き先のものに交換する作業をしていたが、以下の問題があり、行先表示をビニール幕やLED(発光ダイオード)などで表示する方法に変わりつつある。

  1. 夜間は見えにくい
  2. サボの交換に時間や人手がかかる
  3. 1両で2枚必要であるため自ずと大量になり、折り返し駅や始発駅などでは専用の保管場所が必要
  4. ダイヤ改正などで列車の行先パターンが変わった場合に修正に多大な手間と時間と資源を使う
  5. 最終的には、車両運用以上にサボの運用が複雑になる
  6. 一部の収集家や転売者・転売屋など、心無い者による盗難
可部線広島支社、廃止区間)のサボ。こうした架け替えの手間を省いた「行ったり来たり」のサボは日本でもまだまだ見かける

西日本旅客鉄道(JR西日本)岡山支社では1998年平成10年)にサボを廃止したが、廃止直前のサボはなるべく交換回数を減らすため、右記の写真のようにいくつもの駅名と矢印が書かれた複雑怪奇なものが使用されていた。初めて見る者には全く理解できず、もはや行先案内の意味をなしていなかった。また、岡山支社においては赤穂線を経由する場合は駅名や矢印を赤色にする独自の表記が用いられていた。

例1:岡山三原糸崎 この表記法は九州旅客鉄道(JR九州)でも見られた。
例2:岡山→(赤穂線)播州赤穂相生姫路

廃止後も115系電車キハ40・47形気動車に側面行先表示器を装備しなかったうえ、当時岡山駅在来線ホームには宇野瀬戸大橋線列車が発着する11 - 13番のりばを除いて発車案内表示器が設置されていなかったため、それによる案内レベルの低下が発生し、利用者が戸惑う場面が見られた。地元マスメディアから「毎日がミステリー列車」と揶揄されたことから、同支社は急遽115系にLED式行先表示器を装備する事態となった。

これより以前、国鉄時代の飯田線豊橋駅では発車時刻入りの前面サボを列車に取り付け、発車標代わりとしても使われていた。前面サボは発車直前に取り外され、運行は側部のサボのみで行なわれた。

韓国鉄道公社 (KORAIL) 在来線では、2000年代以降もサボが主流となっている。韓国では、日本のような種別はなく、列車名によって区別されているため、サボには「列車名|出発駅→到着駅」のように記載されており、裏面は出発駅と到着駅が逆となっている。なお、行き先には英語とともに漢字でも表記される。

バスにおいては、日本では幕式が主流となっているが、台湾など海外などでは行先票式が多い。近年ではLED式のバスが増えている。

号車札・種別札・愛称札[編集]

ヘッドマークを取り付けて走行する列車(近鉄)

行先票と同様の素材を用い、車両の順序を示すものとして号車札(ごうしゃふだ)、列車種別・列車愛称を示すものに種別札(しゅべつふだ)・愛称札(あいしょうふだ)がある。

号車札の方はおもに車両の順序を表すものであり、座席指定席・座席定員制での車両の仕分けのための便に供するものである。また、運行案内の便に供するためのものであるため、増解結を行う多層建て列車には必要なものでもあった。

東海道新幹線開業時には、行先票に愛称・列車番号を記載したものがあったが、高速運転時の脱落や入替作業に手間がかかるため、早い時期に廃止されている。さらに、0系車両では使われた号車札も、200系車両100系車両以降ではシールによる標記に変わっている。また、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE1系車両以降の新幹線車両ではおもにLEDによる標記がなされている。

また、種別札・愛称札はそれぞれ列車種別・愛称を記載したものであるが、近年では方向幕で代替されている事例もままみられる。JR東日本のE653系車両のように、行き先や号車札も合わせてLEDによる表示に統合されたものもある。

変わったところでは、種別札については1980年代よりおもに485系・489系電車183系・189系電車などで種別札設置場所に「特急LTD. EXP.」の標記がなされ種別札の代替がされた事例がある。

なお、愛称札については列車愛称の標記がなされるため、ヘッドマークと同様に扱われる事例もある。但し、ヘッドマークのそれとことなり大きさが大きくないため、模造のものを記念として配布する事例もある。

脚注[編集]

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  1. ^ 正しい「電略」。(上) 鉄道ホビダス「編集長敬白」2010年01月13日版(ネコ・パブリッシング
  2. ^ 車掌スイッチを操作せず、室内外のドアコックを用いる場合もある。20系客車は自動ドアを装備していないため、室内側で号車・列車名・行先札を交換し、車体に空けられた小窓を通して表示する方式を採った。照明は後の方向幕のような透過光式では無く、サボ専用の蛍光灯による反射光(直接照射)式であった。

関連項目[編集]