C級駆逐艦 (3代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
C級駆逐艦
HMS Carysfort.jpg
基本情報
種別 駆逐艦
命名基準 "C"で始まる英単語
(嚮導艦のみ海軍軍人名)
運用者  イギリス海軍
 カナダ海軍
 ノルウェー海軍
 パキスタン海軍
就役期間 イギリス 1944年 - 1972年
前級 Z級
準同型艦 Ca級Ch級Co級Cr級
次級 バトル級
要目
基準排水量 1,710トン
全長 110.56 m
最大幅 11.58 m
吃水 3.05 m
ボイラー 水管ボイラー×2缶
主機 蒸気タービン
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 40,000馬力
電源 タービン主発電機 (155 kW)×2基
停泊発電機 (50 kW)×2基
待機発電機 (10 kW)×1基
速力 36.75ノット
航続距離 4,070海里 (20kt巡航時)
燃料 重油615トン
乗員 186名 (嚮導艦のみ222名)
兵装 45口径11.4cm単装砲×4基
56口径40mm連装機銃×1基
70口径20mm連装機銃×4基
・53.3cm4連装魚雷発射管×2基
爆雷投射機×4基
・爆雷×70〜108発
FCS ・Mk.I タイプK方位盤 (Ca級)
・Mk.VI DCT方位盤 (Ch級以降)
FKC射撃盤 (対空用)
AFCC射撃盤 (対水上用)
レーダー ・291型 早期警戒用
293型 目標捕捉用
・275型 砲射撃指揮用
・282型 機銃射撃指揮用
ソナー ・144型 捜索用
・147型 攻撃用
電子戦
対抗手段
短波方向探知機 (HF/DF)
テンプレートを表示

C級駆逐艦英語: C-class destroyer)はイギリス海軍駆逐艦の艦級。1941年1942年度戦時予算に基づく第11〜14次戦時急造艦隊として、Ca級Ch級Co級Cr級の4グループ32隻が建造され、1944年から1945年にかけて就役した[1][2][3]

来歴[編集]

第二次世界大戦の勃発を受けてイギリス海軍戦時緊急計画を発動し、駆逐艦の急造に着手した。まず、1940-1年度計画で建造を予定していた中間的駆逐艦(J級に準じた設計)の建造を前倒ししてO級P級が建造されたのち、新しい戦時要求の反映や急造に適応した設計への変更が図られ、Q級R級S級T級と、1940年度戦時予算のもとで、6次にわたる戦時急造艦隊の建造が進められた[1]

1941年2月、1941年度戦時予算では、更に5次にわたる戦時急造艦隊の建造が盛り込まれることとなった。U級V級W級Z級に続き、最後の1941年度艦たる第5陣(戦時急造艦隊としての通算では第11陣)として、1942年2月16日に発注されたのがCa級である[1]

そして1942年度戦時予算では、戦時急造艦隊の掉尾を飾る艦として、3グループ24隻が建造されることとなった。これがCh級・Co級・Cr級である[1]

設計[編集]

基本的にはZ級の準同型艦であり、J級以来の単煙突・船首楼型という船型のほか、Q級で導入された燃料搭載量の増大や復原性の改善、艦尾のトランサム・スターン、またS級で導入されたトライバル級と同様の艦首形状も踏襲された[1][3]

機関もQ級・R級以来の構成が踏襲され、アドミラルティ式3胴型水管ボイラー(蒸気圧力300 psi (21 kgf/cm²)、温度332.2℃)、パーソンズ式オール・ギヤード・タービンによる2軸推進、出力40,000馬力である[4]

装備[編集]

センサー[編集]

イギリス海軍では、1940年7月よりレーダーの艦載運用に着手してきた。しかしこの画期的なセンサーから得られる膨大な情報を適切に作戦行動に反映するためには、艦内組織にも変革が求められた。まず導入されたのが、レーダーを含む目標情報を集中処理する区画としてのAIO(Action Information Organisation)であった。これはバトル・オブ・ブリテンでの国土防空に成果を上げたフィルター・ルーム・コンセプトに範を取ったものであり、またアメリカ海軍のCIC(Combat Information Centerと軌を一にしたものでもあった。また、特に高精度の293型レーダーの実用化に伴い、これで捕捉した目標情報を射撃指揮に直接活用するためのTIU-2(Target Indication Unit)も開発され、1944年6月以降の竣工艦で装備されるようになり、その専用区画としてTIRが設置された。そしてまた、通信・通信傍受情報を処理するQD区画も実装されるようになっていった[1]

本級は、戦時急造艦隊としては初めて、これらの情報処理システムを完全に実装した艦級となり、このために第二次世界大戦直後、15型16型のような大規模改修が実現するまでの間は、他の戦時急造艦隊よりも優れた艦として扱われていた。ただしCa級のうち、1944年7月以前に竣工した「カンブリアン」「カプリス」「カサンドラ」ではAIOのみの装備となった[1]

武器システム[編集]

艦砲としては、Z級で装備化された45口径11.4cm砲(QF 4.5インチ砲Mk.IV)と、最大仰角55度の単装砲架であるCP Mk.Vの組み合わせが踏襲された。また射撃指揮装置もZ級と同様に「Kタワー」ことK Mk.I方位盤が搭載され、方位盤から油圧サーボ弁を操作しての砲架の遠隔操縦が可能とされた。そしてCh級以降では、イギリス初の完全な両用方位盤であるMk.VI DCTが搭載された[1]。また戦後、Ca級でもデアリング級と同じMk.6M方位盤への換装が行われた[5]

近距離用の対空兵器としては、S級以降標準となったヘイズメイヤー式のFCS連動56口径40mm連装機銃1基が基本構成とされていたが、「カプリス」では56口径40mm連装機銃のかわりに39口径40mm4連装機銃(2ポンド・ポンポン砲)を搭載した。またこれを補完するため、Ca級のうち「カッサンドラ」以外の艦は39口径40mm単装機銃を、Ch級では「チーフテン」「シバラス」「チャイルダース」は56口径40mm単装機銃を、Co級では「コメット」は70口径20mm連装機銃2基と70口径20mm単装機銃2基を、「コンコード」「コーマス」「コンソート」は56口径40mm単装機銃2基を、それ以外の艦は39口径40mm単装機銃2基を搭載した[1]

なお対艦兵器としては21インチ4連装魚雷発射管2基が予定されていたが、Ch級以降では、Mk.VI DCT方位盤を搭載するための代償重量として、4連装魚雷発射管は1基のみとなった[1]

同型艦[編集]

C級駆逐艦は一個小艦隊Flotilla)を編成する8隻毎に1バッチとして発注され、その8隻のうちの2隻は駆逐艦戦隊(Squadron)を率いる嚮導駆逐艦とされた。

また、それまでのイギリス海軍の嚮導駆逐艦は、艦名に海軍軍人の名を用いる慣例があったが、本級からはその慣例はなくなった。

※印付きの艦は、嚮導駆逐艦を表す。

Ca級[編集]

近代化改修後の「カサンドラ」(1964年撮影)
閉鎖化された艦橋と、後部に追加された上部構造物に注目

Ca級は、終戦近くに就役しており、終戦後間もなく予備役編入された。1953年から1960年にかけて以下の近代化改修が行われた[6]

  • 3番砲塔(X砲塔)を、スキッド対潜迫撃砲×2基に換装。
  • 後部の4連装魚雷発射管と爆雷を撤去。
  • 残る3基の砲塔に、遠隔機力操作機能を付与。
  • 2連装ボフォース40mm機関砲を新型のMk5連装砲架に換装。
  • 艦橋を、12型フリゲートと同型の閉鎖式艦橋に改修(「シーザー」「カンブリアン」「カプリス」「カサンドラ」のみ)

さらに1963年には、「キャヴァリア」と「カプリス」に限り、GWS-20 シーキャットPDMSの4連装発射機を1基追加した[6]

Ca級は1960年代後半から1970年代前半に退役したが、「キャヴァリア」のみが1977年10月よりケント州チャタムチャタム工廠にて博物館船として展示されている。

# 艦名 造船所 起工 進水 就役 その後
R01
D10
カプリス
HMS Caprice
ヤーロウ
スコッツタウン造船所
1942年
9月28日
1943年
9月16日
1944年
4月5日
1959年に近代化改修実施、1973年退役、1979年に解体。
R62
D10
カサンドラ
HMS Cassandra
1943年
1月3日
1943年
11月29日
1944年
7月28日
1960年に近代化改修実施、1966年1月退役、1967年に解体。
R07
D07
シーザー
HMS Caesar
ジョン・ブラウン
クライドバンク造船所
1943年
4月3日
1944年
2月14日
1944年
10月5日
1957年-1960年に近代化改修実施、1965年6月退役、1967年に解体。
R15
D15
キャヴェンディッシュ
HMS Cavendish
1943年
5月19日
1944年
4月12日
1944年
12月13日
1956年に近代化改修実施、1964年退役、1967年に解体。
R85
D85
カンブリアン
HMS Cambrian
スコッツ英語版
グリーノック造船所
1942年
8月14日
1943年
12月10日
1944年
7月14日
1963年に近代化改修実施、1968年12月退役、1971年に解体。
R30
D30
カロン
HMS Carron
1942年
11月26日
1944年
3月28日
1944年
11月6日
1955年8月に近代化改修実施、1963年に練習艦に転用、1967年に解体。
R25
D25
カリスフォート
HMS Carysfort
J・サミュエル・ホワイト英語版
カウズ造船所
1943年
5月12日
1944年
7月25日
1945年
2月20日
1956年に近代化改修実施、1969年2月退役、1970年に解体。
R73
D73
キャヴァリア
HMS Cavalier
1943年
2月28日
1944年
4月7日
1944年
11月22日
1957年に近代化改修実施、1972年7月退役
1977年10月より博物館船として展示。

Ch級[編集]

「チルダース」。1945年12月撮影。

Ch級は1943年に起工されたが、8隻とも就役は日本の降伏後であったため、実戦投入前にWW2は終戦となった。

1950年代に2隻がパキスタン海軍に売却されたが、うち1隻が第三次印パ戦争においてインド海軍ミサイル艇の攻撃により大破し、沈没こそ免れたものの解体された。

# 艦名 造船所 起工 進水 就役 その後
R52 チャプレト
HMS Chaplet
ソーニクロフト
ウールストン造船所
1943年
4月29日
1944年
7月18日
1945年
8月24日
1961年退役、1965年スクラップとして売却
R29 チャリティ
HMS Charity
1943年
7月9日
1944年
11月30日
1945年
11月19日
1958年12月16日付でパキスタン海軍へ移管され「シャー・ジャハーン(PNS Shar Jehan)」に改名。
第三次印パ戦争中の1971年12月4日、カラチ沖にてインド艦隊を迎撃し交戦。
この際、インド海軍ミサイル艇の攻撃を受け大破、解体される。
R61 チェッカーズ
HMS Chequers
スコッツ英語版
グリーノック造船所
1943年
5月4日
1944年
10月30日
1945年
9月28日
1964年退役、1966年に解体
R36 チーフテン
HMS Chieftain
1943年
6月27日
1945年
2月26日
1946年
3月7日
1961年に解体
R51 シェヴロン
HMS Chevron
アレクサンダー・
スティーブンス
英語版

リンソース造船所
1943年
3月18日
1944年
2月23日
1945年
8月23日
ロサイスにて宿泊艦として使用、1969年に解体。
R90 チェヴィオット
HMS Cheviot
1943年
4月27日
1944年
5月2日
1945年
12月11日
1960年よりロサイスにて港湾練習艦として運用。1962年に解体。
R91 チルダース
HMS Childers
ウィリアム・デニー英語版
ダンバートン造船所
1943年
11月27日
1945年
2月27日
1945年
12月19日
1958年退役、1963年に解体。
R21 シヴァリス
HMS Chivalrous
1943年
11月27日
1945年
6月22日
1946年
5月13日
1954年6月29日付でパキスタン海軍へ移管。「ティムール(PNS Taimur)」に改名。
1961年に解体。

Co級[編集]

「コーマス」(1946年6月28日撮影)

Co級はCh級と同様に1943年に起工されたが、その就役はWW2終戦に間に合わなかったため、WW2には参加していない。

本級はCa級と同様に全艦がイギリス海軍で運用され、外国への譲渡は行われなかったが、1950年代末から1960年代初めに退役した。

# 艦名 造船所 起工 進水 就役 その後
R43 コーマス
HMS Comus
ヤーロウ 1943年
8月21日
1945年
3月14日
1946年
7月8日
1958年スクラップとして売却
R63 コンコード
[注 1]
HMS Concord
ソーニクロフト 1943年
11月18日
1945年
5月14日
1946年
12月20日
ロサイスにて停泊練習艦として運用。
1962年スクラップとして売却
R12 コンテスト
HMS Contest
J・サミュエル・
ホワイト
英語版
1943年
11月1日
1944年
12月16日
1945年
11月9日
1960年スクラップとして売却
R76 コンソート
HMS Consort
アレクサンダー・
スティーブンス
英語版
1943年
5月26日
1944年
10月19日
1946年
3月19日
1961年スクラップとして売却
R34 コッケード
HMS Cockade
ヤーロウ 1943年
3月11日
1944年
3月7日
1945年
9月29日
1958年退役、1964年に解体
R26 コメット
HMS Comet
1943年
6月14日
1944年
6月22日
1945年
6月6日
1958年退役、1962年に解体
R71 コンスタンス
HMS Constance
ヴィッカース・
アームストロング
1943年
3月18日
1944年
8月22日
1945年
12月31日
1956年スクラップとして売却
R57 コサック
HMS Cossack
1943年
3月18日
1944年
5月10日
1945年
9月4日
1961年スクラップとして売却

Cr級[編集]

Cr級は1943年から1944年にかけて8隻が起工されたが、いずれも就役は日本の無条件降伏後であり、WW2に参加する機会はなかった。

また、就役前に6隻が外国(ノルウェーへ4隻、カナダへ2隻)へ譲渡されたほか、残る2隻も1958年にパキスタン海軍に譲渡された。

運用者 # 艦名 造船所 起工 進水 就役 その後
 カナダ海軍 R16 クレセント
HMCS Crescent
ジョン・ブラウン 1943年
8月16日
1944年
7月20日
1945年
8月21日
1945年1月付でカナダ海軍へ貸与(1951年に売却)。
1953-56年に高速対潜フリゲートへ改修。1971年に解体。
R20 クルセーダー
HMCS Crusader
1943年
11月15日
1944年
10月5日
1945年
11月26日
1945年にカナダ海軍へ貸与(1951年供与)。
1960年1月15日退役、1964年スクラップとして売却。
 イギリス海軍 R68 クリスピン
HMS Crispin
J・サミュエル・
ホワイト
英語版
1944年
2月1日
1945年
6月23日
1946年
7月10日
1958年3月18日付でパキスタン海軍へ移管。「ジャハーンジル(PNS Jahangir)」へ改名。
1982年に解体。
R82 クレオール
HMS Creole
1944年
8月3日
1945年
11月22日
1946年
10月14日
1958年6月20日付でパキスタン海軍へ移管。「アラムジル(PNS Alamgir)」へ改名。
1982年に解体。
 ノルウェー海軍 D305 トロンハイム
KNM «Trondheim»
[注 2]
ヤーロウ 1943年
10月26日
1944年
8月19日
1945年
11月30日
1945年にノルウェー海軍へ移管。
1961年に解体。
D306 スタヴァンゲル
KNM «Stavanger»
[注 3]
1944年
1月13日
1945年
2月12日
1946年
2月6日
1945年にノルウェー海軍へ移管。
1967年に解体。
D304 ベルゲン
KNM «Bergen»
[注 4]
スコッツ英語版 1943年
11月24日
1945年
8月6日
1946年
9月16日
1946年にノルウェー海軍へ移管。
1967年に解体。
D303 オスロ
KNM «Oslo»
[注 5]
1944年
1月16日
1945年
12月19日
1947年
4月17日
1945年にノルウェー海軍へ移管。
1968年に解体。

脚注[編集]

  1. ^ 建造当初の艦名はコルソ(HMS Corso)であったが、進水後の1946年6月に改名。
  2. ^ 建造当初の艦名はクロージアーズ(HMS Croziers, R27)。
  3. ^ 建造当初の艦名はクリスタル(HMS Crystal, R38)
  4. ^ 建造当初の艦名はクロムウェル(HMS Cromwell, R35)
  5. ^ 建造当初の艦名はクラウン(HMS Crown, R46)

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j Norman Friedman (2012). “The War Emergency Destroyers”. British Destroyers & Frigates: The Second World War & After. Naval Institute Press. pp. 86-107. ISBN 978-1473812796. 
  2. ^ Roger Chesneau, Robert Gardiner (1980). Conway's All the World's Fighting Ships 1922-1946. Naval Institute Press. pp. 42-43. ISBN 978-0870219139. 
  3. ^ a b 中川務「イギリス駆逐艦史」、『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、 108-109頁、 ISBN 978-4905551478
  4. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、 164-171頁、 ISBN 978-4905551478
  5. ^ 高須廣一「兵装 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、 172-179頁、 ISBN 978-4905551478
  6. ^ a b Sandy McClearn (1997-2006). “CAVENDISH (CA) Class destroyer” (英語). 2017年4月1日閲覧。

関連項目[編集]

  • ウィキメディア・コモンズには、C級駆逐艦 (3代)に関するカテゴリがあります。