ポテトチップス
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 2,318 kJ (554 kcal) |
54.7 g | |
食物繊維 | 4.2 g |
35.2 g | |
飽和脂肪酸 | (3.86) g |
一価不飽和 | (14.47) g |
多価不飽和 | (14.41) g |
4.7 g | |
ビタミン | |
チアミン (B1) |
(23%) 0.26 mg |
リボフラビン (B2) |
(5%) 0.06 mg |
ナイアシン (B3) |
(29%) 4.3 mg |
パントテン酸 (B5) |
(19%) 0.94 mg |
葉酸 (B9) |
(18%) 70 μg |
ビタミンC |
(18%) 15 mg |
ビタミンE |
(41%) 6.2 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(27%) 400 mg |
カリウム |
(26%) 1200 mg |
カルシウム |
(2%) 17 mg |
マグネシウム |
(20%) 70 mg |
リン |
(14%) 100 mg |
鉄分 |
(13%) 1.7 mg |
亜鉛 |
(5%) 0.5 mg |
銅 |
(11%) 0.21 mg |
他の成分 | |
水分 | 2.0 g |
水溶性食物繊維 | 1.1 g |
不溶性食物繊維 | 3.1 g |
ビオチン(B7) | 1.6 µg |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[2]。 | |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
ポテトチップス (potato chips) は、ジャガイモを薄切りにして冷水で短時間さらした後、高温の油で軽く色づくまで揚げ[3]、それを塩や香辛料で味付けしたスナック菓子のこと。ポテトチップ とも呼ばれる。日本では「ポテチ」「チップス」などと省略される場合がある。
目次
呼称[編集]
アメリカ英語ではポテトチップス(米: potato chips)。イギリス英語・アイルランド英語ではクリスプス(英: crisps)。
なお、イギリス英語でチップス(英: chips)は、アメリカ英語でのフレンチフライ(米: french fries)を意味する。これが「フィッシュ・アンド・チップス」の「チップス」が日本の「ポテトチップス」ではなく「フライドポテト」に相当する理由でもある。
歴史[編集]
アメリカ合衆国ニューヨーク州サラトガ・スプリングズのレストラン Moon Lake Lodge のシェフ、ジョージ・クラムによって1853年8月24日に発明された、という説が有力である[4]。
ある日、クラムの客(一説によれば、アメリカ屈指の大富豪コーネリアス・ヴァンダービルトだという[5])が、フライドポテトが厚すぎると苦情を言って、何度も作り直しをさせた。うんざりしたクラムは、フォークで刺せないような薄切りにしてカリカリに揚げ、客を困らせてやろうと考えた。しかし、クラムの企ては失敗し、この客は逆に大変に喜んだ[6]。
この料理はすぐにサラトガ・チップス (Saratoga Chips) という名でレストランのメニューに登場し、その後すぐにこの料理はニューイングランド地方でごく一般的なものになった。このようにもともとポテトチップスは料理の付け合せなど食事の一部として提供されるものであった。そのときの方法はケトルフライ(釜揚げ)法という。
1900年代になるとアメリカでは多くのポテトチップス製造業者が誕生し、食料品店などで樽や瓶に入ったポテトチップスが量り売りされるようになっていた。この販売方法ではポテトチップスがすぐにしけってしまう問題があったが、1920年代にワックスペーパーで密封した小袋入りの鮮度を保ったポテトチップスが販売されるようになった。
1950年代にはTayto社がポテトチップスの製造工程で味付けする技術を発明し、世界初の味付けポテトチップが販売された[7]。
現在、日本では、日本で生産されるジャガイモの15%が、ポテトチップスへと加工されている[8]。
一般的な製法[編集]
じゃがいもをスライサー(薄切り器)で薄切りにし、冷水に10分ほど漬けた後、水分を手早くふき取る。高温の揚げ油で熱し、キツネ色になったら油の中から出し、熱いうちに塩やその他の香辛料など調味料で味付けする。
成型ポテトチップス[編集]
じゃがいもを低温で長期保存すると、グルコースなどの還元糖が増えることにより、揚げた色が悪くなることが多いため、原料の保存に依らない製法が模索されていた。やがて、じゃがいもをフレーク状に乾燥させて長期保存を可能にする技術が発明されたため、それを用いた生地に調味料などを混ぜ、形を整えて揚げたポテトチップスがP&G社によって開発され、1967年に「Pringles Newfangled Potato Chips」という商品名で売り出した(翌年「プリングルズ」に改名)。
これは成型ポテトチップス(ファブリケーテッド・ポテトチップス)と呼ばれ、揚げ上がり後の形状も統一出来るため、一枚一枚を隙間無しに一列密着で包装出来る利点がある。
日本では1976年にヤマザキナビスコ(現・ヤマザキビスケット)が「チップスター」を発売[9]。1978年にハウス食品工業(現・ハウス食品)が「ハウスポテトチップス」、ヱスビー食品(エスビー食品(読みは同じ))が「スナックチップ」を発売。さらにヱスビーは1979年に一口サイズで箱入りの「5⁄8チップ(はちぶんのごチップ)」を発売した。
業界最大手のカルビーは、1998年にドイツの菓子メーカーLorenz Snack-Worldの「チップスレッテン」を発売(一年で撤退)[10]、2016年に「ポテトチップスクリスプ」を発売した[11]。
P&Gは税率の関係で「プリングルズ」は英国法においてはポテトチップスではないと主張している(詳細はプリングルズ#イギリスにおける法闘争を参照)。
揚げないポテトチップス[編集]
じゃがいものスライスをオーブンなどで乾燥し焼き上げれば、揚げたポテトチップスと似た食感だが大幅に低カロリーなポテトチップスが作れる。電子レンジで手軽に同様の調理が可能になる器具が日本では市販されている。製菓会社でも油脂分を減らす試みは行われているが、湿気を吸いやすいことや食感・風味の問題などでノンオイルのポテトチップスを商品化するのは難しい。しかし、2010年代に入って、揚げたポテトチップスのような食感と味を持つノンフライポテトチップスが日本で登場している。価格は高めだが低カロリーである[12]。
健康上の問題[編集]
油で揚げたポテトチップスはスナック菓子の中でも高カロリーであり、肥満やメタボリック症候群、それに伴う疾患の要因になりうる。また調味料の塩分も多い。揚げる油の種類によってはトランス脂肪酸などの有害物質を過剰摂取する危険性がある。
発がん性物質の存在[編集]
2002年にスウェーデン政府がイモ類を高温で焼いた、あるいは揚げた食品中にアクリルアミドが含有されていることを発表した。その後の研究で量の多少はあるが焼いたり揚げたりした食品にはアクリルアミドが含有されていることが明らかとなった。WHOの下部組織IARCはアクリルアミドは発癌性が強く疑われると評価している(IARC発がん性リスク一覧を参照)。
フレーバーと日本での発達[編集]
ポテトチップスの本場アメリカ合衆国では、プレーン(塩)、ガーリック、BBQ(バーベキュー)、サワークリーム、オニオン、ケチャップなどとフレーバーは比較的限られている。
日本では、太平洋戦争終結後に帰国したハワイ移民の濱田音四郎(1911年生[13])が、昭和20年代にアメリカン・ポテトチップス社を設立したことが始まりとされている。当初は進駐軍にしか売れなかったが、食糧難の日本人にも次第に受け入れられた。ハワイの歌舞に由来する、このフラ印ポテトチップスはソシオ工房(東京)により販売が継続されている[13]。
食文化が多様化した現代日本のポテトチップスは、コンソメ風味、醤油味、のり(特に青のりを使った「のり塩」)、わさび、唐辛子味、鰹節味などと実に多くのバリエーションが発売されている。こうした変わりポテトチップスの開発に特に精力的なのが山芳製菓で、わさビーフ、濃厚ポタージュ味、濃厚コンソメ味、濃厚めんたい味、マヨビーフなど数十種ある。1975年からはカルビーや湖池屋などの大手メーカーも様々な工夫を行っている。地方企業による独自製品も多い[14]。
イギリスでは、Walkersなどの大手メーカーから、Ready Salted(ソルト)、Cheese & Onion(チーズとオニオン)、Salt & Vinegar(ソルトとヴィネガー) などが主に発売されている。
じゃがいも以外のチップス[編集]
じゃがいも以外の野菜や果物などを概ね同じ製法で加工するチップスがある。日本内外でポピュラーなのは、バナナをスライス・乾燥させ揚げたバナナチップスである。じゃがいもに比べて歯ごたえが柔らかいため比較的厚くスライスされる。チップスに使われるバナナはデンプンが多い種類のため甘味は少ないが、ポテトチップスとは違い砂糖などでコーティングし甘味をつけるのが普通である。
日本ではサツマイモのチップスも食べられている。製法は芋けんぴと類似している。じゃがいものチップスに比べると固い。
その他、レンコン、カボチャ、リンゴ、日本以外ではタロイモやパンノキ、ドリアンなど様々な野菜・果物のチップスが存在する。デンプンが少ない素材(例えばニンジンやゴボウなど)は通常の乾燥方法ではクリスピーな食感が得られないため、フリーズドライにしてから揚げる場合がある。
関連項目[編集]
- カウチポテト族
- こめ油
- アクリルアミド(イモ類を高温で処理した際に生じる発ガン性が疑われる物質)
- カルビー - 主に“カルビー ポテトチップス”として展開
- 湖池屋 - 主に“コイケヤ ポテトチップス”として展開
- 山芳製菓 - 主力商品はわさビーフ。その他、個々のブランドで展開
- ハウス食品 - “オーザック”として展開
- ヤマザキビスケット - “チップスター”等のブランドで展開
- 日本ケロッグ/森永製菓[15] - ポテトチップス風のポテトスナック菓子“プリングルズ(プリングルス)”として展開(日本)
- ポテトチップスパン - 神奈川県横須賀市のパン屋で売っている商品[16]
脚注[編集]
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ 日高達太郎訳 「ラルース・フランス料理小事典」 柴田書店
- ^ “Potato Chips” (英語). snopes.com (2007年2月25日). 2016年10月16日閲覧。
- ^ ポテトチップスとヴァンダービルトの関係は各所で語られている。
- ^ BBC h2g2 Potato Crisps - A History(英語)
- ^ Joe 'Spud' Murphy: The Man Who Gave Potato Chips Flavor
- ^ ありえへん∞世界 テレビ東京 2018年1月16日放送
- ^ チップスターの歴史 - ヤマザキビスケット
- ^ カルビーが「成型ポテトチップス」の開発を止めなかった理由ITmedhiaビジネス 2016年10月15日
- ^ ニュースリリース 『ポテトチップス クリスプ うすしお味/コンソメパンチ』 - カルビー株式会社
- ^ “ノンフライシリーズ”. 2016年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月16日閲覧。 湖池屋公式サイト
- ^ a b Hula'sブランドについてソシオ工房
- ^ 【なんでもランキング】大人のポテチとまらない『日本経済新聞』NIKKEIプラス1(2017年10月7日)
- ^ 2012年12月以前はP&Gジャパン/明治が日本における販売総代理店となっていた。
- ^ ポテトチップスパンでおなじみ!横須賀 久里浜 ワカフジベーカリー