かくりよものがたり

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かくりよものがたり
ジャンル 青年漫画
オカルトファンタジー
バトルアクション
サスペンスホラー
漫画
作者 藤崎竜
出版社 集英社
掲載誌 週刊ヤングジャンプ
レーベル ジャンプ・コミックス
(JC ヤングジャンプ)[注 1]
発表号 2013年32号 - 2015年4・5合併号
発表期間 2013年7月11日 - 2014年12月25日
巻数 全8巻
テンプレート - ノート

かくりよものがたり[注 2]は、藤崎竜による日本の漫画作品。『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2013年32号より 2015年4・5合併号まで連載された。

概要

  • ミラクルジャンプ』(集英社)No.12にて読切版が掲載した後、読切版をアレンジした上で『週刊ヤングジャンプ』で本作の連載が開始された。
  • 過酷な運命を持つ姫「アメ」と彼女の幼馴染「サルタヒコ」の物語が描かれている。話数カウントは「第○[注 3]話」(番外編は「間(アイ)○[注 4]」と表記される)。
  • 本作の舞台は現在の日本とされるが、地名の呼び方が旧名だったりするなど、「架空の日本」となっている。
  • 生死を扱った作品であるため、衝撃的な表現が多く、怨霊が人間を虐殺するシーンなどのグロ描写も多数見られる。
  • 単行本の表紙には、単行本収録のエピソードが掲載された『週刊ヤングジャンプ』の発売日を年月日で記載している。

あらすじ

東北地方のとある山中に存在する霊場・カミツヨミド。そこは、人間に有益をもたらす御霊が住む場所である。カミツヨミドに所属する少女・アメと、彼女の幼馴染である青年・サルタヒコに課せられた使命は、現世で暴れる怨霊を鎮めること。

その一方で、かつてカミツヨミドに所属していたアメの姉・ワタと、彼女の従者であるタケミカヅチは、怨霊都市・トヲツカムナビを築き、怨霊が自由に人間を殺すことができる「かくりよ時代」を現世に創ろうとしている。

カミツヨミドとトヲツカムナビ、ふたつの勢力の戦いを軸に話が展開されていく。

登場人物

日本神話の神にちなんだ名前が付けられた者、歴史上の人物が登場している。

主要人物

サルタヒコ
本作品の主人公学ランのような服装をした青年[注 5]。柴生から「サルくん」とも呼ばれる。アメと共に怨霊に関する様々な事件を解決している。
ぶっきらぼうな言動をとるが、いわゆるツンデレであるため、根は優しく情に厚い性格。実家はパプリカを生産する農家で、将来は親父の後を継ぐことを夢にしている。
元は普通の人間だが、アメを守るためにカミツヨミドに所属して以降、怨霊との戦いによる損傷で、頭と心臓以外、身体の大半をカラクリ(機械)に変えたサイボーグとなっている。天璽瑞宝十種の一つ「蛇比礼」を武器にしている。
幼少時は田舎暮らしをしており、6年前にカミツヨミドに忍び込んで遊んでいたところを、アメとワタの姉妹と出逢い、以降友達になる。共に過ごすうちにワタの姫としての過酷な運命を知る。3年前、ワタの死後数日でお力がアメに移った際には、「他の奴らが数万人が死ぬより、アメが死ぬほうが悲しい」と、アメが姫になることに対して強く反発した。その以降、アメを守ることだけを考えるようになり、厳しい鍛錬にも耐えてきた。「アメの寿命を1秒でも延ばすためなら悪魔にも魂を売る」と言う強固な意志を持つ。
ニギと共闘した際、始めは彼女の悪臭を嫌悪していた。だが、彼女の能力がアメの負担を減らす役に立つと踏まえ、仲間に入るようにたきつけた。その後も、ニギに無理難題を押し付けて利用し、成し遂げた褒美にはアメをあげるという、飴と鞭で彼女を操っている。しかし、ニギに危険が及んだ場合、身を徹して守るなど、決して非情ではない。
アメ
本作のヒロイン。「お力」を宿すカミツヨミドの姫。「アメ姫」とも呼ばれる。サルタヒコと共にその「お力」を使って怨霊に関する様々な事件を解決している。仕事以外の時間は、世阿弥に勉強を教えてもらっている。
「お力」を使い続けた影響で肉体が加齢(成長)している。現在の肉体年齢は17歳位で、外観はナイスバディな巨乳の持ち主であるが、実年齢は11歳である。サルタヒコとは6年来の幼馴染。なお、お力は元々ワタに宿っていたものが、彼女の死後移ったものである。
献身的な性格で、誰に対しても優しく接する。ただし、早とちりしやすい面があり、不用意にお力を使ってしまってサルタヒコから怒られることもある。
かくりよ城に突入した際に、弁慶によって城を破壊され、海に溺れて心肺停止状態に陥るが、サルタヒコのAEDによる救命処置で助かる。村正の事件の時は、まだ完全に回復しなかったため、世阿弥の計らいで休務する。
お力により、彼女の身体からは多幸感を生じさせる薫香を発している。これには、ニギの悪臭を相殺できる効果もあるが、その効力は約30mが限界。
ニギ
怨霊使い。ペットの怨霊3体(トト丸・チャチャ丸・サナダ丸)を扱う。顔の一部以外を覆う服装に、長いドレッドヘアーを持つ。一人称は「ぼく」で、語尾に「でし」を付ける。その容姿や言動とは裏腹に、アメと同じく11歳の少女である。
ペット怨霊が喰らうことで怨霊を退治している。ペット怨霊3体を2つの大きな拳にして戦う「攻撃(バトル)モード」、ペット怨霊に自身を憑依させて肉体強化を図る「怨霊憑依」などの技がある。
彼女の一族は400年以上も怨霊と暮らしてきた。怨霊は清潔を嫌うため、生まれてから一度も風呂に入ったことが無い。そのため、身体は不潔で強力な悪臭を放つため、他者から忌み嫌われ、清潔を好むカミツヨミドとは相成れない関係だった。自身もそのことを気にして、他人と極力接しないように生きていた。
ゆえに他者の言動に敏感で傷つきやすい。だが、自分に対して真摯に接してくれるサルタヒコとアメに好意を抱き、徐々に心を開いていく。また、図に乗りやすい面もあり、暴走することもある。
ペット怨霊は怨霊を食べると、お腹に怨念が溜まり、「黒傾向」になって人間を襲うため、浄化作用のある金塊を定期的に食べさせている。そのため、彼女の家には借金が3兆円あり、嫌でも働かなければならない要因となっている。
体調不良だったアメの代わりに、カミツヨミドから報酬1兆円の依頼を受けて、サルタヒコと共に村正と戦う。怨霊使いの後を継いだばかりで、村正との戦いが初陣だった。サルタヒコのアドバイスで村正に善戦し、弱体化させることに成功。仲間にしようとするサルタヒコの計らいで、カミツヨミドへついて行くが、世阿弥の猛反対に遭う。しかし、アメがとても気に入り、ニギ自身もアメを好きになり、お互いに友達になること誓う。それを見た世阿弥は反発するものの、せめて洋服を取り替えることをペット怨霊に頼み、最終的にカミツヨミドに住まわせることを認めた。
その後もサルタヒコの指揮のもとに行動しているが、都合のいいように利用されている。ニギ本人はそのことを疑っていたこともあるが、自身に危険が及んだ際に身を徹して守ったサルタヒコの姿を見て、今まで通りに慕い続けている。

カミツヨミド

御霊

世阿弥(ぜあみ)
カミツヨミドに暮らす御霊の一人で、アメやサルタヒコに指示を出す司令官的存在。アメの教育係でもある。
サルタヒコの帽子の紋章に、勝手に超小型カメラを埋め込んで、サルタヒコ達の状況を常時把握している。
元々は怨霊であり、その当時の姫を安易に殺害するほどの、強大な力を持っていた。
不潔で悪臭を放つニギに対して強い嫌悪感を示していたが、洋服を取り替えることを条件に、カミツヨミドに居すわせることを渋々和解した。
咲夜に口寄せされ、演目「」によって千利休を倒したが、全く覚えていない。
卑弥呼(ひみこ)
カミツヨミドに暮らす御霊の一人。全裸で目隠しをしている。常に池で過ごし、予知能力で怨霊の襲撃を備える役割をしている。元々は怨霊だった。
千子村正戦以降、予知能力が使えなくなり、深く悩んでいる。
沖田総司(おきた そうじ)
カミツヨミドに暮らす御霊の一人。サルタヒコの修行の師匠。剣を持つと厳しい性格に変わるが、普段は子供が好きで、サルタヒコを可愛がっている。元々は怨霊だった。
咲夜に口寄せされていたが、世阿弥同様、覚えていない。
北里柴三郎(きたざと しばさぶろう)
カミツヨミドに暮らす御霊の一人。ニギの悪臭の検証実験で倒れた柴生を治療した。

人間

柴生富良夫(しぼう ふらお)
サルタヒコとアメに偶然出会ったサラリーマン。22歳。
穢土で、彼女[注 6]の誕生日プレゼントを持って帰る途中で、怨霊の岡部菊外に襲われる。そこをサルタヒコ達に助けられるが、彼らをただの子供と思ってかばい、岡部に斬り殺されてしまう。一度死亡した直後、アメに命を救われた。その後は恩威からカミツヨミドに転職する。
カミツヨミドでの仕事は主に雑用で、アメの薫香がニギの悪臭を相殺する有効距離はどこまでなのかを実験する「カナリア」として使われたりと、散々な扱いを受ける。
名前の由来は「死亡フラグ」。
山田一郎(やまだ いちろう)
陸上自衛官の男。迷彩服の上に防弾チョッキを身に付け、さらにウサギの耳のようなチャームポイントが付いたフード付きのポンチョを纏っている。ガスマスクを付けているため素顔は判らない。
他の自衛官からは「伝説の自衛官」と呼ばれる有名な存在。多くの戦闘経験を積んでおり、どんな不可能な任務でも必ず遂行して生還してきたことから、「不死(アンデッド)軍曹」とも呼ばれている。並外れた運動神経を持つ。
善住坊による2km先からの狙撃に気付き、アメを守るために咄嗟に彼女を担いで避ける。サルタヒコに狙撃があった方向を教え、アメを命にかけても守ることを誓う。ピントと蘭丸の攻撃にも耐えた。
蘭丸戦以降はアメ達と行動を共にしている。
黒服(くろふく)
カミツヨミドで働く人間達。サングラスをかけ、上下黒色のスーツを纏い、銃で武装している。彼らの任務は、カミツヨミド内の警備、要人の応対、ワタの拠点の捜索など、多岐に亘る。彼らにとって、カミツヨミドは居心地が良いらしく、家族を呼ぼうと考える者もいる。

トヲツカムナビ

首謀者

ワタ
アメの双子の姉で、前代の姫。「ワタ姫」とも呼ばれる。アメと同じく巨乳の持ち主で、露出度の高い服装をしている。物語開始時点の6年前から姫としての仕事を行っており、3年前に魂をすり減らして老衰死したが、黒幕の一人として姿を現す。
その正体は、タケミカヅチが、ワタの遺体に童の怨霊を乗っ取らせて復活させたもの。ただし、人格は生前のワタのものでも、童の怨霊でもない、全く別のものである。
一人称は「わたち」で、子供染みた独特の口調で話す。また、「黄泉返らせる予定の怨霊でBL妄想をする」「自分が乗る飛行船や潜水艦に歴史上の人物をイケメン化した(痛車のような)イラストを描く」など、その言動は腐女子そのものである。
「死者にしか興味が無い」と明言し、怨霊に対しては非常に前向きな思考で支持しており、「お力」で黄泉返った怨霊が、自由に怨念を晴らせる「かくりよ時代」を作ることを目的にしている。
本来のワタの魂は、過去の姫共々アメのお力の中に存在している。森蘭丸戦では、劣勢に陥ったアメの前に現れ、彼女を勇気づけて蘭丸に対処するヒントを与えた。
タケミカヅチ
黒幕の一人で、ワタの従者の男性。天璽瑞宝十種の一つ「死返玉」を武器にしている。
かつてはカミツヨミドの神官だった。ワタの遺体を無断で持ち出し、那古野に出現した童の怨霊に彼女を乗っ取らせた。
タケミカヅチの魂は幽界にあり、周りの怨霊を飲み込んで、禍々しい姿をしている。ワタは彼の魂を救うことも目的としている。
トヲツカムナビに拠点を移してからは現地での偵察任務に従事している。
厩戸皇子(うまやどの おうじ)
トヲツカムナビでナンバー2の実力を持つ怨霊。ワタの考えに強く賛同し、かくりよ時代を作る計画は彼の計算の基に推進している。ゆえに計画に支障が出るようなことがあると苛立ちを示す。
10人と同時に精神感応できる能力を持つ。双方向通信可能。また、精神感応した人物の脳をハッキングして乗っ取り、現地の様子を知ることも出来る。計画発動直前の千子村正戦から、精神感応によって卑弥呼の予知能力の妨害を行っている。
人間(特に日本に住む者)に対して強い憎しみを持っている。他者を見下しており、ワタとタケミカヅチに対しても、毒舌を吐くことがある。
大豆首相のテレビ演説を乗っ取り、計画発動を宣言。生者に対して宣戦布告を行う。

大怨霊

武蔵坊弁慶(むさしぼう べんけい)[注 7]
2年前にワタによって黄泉返った怨霊。黒い霧のようなもので、眼が覆われており、表情を判別することは不可能。スタンドマイクを手にする。作者によると、「勘違いキャラ」としてデザインしており、マイクやサングラス代わりの黒いモヤなど、キャラがわかりやすい小物(モチーフ)を足したと述べている[出 1]
ワタのお気に入りの怨霊であり、当の弁慶も自分を黄泉返らしてくれたワタを慕っている。
厩戸の命で、かくりよ城に攻め込むカミツヨミドを足止めし、ワタとタケミカヅチを逃がすために登場。城内に乗り込んできたサルタヒコとアメと対面するが、子供二人を自らの手で殺すことを矜持が許さないとし、かくりよ城を破壊して圧死させようとした。
登場時は上級怨霊とされていたが、計画発動後は大怨霊の一人であることが明らかにされた。阿麻弥大島を拠点に台風を起こし、沖縄地方を封鎖する。
千利休(せんの りきゅう)
戦国時代から安土桃山時代にかけての茶人わび茶の完成者であり、「茶聖」と称せられる。
大怨霊の一人で、北加伊道サリ・ポロ・ペッ市にて台風を起こし、北加伊道と北東北を封鎖していた。茶筅で時空を点てる(歪ませる)攻撃を使う。
しかし、咲夜によって退治されて弱体化し、デフォルメされた姿となって小さくなってしまう。咲夜からマスコットキャラクターのような扱いを受け、反抗するものの逆に手酷い仕打ちを受ける。
平賀源内(ひらが げんない)
江戸時代中期に活躍した発明家。大怨霊の一人で、信越地方に台風を起こしている。
森蘭丸と蘭丸鉄砲隊
森蘭丸(もり らんまる)
戦国武将・織田信長小姓だった美童本能寺の変で信長と共に亡くなった。信長は幽界の底へ沈んだが、蘭丸は信長を仇なした者を許せず怨霊になった。上半身の露出度が高い服を着ている。青い髪を持っており、髪型は『ドラえもん』の骨川スネ夫をモチーフとしている[出 1]
大怨霊のひとりで、出羽国優嗜曇郡米沢(ヨナサワ)市で台風を起こし、南東北北関東を勢力下に置いていた。
使用武器は無数に生成される火縄銃デザートイーグル
厩戸から以下の3人の配下「蘭丸鉄砲隊」[注 8]を宛てがわれている。だが、3人はいずれも、生前に主君の信長を危機に陥れた過去を持っていた。厩戸はこの3人を配下に付けることで、蘭丸の恨みを暴発させて、人間を大量に殺させるように仕組んでいた。
ピントの砲撃で火の海になった米沢市内の光景から、死に際に体験した本能寺の変の様子を思い出して暴走。厩戸の謀と知りつつも、蘭丸鉄砲隊を次々と銃撃で消滅させた。その後、怨念を鎮める存在であるアメ殺すことで怨念を晴らし、成仏しようとする。
サルタヒコ達の抵抗を押しのけ、アメを追い詰める。しかし、アメのお力によって怨念をほとんど浄化され弱体化。恨みが消える前に自ら死を選ぶとし、デザートイーグルで自決した。
杉谷善住坊(すぎたに ぜんじゅぼう)
金ヶ崎の戦いから岐阜城へ帰る途中だった織田信長を狙撃した男。逃亡の末に捕まり、製のノコギリで数日かけて首を切断する、鋸挽きの刑に処された。虚無僧のような姿をしており、ふざけた口調で話し、語尾に「(笑)」を付ける。
上級怨霊で蘭丸鉄砲隊の一人。使用武器はL96A1[注 9]。その腕は2km先の目標を正確に狙撃できるほど。鋸挽きの刑で首を切断されたためか、身体が細かく分裂し、それぞれが一体の姿になることが可能になっている。
山中に潜んでアメを狙撃しようとしたが、それに気づいた山田がアメを担いで避けられた。その後、自分に向かってくるサルタヒコとニギを狙撃対象に変更する。
サルタヒコが仕掛けた捨て身のおとり作戦によって捕縛される。雑賀に見限られたうえに、暴走した蘭丸の銃撃で消滅させられる。
雑賀孫市(さいか まごいち)
鉄砲集団「雑賀衆」の棟梁。石山合戦本願寺側に付き、織田信長の軍と戦った。スーツのようなデザインの着物に、ホンブルグ・ハットをかぶる。独特の顎髭を持ったダンディな容姿をしている。普段は帽子の陰に隠れて目線が見えない。
上級怨霊で蘭丸鉄砲隊の一人。武器は2挺のイングラムM10。蘭丸鉄砲隊の中では理性的な考えの持ち主。
蘭丸のもとで善住坊の戦いを傍観し、独断で砲撃を開始したピントを止めようとした。しかし、恨みが暴発した蘭丸を目の当たりにし、銃撃を加えるも通用せず、消滅させられた。
フェルナン・メンデス・ピント
ポルトガル人冒険家。「1544年鉄砲を初めて日本に伝えた人物の一人」と自伝に書いた。
上級怨霊で蘭丸鉄砲隊の一人。2門のフランキ砲を武器にする。
独断でアメを葬ろうと砲撃を多数行った結果、米沢市内は火の海となり、蘭丸の暴走を誘発させるきっかけを作ってしまう。信長の敵に優先的に銃を売りつけていた過去があったため、暴走した蘭丸に消滅させられた。

その他の怨霊

岡部菊外(おかべ きくがい)
ワタによって黄泉返った剣客。幕末にいた、81人を斬ったとされる辻斬り。人を斬ることが三度の飯より好きだった。
穢土で辻斬りを行おうとし、柴生を斬り殺した。その後も辻斬りのために現れたところをサルタヒコの妨害を受けて暴走。だが、暴走を阻止されたところをアメに浄化され、正気を取り戻した。その後は怨霊による一連の事件の手がかりを与えた。
吉志火麻呂(きしの ほまろ)
ワタによって黄泉返った防人奈良時代農民で、穢土に残した妻に会う口実に利用するため、連れて来た母親を殺害しようとしたところ、地割れに巻き込まれて死亡した。ワタはイケメンを想像して悶えていた[注 10]が、実際の容姿は中年男性であり、がっかりされる。
筑四に出現し、通りかかった小学生達を襲ったが、サルタヒコとアメによって退治された。現在はカミツヨミドで御霊として過ごしている。
佐田三兄弟(さだ さんきょうだい) / 彦四郎(ひこしろう)、神五郎(しんごろう)、小鼠(こねずみ)
ワタによって黄泉返った忍者三兄弟。戦国時代中国地方は毛利方の武将、杉原盛重配下の忍び。裏切りに遭って死んだため、肉親以外の人間を信じられず、強い恨みを持っている。
吉志火麻呂の伏兵として召喚された。分身の術を使い翻弄させるが、蛇比礼で捕獲され浄化を受けた。現在はカミツヨミドで御霊として過ごしている。
千子村正(せんじ むらまさ)
室町時代に活躍した伊勢国桑名刀工。とにかく人を良く斬れる刀を目指し、戦場での使用に耐えうる頑丈な刀作りを諭す師匠と決別。真の意味で刀を完成させていない(人を斬って完成させる)という怨念により怨霊となった。鉄を鍛錬する際、自傷した血を振り掛けて不純物を取り除いていたため、全身傷だらけである。使用武器は妖刀で、これに斬り殺された人間は怨霊化する。刀は自身の身体から無数に作り出すことができる。
穢土で通勤電車内に突然現れ、乗客と乗務員を皆殺しにしたあと、彼らの怨霊を駅構内で襲わせた。この時、卑弥呼の予知が降りず、対処が遅れたために甚大な被害をもたらした。サルタヒコとニギとの戦闘の際、怨霊と一体化したニギの力に圧倒され、最後は全ての刀を1本の強力な刀に作り変え、「最高の一振り」を仕掛けるが、ニギのパンチに圧し折られる。その瞬間、師匠の言葉を思い出して弱体化。サルタヒコに捕縛され、アメに浄化してもらうべくカミツヨミドへ連れて行かれた。

その他

咲夜(サクヤ)
恐山イタコの少女。16歳。「恐山ご当地アイドル」として、メルヘンチックな設定を作ってアイドル活動をしている。しかし、本来のがめつい性格が表に出ることも多い。ニギは彼女のファンの一人である。
アイドル活動は、あらぬ誹謗中傷によって無念の死を遂げたイタコである祖母の名誉回復と、イタコの地位向上のためであるが、咲夜本人は「ダサい」としてその話を嫌がる。
イタコの能力である「口寄せ」を使って、憑りついた霊そのものの姿と能力を伴って戦う。なお、口寄せされた霊は、その時の記憶がない。
武器として天璽瑞宝十種の一つ「奥津鏡」を所持している。
北加伊道サリ・ポロ・ペッ市にて、大怨霊であった千利休を、沖田総司と世阿弥を口寄せして倒した。この時の模様が「怨霊退治バラエティー咲夜におまかせ」として北加伊道の地方TV局で放映され、日本国内のみならず、インターネットを通じて全世界で人気が波及する。
カミツヨミドに所属して怨霊退治を共に行うことを、横柄な態度で話すサルタヒコに反発する。
黒沢(くろさわ)
北加伊道地方TV局のカメラマンの男。北加伊道にて千利休を退治する咲夜を撮影して以降、彼女の行動に同行している。
咲夜からは「クロトワ」と呼ばれる。撮影の途中で勝手に咲夜の祖母の話を持ち出して、感動話に持っていこうとするため、煙たがられている。
大豆首相(マメ しゅしょう)
政党自慢党」の党首で、日本の内閣総理大臣。語尾に「ダス」を付ける。
経済政策マメノミクス」のテレビ演説中に、厩戸にテレビジャックされ、怨霊による生者への宣戦布告をされる。その後テレビで、大怨霊達が起こした台風と、台風下に存在する大量の怨霊について、国民に報告して注意喚起するが、背後から低俗霊に襲われてしまう。生死は不明。

世界観・用語解説

世界関連

日本(にほん)
本作においていわゆる「架空の日本」として描写されており、地名は旧国名のままである。
カミツヨミド[注 11]
東北地方のとある山中に古くから存在する霊場。数多くの御霊が暮らす秘境で、地図にも記載されていない。
トヲツカムナビ[注 12]
ワタ達が拠点とする怨霊都市。ワタによって黄泉返った数百・数千もの怨霊が収容されている。
かくりよ城(かくりよじょう)
某海・某島にある、ワタとタケミカヅチが劇中初期に拠点としていた建造物。カミツヨミドに発見されて乗り込まれるが、弁慶がサルタヒコとアメを殺害するために破壊した。
幽界(かくりよ)
死者(霊)の世界。海の中にいるような光景が広がっている。この海のような液体は「魂のスープ」と呼ばれる。
人は死ぬと幽界に漂うことになる。未練が無い霊では一ヶ月ほどで幽界の底に着き、魂のスープに溶ける。魂のスープの泡がはじけ、そのしぶきが境界を越えて現界に飛んでいき、妊婦の内に宿ることで、新たな魂となる。
現界(あらわよ)
生者の世界。現世を指す。

アイテム・能力関連

天璽瑞宝十種(あまつしつしのみずたからとくさ)
日本神話において饒速日命が地上に降りる際、天の神より授ったとされる十種類の宝。半数が行方不明とされる。
蛇比礼(おろちのひれ)
サルタヒコの瑞宝十種。無限に伸びる注連縄。怨霊を捕縛するために使われる。通常は怨霊の十方位を縛る。
死返玉(まかるかへしのたま)
タケミカヅチの瑞宝十種。巨大な2つの勾玉。詳しい能力は謎であるが、蛇比礼を跳ね返す力があることは作中で描写されている。
奥津鏡(おきつかがみ)
咲夜の瑞宝十種。錫杖。元々は咲夜の祖母が所有していた。本体には「奥津鏡」と書かれている。咲夜自身は「プリセンス・ナイトブラッサム マジカルスティック5(ファイブ) GOGOGO」という名前を付けている。
お力(おちから)
特定の女性=「姫」にしか使えない能力。自らの寿命(魂)を削って、怨霊を浄化したり、死者を黄泉返らせることが出来る。そのため、お力を持つ者(姫)は黄泉返ることができない。
太古より清らかな心の持ち主に宿ってきた力である。しかし、世界中に適任者がいなかった場合、お力は姿を隠してしまい、人間は怨霊に対抗する術がなくなる。そのために数千・数万人が犠牲になった時代があったという。
死後3日以内であり、死体の損傷が少なければ、黄泉返らせることが可能。世界中の要人で長生きしている者が多いのは、姫によるお力のおかげである。それゆえ、姫の権威は非常に高い。
死者を黄泉返らせる方法は、姫が地面に幽界への入り口を作り、そこへ腕を入れて[注 13]、霊に黄泉返りたいかどうかを問う。霊が同意して腕に掴まると一気に引っ張り上げ、霊と死体が重なることで生き返る。ただし、特定の個人を黄泉返らせる場合、生前の名前が判らないと、言霊の力で魂の居場所が突き止められない。また、力を使うと気絶してしまう。
ワタの場合は、怨霊を幽界から黄泉返らせるためにお力を使う。その際、幽界へ腕を入れると、痛みを伴ううえに肉が溶けて骨が剥き出しになり、黄泉返らせた後は気絶する。損傷した肉体は、気絶後、そのまま数日間眠り続けることで再生する。お力を使うほど肉体の損傷が激しくなり、再生にはより時間がかかる[注 14]。また、怨霊の名前が判らないと言霊の力が発動せず、黄泉返らせることができない。
また、怨霊に浄化の光を浴びせて御霊にする力もある。事実上、怨霊はこの力以外では倒せない。アメが怨霊を浄化する際、肉体に起こる加齢数は、低俗霊で3ヶ月、上級怨霊で5ヶ月ほどとされており、大怨霊についてはまだ判明していない。
怨霊使い(おんりょうつかい)
「怨霊には怨霊」という方針で、怨霊を駆使し退治する者。

霊関連

怨霊(おんりょう)
怨みを含む未練の感情によって汚れた霊の総称。虚数のエネルギーの塊。
その生に対する強い執着によって、幽界の引力に逆らって境界にとどまろうとしており、通常は何百年経てば、怨念が消えて幽界の底へ沈んで行く。だが、まれに現界へすり抜けることがある。通常は10年に2、3体が現界に現れれば多い方とされており、最近はワタ達の暗躍でひと月に10体以上出現する異常事態となっている。怨霊が現れる場所では、ゲリラ豪雨竜巻が発生するなどの急激な天災が起こる。なんらかの方法で未練が無くなると御霊となり、幽界へ帰る。
知名度が高い人物の怨霊ほど、強力になりやすい傾向にある。これは生者が死者を思う感情が、幽界へ渡り、成仏していない怨霊の力を増大させる結果となるためである。
怨霊には力によってランクがあり、以下の3つに分けられる。
低俗霊(ていぞくれい)
人を殺したいという単純な怨念しか無い怨霊。身体は黒色で、大きな白目と大きな口を持った外観をしている。武器は持たず、口で生者を食い殺す。2、3人殺せば満足して成仏する。
上級怨霊(じょうきゅうおんりょう)
より明確で強い怨念を持った怨霊。外観は生前の人間の姿であるが、その実体は20〜30mに及ぶ。生前当時の理性があり、攻撃方法も武器を使った、多彩なものになる。数十・数百・数千人の人間を殺さないと満足しない。ダメージを受けると低俗霊のような醜い姿に変化し、理性も保てなくなる。
大怨霊(だいおんりょう)
強大な力を持つ怨霊。厩戸皇子の直属であり、大智(だいち)大義(だいぎ)大信(だいしん)大礼(だいらい)大仁(だいじん)大徳(だいとく)の6人が存在する。
台風を起こさせるほどの巨大な怨念を持つ。しかし、普段は超理性的な存在で、自分の恨みは恥と思い押さえ込んでいる。しかし、その恨みが暴発した場合の力は計り知れない。
御霊(ごりょう)
怨霊が人に益をもたらすようになった状態。ある程度現界に留まって満足すると幽界へ帰っていく。
未練玉(みれんだま)
怨霊が御霊になる際、未練を抜かれて封じ込まれた玉。カミツヨミドで保管されている。
かくりよ時代(かくりよじだい)
ワタ達が推進している計画。「死人に口なし」に無念の死を遂げた怨霊が、現界で自由に怨念を晴らせる時代にすることが目的。
その後、この計画は実行に移される。概要は、6体の大怨霊が日本各地に散らばり、怨念で停滞性の台風を起こして航空機・船舶を欠航させてることで日本を封鎖し、配下の怨霊達が自由に人間を殺戮するというものである。

書誌情報

読切版「アメとサルタヒコ」

『ミラクルジャンプ』No.12に掲載された。

脚注

注釈

  1. ^ 『週刊ヤングジャンプ』に掲載された漫画は、通常ヤングジャンプ・コミックスレーベルで単行本が発行されるが、本作は『週刊少年ジャンプ』などと同じジャンプ・コミックスレーベルから発行されている。そのため、判型がヤングジャンプ・コミックスのB6判よりも小さい新書判であり、定価も安い。
  2. ^ タイトルロゴには「幽界靈語」の漢字表記もある。
  3. ^ 漢数字。
  4. ^ アラビア数字で、読みは英語。
  5. ^ 第十七話で車の運転をしていたことから年齢は18歳以上。
  6. ^ 名前は「のり子」。劇中未登場。
  7. ^ 第十六話では「(自称)」となっている。
  8. ^ 蘭丸鉄砲隊自体は3人が勝手に結成したチーム。
  9. ^ コッキングハンドルの取り付け位置が、実銃とは反対側である。
  10. ^ 夏コミに向けてキャラクターデザインまで始める始末だった。
  11. ^ サルタヒコが運転していた車のナンバープレートには「上津黄泉戸」の漢字表記が認められる。
  12. ^ 三十一話で描かれた風景には、「遠津神奈備」の漢字表記が書かれた看板が建物に設置されている。
  13. ^ 幽界にいる霊の目線では、水面から腕が伸びてくるように見える。
  14. ^ 佐田三兄弟を黄泉返らせた際は、頭の一部と腕と腹部の肉が溶け落ち、タケミカヅチに「再生するのに5日はかかる」と言われている。

出典

  1. ^ a b 『週刊ヤングジャンプ』2014年8号「YJ必修マンガ講義 2014年1月期 第2回 “キャラデザ”論II」

集英社BOOK NAVI

以下の出典は『集英社BOOK NAVI』(集英社)内のページ。書誌情報の発売日の出典としている。

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