エリザベート (ミュージカル)

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エリザベート』(原題:Elisabeth)は、オーストリア=ハンガリー帝国の皇后エリーザベトの生涯を描いた、ウィーン発のミュージカル。脚本・作詞のミヒャエル・クンツェ、作曲のシルヴェスター・リーヴァイが共同で制作した。

日本語の題名が『エリザベート』であるのは、日本ではその他の表記(「エリーザベト」など)に比べて、より一般的な単語として認知されているためである。

ポスターのモデルとなった肖像画

目次

作品概要 [編集]

生涯を通じて束縛を嫌い、自由を求めた美貌のオーストリア皇后・エリザベートが、自分とかかわる周囲の者を巻き込みながら、死への誘惑と闘いつつ生き、最後に暗殺された物語を、暗殺者の視点から語ったミュージカルである。

1992年9月3日オペラ演出家として名高いハリー・クプファーの演出により、アン・デア・ウィーン劇場で初演され大ヒット。ハンガリーオランダドイツなどで続演され、ドイツ語ミュージカル史上屈指のヒットを記録した。

2003年から2005年にかけて、ドイツ・エッセン版で追加された曲やシーンを編成しなおした再演版がライムント劇場にて上演される。

2012年9月より、ライムント劇場にて再演。宝塚版の「愛と死の輪舞」にあたる、「Rondo-Schwarzer Prinz(ロンド-黒い王子)」が追加される。

日本においては、宝塚歌劇団による1996年の初演以来、上演が続いており、2000年からは東宝版も上演されている。

各国版の間での違い [編集]

このミュージカルの重要人物である Tod は、ドイツ語で「」「死神」を表す単語である。日本以外の各国の公演では、その国の言語で死を表す言葉が役名に当てられている(英訳では "Death")。これは芸術表現である「死の舞踏」や絵画『民衆を導く自由』での例のように、抽象概念(この場合は死)を擬人化するヨーロッパ諸語の慣行によったものである。

宝塚歌劇団での上演にあたって、トップの演じる役が死神という設定では問題があったため(また日本語には抽象概念を擬人化する慣行がなかったので)、この役を「トート」という名前の「黄泉の帝王」という設定に変更された。そのため、エリザベートと黄泉の帝王との愛憎劇に重点を置いた日本版と、エリザベート/ハプスブルク家と死の絡み合いを描いたウィーンをはじめとする各国版では、同じミュージカルでありながら趣が異なった作品に仕上がっている。

また、クンツェが「舞台上のTod=死は、いうならばエリザベートの分身、もうひとりの彼女というふうに考えています」と述べているように、「死」はエリザベートの内面の葛藤を表し、基本的に彼女(と彼女の分身=鏡であるルドルフ)の前にしか姿を現さないのに対し、宝塚版のトートは、ウィーンのカフェやミルクのシーンで民衆の前に姿を現し、直接革命を先導するなど、エリザベートの内面から離れた独立した意志を持った存在として描かれている。

登場人物 [編集]

以下は宝塚歌劇団版と東宝版のみ。

  • エルマー・バチャニー - 革命家
    • エルマーを含む三人のハンガリー革命家は日本初演の雪組公演で誕生した。宝塚の若手男役のために作られた役とも、日本で馴染みの薄かったオーストリアとハンガリーの歴史を分かりやすく説明するためとも言われている。帝国劇場(東宝)版や以後の宝塚版でも登場している。

あらすじ [編集]

第一幕 [編集]

オーストリア皇后エリザベートの暗殺者ルキーニは、暗殺から100年経った後も死者の世界で裁判にかけられていた。「皇后暗殺の動機は?黒幕は誰だ?」との裁判官の尋問に、ルキーニは「動機は愛、黒幕は死だ。なぜ殺したかって?彼女自身が望んだんだ!」と意味不明な供述をする。そして、証人としてエリザベートと同じ時代を生きたハプスブルク家の人々を呼び起こし、彼らはエリザベートについて語り始めるのだった。

舞台は南ドイツの緑に囲まれた湖畔のポッセンホーフェン城に移る。エリザベートの父マックス公爵は、予定されていた親戚同士の集まりを嫌い、旅に出ようとしていた。幼いシシイは自由奔放に生きる父親に憧れ、一緒に行きたいと願う。しかし、父親の影響で詩や乗馬、木登りなどを好むシシィを厳しく躾ける家庭教師が許してくれない。親戚の集いでは、母ルドヴィカから姉ヘレネがオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とお見合いをするとの発表がある。一同が縁談の話で持ちきりとなる中、興味を示さず一人で木に登り曲芸の練習をしていたシシィは、足を滑らせ高所から落下してして意識を失う。その後、意識を取り戻したシシィは、中性的な美しい姿の青年が彼女を抱え、ベッドへと連れ帰してくれたことを感じる。彼女はそれが「死」だと気づくが、彼(ドイツ語で死を意味するTodが男性名詞ということから)に何にも縛られない自由な父親の面影を重ね、強い憧れを感じる。ルキーニは後に、これが愛だと証言している。

数年後、保養地バート・イシュルでフランツ・ヨーゼフとヘレネの縁談が行われていた。ゾフィー大公妃は、遠縁であり高貴な后教育を受けたヘレネと結婚するように息子である皇帝を説得するが、その席で彼はよりによって妹のエリザベートに一目ぼれをしてしまう。「彼女は皇后に相応しくない」というゾフィ、「宮廷生活はシシィを殺してしまう」というマックスの反対は押し切り二人は婚約、ウィーンのアウグスティーナ教会で婚礼の儀が執り行われた。そして結婚を祝うシェーンブルン宮殿での舞踏会で、皇帝とワルツを踊るエリザベートの前に再び「死」が現れる。彼は「俺はお前を手に入れ損なったが、お前と最後に踊るのは俺だ。(意中の異性と舞踏会で最後にダンスを踊るという意味と、人が死ぬ際に死神と死の舞踏を踊るという中世ヨーロッパの死生観の意味)」と彼女に告げて消える。我に返り動揺するエリザベートを、まるで見せ物を見るような好奇の目で人々見つめる。その瞬間エリザベートは自分が宮廷という異質な世界に入ってしまったことを実感したのだ。

ウィーンの宮廷は、ゾフィー大公妃に支配されており、エリザベートは皇后としての厳しい作法を押し付けられていた。毎朝5時の起床、お世継ぎを作ることを催促され、趣味の乗馬も禁じられる。宮廷の息苦しさと孤独感に耐えかねた彼女は夫に助けを求めるが、「母の言う通りにすることが、君のためになる」と、皇帝はあくまで母親の味方をしようとする。エリザベートは、「私は誰の所有物でもない、私の人生は私だけのもの」と、宮廷に飼い慣らされることを断固拒否する。エリザベートとウィーン宮廷との長い戦いの始まりである。その後、皇帝との間に娘が二人生まれるが、彼女は育児を許されず、子供をゾフィーに奪われてしまう。

その頃、当時オーストリア帝国の一部であったハンガリーで独立の気運が高まりをみせる。皇帝はエリザベートの美貌を利用してこの動きを沈静化しようと試みる。彼女は、娘をゾフィーの元から引き離し、ハンガリーへの旅に同行させることを条件に了承するが、慣れない長旅で疲弊した長女が病死してしまう。嘆き悲しむエリザベートの前に「死」が現れ、「お前が見せかけの愛にすがるなら、皇帝=ハプスブルク帝国を闇へ引きずり込むことになる」と不気味な言葉を残していく。程なくして、待望の長男ルドルフが誕生するが、またしてもゾフィーが彼を奪い去ってしまう。エリザベートは、自分を選ぶか姑を選ぶか最後通牒を突きつけ、息子の養育権をかけて夫に詰め寄る。すべてに疲弊して泣き崩れるエリザベートの前に「死」が囁きかける。「全ての葛藤は終わる、苦しみから救ってやろう」と。しかし、彼女は自分自身の力で自由になれる、そのためには美しさをも利用すると「死」を拒絶する。

ウィーンの市場ではミルクの配給を求める市民が集まっている。何故ミルクがないのか詰め寄る市民にルキーニは、「ミルクがないのはエリザベート皇后が横取りしてミルク風呂に使っているからだ」と告げる。市民は「ミルクがなくて子供が死んでいるんだ!」、「皇后に思い知らせてやる」と叫び声を上げる。エリザベートは彼女の力の源泉である美貌を保つためあらゆる美容法を実践していたのだが、一方で庶民の生活は困窮し、オーストリア帝国、そしてエリザベートへの不満が徐々に高まっていたのだ。

時を同じくして、エリザベートの居室の前に、フランツ・ヨーゼフが現れる。彼は「皇帝は感情を持つことが許されない。しかし君を失うくらいなら、望みは全て叶えよう。」と、ゾフィーではなくエリザベートを選び、彼女の最後通牒を受け入れることを告げる。エリザベートはヴィンターハルターの肖像画と同じ出立ちで姿を現して、「あなたと共に生きていきます、でも私の人生は私だけのもの。」と高らかに勝利を宣言する。しかし、その姿を陰から「死」が不気味に見つめていたのだった。

第二幕 [編集]

ブダペストの大聖堂では、オーストリア=ハンガリー帝国戴冠式が行われており、フランツ・ヨーゼフとエリザベートのハンガリー王・王妃が出席していた。エリザベートは、ウィーンの宮廷やゾフィへの反発からハンガリーを敬愛しており、ハンガリーの大規模な自治権を認める二重帝国の実現の力添えをした彼女を、ハンガリー国民は「エーヤン、エリザベート(エリザベート、万歳)」と歓迎した。自信と威厳に溢れたエリザベートの姿を横目に、ルキーニは「あんなもの偶像でキッチュ(まがいもの)だ」と野次を飛ばす。実際、エリザベートは息子ルドルフの養育権を取り戻したものの、ゾフィに勝利したことに満足して、その育児を完全に放棄していた。母の愛を知らず孤独に育ったルドルフは、「死」に母の面影を重ねて、彼を親友と慕うようになっていた。エリザベートの分身、鏡である彼には「死」が見えるのだ。

一方ゾフィーとその近臣たちは、フランツ・ヨーゼフをエリザベートから引き戻すため、フランツ・ヨーゼフに愛人を用意する。しかし売春宿から連れてこられた娘は病気持ちだった。ダイエットの運動中に倒れたエリザベートは、医師から原因は過剰な運動ではなく性病だと告げられる。夫が自分以外の男性と関係を持っていたことを知ったエリザベートは、彼の裏切りに「死んだ方がまし」と洩らす。その言葉を待っていた「死」は、「これが最後のチャンスだ、俺と最後のダンスを踊るのだ」と彼女を死へと誘う。しかし、エリザベートは「死」を受け入れず、これを夫からの解放、自由とみなして、以後十数年、ウィーンを離れ、旅から旅への放浪の人生を送ることになる。

エリザベートがその生涯で足繁く通っていた場所が精神病院であった。そこで彼女は患者にこのように語りかけたという。「私よりあなたの方が自由よ、私は魂まで拘束されているのだから」「本当の自由を与えられるのは狂気と身の破滅だけ、でも私にはそれを受け入れる勇気が無い」と。また、旅の途中、ギリシャのコルフ島で父親の霊に「ジプシーのように自由に生きたかった、でももう遅すぎる、私はあなたにはなれない」と嘆いている。彼女が少女時代に「死」に投影した憧れは、父親の姿ではなく、死の果てにある究極的な自由だったのかもしれない。

そして、エリザベートが旅を続ける間にも時は経ち、ルドルフは青年へと成長した。一方で、ヨーロッパでは民族主義、ファシズムが台頭を始めており、ウィーンでもユダヤ人の排斥を叫ばれていた。彼は、このような時代の大きな渦の中で、少数民族や市民の権利を弾圧する父親の古い統治方法では、ハプスブルク帝国の崩壊を早めてしまうだけだと苛立ちを感じていた。そんな不安定な精神状態の中、友である「死」に扇動され、母が愛したハンガリーに肩入れして皇帝を批判する内容の論文を、匿名で新聞に投稿してしまう。しかし、それが父親の目にふれ、また民族主義者からも裏切り者と攻撃をされ、ルドルフは政治的に追い込まれる。そんな折、母がウィーンに帰ってきた。ルドルフは自身の心情を吐露して、「皇帝に口添えして助けて欲しい」と母親に願い出るが、皇帝との関係をすべて絶った彼女は息子の懇願を頑なに拒否する。絶望したルドルフは、マイヤーリンクで拳銃自殺をする。息子の死はエリザベートに大きなショックを与え、自分の自由を追い求めるあまり息子を死なせてしまった罪を悔い、死なせて欲しいと懇願する。しかし、「死」は遅すぎると彼女を拒否するのだった。

その後も、彼女の放浪の旅を続ける。フランツ・ヨーゼフは頻繁に彼女の旅先を訪ねており、フランス、マルタン湖の畔で二人は再会する。彼は自身のエリザベートへの変わらぬ愛を伝え、私の元へ帰ってきて欲しいと嘆願するが、エリザベートは「愛にもできないことがある、奇跡を信じることは時に自分を欺くことにもなる」と自分たちを積荷も目的地も違う、すれ違う二艘の船に例えて、価値観が違う二人が相容れることは決してないと伝える。ルドルフの死から6年が経過していた。

フランツ・ヨーゼフの弟メキシコ皇帝マキシミリアンは革命で銃殺、従兄ルートヴィヒ2世は精神を病み湖で溺死、妹のゾフィーは火事で焼死するなど、エリザベートの周囲では不幸な出来事が続く。そしてある晩、皇帝はハプスブルク帝国崩壊の悪夢に魘され、その夢の中で「死」と対峙する。「死」の手には、エリザベート暗殺の凶器のやすりが握られていた。沈んでいく世界、ハプスブルグ帝国を模した船のデッキの上で、皇帝は最後までエリザベートを「死」の手から救い出そうともがき続けるが、終にルキーニの手にやすりが手渡されてしまう。「エリザベート!」という叫び声と共に、皇帝とハプスブルグ家の証言者たちは光の中へと吸い込まれていった。そして、ルキーニが最後の供述を始める・・。

宝塚歌劇団版 [編集]

煉獄で一人の男が裁判にかけられていた。彼の名はルイージ・ルキーニ。彼はエリザベート皇后殺害の容疑で、彼女の死後100年経った今でも裁判官から尋問を受けていた。だがルキーニは「俺は望まれてやったんだ」「エリザベートは死と恋仲だった」と言い、それを証明させるためにハプスブルク時代の霊魂を呼び寄せる。その中に黄泉の王トートがいた。ルキーニは彼らに皇后のことを語らせて、どういう経過になったのかを説明し物語はエリザベートの少女時代へと移る。

1853年、まだ少女のエリザベートはバイエルン王国の公女として自由を満喫していた。ある時、彼女は綱渡りに挑戦しようとしてロープから落ち、意識不明の重体に陥る。冥界に迷い込んだエリザベートにトートは一目で惹きつけられ、禁断の恋におちる。トートはエリザベートに生命を返してやる。そしてその愛を得ようと、彼女を追い続ける決意をする。こうして、愛と死の輪舞が始まった。

エリザベートはその後フランツ・ヨーゼフと結婚しオーストリア皇后となるも、父に似て自由であることを生き甲斐とする彼女は姑ゾフィーの取り仕切る王家としての公務や義務に耐えられず追い詰められる。トートに唆されるも、死に逃げず自分一人で生きていく決意をする。その後、姑ゾフィーに奪われていた子どもの養育権を取り戻し確執に勝利するも、忙しさに負け、ようやく取り戻したはずの息子ルドルフを顧みることはなく、ルドルフは孤独な生活を送る。一方でエリザベートは、自身の美貌が役立つと気付き、それを磨くことに時間を惜しまなかった。過激なダイエットで倒れたエリザベートにトートが夫の不貞を告げ、「死ねばいい!」と誘惑されても、エリザベートは負けなかった。

成人した息子ルドルフは父フランツ・ヨーゼフと対立し母エリザベートに助けを求めるも、宮廷に無関心のエリザベートはそれを拒む。絶望したルドルフは自殺し、トートの死のくちづけを受ける。ルドルフの死に悲嘆するエリザベートは、トートに死を哀願するも、「まだ俺を愛していない」とそれを拒絶される。トートが欲しいのはあくまで彼女の愛であった。エリザベートはその後、常時黒の服を身に纏い、旅を続けた。

最後の舞台はジュネーヴレマン湖。ここでエリザベートはルキーニに襲われそうになり、一度は振り切ったが、トートの叫びを聞いたエリザベートはルキーニに自ら向き直り、刃物で殺害される。その後エリザベートはトートの愛を信じ、二人で天空に向かう。そして舞台は終焉を迎える。

公演記録 [編集]

1992年9月のウィーンでの初演以後、日本(1996年2月初演)、ハンガリー(1996年8月初演)、スウェーデン(1999年9月初演)、オランダ(1999年11月初演)、ドイツ(2001年3月初演)、イタリア(2004年7月初演)、フィンランド(2005年9月初演)、スイス(2006年7月初演)、韓国(2012年2月初演)で上演された。なおイギリスでは、現イギリス王室北アイルランド問題に絡んで非常にデリケートな内容であるため上演できなかった。王室が現存するヨーロッパ諸国も一時期は公演をためらっていた。

演出についてはウィーン発のミュージカルらしく、オペラのようにプロダクション毎に自由となっている。また曲目やシーンの順番などもプロダクション毎に異なる。

初演・再演・再々演版 [編集]

  • 初演(1992年)キャスト
    • Elisabeth: ピア・ドゥーヴェス(Pia Douwes)
    • Der Tod: ウーヴェ・クレーガー(Uwe Kroger)
    • Lucheni: イーサン・フリーマン(Ethan Freeman)
    • Franz-Joseph: ヴィクトール・ジェルノ(Viktor Gernot)
    • Rudolf: アンドレアス・ビーバー(Andreas Bieber)
  • 再演(2003年-2005年)版キャスト
    • Elisabeth: マヤ・ハクフォート(Maya Hakvoort)
    • Der Tod: マテ・カマラス(Mate Kamaras)
    • Lucheni: セルカン・カヤ(Serkan Kaya)
    • Franz-Joseph: アンドレ・バウエル(Andre Bauer)
    • Rudolf: イェスパー・ティデーン(Jesper Tyden)
  • 再々演(2012年-)版キャスト
    • Elisabeth: アンネミーケ・ファン・ダム(Annemieke van Dam)
    • Der Tod: マーク・ザイベルト(Mark Seibert)
    • Lucheni: クロッシュ・アバシ(Kurosch Abbasi)
    • Franz-Joseph: フランツィスクス・ハルテンシュタイン(Franziskus Hartenstein)
    • Rudolf: アントン・ツェッターホルム(Anton Zetterholm)

宝塚歌劇団版 [編集]

宝塚歌劇団の演出家・小池修一郎が、1992年にロンドンで現地のミュージカル作品の音楽集で興味を惹かれるものを探していたところ、その店の店主からこの『エリザベート』を薦められた[1]。また翌年には、歌劇団に来客として訪れたイスタンブル在住の中国人の大学教授から、『エリザベート』のドイツ語プログラムを受け取ったりもしている。

これらの経緯を経て、日本では宝塚歌劇団が上演権を取得し、1996年に初めて日本に紹介。雪組で、当時トップスターだった一路真輝のサヨナラ公演として初演された。始めこそ評判はいまひとつであったが、次第にチケットが取れないほどの人気が出る。

一路の退団公演だったため「なぜサヨナラ公演で死を演じるのか?」「トップ退団公演で死はおかしい」など当時は疑問視されたが、公演開始後に徐々に批判はなくなった。また「宝塚版はウィーン版を改竄している」と熱烈なミュージカルファンから批判があったため、後述の東宝版はウィーン版に倣って制作された。

宝塚版では、男役のトップを主役に置かなければならない伝統に則り、エリザベートではなくトート(“死”)が主役になるよう脚本や演出が潤色された。特に、トートとエリザベートの禁じられた恋を主題に置き、「愛と死の輪舞(ロンド)」という副題が付けられた。また、同名のナンバーが新規に作詞・作曲され、トートが歌う宝塚版独自のナンバーとなった。その後、海外での公演でもこの曲が一部使われるようになっている。

日本人には馴染みの薄い歴史を描いた演目ではあったが、成功を収め、その後も再演を繰り返し、宝塚歌劇団を代表する人気演目に成長した。また、これが原因で女性を中心に「ハプスブルク帝国ブーム」がおき、その華麗な宮廷生活への憧れなどからオーストリアウィーンへの観光客増加を惹起した。

2007年5月4日から6月18日まで宝塚大劇場、7月6日から8月12日まで東京宝塚劇場で雪組公演として、6度目の上演が行われた。この間、2007年5月24日の15時00分公演で、観客動員150万人を突破した。

潤色・演出
小池修一郎中村一徳(2002年花組公演、演出のみ)
公演会場
宝塚大劇場東京宝塚劇場(1998年宙組東京公演を除く)、TAKARAZUKA1000days劇場(1998年宙組東京公演)
宝塚歌劇団 本公演キャスト一覧
公演年・組 トート エリザベート フランツ・
ヨーゼフ
ルキーニ ルドルフ ルドルフ
(少年時代)
ゾフィー エルマー マダム・ヴォルフ マデレーネ
1996年雪組 一路真輝 花總まり 高嶺ふぶき 轟悠 香寿たつき(宝塚)
和央ようか(東京)
安蘭けい 朱未知留 和央ようか(宝塚)
高倉京(東京)
美穂圭子 星奈優里
1996年星組 麻路さき 白城あやか 稔幸 紫吹淳 絵麻緒ゆう 月影瞳 出雲綾 湖月わたる 鈴奈沙也 眉月凰
1998年宙組 姿月あさと 花總まり 和央ようか 湖月わたる 朝海ひかる(宝塚)
樹里咲穂(東京)
夢輝のあ[* 1]
初嶺まよ 出雲綾 夢輝のあ 夏河ゆら(宝塚)
華宮あいり(東京)
2002年花組 春野寿美礼 大鳥れい
遠野あすか[* 2]
樹里咲穂 瀬奈じゅん 彩吹真央 望月理世 夏美よう 蘭寿とむ 幸美杏奈 舞城のどか
2005年月組 彩輝直 瀬奈じゅん 初風緑 霧矢大夢 大空祐飛 彩那音 美々杏里 月船さらら 嘉月絵理 城咲あい
2007年雪組 水夏希 白羽ゆり 彩吹真央 音月桂 凰稀かなめ 冴輝ちはや 未来優希 彩那音 晴華みどり 愛原実花
2009年月組 瀬奈じゅん 凪七瑠海[* 3] 霧矢大夢 龍真咲 遼河はるひ
青樹泉
明日海りお[* 4]
羽桜しずく 城咲あい 遼河はるひ
青樹泉[* 4]
沢希理寿 蘭乃はな
  1. ^ 樹里が数日間休演したことに伴う代役。
  2. ^ 大鳥が数日間休演したことに伴う代役。
  3. ^ 宙組より特別出演。
  4. ^ a b 役替わり。
宝塚歌劇団 新人公演キャスト一覧
公演年・組 トート エリザベート フランツ・
ヨーゼフ
ルキーニ ルドルフ ルドルフ
(少年時代)
ゾフィー エルマー マダム・ヴォルフ マデレーネ
1996年雪組 安蘭けい 貴咲美里 汐美真帆 楓沙樹 貴城けい 初嶺まよ 未来優希 眉月凰 愛耀子 有沙美帆
1996年星組 彩輝直 月影瞳 高央りお 朝宮真由 眉月凰 朝澄けい 羽純るい 音羽椋 久路あかり 妃里梨江
1998年宙組 夢輝のあ 南城ひかり(1幕)
久路あかり(2幕)
朝比奈慶 久遠麻耶 華宮あいり 月船さらら 梶花空未 初嶺まよ 毬穂えりな 海宝珠起
2002年花組 蘭寿とむ 遠野あすか 未涼亜希 桐生園加 愛音羽麗 華城季帆 桜一花 華形ひかる 七星きら 花野じゅりあ
2005年月組 青樹泉 夢咲ねね 真野すがた 彩那音 龍真咲 明日海りお 城咲あい 星条海斗 憧花ゆりの 紫水梗華
2007年雪組 沙央くらま 大月さゆ 大凪真生 大湖せしる 蓮城まこと 詩風翠 晴華みどり 祐輝千寿 純矢ちとせ 愛輝ゆま
2009年月組 明日海りお 羽桜しずく 紫門ゆりや 宇月颯 煌月爽矢 千海華蘭 玲実くれあ 鳳月杏 彩星りおん 麗百愛

東宝版 [編集]

2000年から東宝にて、ウィーン版と同様、エリザベートを主役にした脚本で上演、エリザベート役には宝塚初演時にトートを演じた一路真輝が抜擢された。

しかし男役としての歌唱力と女声としての歌唱力に大きな隔たりがあることは否めず、一路はファンから「一路は声変わりの最中」などと揶揄されたこともある。しかし演技力・存在感は圧倒的で「エリザベートがそこにいるようだった」とルドルフ役の井上芳雄が語っている。

2011年10月27日、2012年5月から9月の公演にて、エリザベートは役には、前作に引き続き瀬奈と春野寿美礼によるダブルキャストになることが発表された。2011年12月22日にその他の主要キャストが発表となり、トート役には前作に引き続き山口と石丸と、ハンガリー版・ウィーン再演版でトート役を演じたマテ・カマラスのトリプルキャストになった。ルドルフ役は、大野拓朗平方元基古川雄大のトリプルキャストになることが発表された。

演出・訳詞 
小池修一郎
東宝版 公演キャスト一覧
公演年 エリザベート トート フランツ・
ヨーゼフ
ルキーニ ルドルフ ゾフィー エルマー マックス
2000年 一路真輝 山口
祐一郎
内野
聖陽
鈴木綜馬 高嶋政宏 井上芳雄 初風諄 今拓哉 寺泉憲
2001年
2004年 鈴木
綜馬
石川
浦井
健治
パク・トンハ     村井国夫
2005年   井上
芳雄
寿ひずる 藤本隆宏
2006年 武田
真治
パク・トンハ 寿


初風
縄田晋
2008年
-2009年
朝海
ひかる
涼風
真世
伊礼彼方 中山昇
2010年 瀬奈
じゅん
山口
祐一郎
石丸
幹二
城田
伊礼
彼方
田代
万里生

けあき
岸祐二
2012年 春野
寿美礼
マテ・
カマラス
岡田
浩暉
大野
拓朗
平方
元基
古川
雄大
今井清隆
東宝版 公演会場・回数 ※( )内の数字は各劇場での公演回数
公演年 公演会場 公演回数
2000年 帝国劇場 117 回
2001年 帝国劇場 (43)、中日劇場 (38)、梅田コマ劇場 (41)、博多座 (40) 162 回
2004年 帝国劇場 (115)、中日劇場 (42)、博多座 (38)、梅田コマ劇場 (55) 250 回
2005年 帝国劇場 40 回
2006年 日生劇場 37 回
2008年
-2009年
中日劇場 (38)、博多座 (38)、帝国劇場 (76)、梅田芸術劇場 (38) 190 回
2010年 帝国劇場 107 回
2012年 帝国劇場 (64)、博多座 (31)、中日劇場 (31)、梅田芸術劇場 (38) 164 回

ウィーン版の日本公演 [編集]

2007年には、ウィーンで上演されているドイツ語のオリジナルウィーン版が、オーストリア大使館後援のもと、日本で初上演された。エリザベート役には最多出演のマヤ・ハクフォート、トート役はマテ・カマラスが演じた。東京と大阪での上演となるが、ウィーンの舞台装置、演出を再現したオリジナルバージョンは大阪公演のみであり、東京公演はコンサートバージョンであった。2012年10月月には、『ウィーン版ミュージカル エリザベート20周年記念コンサート~日本スペシャルヴァージョン~』(梅田芸術劇場メインホール、東急シアターオーブ)が予定されている。

セットリスト [編集]

曲順・曲目は公演によって異なる。下記曲順は2005年にウィーン再演されたものを元にしたもの。曲名は「ドイツ語名 / 英語名 / 日本語名」の順で表記。

  • 第一幕
    1. Prolog - Alle Tanzten mit dem Tod - Elisabeth / Prologue - All of them danced with death - Elisabeth / プロローグ - 我ら生絶えし者ども - エリザベート
    2. Wie Du / Like you / パパみたいに
    3. Schön, Euch alle zu sehn / Nice to see you all here / ようこそみなさま
    4. Kein Kommen ohne Gehen (Rondo - Schwarzer Prinz) / Every path is a maze / 愛と死の輪舞
    5. Jedem gibt er das Seine / He's the just distributor / 皇帝の義務
    6. So wie man plant und denkt... / That's how life goes / 計画通り
    7. Nichts ist schwer / Nothing is difficult / あなたが側にいれば (宝塚版は「嵐も怖くはない」)
    8. Alle Fragen sind gestellt / All the questions have been Asked / 不幸の始まり
    9. Sie passt nicht / She is unsuitable / 結婚の失敗
    10. Der letzte Tanz / The final dance / 最後のダンス
    11. Eine Kaiserin muss glänzen / It's the duty of an empress / 皇后の務め
    12. Ich gehör nur mir / I belong to Me / 私だけに
    13. Die Schatten werden länger / The shadows grow longer / 闇が広がる
    14. Die fröhliche Apokalypse / The merry apocalypse / 退屈しのぎ
    15. Kind oder nicht / Child or not / 子供の養育は (オランダ版より追加)
    16. Elisabeth, mach auf mein Engel - Elisabeth, sei nicht verzweifelt / Elisabeth, don't despair / エリザベート(愛のテーマ)
    17. Milch! / Milk! / ミルク
    18. Uns're Kaiserin soll sich wiegen / Our empress should pamper herself / 皇后の務め
    19. Ich will Dir nur sagen - Ich gehör nur mir / I belong to me / 私だけに 〈リプライズ〉
  • 第二幕
    1. Kitsch / Kitsch / キッチュ
    2. Wenn ich tanzen will / When I want to dance / 私が踊る時 (ドイツ・エッセン版より追加)
    3. Mama, wo bist Du / Mama, where are You / ママ、何処なの?
    4. Nichts, nichts, gar nichts / Nothing, nothing at all / 魂の自由
    5. Wir oder sie / Her or us / 皇后の勝利
    6. Nur kein Genieren / Don't play the prude / マダム・ヴォルフのコレクション
    7. Maladie - Die letzte Chance / The maladie - The last chance / マラディ
    8. Zwischen Traum und Wirklichkeit / Between dream and reality / 夢とうつつの狭間に (東宝版初演のみ使用)
    9. Bellaria / Bellaria / ゾフィーの死 (オランダ版より追加)
    10. Rastlose Jahre / She is always restless - Mirror, mirror - Hunt / 一時も休まない - 年月は過ぎる - 狩り("狩り"については日本では当初から未使用・2005年のウィーン再演版において削除され、以降は使用せず)
    11. Die Schatten werden länger / The shadows grow longer / 闇が広がる(リプライズ)
    12. Wie Du / Like you (reprise) / パパみたいに 〈リプライズ〉
    13. Hass! / Hatred! / 宝塚版では未使用
    14. Wenn ich dein Spiegel wär / If I were your mirror / 僕はママの鏡だから
    15. Mayerling-Walzer / Mayerling Waltz / 死の舞 (ウィーン・オリジナル版CDでは "Totentanz")
    16. Totenklage / Dirge / 死の嘆き
    17. Mein neues Sortiment / My new range / 新しいウィーン土産 〈キッチュ・リプライズ〉
    18. Boote in der Nacht / Ships in the night / 夜のボート
    19. Alle Fragen sind gestellt / All the questions have been asked / 悪夢
    20. Epilog - Der Schleier fällt / The veil descends / エピローグ - 愛のテーマ

関連メディア [編集]

DVD
日本で発売されているDVDはNTSC規格だが、ヨーロッパで発売されているDVDはPAL規格のため、日本のDVDプレイヤーでは再生できない(パソコンのDVDドライブでの再生は可能)。このため日本では、宝塚クリエイティブアーツからNTSC方式のDVDが発売されている。
2005年発売のDVDでは、フリッツ・シュミット(Fritz Schmid)がルドルフ役を演じている。
CD
日本国内公演、日本国外公演ともにライヴ録音盤が発売されている。
2004年発売のCDでは、ルカス・ペルマン(Lukas Perman)がルドルフ役を演じている。

脚注 [編集]

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  1. ^ この時、かなりの高値で売られたらしく、小池は「果たしてどんなものなのか、皆目見当がつかないまま、購入してしまった」旨を、2000年の帝国劇場初演版プログラムに記述している。

外部リンク [編集]