チューニョ

チューニョ(西: Chuño)は、アンデス山脈の先住民が保存食として用いる乾燥させたジャガイモである。アンデス山脈の高地の昼夜の寒暖差を利用して作り、乾燥によって、元よりも小さく軽いコルク状になっている[1]。製造法は現在のフリーズドライに近い[2]。
同様のものが日本でも北海道・東北地方を中心に作られており、十勝地方では「しばれ芋」、山梨県鳴沢村では「凍み芋」という[3]。
来歴
[編集]野生種を含むジャガイモはソラニン等人体に有毒な成分を含む種類が多く、チューニョへの加工は保存と共に毒抜きを兼ねている[1]。ソラニンは液胞の中に存在するため、水分を抜くことによって有毒成分も流出させることができる[1]。また、乾燥により腐らず数年間保存がきくようになって貯蔵性が高まり、輸送も容易になり交易品にもされた[4]。
ペルーでは、チューニョをかたどったモチェ文化の土器が出土している[4] [5]。また、インカ帝国について記録したスペイン人たちは、ジャガイモが主食であったことや、チューニョが食されていたことを記録している[6]。
作り方
[編集]チューニョ作りは、一日の気温変化が激しい乾季(アンデス高地において4月から9月)、中でも最も湿度が低く、一日の気温変化が最大になる6月頃に行われる[1]。この時期には、日中の日差しが強い一方、夜間は氷点下5,6度まで冷え込むため、屋外にジャガイモを広げて放置しておくと、夜には凍結し、昼には解凍される[1]。これを約1週間繰り返し[7]、ブヨブヨした柔らかい状態になったジャガイモを足で踏むことによって水分を搾り取り、さらに自然乾燥させることで完成する[1]。このチューニョは黒いが、さらに水に20日間ほどさらしてから乾燥させると白チューニョ(モラヤ、トゥンタ[8][2])となる[7]。この加工の際には、朝強烈な霜が降りるような寒冷な気候と、白チューニョづくりにおいては冷水が欠かせないため、アンデスに通った写真家の高野潤は、加工可能な地域の範囲をペルーのフニン県からボリビアのオルロ県北部あたりと推定している[9]。
山岳地帯の寒冷高地が適しているため[5]、日本で夏に冷凍庫を使いながら加工した場合に、発酵が起こってアンモニア臭を発した失敗例がある[10]。
食べ方
[編集]湯に入れてもどし[11]そのまま調理して食べるほか、バタン(:es:Batán)という大型の石の台と半月型のマランという石を使ってすりつぶし、粉にして料理に使う[7]。粉を使った粥のようなスープは、チューニョ・ラワや、モラヤ・ラワという[7][12]。
ボリビアでは次のような料理に用いられる。
参考文献
[編集]- 山本紀夫『ジャガイモのきた道』岩波書店、2008年。ISBN 9784004311348。
- 高野潤『インカの食卓:古代から続く大地の恵み』平凡社、2011年。ISBN 9784582835458。
脚注
[編集]- 1 2 3 4 5 6 山本 2008, pp. 12–22
- 1 2 国立民族学博物館Archives「みんぱっく アンデスの玉手箱 ペルー南高地の祭りと生活」( 2024年11月11日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ↑ 浅間和夫. “ポテトのミイラチューニョ(冷凍乾燥イモ、しばれいも、しみいも、すみいも)”. ジャガイモ博物館. 2026年6月29日閲覧。
- 1 2 山本 2008, pp. 37–40
- 1 2 山本紀夫「第4章 開花する農耕文化 : 農耕の発達」『国立民族学博物館調査報告』第117巻、国立民族学博物館、2014年3月24日、137,139,148-149頁。 土器の写真掲載あり
- ↑ 山本 2008, pp. 52–55
- 1 2 3 4 高野 2011, pp. 16–19
- 1 2 3 4 ジュディス・ロペス・U、インティ・タピア・ロペス 著、藤田護 訳「第56章 ボリビアの食文化」『ボリビアを知るための65章』(第3版)明石書店、2025年、316-320頁。ISBN 9784750358734。
- ↑ 高野 2011, pp. 72–74
- ↑ “アンデスの乾燥ジャガイモ、チューニョ(チーニョ?)を作る”. 私的標本:捕まえて食べる (2018年2月9日). 2026年6月30日閲覧。
- ↑ 広瀬香代子『中南米のエスニック料理入門』千早書房、1990年、66-67頁。NDLJP:13297550/35
- ↑ 高野 2011, p. カラー写真「伝統的なラワとラワ風料理」
- ↑ JICA海外協力隊の世界日記「#123 ~ボリビアの家庭料理フリカセを作ろう!!~【野菜栽培/鈴木】」( 2026年4月9日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ↑ 高野 2011, p. カラー写真「多彩なスープ」
- ↑ “第26回 in ボリビア トリプル炭水化物のがっつり系郷土料理”. JICA (2025年8月). 2026年6月30日閲覧。
- ↑ 佐藤光代「ボリヴィアの食生活状況」『国際協力研究』第6巻第2号、国際協力機構国際協力総合研修所、1990年10月、106頁。NDLJP:2862220/55
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 【アンデス民族学画像コレクション】チューニョ(凍結乾燥ジャガイモ)作り – 南山大学人類学博物館