SPACY

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
SPACY
山下達郎スタジオ・アルバム
リリース
録音 1977年2月26日 (1977-02-26)-4月18日
SOUND CITY 1st & 2nd
ONKIO HAUS 1st & 2nd
RCA 1st
ジャンル ジャズ[1]
ロック[1]
ポップ・ミュージック[1]
ジャズ・ロック[1]
レーベル RCA ⁄ RVC
プロデュース 山下達郎
チャート最高順位
山下達郎 アルバム 年表
CIRCUS TOWN
1976年
SPACY
1977年
IT'S A POPPIN' TIME
1978年
テンプレートを表示

SPACY』(スペイシー)は、1977年6月25日に発売された山下達郎通算2作目のスタジオ・アルバム

解説[編集]

CIRCUS TOWN[注 1]ニューヨーク・サイドのレコーディング終了後、チャーリー・カレロ山下達郎に、すべてのスコアを持ち帰ることを許した。日本に帰ってそのスコアを検証したところ、山下がそれまで見たどの教則本や理論書とも全く違うものだったという。アイデアの構築の仕方が実践的で、何よりもスモール・コンボのための程よいデフォルメが随所に施されていた。これを学習しない手はないし、何より実践に応用しないでどうすると思い、セカンド・アルバムのレコーディングが始まるころにはすっかりその気になって、スコア書きに没頭していった。『CIRCUS TOWN』[注 1]を作り終えた頃は、マネージャーと喧嘩別れしたり、取材で音楽評論家と喧嘩したりと、状況的には悪い日々が続いたが、音楽的好奇心はむしろ旺盛で、限られた予算の中とはいえ、それまで出来なかったいろいろな試みが行われた。

厳格な構成を持つ昭和歌謡が主流の時代にあって、山下の作風は、当時の商業音楽の主流とかけ離れた(あるいは、作風のポピュラー性という意味で当時の主流からは著しく進んでいた)ものであったため、このアルバムの制作にあたっては経費や時間への厳しい制限を克服しなければならなかった。ジャケットは、山下の個人的依頼に応じてペーター佐藤カラーコピー機とアクリルブロックで製作したイラストを使用しているし、録音においても、B面収録曲の多くがほとんど山下一人の手によって演奏されているところに、その影がうかがえる。しかしながら、そのような状況下で制作されたからこそ、その虚飾のないサウンド(「夜に忍び込む曲」と評される[2])は、70年代の山下の音楽が最も率直なかたちで具現化されたものとして、現在に至るまで高く評価されている。古くからのファンの中には、このアルバムをベストとする人も多く、山下本人も自分でよく聞き返すアルバムの一つだと語っている。

前述の経費・時間不足のため、B面の曲のいくつかは、自らの演奏するピアノシンセに多重録音のコーラスを重ねたかたちで録音されているが、これが後に山下の真骨頂とされる「一人多重録音」という制作形式の先駆けになった。

タイトルは現在の俗語では「現実味のない、ぼーっとした」というような意味を持つが、山下は自らの造語としてつけたと語っている。

制作形態[編集]

このアルバムは、主に3つの編成で録音が行われている。

1.以下のメンバーを核とした編成。

2.以下のメンバーを核とした編成。

3.山下自身のピアノ、シンセ、山下単独もしくは山下と吉田美奈子によるコーラス

上述のセッションメンバーは、トップクラスのミュージシャンであるが、特に上述1番めの編成におけるリズムセクションの面々は当時の山下の個人的な趣味が反映されたもので、後に聞いたところでは細野と松木は初対面で、村上が間に入って結構気を遣ったそうである。それでも、この時代の日本最高のミュージシャン達の慣れない組み合わせでの緊張感を持ちながらの演奏を自分のアルバムに残すことが出来たのは、自分の妄想から生じた偶然とはいえラッキーだったと述懐している。

なお、当時の山下は、ストリングスやブラスセクションに至るまで、全てのアレンジを自ら行っていた(大滝詠一吉田美奈子のアルバムにおいてもアレンジに参加している)。

収録曲[編集]

SIDE A[編集]

  1. LOVE SPACE  – (4:42)
    このアルバムの最初にレコーディングされた曲。ライブで演奏しやすいという理由から、16小節のテーマがひたすら繰り返されるという趣向の作品というのを以前から作ってみたくて書き下ろされた。イントロ冒頭の佐藤博のピアノのフレーズは、佐藤が本番になっていきなり思いつきで弾き始めたものだという。後にリマスターされたCD『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA[注 2]ボーナス・トラックとして収録されたほか、ライヴ・ヴァージョンがライヴ・アルバム『JOY[注 3]に収録された。後にオールタイム・ベスト・アルバムOPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜[注 4]にも収録されている。
  2. 翼に乗せて  – (3:38)
    当時、自身のコマーシャルの仕事などを行っていたリズム・セクションでレコーディングされた曲。小品だが難易度の高い演奏だという。
  3. 素敵な午後は  – (3:55)
    ジーン・チャンドラーのようなシカゴ・ソウルを作りたくて書かれた曲。山下によれば、この時の村上、細野、松木、佐藤セクションのレコーディングは、細かなパターンや音の動きまで譜面に書き込んだ「書き譜」によるセッションだったが、実際にはほとんど誰も言う事を聞かず、結果的に全員がヘッド・アレンジといっていいほどスコアとは違った演奏をしたという。それでもちゃんと形になっているのは、メンバーのいずれもがアレンジャー・センスを有していたことによるもので、真に優秀なミュージシャンであればそれほど規制しない方がむしろいいのだということを学んだと、後に振り返っている。
  4. CANDY  – (3:14)
    山下曰く、コード進行の興味のために作ったような曲。サビにI aug/-5という変わったコードが用いられているためか、休憩時間に細野晴臣がサビのコードをピアノで弾いて確かめていたのが、妙に嬉しかったのを覚えているという。
  5. DANCER  – (4:34)
    山下が、村上の16ビートドラムを活かすことを企図して書いた曲。歌詞は、都立竹早高校在学時に北朝鮮に帰国したブラスバンドの先輩を思って書いたという[注 5]。この曲も『JOY[注 3]にライヴ・ヴァージョンが収録された。

SIDE B[編集]

  1. アンブレラ  – (3:57)
    スタジオでシ・ミ・シという歌い出しのノートを弾いていたら、吉田美奈子が“アンブレラ”と合わせて出来たという曲。内省的な作品だが自分では好きな曲だという。
  2. 言えなかった言葉を  – (4:04)
    この曲は、これまでに作ってきたニューヨーク・シャッフルと呼ばれるスイング・ビートの曲の中でとりわけ内省的なものの一つだとし、こういう詞の世界は吉田美奈子の独壇場だという。山下自身のピアノ弾き語りコーラスブラスセクションという楽器編成で、ブラスは前作『CIRCUS TOWN』のニューヨーク・サイドのレコーディングでチャーリー・カレロが書いたスコアが使われている。
  3. 朝の様な夕暮れ  – (2:14)
    1976年春、電車のストライキ大瀧詠一の自宅スタジオに1週間近く寝泊まりしていた時、スタジオにあった16トラック・レコーダーに自分の声を重ねたのが、山下にとって一人アカペラのそもそもの始まりだった。その時の譜面をそのまま流用して、導入部にピアノ弾き語りを足して小品に仕立てられた曲。一人アカペラがレコードになった最初の作品で、山下もテクニカルな部分ではまだ習作の段階だが、とても好きな響きだという。山下が徹夜明けで眠り、夕方に起きた際、今が朝なのか夕暮れなのか、時間感覚を一瞬喪失した時に作られたモチーフ。
  4. きぬずれ  – (3:40)
    この曲もピアノ弾き語りの世界を膨らませた作品。作った当時はそれほど意識したわけではなかったが、今聴くとビーチ・ボーイズスマイリー・スマイル』あたりの空気に近いものがあるという。
  5. SOLID SLIDER  – (7:05)
    当時のいわゆるAORの線をねらった一曲。この時代はレコーディングに使える予算と時間が限られていたため、短時間で演奏をまとめやすい曲作りを心掛けていたという。いかにアイデアのあるリズム・パターンを考え出せるか、この曲もその典型だという。大村憲司によるギターソロは、ワンテイクで録音された。

クレジット[編集]

Recording Staff
Director : Ryuzo Kosugi
Recording & Re-mix Engineer : Tamotsu Yoshida
Musician Contractor : Kozo Araki
Recording Studio
Sound City 1st. & 2nd. Studio    RCA 1st. Studio
Onkio Haus 1st. & 2nd. Studio
Recording Date : Feb. 26 '77 〜Apr. 18 '77
 
※Notes
"Inenakatta Kotoba O" : Charly Callelo's Score was used in the brass parts of the interlude.
This composition was recorded in New York last year, but the recording was not issued.
So we made a new recording of it this time.
All Lyrics Written by Minako Yoshida except A-5,B-3 Written bu Tatsuro Yamashita.
All Songs Composed by Tatsuro Yamashita.
※thanks to Minako Yoshida for production coordinate.
All Songs Publoshed by © 1977 P.M.P.

CD:BVCR-17014[編集]

SPACY
山下達郎スタジオ・アルバム
リリース
録音 1977年2月26日 (1977-02-26)-4月18日
SOUND CITY 1st & 2nd
ONKIO HAUS 1st & 2nd
RCA 1st
ジャンル ロック
ポップス
レーベル RCA ⁄ BMGファンハウス
プロデュース 山下達郎
チャート最高順位
EANコード
ASIN B00005UD3T
JAN 4988017607299
テンプレートを表示

解説[編集]

2002年、“山下達郎 RCA/AIRイヤーズ 1976-1982”として、『CIRCUS TOWN[注 1]から『FOR YOU[注 6]までの7タイトルが山下監修によるデジタル・リマスタリング、および、自身によるライナーノーツと曲解説。CDには各タイトル毎に未発表音源を含むボーナス・トラック収録にて再度リイシューされた。本作には未発表音源を含む3曲をボーナス・トラックとして収録。また、本作を含むRCA/AIRイヤーズ対象商品7タイトル購入者に応募者全員への特典として、リマスター盤『COME ALONG』がプレゼントされた。

収録曲[編集]

  1. LOVE SPACE(ラブ・スペイス)
  2. 翼に乗せて
  3. 素敵な午後は
  4. CANDY(キャンディー)
  5. DANCER(ダンサー)
  6. アンブレラ
  7. 言えなかった言葉を
  8. 朝の様な夕暮れ
  9. きぬずれ
  10. SOLID SLIDER(ソリッド・スライダー)
    <Bonus Tracks>
  11. LOVE SPACE [カラオケ -Karaoke-] (未発表 -Previously Unreleased-)
    以前から要望の多かったというカラオケ。この時代にはカラオケなど一切作っていなかったので、再発盤への収録のためのリミックス。
  12. アンブレラ [別ヴァージョン -Alternate Version-] (未発表 -Previously Unreleased-)
    リズム・パターンの異なる別ヴァージョンで、演奏メンバーもアルバムに使われたタイプと異なる。こちらのテイクの方が先に収録されたが、意図した感じより少し重かったため、8ビートにリアレンジされたものが正規ヴァージョンとして収録された。元の音源はインストのみだったので、正規ヴァージョンからボーカル・トラックを抜き出してダビングされている。
  13. SOLID SLIDER [ショート・ヴァージョン -Short Version-]
    ベスト・アルバム『GREATEST HITS!』[注 7]収録の、元のマスターにウィスパーをかぶせて短くした、エディット・ヴァージョン。オールタイム・ベスト・アルバム『OPUS』[注 4]にも収録された。

クレジット[編集]

スタッフ[編集]

Produced & Arranged by 山下達郎
   except Horn Arrangement on “言えなかった言葉を” by CHARLES CALELLO
Production Co-odinater : 小杉理宇造
 
Recording & Mixing Engineer : 吉田保
Recording Studios: Sound City, Onkio Haus & RVC in Feb. 26〜Apr. 18 1977
Mixed at RVC & Onkio Haus
   except Track 11 & 12 Mixed at Planet Kingdom in Sep. 2001
 
CD Mastering Engineer : 原田光晴 (On Air Azabu)
 
Original Art Direction, Design, Photograph : 佐藤憲吉
CD Design : 高原宏 & 上原加代
 
Originally Released in 1977/06/25 as RCA RVL-8006

リリース履歴[編集]

# 発売日 リリース 規格 品番 備考
1 1977年6月25日 (1977-06-25) RCA / RVC LP RVL-8006 レーベルはメーカー共通のデザインを使用。
2 1977年6月25日 (1977-06-25) CT RCJ-1525
(JPKI-1066)
カセット同時発売。アナログLPと同内容。
3 1985年1月21日 (1985-01-21) CD RHCD-16 初CD化。
4 1986年8月15日 (1986-08-15) CD R32H-1031
5 1987年3月15日 (1987-03-15) CD R28H-2802 『Tatsuro Yamashita SPECIAL CD-BOX』(R28H-2801∼06)の一枚。
6 1990年8月21日 (1990-08-21) RCA / BMG VICTOR CD BVCR-7002 『TATSURO YAMASHITA ORIGINAL COLLECTION 1976-1982』(BVCR-7001∼06)の中の一枚。
7 1990年9月21日 (1990-09-21) CD BVCR-2501 ディスク表面のレーベルはメーカー共通のデザインを使用。
8 1997年6月4日 (1997-06-04) RCA / BMG JAPAN CD BVCR-1029
9 1999年5月21日 (1999-05-21) CD BVCK-37005 “RCA名盤選書オリジナル・アルバム紙ジャケット完全復刻シリーズ”の一枚。帯はオリジナルLPのデザインを復刻(表面のみ)。
10 2002年2月14日 (2002-02-14) RCA / BMG FUNHOUSE CD BVCR-17014 “TATSURO YAMASHITA THE RCA/AIR YEARS 1976-1982”の一枚。本人監修によるデジタル・リマスタリング + ボーナス・トラック3曲収録。ディスク表面のレーベルはオリジナル・デザインを使用。
11 2002年2月20日 (2002-02-20) LP BVJR-17002 THE RCA/AIR YEARS LP BOX 1976-1982』の一枚。本人監修によるデジタル・リマスタリング音源使用。レーベルはオリジナル・デザインを使用。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b c CIRCUS TOWN』 1976年12月25日 (1976-12-25)発売 RCA ⁄ RVC LP:RVL-8004
  2. ^ GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』 1997年6月4日 (1997-06-04)発売 AIR ⁄ BMG JAPAN CD:BVCR-1541
  3. ^ a b JOY』 1989年11月1日 (1989-11-01)発売 MOON ⁄ ALFA MOON 2CD:50MX-95/6
  4. ^ a b OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』 2012年9月26日 (2012-09-26)発売 MOON ⁄ WARNER MUSIC JAPAN 4CD:WPCL-11201/4【初回限定盤】, 3CD:WPCL-11205/7【通常盤】
  5. ^ 後に、デフ・ジャムの女性シンガーニコル・レイは、この曲のトラックをほぼそのまま使用して、同じくデフ・ジャムに所属しているビニー・シーゲルをフィーチャーした"Can't Get Out Of The Game"[3]というブレイクビーツ・ナンバーを2004年に制作した。「Can't Get Out Of The Game」はレイのファースト・アルバムとなるはずだった『Lovechild』に収録されたが、アルバムリリースが頓挫したため、公式にはリリースされていない。しかし、音源はネットでリークされ、DJらによるMix CDにも多数収録されている他、12インチのアナログシングル盤も存在しており、シングルB面には「Can't Get Out Of The Game (INSTRUMENTAL)」のタイトルで、「DANCER」がそのまま収録されている。
  6. ^ FOR YOU1982年1月21日発売 AIR ⁄ RVC LP:RAL-8801
  7. ^ GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』 1982年7月21日 (1982-07-21)発売 AIR ⁄ RVC LP:RAL-8803

出典[編集]

  1. ^ a b c d Tatsuro Yamashita - Spacy at Discogs Discogs. 2018年8月25日閲覧。
  2. ^ これは『Quick Japan No.62』(2005年10月12日発行、太田出版)に掲載された山下とサンボマスターのヴォーカル、山口隆との対談の中で、山口が表した言葉である。
  3. ^ Nicole Wray - "Hustler's Love" ft Beanie Sigel

外部リンク[編集]

SonyMusic

  • SPACY  – ディスコグラフィ

山下達郎 OFFICIAL SITE

  • SPACY  – Discography ALBUM