タガメ

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タガメ
タガメ
伊丹市昆虫館での展示
保全状況評価
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト
Status jenv VU.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目 : カメムシ亜目(異翅亜目)
Heteroptera
下目 : タイコウチ下目 Nepomorpha
上科 : タイコウチ上科 Nepoidea
: コオイムシ科 Belostomatidae
亜科 : タガメ亜科 Lethocerinae
: タガメ属 Lethocerus
: タガメ L. deyrollei
学名
Lethocerus deyrollei
(Vuillefroy, 1864)
和名
タガメ(田亀、水爬虫)
英名
Giant water bug

タガメ(田鼈、水爬虫)は、カメムシ目(半翅目)コオイムシ科タガメ属に分類される昆虫水生昆虫水生カメムシ類)の一種。カメムシ(半翅目)および[その他 1]水生昆虫としては日本最大級である[RDB 1][注釈 1]

高野聖」の異名で呼ばれる場合がある[その他 2]。日本の一般的な水生昆虫で学術的にも貴重な種だが、現在は絶滅が心配される昆虫となっている[RDB 1]

分布[編集]

日本では日本列島各地(北海道・本州・四国・九州・南西諸島)に分布するが、北海道では古い記録がない一方で近年になって増加しているため、人為的な移入の可能性がある[書籍 1]琉球列島では沖縄本島石垣島西表島から記録されていたほかに最近では与那国島からも発見された[RDB 1]。国外では台湾朝鮮半島中国 - インドシナまでの東南アジアロシア極東南部に分布する[書籍 1]。なお中国では漢方薬の原料として用いられるほか、国内では佃煮にされていた地方もあった。

特徴[編集]

タガメ

成虫の体長は48mm - 65mm[RDB 1]。♀の方が大型で[RDB 1]、♀は体長60mm以上の個体も少なくないが♂は最大でも57mm - 58mm程度で、体長55mm以下の個体が多い[書籍 2]

体色は暗褐色で、若い個体には黄色と黒の縞模様がある。コオイムシに似るが、本種の方が遙かに大型であり、尻の呼吸管があることで識別できる。前肢は強大な状で、獲物を捕獲するための鋭い爪も備わっている。中・後肢は扁平で、遊泳のために使われる。

生態[編集]

水田・水田脇の堀上など生物の生息密度が高く[書籍 3]水草が豊富な止水域に好んで生息する[書籍 4]。池沼にも生息するが[書籍 5]、タガメなど獲物を待ち伏せて捕食する水生昆虫にとっては水深が5cm - 20cm程度の浅い水深の方が適している[書籍 3]

タガメはカブトムシなどと同様に純自然的な環境ではなく、むしろ人の手の加わったいわゆる里山で繁栄してきた昆虫である。彼らにとって、自然の河川や湖沼は流速や水深がしばしば過剰であり、獲物となる適当な大きさの水生小動物も相対的に少ないため、人工的な水域である水田堀上(温水のための素掘りの水路)・用水路などに最も好んで生息する。

行動[編集]

魚類・ゲンゴロウ類などのように素早く泳ぐことはできず、水草・杭・流木などの足場に斜め下向きか逆向きの状態で掴まって静止していることが多い[書籍 6]。自然下において人間が接近しても逃げたり隠れたりはせず・広げていた前脚を縮めてそのままじっとしていることが多く、直接体に触れたり、足場となっている水草を動かしたりすると慌てて逃げ出す[書籍 6]。都築裕一はこのタガメの生態を「枯葉のような体形・地味な色をしたタガメは下手に泳いで鳥類などの天敵から逃げ隠れるより、周囲に紛れてじっとしているほうが天敵に発見されにくいためだろう」と推測しており[書籍 7]、実際に自然下で越冬した個体は全身に泥・藻類が付着していることが多い[書籍 7]

ミズカマキリなどに比べ、基本的にあまり飛行しない昆虫だが、繁殖期には盛んに飛び回り(近親交配を避けるためと考えられる[要出典])、灯火に集まる走光性もあってこの時期は夜になると強い光源に飛来することが多い。飛行の際には前翅にあるフック状の突起に後翅を引っ掛け、一枚の羽のようにして重ね合わせて飛ぶ。この水場から水場に移動する習性から、辺りには清澄な池沼が多く必要で、現代日本においてその生息域はますます狭められることとなっている。

摂食活動[編集]

成虫・幼虫とも獲物を待ち伏せて襲い掛かり捕食する肉食性昆虫で、目の前で動いている捕獲可能なもの[書籍 8](捕食可能な大きさの獲物)[書籍 9]ならば何でも襲い掛かって捕食する[書籍 8]。かつてはドジョウフナなど淡水魚が水田におけるタガメの重要な餌で[書籍 10]、1980年代ごろまでは日本各地の棚田でドジョウのいる水田が残っていたためタガメに食い殺されたドジョウの死体を多数目にすることができたが[書籍 8]、ドジョウ・フナが水田から姿を消した近年ではカエル類がタガメにとって最も重要な餌となっており[書籍 10]、その種類はトノサマガエルシュレーゲルアオガエルニホンアマガエルなどである[書籍 9]。このほか水田に餌が少ない時はカブトエビを捕食したり、小川の水草の中に潜んで川の小魚[書籍 10]カワムツ)などを捕食する場合もあるほか、ギンヤンマの幼虫など大型のヤゴ類を含めた水生昆虫も食べる[書籍 8]。これらのような無脊椎動物・魚類両生類だけでなく[書籍 8]、時にはヒバカリヤマカガシの幼体など[書籍 9]爬虫類ヘビ[書籍 8][書籍 9][書籍 11][その他 3]カメをも捕食する場合がある[書籍 12]。陸生の肉食性昆虫には他の昆虫・クモ類を捕食するカマキリ・スズメバチなどがいるが、魚類・両生類ばかりか時には爬虫類といった脊椎動物を常食する昆虫はタガメ類以外にはほとんど例がない[書籍 8]ネズミ等の小型哺乳類[要出典]をも捕食する。獲物を捕食する方法は「鎌状の前脚で捕獲した直後に針状の口吻を突き刺し、吐き出した消化液を送り込んで獲物の体を麻痺させるとともに肉を消化液で溶かして液状にしてから口吻で吸い込む」という「体外消化」の方法である[書籍 8]。この消化液は肉質を溶かすだけでなく骨までボロボロにしてしまうほど強力なもので[書籍 13]、大きなトノサマガエルでもタガメに捕まってから数分で動かなくなり、タガメは時々口吻を刺す場所を換えつつ1,2時間程度でカエル・魚を食べつくす[書籍 8]。「獲物の血を吸う」という表現がなされる場合があるが決して血液のみを吸っているわけではなく[書籍 8]、タガメに食べられた生物の死骸は小さなものでは溶けかかった骨・皮膚しか残らず、大型の獲物も溶かされた肉質が流れ出しそうなほど柔らかくなる[書籍 13]。あまり小さな生き物には関心を示さず[書籍 8]、1齢幼虫は自分よりはるかに大きな小魚でも集団で襲い掛かり捕食するほどである[書籍 14]。その獰猛さから「水中のギャング」とも呼ばれ、かつて個体数が多かった1950年代 - 1960年代ごろまでの書籍では「錦鯉などの養魚池に大きな被害をもたらす害虫」と記載されていた[書籍 9]。実際に市川憲平・北添伸夫らは1980年代に岐阜県の錦鯉養殖池を観察した際、タガメに食い殺された錦鯉の幼魚の死体が水面に多数浮いていたことを確認している[書籍 9]

繁殖・成長[編集]

春に越冬から目覚めた成虫は5-6月頃に性成熟し、繁殖活動を開始する。雌は1シーズンで4回ほどの産卵を行う。この頃には、雄が腹で水面を一定リズムで叩く求愛行動が見られ、これによっておこる波によって雌を呼び寄せる。交尾産卵は日没後に行われ、水面上にある杭や植物の茎などに合計60-100個程度の卵を産み付ける。この卵塊は雄によって給水、保護されて約10日で孵化する。幼虫は5回の脱皮を繰り返し、40-50日で成虫となる。

時に、雄が世話をしている卵を別の雌が破壊することがある。これはその雄を獲得するための行動で、本種の習性としてよく知られている。ただしタガメ亜科の全ての雌が卵塊破壊をするわけではない。

越冬・寿命[編集]

冬になると陸に上がり、草の陰や石の下など水没しない場所を選んで成虫越冬をする。越冬の様式は、水中で緩慢な代謝活動を続けつつ春を待つ個体と、上陸して落葉や石などの下で完全に活動を停止させて過ごす場合がある。この内、どちらかといえば、後者のほうがケースとしてメインであると考えられている。

都築裕一は寿命に関して「自分たちが屋外で飼育している個体は最低2年は生き、3年生きる個体も珍しくない。このことから自然下のタガメも約2,3年は生きると考えられるが、室内飼育の場合は1年で死んでしまう場合も多い」と見解を述べている[書籍 15]。一方で海野和男らが執筆した『水辺の虫の飼いかた ゲンゴロウ・タガメ・ヤゴほか』(1999年・偕成社)では「野生下では羽化した翌年に繁殖を済ませてその年の秋に死んでしまう1年の寿命の成虫が多いと考えられるが、飼育下では2年越しで繁殖を行う個体がいるほか、稀に2回越冬して3年生存する個体もいる」と解説している[書籍 16]

天敵[編集]

天敵はサギなどの鳥類で、かつてトキコウノトリが日本の水田に多数いた時代には彼らもまたタガメの天敵だった[書籍 17]。また近年ではオオクチバスブラックバス)・ブルーギルウシガエルといった侵略的外来種もタガメにとって脅威となっているが、ウシガエルはオタマジャクシの際にタガメに捕食される[書籍 18]

保全状況[編集]

タガメは日本において人間が稲作のために作り上げた水田ため池用水路などを主な生活場所としており、人間が開墾して水田面積を広げるとともにその生息域を拡大してきた[書籍 15]

かつてはタガメに多くの地方名が存在することからも伺い知るように日本人にとってはなじみ深い昆虫の一種であり[書籍 15]ゲンゴロウと並んで田んぼを代表する昆虫だったが[書籍 4]、第二次世界大戦後に農薬散布・圃場整備が盛んにおこなわれたことにより急速に生活場所を奪われていった[書籍 15]。特にタガメは以下の国立環境研究所による研究結果が示すように農薬に極めて弱くその直接的・間接的な悪影響を受けており[書籍 15]BHCピレスロイド系などの農薬は一度の使用でタガメの復活を困難にしてしまう[書籍 4]

  • 農薬により96時間以内にタガメ1齢幼虫が半数死亡する濃度(LC50)は以下の通り[書籍 15]
  • また、上記のような農薬1ppm溶液に1時間暴露したグッピーをタガメの1齢幼虫に与えると1回の摂食ですべての幼虫が死亡することも確認された[書籍 15]

農薬・洗剤などによる化学的水質汚染にはかなり耐性が低い一方で有機的な水質汚染にはかなり強く、清流域にはむしろほとんど見られない一方で「化学的汚染物質が流れ込まず、かつ生物相が豊かな水域」である水田・水田脇の藻が生えた堀上・流れが緩やかで淀んだ用水路などでは多くの個体が観察できる[書籍 13]

現代日本の淡水域は「山間部など一部を除いてほとんどが殺虫剤除草剤・合成洗剤といった化学的汚染物質で汚染されている」という状態であるほか、大型耕作機械導入を目的とした土地改良・圃場整備により年間を通じて湿田状態だった水田は乾田化され、それまで生物相が豊富だった素掘りの用水路は流れが速く隠れ場所もないことから生き物がほとんど生活できない三面コンクリート張りに改修されたことでタガメをはじめ、ドジョウ・カエル(オタマジャクシ)などタガメの餌となる生物を含む多くの生物が生活場所を奪われた[書籍 19]

止水域における食物連鎖の頂点に近い位置にいるタガメにとっては餌となる生物たちの減少は種の存続を脅かす問題であり、タガメたちが生き続けていくために汚染されていないきれいな水質・豊富な餌が揃った環境が必要で[書籍 6]、環境省は本種を平地の湖沼における指標昆虫に指定している。さらに近年はタガメ・ゲンゴロウなどに限らず日本の水辺の在来生物にとってはブラックバス・ブルーギル・アメリカザリガニ・ウシガエルなど侵略的外来種による生態系破壊も大きな脅威となっている[書籍 6]

また農薬・農地改良(圃場整備)・侵略的外来種の存在だけでなく道路照明が増加したことにより照明に飛来して路面に落ち死亡する個体が増加したことも生息数激減の要因とされているほか[RDB 3]、インターネット上で売買されるなど採集圧が高まっていることも要因となっている[RDB 4]

現在の生息地は山間部の池・水田にほぼ限られており[書籍 4]、本種は2018年時点で絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト)に分類されているばかりか[RDB 5]、都府県によっては絶滅危惧I類、もしくは既に絶滅種に指定している自治体もある[書籍 4]

近縁種[編集]

タイワンタガメを揚げた料理(バンコク)

タガメ属 Lethocerusをはじめタガメに近縁な水生昆虫たちは寒帯を除く世界中に分布しているが、特に南アメリカ東南アジアアフリカなど熱帯には大型種が多数生息しており、それらの地域では今後もさらに新種が発見される可能性が高い[書籍 20]

タガメ・ゲンゴロウ類など肉食性水生昆虫は外国産のカブトムシクワガタムシと異なり植物防疫法による日本国内への輸入の制約はないが、輸入時にはカブトムシ・クワガタムシと同様に植物検疫所で正規の審査を受ける必要があるほか、国によっては輸出を禁止している場合があるため、現地で採集などして生態を入手する場合は事前に現地の法律・条例を調べておく必要がある[書籍 20]

タイワンタガメ L. indicus
東南アジアに広く分布し[書籍 21]、日本でも沖縄県八重山諸島与那国島で捕獲された記録があるが長年確認されていない[書籍 1]。日本本島のタガメより大型で90mm近くにまで成長する種で、♂の成虫には「キンモクセイに似た芳香がある」とされ、ベトナムタイ王国(タイ)などでは食用にされる[書籍 21]
飼育は日本産のタガメより難しいがナンベイオオタガメよりは容易で、外国産タガメの中では比較的日本国内で入手しやすい部類に入る[書籍 22]
ナンベイオオタガメ Lethocerus grandis
アマゾン熱帯雨林を中心とした南アメリカに分布する世界最大のタガメで、その体長は100mm以上にも達する[書籍 23]。南米およびキューバには本種と同様に100mm以上にまで大型化する巨大種L. maximusが分布し、こちらも「ナンベイオオタガメ」の通称で呼ばれるほか「体長30cmに達する巨大タガメが生息する」ことも噂されていたが正式な報告はない[書籍 23]
両種は酷似しているが、前脚の縞模様はL. grandisが斜め方向・L. maximusが縦方向である点で区別できる[書籍 23]。両種とも日本のタガメと比べると圧倒的な大きさであるが前脚は小さく、あまり大きな獲物を捕らえることは日本のタガメほど得意ではない[書籍 23]。その一方で2種とも後脚が大きく発達しており、都築裕一は「その大きさ・重量感は昆虫よりカニなど甲殻類に近い印象」と述べている[書籍 23]
2種とも環境変化に弱く、長期飼育・繁殖・累代飼育はかなり難しい[書籍 23]。飼育時には日本のタガメよりさらに大きい60cm以上の容器を使用して内部温度を27℃以上に保つなど、生息地である熱帯地域の気候を再現することが最低条件であるほか、前脚が小さいため水深は15cm程度を目安として小さめの餌を多めに与える必要がある[書籍 23]。なお原産国の1つであるブラジルでは熱帯魚以外の輸出が禁止されているため日本国内への入荷は不安定でかなり少ない[書籍 23]
ナンベイタガメ L. annvilipes
南アメリカに生息する大型種で90mm内外。身体の大きさに比べ、やや細身の体型。
アメリカタガメ L. americanus
和名通りアメリカに住む。80mmほどで、タイワンタガメに似た形状。
フロリダタガメ L. grisens
フロリダ半島(アメリカ合衆国フロリダ州)に生息する体長45mm - 60mm程度のタガメで、前脚は小さく溝がない[書籍 22]。アメリカタガメよりやや小さい。
メキシコタガメ L. uhneil
アメリカ合衆国の中央部 - 東部・メキシコにかけて生息する[書籍 22]。体長は日本産タガメより小型の40mm - 50mm程度でスマートな体形だが、前脚は日本産タガメと同様に体長の割に大きく、複眼も日本産タガメのように逆ハの字型になっている[書籍 22]
オーストラリアタガメ L. insulanus
オーストラリア北部に生息。止水域を住処とし、体長60mmと日本のタガメと同じ位の大きさ。
アフリカタガメ L. cordfonus
アフリカケニアナイロビに分布する。タイワンタガメと同じくらいのサイズ。

飼育[編集]

「大型で迫力があり大型のカエルまで捕食する獰猛さ」「希少さ」からペットとして人気が高い昆虫であり、近年では環境問題を考えるための教材として小学校などで飼育・観察される場合がある[書籍 24]。しかしタガメの生態を踏まえた適切な飼育方法を知らずに飼育する飼育者も多いため、適切な飼育方法がわからないまま早死にさせたり、ペットショップでもタガメがプラスチックケースに水とわずかな水草を入れただけで販売されている場合がある[書籍 24]

飼育下では適切な方法で飼育すれば約2,3年は生きる昆虫であり、春 - 晩秋にかけて長期間にわたり活動するほか、飼育容器(水槽)内に本来の生息地に近い環境を整えればタガメ本来の生態を観察したり、採卵・幼虫飼育などによる累代飼育を楽しんだりできる[書籍 24]

タガメはゲンゴロウなどゲンゴロウ類とは違い繁殖期を除いて水槽内を頻繁に泳ぎ回ることはないため、繁殖期以外は10cm - 15cm程度の小型容器でも飼育可能だが、長期飼育の場合は生息環境を考慮して単独飼育の場合で最低30cm以上、複数飼育(2,3頭)の場合は最低45cm以上の飼育容器を使用することが望ましい[書籍 7]。また時期によっては活発に動き回ったり飛翔行動をとるため、脱走を防ぐため飼育容器には蓋をする必要がある[書籍 7]

水深は単独飼育の場合は多少深くても構わないが、複数飼育の場合は5cm - 15cmほどにして餌を捕らえやすくしないと共食いが起こりやすくなる[書籍 25]。タガメ属は熱帯・亜熱帯由来の南方系の昆虫であるが、飼育下における死亡率が高い季節は冬季ではなく春先・晩秋の気温が不安定な時期や夏季である場合が多いため、飼育時の水温は30℃以下を目安に管理し、1日の温度変化が少なく直射日光の当たらない場所に飼育容器を設置することが望ましい[書籍 13]

水質に関しては農薬・洗剤など化学的な水質汚染はともかく有機的な水質汚染に強いことから神経質になる必要はないが、汚染状態がひどい水で飼育していると口吻周辺にミズカビが生えてくる場合があることや、餌用の魚・水草を状態良く飼育する意味も含めてある程度きれいな水質(餌用の魚類が状態良く飼育できる程度)を維持する必要がある[書籍 13]。ミズカビは直接死亡の原因になることがなくても生体に悪影響を及ぼす可能性があるため、ミズカビが発生したら濃度0.5%程度の食塩水で円水浴をすることが好ましい[書籍 13]。なお都築裕一は「実験的にある種のコケ防止剤(錠剤・液剤)を使用してみたところ直接的な影響はなかった」と述べているが[書籍 13]、一方でカルキ抜き剤などに関しては「容量を間違えると水生昆虫に悪影響が出る可能性がある上、魚用の病気治療剤・コケ防止剤も多くのものが水生昆虫生体に影響を与えるため、いずれも使用しない方が無難。もし使用する場合は直接メーカーに問い合わせて安全性を確認した上で使用すべき」と解説している[書籍 26]。獲物の肉を溶かして食べる生態に加えて多量の尿酸を含む液体の排泄物を多量に排泄することから水質悪化が早いため、タガメを飼育する際は濾過装置を使用して水質を維持することが推奨される[書籍 13]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「日本国内で記録されたことがある水生昆虫類」としては1957年に南西諸島八重山列島与那国島沖縄県)で初記録されたタイワンタガメ(体長65mm - 80mm)がいるが、1970年代以降は記録されていない。記録された範囲を「日本本土」(北海道本州四国九州)に絞るかもしくは「2019年現在まで継続的に生息が確認されている水生昆虫類」に限れば本種が「日本最大の水生昆虫」となる[RDB 2]
  2. ^ 東京都区部多摩地域のいずれにおいても1970年代の記録を最後に確認されておらず「絶滅種」とされている[RDB 6]
  3. ^ 県内には生息可能な水域が現存せず少なくとも1980年代以降の確実な記録がないため「絶滅種」に指定されている[RDB 7]
  4. ^ 1930年代には県内各地の湖沼などに生息していたが、1981年を最後に約30年間にわたり確認記録がなく再発見も期待できないため2015年度改訂版の昆虫類第2次レッドリストで「絶滅種」となった[RDB 9]
  5. ^ 県内では農薬禍により1960年代にほぼ姿を消したとされ、2004年発行のレッドデータブックで「絶滅種」に指定されている[RDB 11]
  6. ^ 県内産の個体は1951年に小松市丸ノ内で採集個体が現存しているのみで、1970年代まではかほく市輪島市に生息していたが2009年のレッドデータブックでは「近年は北陸3県(福井県・石川県・富山県)でもほとんど確認されていない」として「絶滅種」となっている[RDB 12]
  7. ^ 県内では1970年以降40年以上にわたり生息確認がなく、2018年10月刊行のレッドデータブックでは「絶滅種」となった[RDB 13]。2000年 - 2002年の間に2件の目撃情報があったほか、2002年以降も目撃情報があった地点の近辺・隣接する愛媛県側の実地調査を行ったが、いずれも生息は確認できなかった[RDB 13]
  8. ^ 県内ではかつて津軽地方を中心に生息していたが平川市石郷(1978年)・三戸郡新郷村西越(1980年)を最後に採集例がなく、2010年改訂版レッドデータブックでは「最重要希少野生生物Aランク」(環境省の絶滅危惧I類に相当)に指定されており絶滅が危惧される[RDB 14]
  9. ^ 県内では北魚沼郡守門村(現:魚沼市)の守門村守門中学校(現:魚沼市立守門中学校)にて1979年6月23日に得られた記録が最後で「絶滅危惧I類」に指定されており絶滅が危惧される[RDB 15]
  10. ^ 県内では2012年時点で過去40年以上にわたり記録されておらず「絶滅危惧I類」に指定されており絶滅が危惧される[RDB 16]
  11. ^ 県内では2001年発行のレッドデータブックで「県内で生息が確認されているのはわずか1か所のみと、産地が非常に局地的で個体数も少ない」として「絶滅危惧I類」に指定されており[RDB 17]、さらに2013年改訂版レッドデータブックで「近年確認されていない」として「絶滅危惧IA類」に指定され絶滅が危惧されている[RDB 18]
  12. ^ 県内ではかつて普通種だったが強力な農薬の使用で激減して1970年代までにほとんど姿を消した上、かつてあまりにも普通に生息していたためか記録・標本が1950年(昭和25年)に採集された1例しか残っていない[RDB 20]。2004年3月刊行のレッドデータブックでは「絶滅危惧I類(CR+EN)」に指定され絶滅が危惧されている[RDB 20]
  13. ^ 県内では農薬・耕作放棄・圃場整備・乱獲などにより激減し、2005年までは西予市(1996年 - 2005年)・北宇和郡鬼北町でそれぞれ生息・繁殖が確認されていたが、前者生息地は耕作放棄により陸地化し、後者も圃場整備を行って以降は確認できなくなり現在は確実な生息地が確認できないことから「絶滅危惧1類(CR+EN)」に指定されており絶滅が危惧される[RDB 21]。西予市の生息地では2005年時点の個体群は極めて脆弱で、確認できた卵塊は通常の3割程度の卵数しかなかった[RDB 21]

出典[編集]

書籍出典

論文出典

環境省および各都道府県のレッドデータブック・レッドリスト

  1. ^ a b c d e 環境省生物多様性センター 「タガメ (Lethocerus deyrolli (Vuillefroy, 1864))」『レッドデータブック2014 昆虫類』(PDF)5、ぎょうせい、2015年2月1日、205頁(日本語)。ISBN 978-43240989982019年3月5日閲覧。
  2. ^ 環境省生物多様性センター 「タイワンタガメ (Lethocerus indicus (Lepeletier & Serville, 1775))」『レッドデータブック2014 昆虫類』(PDF)5、ぎょうせい、2015年2月1日、17頁(日本語)。ISBN 978-43240989982019年3月5日閲覧。
  3. ^ 渡邊通人 『2018 山梨県レッドデータブック 山梨県の絶滅のおそれのある野生生物』 山梨県森林環境部みどり自然課、2018年3月、256頁。
  4. ^ 野崎達也 『広島県の絶滅のおそれのある野生生物(第3版)-レッドデータブックひろしま2011-』 広島県日本の旗 日本・広島県広島市中区基町10番52号、2012年9月、135頁。
  5. ^ “環境省レッドリスト2018昆虫類” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 環境省, (2018年5月22日), p. 22, オリジナルの2019年3月22日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190322024208/http://www.env.go.jp/press/files/jp/109278.pdf#page=22 2019年3月22日閲覧。 
  6. ^ a b “『レッドデータブック東京2013』タガメ” (日本語) (プレスリリース), 東京都, オリジナルの2019年3月21日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190321152124/http://tokyo-rdb.jp/kohyou.php?serial=1167 2019年3月21日閲覧。 
  7. ^ a b “神奈川県レッドデータ生物調査報告書2006” (日本語) (プレスリリース), 神奈川県, (2006年7月8日), オリジナルの2019年3月21日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190321152050/http://conservation.jp/tanzawa/rdb/rdblists/detail?spc=501 2019年3月21日閲覧。 
  8. ^ “山形県レッドリスト(昆虫類)” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 山形県, (2015年度), p. 1, オリジナルの2019年3月22日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190321152811/https://www.pref.yamagata.jp/ou/kankyoenergy/050011/sizenkankyo/yamagatakenredlist/insect_list_kaitei.pdf 2019年3月22日閲覧。 
  9. ^ “山形県レッドリスト(鳥類・昆虫類)改訂案について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 山形県, p. 5, オリジナルの2019年3月22日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190321152041/http://www.pref.yamagata.jp/ou/kankyoenergy/050011/sizenkankyo/redlist_bird_insect_public/redlist_bird_insect_publiccomment.pdf#page=6 2019年3月22日閲覧。 
  10. ^ “長野県版レッドリスト(無脊椎動物) 2015” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 長野県, (2015), オリジナルの2019年3月22日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190321152100/http://www.pref.ishikawa.lg.jp/sizen/reddata/rdb_2009/4_ato/kennsaku2/documents/5-1tagame_1.pdf 2019年3月22日閲覧。 
  11. ^ 長野県生物多様性概況報告書 (PDF) 」 、『長野県環境保全研究所 研究プロジェクト成果報告』第9巻、長野県、 57頁、2019年3月22日閲覧。
  12. ^ a b “いしかわレッドデータブック動物編2009 タガメ” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 石川県, (2009年3月), オリジナルの2019年3月22日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190321152100/http://www.pref.ishikawa.lg.jp/sizen/reddata/rdb_2009/4_ato/kennsaku2/documents/5-1tagame_1.pdf 2019年3月22日閲覧。 
  13. ^ a b c 別府隆守 『高知県レッドデータブック2018 動物編』(PDF) 高知県林業振興・環境部 環境共生課、日本の旗 日本・高知県高知市丸ノ内一丁目7番52号、2018年10月、169頁。2019年3月22日閲覧。
  14. ^ a b 青森県の希少な野生生物 青森県レッドデータブック(2010年改訂版)青森県、2010年3月26日、240頁。2019年3月21日閲覧。
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  17. ^ a b 徳島県版レッドデータブック掲載種選定作業委員会 「6 昆虫類」『徳島県の絶滅のおそれのある野生生物-徳島県版レッドデータブック-』 徳島県環境生活部環境政策課、2001年3月31日、初版、153頁。
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  20. ^ a b c 出嶋利明 (2004年3月), “タガメ 香川県レッドデータブック” (日本語) (プレスリリース), 香川県, オリジナルの2019年3月22日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20190322115451/http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/rdb/data/rdb1514.htm 2019年3月22日閲覧。 
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環境省

都道府県条例

報道記事

  1. ^ 水辺の昆虫は今 君は見つけることができるか?」『越後ジャーナル』越後ジャーナル社、2010年7月22日、夏季特集号。2019年3月22日閲覧。, オリジナルの2019-03-22時点によるアーカイブ。

その他出典

  1. ^ タガメとは” (日本語). コトバンク. 朝日新聞社. 2019年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月21日閲覧。
  2. ^ 三省堂. “高野聖とは” (日本語). コトバンク. 朝日新聞社. 2019年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月21日閲覧。
  3. ^ "第511回「毒ヘビを狩る!田んぼの王者 タガメ」". ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜. NHK総合テレビジョン. 日本放送協会. 2017年6月25日放送. 511回. 2019年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。 2019年3月6日閲覧。

参考文献[編集]

環境省などの発表[編集]

関連書籍[編集]

関連論文[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]