天外魔境 ZIRIA

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天外魔境 ZIRIA
ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 PCエンジンCD-ROM²
開発元 ハドソン
レッドカンパニー
発売元 ハドソン
プロデューサー 大里幸夫
清水始
今井丈雄
ディレクター 広井王子
シナリオ あだちひろし
プログラマー 中田伸一
山森正和
音楽 坂本龍一
小久保隆
美術 辻野寅次郎
シリーズ 天外魔境シリーズ
人数 1人
メディア CD-ROM
発売日 日本の旗1989年6月30日
対象年齢 CEROA(全年齢対象)
その他 ASIN B0000ZPTPG
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天外魔境 ZIRIA』(てんがいまきょう じらいあ)は、1989年6月30日ハドソン(現・コナミデジタルエンタテインメント)から発売されたPCエンジン CD-ROM²コンピュータゲームソフト。ジャンルはロールプレイングゲーム(RPG)

2000年代には携帯電話用アプリとして配信されたほか、2006年にはXbox 360用ソフト『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』としてリメイクされている。PCエンジン版は、2008年7月31日発売のPSP用ソフト『天外魔境コレクション』に収録されているほか、2010年10月20日よりゲームアーカイブスにて配信されている(PSP、PS3用)。

概要

「外国人から観た誤った日本観」をコンセプトとする「ジパング」という架空の国を舞台にした天外魔境シリーズの1作目。当時まだ百科事典辞書などの用途で使われ始めた程度だったCD-ROMの大容量を活かし、アニメーション処理された映像表現や声優による音声、メインテーマを含む3曲の坂本龍一が作曲した生楽曲を使用するなどして、当時のゲームでは規格外の演出を実現した。また、キラーソフトとして『イースI・II』とともにCD-ROM²普及の火付け役となった。CD-ROM黎明期であり、CD-ROM²の開発と同時進行の制作でもあったため蓄積技術がなく、また当時の家庭用ゲーム機は読み込み時間を感じないロムカセットが主流だったため、ロード時間の長さが欠点として挙げられていた。

原作はP.H.チャダ著『FAR EAST OF EDEN』とされているが、これは架空の人物および著書である(詳細は「天外魔境」にて解説)。

ストーリー

登場人物

火の一族

自来也(ジライア)
岩田光央(全メディア共通)
火の一族、ガマ族の末裔。ガマ仙人の元で育てられ、マサカド復活をたくらむ大門教を討ち果たすために旅立つ。オープニングのみ台詞を喋る。得物は刀、特技は「ぬすむ」。
綱手(ツナデ)
声:渡辺菜生子(PCエンジン版)/江森浩子(OVA版、Xbox360版)
火の一族、ナメクジ族の末裔。怪力が自慢の少女。ナメクジ族なので塩が苦手。得物は斧、特技は「うそなき」。
大蛇丸(オロチ丸)
声:塩沢兼人(PCエンジン版、OVA版)/子安武人(Xbox360版)
火の一族、ヘビ族の末裔。江戸のショーグンに育てられ、直属の密偵となる。ショーグンが大門教に入信したため、ジライアとともに戦うことを迷っている。得物は弓(Xbox360版では槍)、特技は「ながしめ」。

大門教

ゴーモン
声:田中康郎(PCエンジン版)/島田敏(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、筑波国に登場。Xbox360版では「強門」、変身後は「キングワーム」。
タマモ姫
声:片石千春(PCエンジン版)/渡辺菜生子(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、盤毛国に登場。Xbox360版では「玉藻姫」、小説版では「玉藻の前」、変身後は「キュウビ」。
ダンジョウ
声:矢田耕司(PCエンジン版)/石塚運昇(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、陸羽国に登場。Xbox360版では「弾正」、小説版では「仁木弾正」、変身後は「ハーメルン」。
カーメンカーメン
声:塩屋浩三(PCエンジン版)/矢田耕司(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、陸奥国に登場。関西弁で「かめへんかめへん」が口癖。Xbox360版では関西弁ではなくなり、丁寧な口調。
マントー
声:塩屋浩三(PCエンジン版)/千葉繁(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、陸奥国に登場。Xbox360版では「萬頭」、原案では正体を現す前の名は「土蔵王」(東北地方の地名の蔵王に由来)。マントヒヒのような大猿で非常に強力な「馬鹿」(うましか)の術を使うが、オツムが弱いため上手く使いこなせないという憎めない敵。本作以降もシリーズにほぼ出演することになる(Xbox360版では十三人衆を倒した後にコウモリ夜太が十三人衆の魂を回収していたが、マントーだけは倒したあとに逃亡したため、結果的に十三人衆で唯一生き延びた)。
信玄(ニセ信玄)、
声:銀河万丈(全メディア共通)
大門教十三人衆の一人で、信濃国に登場。正体は「ドーマン」、原案では「上杉道満」(芦屋道満に由来)。300年前の信濃国をまとめ上げた伝説の人物・武田信玄が復活した姿に成りすましている。
イト姫
声:江森浩子(PCエンジン版)/山口由里子(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、富士国に登場。小説版とXbox360版では「糸姫」、変身後はPCエンジン版では「タランチェ」、Xbox360版では「アラクネー」。
南蛮屋
声:大竹宏(PCエンジン版)/飯塚昭三(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、富士国に登場。変身後は「ゴーヨック」。ツナデを気に入り1000両で売ってくれといってくる(「はい」と答えるとツナデとオロチ丸が戦闘に参加してくれない)。
ヤシャ姫
声:鶴ひろみ(PCエンジン版)/富沢美智恵(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、相模国に登場。小説版とXbox360版では「蛇姫」、変身後は「カーミラ」。ツナデとオロチ丸を捕えて獄門島に送ってしまう。
ムテキオー
声:戸谷公次(PCエンジン版)/平野正人(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、相模国に登場。小説版とXbox360版では「鬼道仙」、変身後は「ムテキオー」。
水王丸
声:塩屋翼(全メディア共通)
大門教十三人衆の一人で、千葉国に登場。変身後は「クラーケン」。邪神斎の次男。
幻王丸
声:森功至(PCエンジン版)/菅沼久義(Xbox360版)
大門教十三人衆の一人で、 武蔵国に登場。変身後は「ベリエル」。邪神斎の長男で、水王丸は弟。「泥黒鬼」「暗鉄鬼」「銀老鬼」「金剛鬼」という四天王を配下に持つ。
邪神斎
声:加藤精三(全メディア共通)
大門教十三人衆の一人で、江戸に登場。変身後は「ルシフェラー」。ジパングを支配するためにマサカド復活をたくらんだ張本人。『天外魔境II 卍MARU』ではもともとはジパングの大和地方のイヒカの民のひとり「トキ」であり、トキがルシフェラーに憑依された存在。トキがイヒカの里を飛び出した理由は『天外魔境II』にて語られている。
コウモリ夜太
声:茶風林
Xbox360版に登場。変身後は「ビッグアイ」。なお、XBOX360版ではコウモリ夜太が大門教十三人衆の一人として設定されたため、邪神斎は大門教十三人衆から除外されている。
バールダイモン
声:郷里大輔
Xbox360版の最終ボスで、異界から来た大門教の神。小説版でもPCエンジン版の最終ボスと同じデザインのキャラクターイラストがあり、その名前はバールダイモンとなっていた。名前の由来はバアル

その他

コガマ
ガマ仙人のもとでジライアとともに育った蛙。ジライアたちの仲間となり(NPC)、一度通った雲切の里に瞬時に移動する「こがま」コマンドが使えるようになる。
ホテイ丸
声:青野武(全メディア共通)
外国から来た宣教師。英語交じりの独特の日本語をしゃべる。発明を得意とし、行く先々でジライアたちの手助けをしてくれる。本作以降も天外魔境のナンバリングシリーズに登場する。

筑波国

ガマ仙人
声:宮内幸平(PCエンジン版)/八奈見乗児(Xbox360版)
筑波山に住みジライアを育てた。
雲切(くもぎり)
声:加藤精三(PCエンジン版)/永井一郎(OVA版)/江川央生(Xbox360版)
正義の盗賊集団の親分。坂東各地に雲切の里を持ち、ジライアを手助けする。かつてはガマ仙人の下で修行をしておりジライアの兄弟子にあたる。小説版のフルネームは「雲切り仁左衛門(にざえもん)」。
水戸黄門
声:青野武(PCエンジン版)/佐藤正治(Xbox360版)
水戸を追われ土浦に逃げてきた先の副将軍。
ボクデン
声:矢田耕司
一軒家に住む剣豪。ジライアに「ボクデン斬り」を伝授してくれる。
大ナマズ
声:宮内幸平
ナマズ洞で眠っている巨大なナマズ。大ひげぬきを使って起こすと地震を起こす。
金太
声:鶴ひろみ
ジライアに瓜二つで「俺も火の勇者だ」と言って仲間になる(NPC)。その正体は変化した子ダヌキ。
大ダヌキ
声:佐藤正治
ゴーモンにそそのかされて大門教の悪事を手伝うタヌキ達の親玉。

盤毛国

ナメクジ仙人
声:田中康郎(PCエンジン版)/大塚周夫(Xbox360版)
300年間ほこらに住む仙人でツナデを育てた師匠。
トウベイ
声:平野正人
宇都宮町の大工。タマモ姫にカラクリ部屋を作らされた後、あぶくま洞に捕えられている。
若トノ
声:片石千春
自称「勇気ある若トノ」。しかし自分からは何もせず、父である大トノの救出をジライアに依頼する。
大トノ
声:戸谷公次
タマモ姫に捕えられている白川城城主。

陸羽国

あくろう王
声:屋良有作(全メディア共通)
鬼族の王。息子を人質に取られたためジライアたちに敵対するが、敗れた後は仲間(NPC)となりジライアとともに戦う。
あくろうおうの息子
声:江森浩子(PCエンジン版)/大谷育江(Xbox360版)
ダンジョウに捕らえられている。PCE版では名前は出てこないが、原案やXbox360版では高星丸(たこうまる)という名前がついている。
白ヘビ
声:渡辺菜生子
神の使いの蛇。オロチ丸についての情報などを教えてくれる。
ムサシ
声:矢田耕司
すがゆ温泉にいる剣豪。ジライアに「ムサシ斬り」を伝授してくれる。
看板娘
声:江森浩子
すがゆ温泉宿屋の看板娘だが、実はオロチ丸が変装した姿。

陸奥国

おカヨ
声:片石千春
ミスとさ港。ミイラを倒すのに必要な「かんざし」を持っている。
お坊さん
声:大竹まこと
土崎町の寺にいる坊主。おカヨがミスとさ港に選ばれた記念として「かんざし」をあげてしまった。
おトノ様
声:塩沢兼人
土崎町の城主。大門教によって水が汚染され頭を悩ませている。
看板娘
声:片石千春
ざおう温泉の看板娘。すがゆ温泉の看板娘とは声も容姿も違うが、これもオロチ丸の変装した姿である。
おサエ
声:片石千春
もがみの渡しの船頭の娘。マントーに誘拐されている。
船頭
声:戸谷公次
信濃国へと渡れるもがみの渡しの船頭。娘のおサエが誘拐されているため、船を出してくれない。

信濃国

看板娘
声:江森浩子
かみこうち村の看板娘だが、これもオロチ丸の変装。ヌエを倒すための「ヘビの弓矢」をくれる。
ジュウベイ
声:戸谷公次
すわ湖の村に住む剣豪。ジライアに「ジュウベイ斬り」を伝授してくれる。
グロヌシ
声:屋良有作
武田信玄の子孫、タケダ一族の勇者。塩が苦手で塩山にいるニセ信玄を倒しに行けず、ジライアの訪問を待っている。

富士国

オズノ
声:大竹宏(全メディア共通)
浅間神社の大神主。300年生きている。
マリコ
声:永井真理子
ごてんば村に住む姉妹の1人。父親が富士山に捕らえられている。
チサ
声:横山智佐
マリコの妹。父親を助け出してくれたジライアを応援するためにファンクラブを作るという。

相模国

アシモト五兄弟
声:なし(PCエンジン版)/矢尾一樹(Xbox360版)
五つ子のオカマの商人。あの手この手でジライア一行から金品を巻き上げようとする。本作以降も天外魔境シリーズに多数出演する。PCエンジン版では音声付きの台詞はないが、Xbox360版では『天外魔境II 卍MARU』と同じく矢尾一樹が声を当てている。
トノ様
声:平野正人
小田原町の殿様に化けているヤシャ姫の手下で正体は「モウリョウ」。
なまぐさ坊主
声:佐藤正治
みうら村にいる坊主。ツナデとオロチ丸が捕えられ、1人となったジライアの仲間となる(NPC)。殺生を禁じられている身であるため攻撃はできないが、戦闘時には敵を追い払ってくれる。

千葉国

千葉シュウサク
声:森功至(PCエンジン版)/高橋翔(Xbox360版)
天下一の剣の名人。ジライアに「シュウサク斬り」を伝授してくれる。

武蔵国

月姫
声:鶴ひろみ(PCエンジン版)/神田朱未(Xbox360版)
江戸のショーグンの娘。
江戸のショーグン
声:銀河万丈
江戸城の将軍であり、オロチ丸の育ての親。大門教に騙されて入信してしまう。
マサカド
声:野田圭一(全メディア共通)
PCエンジン版の最終ボス。かつてジパングを支配しようとして火の一族に封印された。


他機種版

No.タイトル発売日対応機種開発元発売元メディア型式売上本数
1天外魔境 ZIRIA
日本の旗2004年12月13日DoCoMo FOMA90xシリーズ
iアプリ
ハドソンハドソンダウンロード--
2天外魔境 ZIRIA
日本の旗2005年11月21日au
EZアプリ(BREW))
ハドソンハドソンダウンロード--
3天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜
日本の旗2006年3月23日Xbox 360ハドソン
レッド・エンタテインメント
ハドソンDVD-ROM--
リメイク版
4天外魔境 ZIRIA
日本の旗2006年6月1日SoftBank Yahoo!ケータイ
S!アプリ
ハドソンハドソンダウンロード--
配信当時はボーダフォンライブ!のVアプリ
5天外魔境コレクション
PC Engine Best Collection
日本の旗2008年7月31日PlayStation PortableハドソンハドソンUMD--
PCエンジン版の移植
6天外魔境 ZIRIA PremiumEdition
日本の旗2010年6月16日iアプリハドソンハドソンダウンロード--
X box 360版のリメイク版
7天外魔境 ZIRIA
日本の旗2010年10月20日PlayStation Portable
PlayStation 3
ゲームアーカイブス
ハドソンコナミデジタルエンタテインメントダウンロード--
PCエンジン版の移植

携帯アプリ版『天外魔境 ZIRIA』

PCエンジン版をベースにしており、ビジュアルシーンはiモーション(ドコモ版)や3GPP2(au版)などで再現している。

Xbox 360版『天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜』

ハドソンXbox 360参入第1弾ソフト。PCエンジン版のリメイク。PCエンジン版で変更・削除された原案要素の一部も取り入れて再構築されている。

Xbox360版キャスト

太字はPCエンジン版から据え置きで同じキャラクターを担当した声優

変更点

仕様変更
ゲームの内容の全てを修正。
ジライアが全編において頻繁に喋るようになった。
2Dから完全3Dに変更。戦闘シーンもパーティーキャラクターが表示されるようになり、攻撃モーションが追加された。

携帯アプリ版『天外魔境 ZIRIA PremiumEdition』

2006年3月に発売されたXbox 360向けRPG『天外魔境 ZIRIA 〜遥かなるジパング〜』をベースにリメイクした作品。3Dグラフィックから2Dグラフィックになっているが、Xbox360版天外魔境 ZIRIA〜遥かなるジパング〜のゲームシステムやストーリー、アニメーションムービーなどを継承している。村人なども新規ボイスとして追加されるなど完全フルボイス化している。ストーリーは12章に分けて配信され、追加ダンジョンやユーザー動向にあわせた機能拡張なども実施。

開発

ゲーム化が決まるまで

「天外魔境」は当初、レッド・カンパニー(現・レッド・エンタテインメント)の広井王子発案による「東洋世界をごちゃ混ぜにした無国籍チャンバラ活劇」という実写映画の企画としてスタートする。設定構築を同社のあだちひろしが行い、主要キャラクターは江戸時代の読本である『自来也説話』『児雷也豪傑譚』の主人公をモチーフとした自来也(本来の読み方は「じらい」だが、ローマ字表記の視覚性を優先して「ZIRIA=ジライ」となった)と、『児雷也豪傑譚』において児雷也と三すくみの関係にある大蛇丸、綱手が設定された。タイトルは小栗虫太郎の小説『人外魔境』にちなんで命名。企画は1986年夏頃に徳間書店へ持ち込まれたが没となった。

同年末、今度は東京ムービー新社との合同企画によるアニメ作品として再構築することとなった。この時、作品のビジュアルデザイナーとしてテレコムの若手アニメーターであった辻野寅次郎がレッドカンパニーに出向(これをきっかけとして、のちに辻野はレッドカンパニーへと移籍)。辻野がビデオアニメ用の企画として暖めていた鬼動丸というキャラクターを主人公の自来也のデザインに採用。しかし最終的にはこのアニメ企画も流れてしまう(ただし、のちにゲーム版のメディアミックスとして東京ムービー新社の手によるOVAが制作され、アニメ化は達成されることとなる)。

その後、東京ムービー新社の仲介でハドソンが紹介され、ゲーム化の企画へと移行した[1]。レッドカンパニーがゲーム企画に携わるのは初めてのことであり、また元々アニメ用に作られた『天外魔境』の企画は当時のゲームソフトには大きすぎたが、ハドソンで開発中であったCD-ROM²であれば形になるかもしれないということで(この段階ではCD-ROM²はおろか、PCエンジンもまだ発売されていない)、1987年8月に正式にゲーム化が決定した[2]

1987年9月頃より『天外魔境 ZIRIA』制作のため、レッドカンパニーにCD-ROM開発機材が搬入され、ハドソンのスタッフが出向[3]。企画もゲーム用に改めて再構築された。ジパングの地形は16世紀のベルギー出身の地理学者アブラハム・オルテリウスが世界地図長に記した世界最古の日本地図を原案としている。前述したように本作はCD-ROM²の開発と同時進行であったため度重なるハードの仕様変更があり、数回の作り直しがあった。

第1バージョン

PCエンジンは当時の主流であったファミコンに比べてスプライト機能が強力ということを受けて、等身の高いキャラクターサイズで制作される。しかしプログラム等に問題が多数発生し、設定を含めて再調整となった(1988年1月頃)。

第2バージョン

エンカウントした際の戦闘はアクションゲームという「アクションRPG」として制作される。キャラクターもデフォルメした等身が低いものに変更。しかし完成直前に問題点が続出した(1988年8月頃)。

第3バージョン

1988年11月頃、当初の発売予定を過ぎても完成の目処が立たないため、広井の大学の先輩であるさくまあきらの『桃太郎伝説』などに携わった桝田省治がスタッフとして加わる(取扱説明書のさくまのインタビューでは広井からの応援要請に応えて桝田を派遣したと言っているが、桝田によれば当時勤めていた広告代理店で本作の広告担当であり、いつまでも発売日が決まらないため催促の電話を入れたのがきっかけで、部外者からスタッフとなっていたとのこと[4])。

あだち自身が後年語っているが、本作のシナリオは「ゲームとして」ではなく「ソフト(作品)として」面白いかを第一に構成されたものであり[5]、ゲームのような一人称視点で展開するには不向きなものだった。また、現場にはあだちのシナリオをゲーム用に修正する専任のシナリオライターがいなかったため、桝田がシナリオをゲーム用に手直しした。次にハドソンのオーダーにより戦闘をオーソドックスなコマンド方式へと変更し、軌道修正されたものが製品版として発売された。この大幅な軌道修正で変更・削除される前の原案の要素は、一部が製品版のタイトル画面後のデモに収録されているほか、あだちの小説版やXbox360のリメイク版で活用されている。

スタッフ

  • 企画:工藤裕司
  • 製作総指揮:工藤浩
  • プロデューサー:大里幸夫、清水始、今井丈雄
  • 原作:P.H.チャダ(『FAR EAST OF EDEN』より)
  • 脚本:あだちひろし(Xbox 360版:荒井弘二)
  • 音楽プロデュース:坂本龍一
  • 美術監督:辻野寅次郎
  • グラフィック監修:岡本敏郎、進藤司
  • 原画:辻野芳輝、堤八郎、相庭よた郎
  • 背景:アトリエ・ラスコー
  • 音楽監督:中神紀之
  • 音楽:小久保隆、成田忍、荒殿卓、越水淳、松本かよ、山口高志
  • マニピュレーター:小原肇、守尾崇
  • 助監督:内村享人、小林正樹、高山昌也
  • システム・プログラム:三上哲、菊池賢次
  • ゲーム・プログラム:中田伸一、山森正和
  • サウンド・プログラム:滝本利昭、星恵太、岩淵貴幸、高橋克昇
  • マップ・デザイン:藤本佳代、久保久
  • アニメーション・デザイン:進藤司、佐藤裕、岡田寿夫、武田真理
  • 動画:岡本敏郎、松浦浩司、輪島智美、佐々木伸、藤井康博
    • SIFCA CORPORATION - 伊藤寿仁、大坪三栄子
    • RED - 水谷謙之介、相庭博人
  • スーパーバイザー:中本伸一、小林敬樹、笹川敏幸、飛田雅宏
  • テクニカル・スタッフ:野沢勝広、本迫芳夫、小山俊典、松下和裕
  • スペシャル・サンクス:高野エマ、広井栄二、野田一行、吉川雄二、家入多佳文、湯沢一毅、水谷健、まきのこうじ、桑原美生、福田正和
  • 協力:青二プロダクション音響ハウス、キャブ、サンプロデュース、スタジオイオン、ティックタックパブリッシャー、東京ムービー新社、トラフィコ、ミュージカル・プラン
  • 総監督:広井王子

評価

評価
レビュー結果
媒体結果
ファミ通30/40点
(シルバー殿堂)
マル勝PCエンジン30/40点
PC Engine FAN25.67/30点[6]
(総合8位)

ゲーム誌「ファミコン通信」の「クロスレビュー」では7・8・8・7の合計30点(満40点)でシルバー殿堂入りを獲得、「マル勝PCエンジン」では9・6・8・7の合計30点(満40点)、「PC Engine FAN」の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、25.67点(満30点)となっている[6]。 また、この得点はPCエンジン全ソフトの中で8位(485本中、1993年時点)となっている[6]。同雑誌1993年10月号特別付録の「PCエンジンオールカタログ'93」では「基本的にはフィールドを歩いていくタイプのRPGで、通常と戦闘の2つのコマンドがあり、戦闘コマンドでは『ぬすむ』などの特殊コマンドはキャラによって変化する。CD-ROM²初のRPGだ」と紹介されている[6]

項目 キャラクタ 音楽 操作性 熱中度 お買得度 オリジナリティ 総合
得点 4.50 4.47 4.18 4.49 3.93 4.11 25.67

関連作品

本作に直接関係する作品のみ。続編やシリーズ作品とそれらの関連作品は「天外魔境」および各ゲームタイトルの記事を参照のこと。

ゲーム

『天外魔境 ZIRIA』(PCエンジン SUPER CD-ROM²用ソフト)
PCエンジンDuoの購入キャンペーンとして対象者先着30,000名に配布された非売品[7]。CD-ROM²版をSUPER CD-ROM²対応ソフトとして作り直した(旧システムカード起動時の警告画面が追加された)ものでゲーム内容自体は同一。ロード回数が減らされているが、引き換えに1回の読み込み時間が4倍になっている[8]

ゲームブック

『天外魔境 魔城の聖戦』(1989年10月12日発売、双葉社
著:樋口明雄

小説

『天外魔境 FAR EAST OF EDEN』(1989年11月1日発売、角川書店
著:P.H.チャダ、編訳:あだちひろし、編集:レッドカンパニー
『天外魔境(2) 大門招来編 上の巻』(1991年5月1日 角川書店)
著:P.H.チャダ、編訳:あだちひろし、編集:レッドカンパニー
『天外魔境(3) 大門招来編 下の巻』(1991年11月1日、角川書店)
著:P.H.チャダ、編訳:あだちひろし、編集:レッドカンパニー

ムック

『天外魔境 ビデオ&ゲーム大集成』(1990年10月20日発売、角川書店)
OVA版の紹介を中心に「天外魔境」の設定や制作裏話などを掲載したムック

サウンドトラック

『天外魔境 自来也おぼろ変 映像的電子蓄音盤』(1990年8月21日発売、ビクター音楽産業
OVA版のサウンドトラック
『天外魔境 ヒストリー・パーフェクト・グラフィティ』(1993年12月21日発売、NECアベニュー
OVA版、『天外魔境II 卍MARU』、『天外魔境 風雲カブキ伝』からピックアップされた曲を収録。
『ハドソンCD-ROM²音楽全集』
CD-ROM²用ソフト『うる星やつら STAY WITH YOU』(CD付属版)に同梱されていたもの。ハドソンのCD-ROM²ゲームのBGMが複数収録されており、その中に坂本龍一が作曲した本作のBGMが3曲収録されている。

OVA

『天外魔境 自来也おぼろ変』
VHS:『上之巻』1990年7月27日発売、『下之巻』1990年8月24日発売 発売元:タカラ
DVDPS2用ソフト『天外魔境III NAMIDA〜宝箱(デラックスパック)〜』(特別限定版)の付属特典
  • 主題歌「FAR EAST OF EDEN」
作詞:広井王子、作曲:田中公平、編曲:岩崎文紀、歌:ギャロップ(伊倉一恵神代知衣坂本千夏
  • 挿入歌「天外魔境 ZIRIA」
作詞:広井王子、作・編曲:岩崎文紀、歌:岩田光央withギャロップ

OVA版スタッフ

OVA版キャスト

脚注

  1. ^ 『PCエンジンカプセル特別版 天外魔境 風雲カブキ伝 出撃の書』(小学館)のムックに記載された広井の記述によると、レッドカンパニーが手がけた食玩シリーズ『ネクロスの要塞』のヒットを見たハドソンからレッドカンパニーに直接「『ネクロスの要塞』のような企画をゲームとして作って欲しい」というオファーがあったとされているが、『天外魔境 ビデオ&ゲーム大集成』(角川書店)に掲載されたあだちの手書きによる当時の社内回覧板では「ハドソン、東京ムービーの線でまずゲームを作る線から話が始まっている」との記述がある。
  2. ^ 契約締結の交換条件として、レッドカンパニーがサンライズに出していたがタカラ以外にスポンサーが見つからず没へと傾きかけていたアニメ企画『魔神英雄伝ワタル』のスポンサーにハドソンがついた。
  3. ^ 当時のレッドカンパニー事務所では手狭だったため、ハドソンの出資により浅草の五階建てビルを丸ごと借りて引っ越している。
  4. ^ 本作をきっかけに桝田はサラリーマンからゲームクリエイターへと転身することになった。
  5. ^ GC版『天外魔境II MANJIMARU』初回特典の付属小冊子『覚醒之書』より。
  6. ^ a b c d 「10月号特別付録 PCエンジンオールカタログ'93」『PC Engine FAN』第6巻第10号、徳間書店、1993年10月1日、44頁。 
  7. ^ 実際には余剰品が市場放出され中古ソフトとして秋葉原等で単体販売もされた。
  8. ^ 高橋名人のブログ2009年12月23日記事

外部リンク