財閥
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財閥(ざいばつ)とは、一族の独占的出資による資本を中心に結合した経営形態。
概要
以下のような定義が一般的。
日本の財閥
日本の経済史では、戦前に大手を揮った財閥をさすことが多い。戦前には、三井・三菱・住友・安田などの財閥があった。これらは、1945年の日本の降伏の後、1947年に、連合国軍最高司令官総司令部の指令により分散させられた。
もっとも、根拠法である過度経済力集中排除法が8年後に逆コースの一環として廃止された。
海外ではZaibatsuとも呼ばれる。
財閥解体後も、四大財閥などは企業グループとして再結集している。
四大財閥
安田財閥を除く3つを特に三大財閥と呼ぶ。
江戸時代成立の財閥
四大財閥以外の明治成立の財閥
大正財閥
昭和期の新興コンツェルン
上記の財閥と異なり、創業者には技術者出身が多い。このため、重工業中心で「芋づる」方式と呼ばれる、企業間において関連性の強い生産関係を持つ。既存の財閥では貧弱な化学産業を中心に発展していった。海外での市場を狙い、日産コンツェルンは満州で、日窒コンツェルンは朝鮮で鉱山などの事業を展開し、現地社会にも強い影響を残した。また、理研コンツェルンは理化学研究所の活動資金調達のために成立したユニークなコンツェルンであり、同族支配が行なわれず、「農村工業化」などを打ち出して新潟県柏崎市などで地方の工業化につとめた。
逆に、既成財閥に較べて金融部門が弱いため、第二次世界大戦中には経済統制と既成財閥系の銀行団によって侵食されて、財閥解体前に実態を失ったコンツェルンも多かった。
なお、経営政策の面では、理研コンツェルンを除いて既存の財閥同様に同族運営がなされており、その点で「新興財閥」という言い方もある。
その他の財閥
新興コンツェルン以外で、昭和初期~第二次世界大戦中に発展した中堅財閥。これらは原安三郎が率い朝鮮で事業を展開した中外コンツェルンや沖縄・大東諸島においてプランテーション・鉱山事業をおこなった大日本製糖を中心とした藤山コンツェルン、マレーシア・シンガポールを拠点として鉱山・海運・化学事業を手がけた石原産業など、おもに朝鮮や南方における諸事業を展開して成長した。ただし、既成財閥に較べて有力な金融機関や持株会社を持たず、新興コンツェルンに較べて技術力や事業の連関性が劣っていたため、いずれも中小規模に留まった。
中島飛行機は第二次世界大戦中に急速に発達した財閥で、軍用機の生産から鉱山・貿易・水産などの非飛行機部門にも進出した。なお、南満州鉄道も多角化を推進した事から財閥の一つとする場合もある。
- 中島飛行機(財閥解体後、主要5社が合同し、富士産業・現富士重工業を設立)
- 石原産業
- 藤山コンツェルン(大日本製糖)
- 中外コンツェルン(旧朝鮮紡織、日本化薬、中外鉱業等)
- 是川グループ
- 横河グループ - 財閥としての色彩は薄かった。
中央財閥と地方財閥
東京、横浜、大阪、神戸の四都市に本社をおく財閥を中央財閥、その他を地方財閥と定義されるが、全国的規模の企業活動を行っていた財閥を中央財閥、各地域に限定された企業活動を行っていた財閥を地方財閥と分類することができる。また大阪・神戸周辺には中央財閥だけでなく中堅・零細の財閥も多数集中していた。これらを阪神財閥と総称する。財閥形成の過程として、片倉財閥の様に製糸業に注力するなど、一つの事業に集中して投資し、芋づる式に発展する場合が多い。また、呉錦堂財閥や小曽根財閥の様に中心的な生産事業を保有せず、統轄司令部としての持ち株会社が、様々な企業に投資することで財閥を形成する多角的投資財閥がある。江戸時代の日本最大の豪商、鴻池財閥は、家業以外への進出を禁じた家憲によって、金融業から他の事業へ営業分野の拡大は図らなかったが、明治期以降は同家の名声を欲する財界の要請で、鴻池家が様々な企業の発起人となり、大株主として君臨したことから、投資財閥の性格をもっていたとも言える。
財閥解体には繋がらなかった場合も多く、存続企業としては松坂屋、旧東海銀行(→UFJ銀行→現三菱東京UFJ銀行)(ともに伊藤財閥)、キッコーマン(茂木財閥)などがある。
阪神財閥
大阪府
- 竹中財閥(大阪府、建築業)
- 大林財閥(大阪府、建築業)
- 池尻財閥(大阪府、建築業)
- 石原財閥(大阪府、鉱業)(創業者:石原広一郎)
- 弘世財閥(大阪府、鉄道、金融、保険業)(創業者:弘世助三郎)
- 安宅財閥(大阪府、商事)(創業者:安宅弥吉)
- 岩井財閥(大阪府、商事)(創業者:岩井勝次郎)
- 広海財閥(大阪府、貿易、海運業)
- 岸本財閥(大阪府、貿易、海運業)
- 久原財閥(大阪府、鉱業)(創業者:久原房之助)
- 伊藤忠財閥(大阪府、金融業、保険、紡績、貿易)(創業者:伊藤忠兵衛)
- 武田財閥(大阪府、製薬)(創業者:武田長兵衛)
- 山口財閥(大阪府、金融業)(創業者:山口吉郎兵衛)
- 藤田財閥(大阪府、鉱業)(創業者:藤田伝三郎)
- 寺田財閥(大阪府、紡績、電力、鉄道)
- 村井財閥(大阪府、金融、鉱業、煙草、他)(創業者:村井吉兵衛)
- 広岡財閥(大阪府、金融、保険業)(創業者:広岡久右衛門)
兵庫県
- 兼松財閥(兵庫県、商事)(創業者:兼松房治郎)
- 鈴木財閥(兵庫県、商事、海運業、造船、保険)(創業者:鈴木岩治郎)
- 乾財閥(兵庫県、金融、醸造業、海運業)(創業者:乾新兵衛)
- 小曽根財閥(兵庫県、多角的投資)
- 呉錦堂財閥(兵庫県、多角的投資)
- 山邑財閥(兵庫県、醸造業)
- 嘉納財閥(兵庫県、廻船業、醸造業、金融)
- 川西財閥(兵庫県、鉄道、金融、紡績、航空機)(創業者:川西清兵衛)
- 範多財閥(兵庫県、造船、鉱業、煉瓦、肥料、煙草、精米、損害保険)(創業者:エドワード・ハズレット・ハンター)
- 辰馬財閥(兵庫県、醸造業、海運業、保険業)
- 牛尾財閥(兵庫県、電気、瓦斯、金融業)
- 伊藤財閥(兵庫県、多角的投資)(伊藤長次郎家)
- 内田財閥(兵庫県、海運業)(創業者:内田信也)
- 山下財閥(兵庫県、海運業、保険業、造船業)(創業者:山下亀三郎)
- 勝田財閥(兵庫県、海運業)(創業者:勝田銀次郎)
- 八馬財閥(兵庫県、金融業/醸造業/海運業)
- 岡崎財閥(兵庫県、金融業/保険業/海運業)(創業者:岡崎藤吉)
その他の地方財閥
- 立川財閥(東京都、航空機製造)
- 服部財閥(東京都、精密機器製造)
- 鹿島財閥(東京都、建築業)
- 清水財閥(東京都、建築業)
- 大川財閥(埼玉県、製紙業)
- 中野財閥(栃木県、金融、セメント業)
- 茂木財閥(千葉県、醸造業)
- 濱口財閥(千葉県、醸造業)
- 東芝財閥(茨城県、製造業)
- 木村財閥(栃木県、建設業)
- 斎藤喜十郎財閥(新潟県、酒造、海運、銀行業)
- 鍵冨三作財閥(新潟県、米穀取引、流通、銀行業)
- 新潟白勢財閥(新潟県、銀行、鉱業、電力)
- 小澤財閥(新潟県、米穀取引、陸運)
- 中野財閥(新潟県、電力、交通)
- 片倉財閥(長野県、製糸業)
- 鈴与財閥(静岡県、海運業)
- 伊藤財閥(愛知県、百貨店経営/銀行業)(伊藤次郎左衞門家)
- 安倍財閥(福井県、金融、建設業)
- 森村財閥(愛知県、窯業/商事)
- 豊田財閥(愛知県、輸送機器製造)
- 坂口財閥(鳥取県、金融、鉄鋼、石油販売、電気)(坂口平兵衛 (初代)、坂口平兵衛 (2代))
- 倉敷財閥(岡山県、金融、紡績、電力)
などがあげられる。
十五大財閥
四大財閥に、GHQによる財閥解体指令を受けた11財閥を加えたものを、特に十五大財閥と呼ぶ。その多くは解散し、6大銀行グループに取り込まれていった。
- 三菱財閥(創業者:岩崎弥太郎)
- 住友財閥(創業者:住友政友)
- 三井財閥(創業者:三井高利)
- 鮎川財閥(創業者:鮎川義介)
- 浅野財閥(創業者:浅野総一郎)
- 古河財閥(創業者:古河市兵衛)
- 安田財閥(創業者:安田善次郎)
- 大倉財閥(創業者:大倉喜八郎)
- 中島財閥(創業者:中島知久平)
- 野村財閥(創業者:野村徳七)
- GHQは以上を10大財閥と指定した。
- GHQは以上を15大財閥と指定した。
日本国外の財閥
EU
ドイツ
北欧諸国
フランス
- ルノー・トラックスはミシュラン(※前述)に買収されたのち、現在トラック専業大手のボルボ(※前述)に買収
イギリス
イタリア
- フィアット-イタリア最大の企業集団。創業家のアニェッリ家が支配する。
- フィニンヴェスト - 現代イタリアにおける大手の複合企業体(新興財閥扱い)。後に首相となるシルヴィオ・ベルルスコーニにより設立、同国の有力プロサッカーチーム・ACミランの買収に関与。
- ベネトン - 創業家のベネトン家の持ち株会社・シントニア社は高速道路運営会社のアトランティアなど複数社を支配。
- ウニクレーディト・イタリアーノ
ベネルクス三国
- グループ・ブリュッセル・ランバート-ベルギー有数の巨大投資会社。
- フィリップス
北アメリカ
アメリカ
ロックフェラー、モルガン、メロンをアメリカ三大財閥(デュポンを加えて四大財閥)と呼ぶが、モルガンの凋落に伴いデュポンと入れ替えて三大財閥と見る動きもある。
廃業した財閥
ロシア
アジア
韓国
- 現代(ヒュンダイ)グループ
- 三星(サムスン)グループ
- LG(エルジー、ラッキーグムソン)グループ
- SK(エスケイ、ソンギョン)グループ
- ロッテグループ
- ヘテグループ
- 韓進(ハンジン)グループ
- 斗山(ドゥサン、とさん)グループ
- コーロングループ
- ハンファグループ
- 錦湖(クムホ)アシアナグループ
- ポスコグループ
- KT(ケイティ)グループ
※売上高の多い韓国電力公社、韓国道路公社、大韓住宅公社などを財閥としてカウントすることがある。
廃業した財閥
中国・台湾(企業グループ扱い)
- CITICグループ - 中国最大の投資グループで政府系。
- BYD
- イースト・ホープ・グループ - 中国最大の穀物・農産品メーカー。
- 希望電子(ホープ・エレクトロニクス)- 中国大手の新興電子部品メーカー。
- ニュー・ホープ・グループ - 中国の不動産業。イースト・ホープより分離。
- 台湾プラスチック・グループ(王永慶)-台湾最大の化学メーカー。
- 鴻海精密工業-世界最大のEMS企業。
- 国泰金融控股-蔡家支配の金融財閥。
- 富邦金融控股-同上。
香港
- 長江実業グループ
- ジャーディン・マセソン
- スワイヤー・グループ
- ワールドワイドシッピング(包玉剛)
インド
財閥はイギリス統治時代から続いており中でもビルラ 、リライアンス、タタはインド三大財閥(インドの財閥参照)とも呼ばれている。
トルコ
サウジアラビア
- キングダム・ホールディング・カンパニー - 王族系投資会社
イエメン
- サウジ・ビンラディングループ - アラビア屈指の同族系企業グループ。主力のプラント建設業は本来、ラーディン一族の祖業の一つであった。
レバノン
- サウジ・オジェ - レバノン最大のゼネコン。イエメンの『サウジ・ビンラディン』とは建設業では双璧といわれる。
タイ
カンポジア
- ロイヤルグループ - 同国最大で東南アジアで有数の財閥。
アフリカ
南アフリカ
エジプト
参考文献
関連項目
脚注