梁石日

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

梁 石日(ヤン・ソクイル、ヤン・ソギル、양석일1936年8月13日-)は、日本小説家在日朝鮮人。通名:梁川正雄。

略歴[編集]

大阪市猪飼野で生まれる。両親は済州島から大阪市に移住してきた。戦後、家業の蒲鉾製造で成功したが、ほどなく愛人をつくり妻子をすてて家を出る。

大阪府立高津高等学校定時制在学中に、内灘闘争に参加。詩人金時鐘から詩の指導を受ける。朝鮮総連系の同人誌「ヂンダレ」に詩を投稿する。靴屋や鉄屑屋、洋服屋勤めなどの後、実父から300万円を借り印刷会社を経営。その後印刷の事業に失敗し、仙台に逃げ喫茶店の雇われマスターになったがさらに借金は増え、上京し新宿の寮のあるタクシー運転手の職に就く。そんななか、病床にあった実父から家業を継ぐことを求められたが断る。実父はほどなく全財産を寄付し北朝鮮に渡り病死した。

新宿のスナックで、飲みながら、タクシー客とのやりとりを面白おかしく語っているのを出版編集者がたまたま聞き、執筆を勧めた。その時に書いた『狂躁曲』(単行本出版時の題名は『タクシー狂躁曲』)でデビュー。同作は1993年崔洋一監督により『月はどっちに出ている』として映画化され、大ヒットする。タクシードライバー時代に2度事故を起こし大怪我を負い退職。物品販売業をしながら執筆を行う。1994年大阪砲兵工廠跡を舞台に在日韓国・朝鮮人の鉄屑窃盗団アパッチ族の暗躍を描いた『夜を賭けて』が直木賞候補になる。同作は2002年劇団・新宿梁山泊の座長・金守珍により山本太郎主演で映画化されている。

1998年実父をモデルに戦中戦後の強欲、好色、妄執に執りつかれた男の栄光と転落を描いた『血と骨』で第11回山本周五郎賞を受賞、馳星周関口苑生原田芳雄などに絶賛され同作品がふたたび直木賞候補になる。同作も崔洋一監督によりビートたけし主演で映画化、2004年に公開された。2002年タイを舞台とした幼児の売買春人身売買・臓器売買を描いた『闇の子供たち』を発表。同作は阪本順治監督によって映画化され、2008年に公開されたが、バンコク国際映画祭での上映中止などタイで強い反発を呼んだ。日本でも、ネットなどでノンフィクション映画と宣伝されたことについて反発があった[1]。結局宣伝コピーからノンフィクションの文字は削られた。 (『闇の子供たち』の内容は梁による創作である。闇の子供たち#作品内容のフィクション性参照)。また、柳美里芥川賞受賞作『家族シネマ』の映画化の際には、父親役として出演した。

2008年12月 NHK教育テレビ知るを楽しむ 人生の歩き方(全4回)」で、自らの生い立ちと文学的背景、現代が抱える闇を語った。そのなかで、自作『夏の炎』でモティーフにした、朴大統領暗殺を図り夫人を射殺した在日同胞の文世光 に強い共感を覚えたと発言した。このことは、韓国のマスコミからの攻撃を招き、民団系在日韓国人からも強い批判が生じた。

著書[編集]

  • 『詩集 夢魔の彼方へ』梨花書房 1980
  • 『狂躁曲』筑摩書房、1981 「タクシー狂躁曲」ちくま文庫、角川文庫
  • 『タクシードライバー日誌』筑摩書房、1984 のちちくま文庫
自身の乗務員の経験を綴っているが乗客の様子や危険な労働状況など克明に描いている。東京近辺の営業であり細部まで描写している。
  • 『ドライバー・最後の叛逆 タクシードライバーならではの知恵袋』情報センター出版局 1987
  • 『族譜の果て』立風書房、1989 のち徳間文庫、幻冬舎文庫
  • 『アジア的身体』青峰社 1990 のち平凡社ライブラリー
  • 『夜の河を渡れ』筑摩書房 1990 のち徳間文庫、新潮文庫、光文社文庫
  • 『子宮の中の子守歌』青峰社 1992 のち徳間文庫、幻冬舎文庫
  • 『断層海流』青峰社、星雲社、1993
  • 『タクシードライバーほろにが日記』書肆ルネッサンス 1993 「タクシードライバー」幻冬舎文庫
  • 『男の性解放 なぜ男は女を愛せないのか』情報センター出版局 1993 「男の性」幻冬舎アウトロー文庫
  • 『夜を賭けて』日本放送出版協会、1994 のち幻冬舎文庫
  • 『修羅を生きる「恨」をのりこえて』(自伝)講談社現代新書、1995 のち幻冬舎アウトロー文庫
  • 『雷鳴』徳間書店 1995 のち文庫、幻冬舎文庫
  • 『闇の想像力』解放出版社 1995
  • 『Z』毎日新聞社 1996 のち幻冬舎文庫
  • 『タクシードライバー 最後の叛逆』幻冬舎アウトロー文庫 1998
  • 『血と骨』(幻冬舎、1998年、のち文庫 
  • 『さかしま』(1999年、アートン 「夢の回廊」幻冬舎文庫
  • 『異端は未来の扉を開く』アートン 1999
  • 『魂の流れゆく果て』光文社 2001 のち文庫
  • 『死は炎のごとく』毎日新聞社 2001 「夏の炎」幻冬舎文庫
  • 『睡魔』幻冬舎 2001 のち文庫
  • 『終りなき始まり』朝日新聞社 2002 のち文庫
  • 『裏と表』幻冬舎 2002 のち文庫
  • 闇の子供たち』(2002年、解放出版社、のち幻冬舎文庫 
  • 『異邦人の夜』毎日新聞社、2004 のち幻冬舎文庫
  • 『一回性の人生』講談社 2004
  • 『海に沈む太陽』筑摩書房、2005 のち幻冬舎文庫 
  • 『カオス』幻冬舎、2005 のち文庫 
  • 『シネマ・シネマ・シネマ』光文社 2006 「シネマ狂躁曲」文庫 
  • 『未来への記憶』アートン 2006
  • 『ニューヨーク地下共和国』講談社、2006 のち幻冬舎文庫 
  • 『超「暴力」的な父親』ベスト新書、2007
  • 『夜に目醒めよ』毎日新聞社、2008 のち幻冬舎文庫 
  • 『冬の陽炎』(2008年、幻冬舎)のち文庫 
  • 『めぐりくる春』金曜日、2010 
  • 『明日の風』光文社 2010 のち文庫 
  • 『Y氏の妄想録』幻冬舎 2010
  • 『大いなる時を求めて』幻冬舎 2012

共著[編集]

梁石日(に相当する役)を演じた俳優[編集]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ 「少女から生きたまま心臓移植」 映画「闇の子供たち」の問題PRJ-CASTニュース