普及学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ロジャースによるイノベーションの普及プロセス。新しいアイデアや技術が次々と採用される(青字)につれ、普及率はいずれ飽和する(黄色)。普及率はS字状の曲線となるためSカーブと呼ばれる。

普及学 (: Diffusion of innovations) とは、新しいアイデア技術社会になぜ普及したりしなかったりするかや、どのように普及するかを説明しようとする理論である。

社会学者エヴェリット・ロジャース1962年の書籍『Diffusion of Innovation』で提唱し、大きな反響を呼んだ。彼は、普及とはイノベーションが社会システムのメンバ間に時間をかけて特定のチャネルを介して伝達されるプロセスであると述べた。イノベーション理論の拡散の起源は様々であると同時に、複数の分野にまたがった研究となっている。

イノベーション要件[編集]

ロジャースは、新たなアイデアや技術を個人が採用するために必要な要件として、以下の5つを挙げた。

比較優位
従来のアイデアや技術と比較した優位性。まったく新しい技術の場合でも、同じ役目を担っていた代替案との比較になる。例えば、Eメールは郵便や電話という通信手段と比較して速度やコストが優位といえる。
適合性
その個人の生活に対しての近さ。新規性が高くても、大きな生活の変化を強要するものだと、採用されにくい。
わかりやすさ
使い手にとってわかりやすく、易しいものが採用されやすい。
試用可能性
実験的な使用が可能だと、採用されやすい。
可視性
採用したことが他者に見える度合い。新しいアイデアや技術が採用されていることが、周囲の人から観察されやすい場合に、そのイノベーションに関するコミュニケーションを促し、普及を促進する。

採用者のカテゴリ[編集]

ロジャースは革新性に基づき、社会システム内の個人を分析・分類した成果が認められている。アイデアが普及・拡散する過程の採用者を標準的な5カテゴリに分け、これら採用者の数を時間軸にわたってプロットすると累積度数分布の曲線がSカーブとなることを発見した。各カテゴリは採用順に「イノベーター」「アーリーアドプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」と呼ばれている。

イノベーター
新しいアイデアや技術を最初に採用するグループ。リスクを取り、年齢が若く、社会階級が高く、経済的に豊かで、社交的、科学的な情報源に近く、他のイノベーターとも交流する。リスク許容度が高いため、のちに普及しないアイデアを採用することもある。
アーリーアドプター
採用時期が2番手のグループ。オピニオンリーダーとも言われ、他のカテゴリと比較すると周囲に対する影響度が最も高い。年齢は比較的若く、社会階級は比較的高い。経済的に豊かで、教育水準は高く、社交性も高い。イノベーターよりも採用選択を賢明に行い、オピニオンリーダーとしての地位を維持する。
アーリーマジョリティ
このカテゴリの人は一定の時間が経ってからアイデアの採用を行う。社会階級は平均的で、アーリーアドプターとの接点も平均的に持つ。
レイトマジョリティ
このカテゴリにいる人は、平均的な人が採用した後にアイデアを採用する。イノベーションが半ば普及していても懐疑的に見ている。社会階級は平均未満で、経済的な見通しは低く、社会的な影響力は低い。
ラガード
最も後期の採用者。他のカテゴリと比較すると社会的な影響力は極めて低い。変化を嫌い、高齢で、伝統を好み、社会階級も低く、身内や友人とのみ交流する傾向にある。

参考文献[編集]

  • E.M. Rogers著 青池愼一・宇野善康監訳『イノベーション普及学』(産能大学出版部, 1990年)ISBN 4-3820-4719-6 

関連項目[編集]