ファジィ論理

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ファジィ論理: Fuzzy logic)とは、ファジィ集合論から派生したもので、古典的な一階述語論理の厳密な推論とは異なる近似的な推論を扱う論理体系である。ファジィ集合論の応用面とされ、実世界の複雑な問題を扱う(Klir 1997)。ファジィ論理は1965年カリフォルニア大学バークレー校ロトフィ・ザデーが生み出した。

目次

[編集] 概要

ファジィ真理値は確率と混同されやすいが、概念的には異なる。ファジィ真理値は漠然と定義された集合に対するメンバーシップ関数で表され、何らかのイベントや条件の発生確率を表すものではない。例えば、100mlのコップに30mlの水が入っているとき、2つのファジィ集合(満杯と空)について、その状態を「空が0.7/満杯が0.3」と定義できる。空かどうかという概念は主観的であるため、観察者や設計者によっては違った設定になるかもしれない。例えば設計者によっては、50mlでも満杯であるとするようにメンバーシップ関数を設定するかもしれない。確率的な設定では、まずコップが満杯のときの値を定義し、誰かがコップが満杯だと言うであろう確率の条件付き確率分布で満杯レベルを説明する。つまり、観察者がそのコップの状態をどう呼ぶかの統計によって状態が定義される。一方ファジィ論理ではこのような無作為性を論じることを避け、「コップは満杯が0.3である」という文が意味する曖昧さに単純化する。

ファジィ論理ではメンバーシップ関数の値域は0以上1以下であり、これを自然言語的な不正確な概念(「やや」、「まったく」、「とても」など)と対応させる。特に集合における部分メンバーシップも許容される。これはファジィ集合論および確率論と関係する。

ファジィ論理は、一部学界からは批判され、一部の制御理論不確かさの厳密な数学的記述は確率だけだとする統計学から無視されている[要出典]。メンバーシップ関数という集合論の概念を使っていながら、通常の集合論を包含する理論になっていないという批判もある。

[編集] 応用

ファジィ論理は洗濯機冷蔵庫のような家電機器制御に使われる。例えば洗濯機では、洗濯物の量や洗剤の濃度を調べて、洗濯槽の回転などを調整する。

基本的な応用の特徴として、連続値をいくつかの区分に分ける点が挙げられる。例えば、アンチロック・ブレーキ・システムでは温度を測定するが、温度をいくつかの区分に分け、それぞれにメンバーシップ関数を定義し、ブレーキを適切に制御する。各関数は同じ温度に0から1までの真理値を割り当てる。これらの真理値を使って、ブレーキをどう制御すべきかを決定する。

上図では、coldwarmhot という関数で温度の値をマッピングしている。ある温度には各関数に対応した3つの真理値がある。上図で縦線で示している温度を見てみると、3つの真理値(0.8、0.2、0)が対応し、それらを解釈すると「かなり冷たい」(青い矢印)、「やや暖かい」(黄色の矢印)、「熱くない」(赤い矢印)ということになる。

[編集] ファジィ論理の応用例

[編集] 誤解と論争

ファジィ論理は「不正確な論理(imprecise logic)」だ。
ファジィ論理はどんな論理体系よりも不正確ということはない。それは、本質的にあいまいな概念を扱うための数学的手法である。「冷たさ」という概念は数式では表せない。何故なら、温度は数値で表せる量だが、「冷たさ」はそうではないからである。人間には「冷たい」という感覚があるが、N℃なら冷たくてN+1℃なら冷たくないというような「冷たい」と「冷たくない」の間の明確な境界線はない。古典論理では排中律があるため、このような概念をうまく扱えない。答えは明確ではなく、「あいまい(fuzzy)」となる。
ファジィ論理は確率を新たな方法で表現しているだけだ。
ファジィ論理も確率も不確かさを別の方法で表現している。ファジィ論理も確率論も主観的信念を表現できるが、ファジィ集合論ではメンバーシップの概念を使い、確率論ではベイズ確率の概念を使う。この区別は主に思想的なものだが、ファジィ論理に基づく確率測度は確率論の確率測度とは本質的に異なり、直接的に等価ではない。統計学者の多くはブルーノ・デ・フィネッティの業績を信じており、数学的不確かさを論じる理論は1つで十分であって、ファジィ論理は不要だと考えている。一方バート・コスコは、確率では一種類の不確かさしか表せないのだから、確率論がファジィ論理に包含されるとした。彼はまた、ファジィ集合論の概念からベイズの定理を導出できることを証明したと主張している。ファジィ論理を生み出したロトフィ・ザデーは、ファジィ論理は確率とは異なる性格を持つとし、確率を代替するものではないとした。彼は確率論の代替となる Possibility Theory も生み出している。他にも不確かさを扱う理論としてデンプスター・シェファー理論ラフ集合があり、同様に批判されている。
ファジィ論理は大規模な問題を扱うのが困難だ。
このような批判がなされるのは、条件付き確率に対応したファジィ集合論における条件付き可能性に問題があるためである(Halpen 2003、3.8章参照)。この場合、推論が難しくなる。しかし、この面でファジィ集合論に基づく体系と確率論に基づく体系を比較した研究はほとんどなされていない。

[編集] ファジィ論理の実際

ファジィ集合論では、ファジィ集合に関するファジィ演算を定義している。これを利用する際の問題は、適切なファジィ演算がどれなのかわからない場合があることである。そのため、ファジィ論理ではIF/THEN規則やそれに類するもの(例えばファジィ関係行列)を使うのが一般的である。

規則は以下のような形式で表現される。

IF 「変数」IS「集合」THEN 「アクション」を実行する。

例えば、ファンを使って温度を一定に保つ非常に単純な機器があるとしたら、次のような規則が考えられる。

  • IF 温度 IS 「非常に寒い」 THEN ファンを止める。
  • IF 温度 IS 「寒い」 THEN ファンを遅くする。
  • IF 温度 IS 「普通」 THEN ファンを一定に保つ。
  • IF 温度 IS 「暑い」 THEN ファンを速くする。

ELSE節がない点に注意されたい。全ての規則は同時に評価される。何故なら、温度は(程度の差はあっても)同時に「寒い」と「普通」の両方に属するといったことが考えられるからである。

ブール論理論理演算 AND, OR, NOT に相当する演算がファジィ論理にもあり、例えば下記のように定義される。下記の定義はザデーのオリジナルの論文で定義されていたもので、ザデー演算子とも呼ばれる。ここで x と y はファジィ変数である。

  • NOT x = (1 - truth(x))
  • x AND y = minimum(truth(x), truth(y))
  • x OR y = maximum(truth(x), truth(y))

他の演算として、より言語的な「ヘッジ(hedges)」がある。これは、数式で表される集合の意味(例えば「寒い」)を修飾する「非常に」とか「いくぶん」といった副詞に相当するものである。

プログラミング言語での応用として、Prologは規則群のデータベースに論理問い合わせを行う構造になっていて、ファジィ論理との相性が良い。このようなプログラミングを論理プログラミングという。

ファジィ関係が定義されれば、ファジィ関係データベースを開発することもできる。世界初のファジィ関係データベース FRDB は、Maria Zemankova が論文で発表した。その後 Buckles-Petry モデル、Prade-Testemale モデル、Umano-Fukami モデル、GEFREDモデルといったモデルも生み出されている。ファジィ・データベースという意味では、クエリのためのファジィ問い合わせ言語もいくつか定義されており、SQLf、FSQL などがある。これらはSQL文に、ファジィ的要素(ファジィ条件、ファジィ演算、ファジィ制約、ファジィ制限、ファジィしきい値、言語ラベルなど)を取り入れた構造を定義している。

[編集] その他の例

身長を「高い」と「低い」に分けることを考える。古典集合論(古典論理)では、例えば次のように規則を定義する。

  • 男の身長が1.8メートルなら、その人は背が高い。
IF man IS true AND height >= 1.8 THEN is_tall IS true; is_short IS false

ファジィ規則は背が「高い」と「低い」を明確に区別しない。そのような区別は現実的ではない。そこで、以下のような規則を定義する。

IF height <= medium male THEN is_short IS agree somewhat
IF height >= medium male THEN is_tall IS agree somewhat

ファジィの場合、1.83メートルのような明確な身長の区分けはせず、次のようなファジィ値の割り当てをする。

  • dwarf male = [0, 1.3] m
  • short male = (1.3, 1.5]
  • medium male = (1.5, 1.8]
  • tall male = (1.8, 2.0]
  • giant male > 2.0 m

従って、真理値も二値ではなく、以下のような5値にする。

  • agree not = 0
  • agree little = 1
  • agree somewhat = 2
  • agree a lot = 3
  • agree fully = 4

クリスプ集合(二値)の場合、1.79メートルの身長の人は単に背が低いとされる。1.8メートルや2.25メートルの人は背が高いとされる。なお、規則の条件部を

IF male >= agree somewhat AND ...

のようにしなかったのは、性別が曖昧さのない二値情報とみなされるためである。従って、性別を背の高さのように複雑なものとして扱ってはいない。

[編集] 形式ファジィ論理

数理論理学には、これまで説明してきたファジィ論理をモデルとして形式体系がいくつか存在する。その多くは、いわゆるt-normファジィ論理に属する。なお、各論理体系で使われる演算は前述のザデー演算子とは異なる場合がある。

[編集] 命題ファジィ論理

主な命題ファジィ論理としては、以下のものがある。

  • 基本命題ファジィ論理 BL は、論理積を連続な三角型ノルム(t-norm)で定義し、含意をt-normの残余として定義する公理化された論理である。そのモデルは BL-algebra と呼ばれる。
  • ウカシェヴィチ・ファジィ論理は、基本ファジィ論理の特殊ケースであり、論理積はウカシェヴィチt-normになっている。基本的な論理公理の他に二重否定の除去も公理とし(従って直観論理ではない)、そのモデルは MV-algebra と呼ばれる。
  • ゲーデル・ファジィ論理は、基本ファジィ論理の特殊ケースであり、論理積はゲーデルt-normになっている。基本的な論理公理の他に論理積の冪等性も公理とし、そのモデルは G-algebra と呼ばれる。
  • プロダクト・ファジィ論理は、基本ファジィ論理の特殊ケースであり、論理積はプロダクトt-normになっている。そのモデルは product algebra と呼ばれる。
  • MTL(Monoidal t-norm logic)は、基本ファジィ論理を拡張したもの。
  • Rational Ravelka logic は、多値論理を拡張したもの。ウカシェヴィチ・ファジィ論理の拡張でもある。

これらは、いずれも命題論理(モデルはブール代数)を拡張したものである。

[編集] 述語ファジィ論理

命題論理から一階述語論理が生成されるように、上述のファジィ論理に全称量化子存在量化子を追加すると述語ファジィ論理となる。量化された論理式のファジィ真理値について、全称量化では下限、存在量化では上限を意味する。

[編集] 関連項目

[編集] 関連項目

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[編集] 外部リンク

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