ファースト・レーシング

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ファースト
活動拠点 イタリアの旗 イタリア・モンツァ・エ・ブリアンツァ県アグラーテ・ブリアンツァ
創設者 イタリアの旗 ランベルト・レオーニ
スタッフ ブラジルの旗 リカルド・ディヴィラ（英語版）
オーストラリアの旗 ラルフ・ベラミー
ドライバー イタリアの旗 ガブリエル・タルキーニ
イタリアの旗 マルコ・アピチェラ(F3000)
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ファースト・レーシング（First Racing）は、かつて存在したイタリアのレーシングチーム。オーナーはランベルト・レオーニ。本拠となるファクトリーはアグラーテ・ブリアンツァに置かれた[1]。1987年から1991年に国際F3000選手権に参戦。1989年のF1世界選手権へのエントリーが完了していたが、開幕直前で計画は中止された。

歴史[編集]

国際F3000選手権[編集]

1975年からF2/F3000に長く参戦していたランベルト・レオーニが、自ら参戦するためのチームとして設立し1987年から国際F3000選手権に参戦開始。ドライバーはレオーニだけでなくガブリエル・タルキーニと、3台目のマシンにはベッペ・ガビアーニ、クラウディオ・ランジェス、アラン・フェルテがスポンサーを持ち込み交代で乗った。タルキーニは2位表彰台を獲得するなどランキング8位となる、レオーニもランキング9位に入った[2]。

1988年はタルキーニがコローニへと移籍してF1へ進出。レオーニはドライバーとしては第一線を退き、チーム運営に専念。ドライバーにはピエルルイジ・マルティニとマルコ・アピチェラの2台と、マルティニがF1に参戦する際の代役としてアラン・フェルテが乗った。この年に使用したマーチ・88Bは不出来であり、マーチのワークス・チームであるオニクスも苦戦続きとなった。ファーストはそのマーチを大きく改良し、ワークス格であるオニクスよりも好成績を残した[3]。マルティニは1勝を挙げランキング4位となり、同年途中からはミナルディでF1レギュラーとなった。チームは同年夏よりF1への参戦計画に動き、アピチェラとタルキーニがそのドライバーとして名前が報じられ、チームはステップアップすることが濃厚となった（後述）[4]。

1989年、チームのF1参戦計画が頓挫する状況下であったが、F3000ではアピチェラが残留し、ファブリツィオ・ジョヴァナルディとジャン＝デニス・デレトラズが加わり3台体制で参戦。アピチェラがジャン・アレジ、エリック・コマス、エリック・ベルナールとチャンピオンシップを争い、ランキング4位となる。ジョヴァナルディも、第2戦ヴァレルンガでトップでゴールしたマーティン・ドネリーの車両規定違反失格による繰り上がりではあったが1勝を挙げた。

1990年、ほぼ体制は継続され、アピチェラが表彰台3回とチームでもっとも活躍しランキング6位、ジョヴァナルディは第3戦ポー・グランプリで2位に入りランキング10位となった。シーズン終盤の2戦にはブラジルのマルコ・グレコも加わったが、グレコは予選を通過することが出来なかった。

1991年、エース格だったアピチェラがポール・スチュワート・レーシングへ移籍したため、代わってフランスF3チャンピオンのエリック・エラリーと契約。ジョヴァンニ・ボナーノとデレトラズの3台で開幕を迎えるが、初戦のヴァレルンガでボナーノが大きなクラッシュを起こしマシンを大破させる。第2戦からはボナーノに代わってドイツF3メルセデス三羽烏（カール・ヴェンドリンガー、ミハエル・シューマッハ、ハインツ＝ハラルド・フレンツェン）に次ぐランク4位を獲得したミハエル・バルテルスも加わるが、第4戦終了後にファースト・レーシングは参戦を停止。レース参戦から撤退した。

F1参戦計画[編集]

1989年からF1のレギュレーション変更によりエンジンが自然吸気のみとされたことで、新規参戦を表明するチームが多く現れることになったが、ファーストもその中の一つであり1988年夏からF1参戦計画に動く[5]。「イタリア第7のチーム」と呼ばれた[注釈 1]。全スタッフはこの時点で24名と小規模チームであったが、2カー体制でのエントリーを予定。マシンの設計は元フィッティパルディ所属のブラジル出身のエンジニア、リカルド・ディヴィラ（英語版）が担当した[6]。しかし1988年に不振を極めたリジェが解雇したミシェル・テツの後任としてディヴィラの獲得を好条件でオファーし、マシンの開発途中で移籍。このためレオーニはF1マシン開発・製作の続きをジャンニ・マレリ率いるミラネーゼに委託した。マレリは以前にフェラーリ、ザクスピードで経験を積んだエンジニアであった。サスペンションはラルフ・ベラミーが開発した[7]。

こうして完成したジャッド・CVエンジンを搭載するファーストF1の新車は、1988年12月にボローニャモーターショーで初公開された。この発表時にはグッドイヤータイヤが装着されていた。2台体制のうちの一人はF3000でも同チームで参戦していたガブリエル・タルキーニの起用が決定するなど、新規参戦チームの中でも早めの動きを見せた[8]。もうひとりのドライバーはジュリアン・ベイリーと交渉していたが、レオーニが2月の時点で予算的に2カー体制は無理と判断し、タルキーニの1カー体制でのエントリーに方針変更された[9]。タルキーニは新車でモンツァを40周以上の連続走行と1分35秒台のベストタイムなど、走行データを蓄積していた[10]。FIAから公式エントリーリストが発表され、ファーストF1チームのカーナンバーは42となる事も決まった。

しかし、ファーストのマシンはFIAのクラッシュテストをパスすることが出来なかった[11]。その対策として新たな強化材料で2機目のシャシーを製作し、それでクラッシュテストをクリアすることが出来た。しかし材料変更により今度は重量が過多になってしまった。早めの新車発表により期待された新スポンサー獲得も目論見どうり進まず、開幕2戦を欠場する案もあったがその場合は欠場によるFIAからの罰金額が大きく、レオーニは開幕戦直前にF1参戦自体を断念し、国際F3000への参戦に集中することを決定した[12]。年間契約を結んでいたタルキーニは急遽イタリア国内選手権のスポーツカーレースへの活動変更を余儀なくされた（タルキーニは1か月後にキャメルからの推薦を受けAGSへの加入が決まり、F1復帰する[13]）。

1回もレースを走ることなく残されたファーストF1のマシン（クラッシュテストをクリア出来た2機目のシャシー）は、7月にライフ・レーシングのエルネスト・ヴィタに売却された[14][15]。翌1990年のF1世界選手権に参戦する「ライフ・L190」に流用された。

ファースト・レーシングは1991年途中まで国際F3000選手権へ参戦した後、レオーニの参戦対象はパワーボートレースへと移った。

レース戦歴[編集]

国際F3000選手権[編集]

年 シャシー Car No. ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 順位 ポイント
1987年 マーチ・87B
コスワース・DFV V8
ジャッド V8 		イギリスの旗 SIL イタリアの旗 VLL ベルギーの旗 SPA フランスの旗 PAU イギリスの旗 DON イタリアの旗 PER イギリスの旗 BRH イギリスの旗 BIR イタリアの旗 IMO フランスの旗 BUG スペインの旗 JAR
31 イタリアの旗 ランベルト・レオーニ 8 8 13 6 Ret 5 11 Ret 4 4 4 9位 12
32 イタリアの旗 ガブリエル・タルキーニ 10 Ret 12 11† 19 3 17 14 2 5 Ret 8位 12
33 イタリアの旗 アルド・ベルツッジ DNQ DNQ 15 NC 0
イタリアの旗 ベッペ・ガビアーニ 12 Ret NC 0
イタリアの旗 クラウディオ・ランジェス DNQ Ret Ret 10 Ret NC 0
フランスの旗 アラン・フェルテ Ret NC 0
1988年 マーチ・88B
ジャッド V8 		スペインの旗 JER イタリアの旗 VLL フランスの旗 PAU イギリスの旗 SIL イタリアの旗 MNZ イタリアの旗 PER イギリスの旗 BRH イギリスの旗 BIR フランスの旗 BUG ベルギーの旗 ZOL フランスの旗 DIJ
9 イタリアの旗 ピエルルイジ・マルティニ 8 11 3 10 Ret 1 2 3 Ret 10 4位 23
フランスの旗 アラン・フェルテ 12 NC 0
10 イタリアの旗 マルコ・アピチェラ 13 7 5 6 2 Ret Ret Ret Ret Ret Ret 11位 9
1989年 レイナード・89D
ジャッド V8
マーチ・89B
ジャッド V8 		イギリスの旗 SIL イタリアの旗 VLL フランスの旗 PAU スペインの旗 JER イタリアの旗 PER イギリスの旗 BRH イギリスの旗 BIR ベルギーの旗 SPA フランスの旗 BUG ベルギーの旗 ZOL
5 スイスの旗 ジャン＝デニス・デレトラズ 14 Ret Ret 15 Ret Ret 12 DNQ Ret 9 NC 0
6 イタリアの旗 マルコ・アピチェラ 8 Ret 2 3 4 Ret 2 3 Ret Ret 4位 23
7 イタリアの旗 ファブリツィオ・ジョヴァナルディ DNQ 1 Ret 14 Ret DNQ DNS 13 DNQ 12 10位 9
1990年 レイナード・90D
無限・MF308 V8 		イギリスの旗 DON イギリスの旗 SIL フランスの旗 PAU スペインの旗 JER イタリアの旗 MNZ イタリアの旗 PER ドイツの旗 HOC イギリスの旗 BRH イギリスの旗 BIR フランスの旗 BUG フランスの旗 NOG
4 イタリアの旗 ファブリツィオ・ジョヴァナルディ Ret Ret 2 6 10 6 7 Ret 5 Ret Ret 10位 10
5 イタリアの旗 マルコ・アピチェラ 13 3 Ret 2 5 Ret 2 DSQ Ret Ret 5 6位 20
6 スイスの旗 ジャン＝デニス・デレトラズ 7 DNQ Ret DNQ Ret NC 0
ブラジルの旗 マルコ・グレコ DNQ DNQ NC 0
1991年 レイナード・91D
コスワース・DFV V8 		イタリアの旗 VLL フランスの旗 PAU スペインの旗 JER イタリアの旗 MUG イタリアの旗 PER ドイツの旗 HOC イギリスの旗 BRH ベルギーの旗 SPA フランスの旗 BUG フランスの旗 NOG
5 イタリアの旗 ジョヴァンニ・ボナーノ Ret NC 0
ドイツの旗 ミハエル・バルテルス 8 Ret 15 NC 0
6 スイスの旗 ジャン＝デニス・デレトラズ DNS DNQ Ret NC 0
7 フランスの旗 エリック・エラリー 11 3 Ret 16† 9位 4

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 他の6つはイタリアにファクトリーを持つフェラーリ、オゼッラ、ミナルディ、BMSスクーデリア・イタリア、コローニ、ユーロブルン。 '89新チーム CAR No.42 ファースト・レーシング グランプリ・エクスプレス1989開幕直前号 39頁 1989年4月3日発行

出典[編集]

  1. ^ ファースト・レーシングニューマシン堂々発表! グランプリ・エクスプレス 1989NA回帰元年記念号 32頁 山海堂 1989年2月8日発行
  2. ^ Lamberto Leoni fonde First Racing, dans L'Automobile Magazine HS no 1092, mars 1990, p. 34
  3. ^ FIRST ファースト・レーシング '89新チーム CAR No.42 グランプリ・エクスプレス1989開幕直前号 39頁 1989年4月3日発行
  4. ^ ファースト・レーシングF1進出決定 マルコ・アピチェッラが筆頭候補　グランプリ・エクスプレス スペインGP号 28頁 1988年10月22日発行
  5. ^ ファースト・レーシング 来シーズン2台のF1マシンを走らせるのがほぼ確定的 1人はアピチェッラにほぼ決定　グランプリ・エクスプレス イタリアGP号 29頁 山海堂 1988年10月1日発行
  6. ^ Riccardo Divila conçoit le châssis de la First, dans Sport-Auto HS no 12, 1990, p. 65
  7. ^ Ralph Bellamy chargé de la réalisation du système de suspension, sur clubf1.es, consulté le 14 février 2010
  8. ^ NA回帰元年へ '89チームラインナップ グランプリ・エクスプレス1989カレンダー号 7頁 1989年1月7日発行
  9. ^ 噂のベイリーは見送り ファーストは1カーエントリーに グランプリ・エクスプレス1989シーズン歓待号 29頁 1989年3月13日発行
  10. ^ ファースト順調にシェイクダウン グランプリ・エクスプレス1989シーズン歓待号 29頁 1989年3月13日発行
  11. ^ La L189 n'est pas homologuée en Formule 1, sur f1rejects.com, consulté le 14 février 2010
  12. ^ ファーストF1チーム 戦わずして負ける グランプリ・エクスプレス ブラジルGP号 36頁 1989年4月15日発行
  13. ^ タルキーニAGSのエースに昇格 グランプリ・エクスプレス サンマリノGP号 28頁 1989年5月12日発行
  14. ^ ファーストF1シャシー、ライフに売却される グランプリ・エクスプレス フランスGP号 28頁 1989年7月29日発行
  15. ^ F1断念のファーストがライフ・レーシング・エンジンにF1シャシーを売却 Racing On No.055 37頁 武集書房 1989年8月15日発行

関連項目[編集]

F1コンストラクター
2024年シーズン
かつて参戦していた
コンストラクター
決勝レース不出走の
コンストラクター
参戦に至らなかった
コンストラクター
  • 1952年と1953年の世界選手権はフォーミュラ2のレギュレーションで実施されたが、この期間に参戦したコンストラクターは本表に含まれる。
    1950年から1960年に行われたインディ500はF1世界選手権の1戦として開催されたが、インディのみに参戦したコンストラクターは含まれない。
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