三段論法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

三段論法(さんだんろんぽう、ギリシア語:syllogismos)は、論理的推論の型式のひとつ。典型的には、大前提、小前提および結論という3個の命題を取り扱う。これを用いた結論がであるためには、前提が真であること、および論理の法則(同一律無矛盾律排中律、および充足理由律)が守られることが必要とされる[1]

もともと言語依拠段階的推論法というような意味合いである。3段と限定されてはいない。そのように限定されるかのような誤解を招く邦訳語であるが、古代ギリシャが確立したものが3段構成だったために、欧米文明へ向けての開化という実際目的に即した訳語が作られた。インド固有の三段論法では5段構成である。「三段論法」が3段構成であるとは限らない。

古代ギリシャからのものは「大前提」「小前提」および「結論」の三つの不可欠の命題から成る推論規則である。(たとえ下記の仮言三段論法の場合でも、条件付けられた後の命題がある。)ヨーロッパにおいてはアリストテレスによって、一般の側から個別の側へ向かう演繹法に準拠して整備された。「大前提」には法則的に導き出される一般的な原理を置き、「小前提」には目前の具体的な事実を置き、「結論」を導き出す。以下に定言的三段論法の例を示す。

大前提:全ての人間は死すべきものである。
小前提:ソクラテスは人間である。
結論: ゆえにソクラテスは死すべきものである。

 (なお、これが今日に至るまでに伝統的なものになっているが、アリストテレスがその著『分析論後書』において例示している、定言命題を欠いて仮言命題一本のみの「三段論法」とは形式が異なる。)

三段論法を構成する各命題はA,E,I,Oの4つの型に分類される。

  • A = 全称肯定判断 ≪全ての人間生物である
  • E = 全称否定判断 ≪全ての人間不死ではない
  • I = 特称肯定判断 ≪ある人間学生である
  • O = 特称否定判断 ≪ある人間学生ではない

さらに、三段論法を構成する要素として、結論における主語Sと述語P、そしてこの結論を導くために前提に現れる媒概念Mがある。各命題における S, P, Mの配列の仕方を「格」 (かく、英 : figure) と呼び、これには4つの可能性がある。

三段論法の「格」
大前提 小前提 結論
第一格 M - P S - M S - P
第二格 P - M S - M S - P
第三格 M - P M - S S - P
第四格 P - M M - S S - P

なお、第四格は、ガレノスが形式整備のために補完したものである。アリストテレスは、実用性は無いと考え、省いたものと考えられている。

3つの各命題ごとに4種類の型があり、さらに4つの格があることから、全部で43×4=256通りの三段論法がありえるが、実際にはそのうちの19通りのみから恒真な結論が得られる。このとき2つの前提はともに真でなければならない。(真でない前提からは、しばしばパラドックスが導かれる。)

その19式を示せば、第一格では AAA, EAE, AII, EIO、第二格では EAE, AEE, EIO, AOO、第三格では AAI, EAO, IAI, AII, OAO, EIO、第四格では AAI, AEE, IAI, EAO, EIO である。

定言的三段論法における命題のこれらの組み合わせを覚えるため、中世にはsyllogismus と呼ばれるラテン語の詩が作られた。それは、

Barbara celarent darii ferioque prioris.

Cesare camestres festino baroco secundoe.

Tertia darapti disamis datisi felapton, bocardo ferison habet.

Quarta insuper addit bramantip camenes dimaris fesapo fresison.

この詩から子音を取り除くことによって三段論法の式が得られ(上記の詩の強調文字の部分が式である)、それぞれの式を呼ぶのには詩のおのおのの単語を用いる。

また、詩の1行目が第一格、2行目が第二格、3行目が第三格、4行目が第四格に対応している。

また、第一格以外の格は、第一格に還元され得るが、式の名称に含まれる子音のうちs, m, p および c は還元の際の手引きとなるもので、s および p はそれぞれ直前の母音で表される式を単純換位あるいは限量換位せよという意味であり、m は前提の変換を命じ、c は三段論法の換位すなわち帰謬法によって証明せよという意味である。

冒頭で示した三段論法の例は第一格の Barbaraに対応している。

大前提:全ての人間は死すべきものである。(A, M-P:全てのMはPである)
小前提:ソクラテスは人間である。(A, S-M:全てのSはMである)
結論: ゆえにソクラテスは死すべきものである。(A, S-P:全てのSはPである)


なお上に示した定言的三段論法のほか、その発展として蓋然的(仮言的)三段論法選言的三段論法がある。

また、ジョン・スチュアート・ミルは、如上のソクラテス云々の場合、結論を知っていないならば、大前提の全称判断は得られないのだから、三段論法は一種の循環論証であると批判した。

脚注 [編集]

  1. ^ エス・エヌ・ヴィノグラードフ、ア・エフ・クジミン『論理学入門』西牟田久雄、野村良雄訳、青木書店(青木文庫)1973年、157頁

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]