新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)

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新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)(あたらしい「りょうげもん」(じょうどしんしゅうのみおしえ))とは、2023(令和5)年1月16日に浄土真宗本願寺派(西本願寺)の大谷光淳(専如)門主が消息[1]として発布したものである。

なお、本項ではこれをめぐり在野において指摘されている問題点やその後の動向[2]についても記載する。

発布に至るまでの動向[編集]

領解文[編集]

本願寺教団においては蓮如による領解文(改悔文)を、浄土真宗の教義を会得したままを口にして陳述するものとして改悔批判や法要後など様々な場面で出言してきた。その内容は簡潔であり、当時の一般の人にも理解されるように平易に記されたものであった。 しかし、当然ながら時代とともに当時の文言は古語となっていった。浄土真宗本願寺派においては、その肝要が伝わりにくくなっていることが問題とされ、21世紀になり「現代版領解文」の制定とその方法決定が長らく検討されてきた。

浄土真宗の救いのよろこび[編集]

2005(平成17)年、親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の一環として、教学伝道研究所に「教学・伝道の振興にかかる企画制定委員会」を設置。浄土真宗のみ教えを現代の人々に親しみやすい表現によって示し、正しく領解した上で味わいを深めることのできる文章の制作が企画される。その研究成果として、『領解文』のよき伝統とその精神を受け継いだ「浄土真宗の救いのよろこび、ならびに『御文章』のよき伝統とその精神を受け継いだ「親鸞聖人のことば」シリーズにまとめられる。

2009(平成21)年7月、「『拝読 浄土真宗のみ教え』編集委員会」の企画を経て、「浄土真宗の救いのよろこび」「親鸞聖人のことば」を収めた『拝読 浄土真宗のみ教え』が刊行される。一人でも多く、浄土真宗の教えに触れ、味わいを深めることをねらったもので、布教の場面でも活用されることとなった。

門主交代後[編集]

2014年6月5日に大谷光真が本願寺派門主を退任し、翌日に大谷光淳が継承する。

2016年10月1日より、法統継承を仏祖に奉告し、宗門内外に披露する伝灯奉告法要を翌年5月31日にかけて10期80日間つとめる。この初日に親教「念仏者の生き方」を示す。

『拝読浄土真宗のみ教え』の制作意図を尊重しつつ、「念仏者の生き方」によって示された生き方を、『拝読浄土真宗のみ教え』に掲載する必要があるとして、『拝読浄土真宗のみ教え』改訂編集委員会が設置される。2018年9月30日に委員会より報告書が提出され、総局において文言をふくめて、検討、決定するよう一任した。

2018年11月23日に、全国門徒総追悼法要の親教で「念仏者の生き方」への親しみや理解を深めてほしいという思いから、その肝要を四カ条にまとめた「私たちのちかい」を示す。

典拠が明確であり、しかも現代人にもわかりやすいことをめざして改訂版の拝読浄土真宗のみ教えが発行される。このときに浄土真宗の救いのよろこびは削除された。

2021年4月15日の立教開宗記念法要の親教で、親鸞の生き方に学び、次世代に法義がわかりやすく伝わるよう、その肝要を「浄土真宗のみ教え」として示す。

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)へ[編集]

2022年末、長らく進展がなかった現代版領解文制定方法について、制定方法検討委員会答申として、門主より消息として発布すべきとした。そのうえで領解文という題の使用は従来の領解文との扱いなどで混乱を招くおそれがあるので別の名称を使用すべきとした。

2023年1月、同月16日の御正忌報恩講御満座において、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息を発布すると告知される。16日に大谷光淳(専如)門主より発布され、様々な場面での拝読・唱和をすすめた[3]。内容は以前の親教で示していた浄土真宗のみ教えに歴代宗主の徳を讃えた段を加えたものとなった。

なお、このときの総局見解として、新しい「領解文」により従来の領解文を廃止するものではないとされていた

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の内容[編集]

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)は大きく分けて三段構成となっている。

第一段では念仏のこころについて、第二段では歴代宗主の徳をたたえ、第三段では念仏者の生活について記載されている。

なお、従来の領解文(改悔文)では安心(あんじん)、報謝(ほうしゃ)、師徳(しとく)、法度(はっと)の4段構成とされるが、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)においては第一段に安心と報謝が、第二段に師徳が、第三段に法度が相当するとされる。

石上総局下におけるその後の経過[編集]

消息発布をうけて宗派では各刊行物などへの掲載が行われ、既刊の書籍にも改定版として新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を掲載したものを順次刊行している。

宗派側が推進していく一方で、内容や制定過程について疑問や批判の声が各方面から挙げられている。

2023年3月定期宗会まで[編集]

1月27日 - 3月29日からの親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要の趣意書の付帯事項を改定し、法要において参拝者で唱和するプログラムが組まれることとなった。[4][5]

2月1日 - この日付発行の本願寺新報(宗派公式新聞)において勧学寮から新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての解説文が掲載された。勧学寮は新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)について、受け止め方によっては誤解を招くおそれがあるとして、解説文を熟読するように呼びかけている。後日、勧学寮頭の徳永一道勧学が一身上の都合により勧学寮辞表を提出する。のちに受理されることとなる。

2月24日 - YOUTUBEチャンネル「浄土真宗の法話案内」にてシンポジウム『「新しい領解文」を考える―組織と教学の陥穽』が開催される。

2月22日 - 定期宗会開会。総局は新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の普及を宗務の基本方針に掲げるも、議員から質問や意見が相次ぐ。

3月3日 - 定期宗会会期末、総局による宗務の基本方針が可決される。その後総局に反対する議員が紹介議員として、3月29日からの親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要における唱和を慎重に検討する旨の請願書が僧侶・門信徒有志提出されるも、総局に与する議員らの反対多数不採択となり、慶讃法要で唱和することが確定となる。

2023年4月後任勧学寮頭任命まで[編集]

3月22日 - 26日にかけて有志による新しい領解文を考える会がインターネット上で新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についてアンケートを行う。期間中600名以上の回答があり9割から内容に違和感があるとの声があがった。

3月25日 - 勧学龍谷大学名誉教授の深川宣暢を代表とする勧学・司教有志の会により「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(一)が発表される。[6]

3月26日 - 新しい領解文を考える会がパンフレット『みんなで、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を考えてみよう。』を発表する。

3月29日 - 西本願寺における親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要が始まる。以降5月21日まで5期30日かけて行われ、通常プログラムにおいて法要の終盤に新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を唱和する場が設定されているものの、期間中は退出者や無言を貫くもの、念仏や従来の領解文などを口にするもの、抗議する旨の文章を掲げるものも見られた。

3月31日 - 中外日報に本山本願寺前執行長の武田昭英が新しい「領解文」の問題点を投書したものが掲載される。

3月31日 - 徳永一道勧学寮頭が解任となる。[7]

4月1日 - 徳永一道勧学解任による勧学寮欠員に北塔晃陞勧学(前中央仏教学院長)を補充。[7]

4月6日 - 勧学寮員の互選により淺田惠真勧学を勧学寮頭に選出、任命される。[7]

5月21日慶讃法要終了まで[編集]

4月8日 - 勧学・司教有志の会により「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(二)が発表される。[6]

4月22日 - 勧学・司教有志の会により「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(三)が発表される。同日、これまでの声明(一)(二)(三)を本願寺派総局統合企画室長に送付し、さらに『全国の門信徒の方々へ〜「新しい領解文」について〜』という全国の門信徒へ向けたメッセージを発した。[6]

5月1日 - YOUTUBEチャンネル「浄土真宗の法話案内」にてシンポジウム『「新しい領解文」を考える(2)―いままでと、これから』が開催される。

5月5日 - 勧学・司教有志の会により「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(四)が発表される。5月8日に総局並びに統合企画室長に送付。[6]

5月10日 - 石上智康総長が淺田恵真勧学寮頭に文書で、勧学寮頭が中心となって勧学・司教有志の会へ「指導」し、宗門の秩序の回復に努めることを要請する。この事実は5月19日に中外日報にて報じられる。

5月15日 - 新しい領解文を考える会がアイブリッジ株式会社の提供するセルフ型アンケートツールFreeasyを利用し、全国のユーザーに対し新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)について意識調査を行う。

5月18日 - 本山本願寺(西本願寺)が、聞法会館総会所で定期的に勧学が門信徒の教学についての質問に回答する法義示談を、諸事情により当面休止すると発表した。

5月19日 - 勧学・司教有志の会により「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(五)が発表される。同日に総局並びに統合企画室長に送付[6]

5月20日 - 勧学・司教有志の会が声明について一区切りついたとして、5月23日に京都東急ホテルにおいて記者会見を行うことを発表。[6]

5月21日 - 西本願寺における親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要が御満座を迎える。同日、石上智康総長が体調や宗務の刷新のためとして辞任の意向を周囲に伝える。(22日に中外日報サイトで速報、23日に各メディアにて報じられる)

池田総長選出まで[編集]

5月23日 - 勧学・司教有志の会が記者会見を行い、これまでの経緯や指摘事項を説明した。さらに、総局が代わっても、新しい「領解文」が撤回もしくはそれに準じた状態になるまで活動を続けることを公表した。[6]

5月24日 - 新総長指名選挙を行う宗会を同30日に招集することが中外日報サイトで速報される。

5月24日 - 新しい領解文を考える会が5月15日に行った一般的な意識調査の結果を公表する。300名が回答した。これまで仏教に縁のなかった人へ浄土真宗のみ教えを伝えることを目的とし、様々な場面で拝読・唱和が促されているなかで、現代語で説かれていることからも半数程度が「わかりやすい」との評価をしていた。しかし、この文章が教義理解や布教・伝道に資するかについては、否定的な回答が多数を占めており、仏教にほとんど縁のなかった人は、拝読・唱和による布教・伝道効果に対して約7割が否定的見解を示した。

5月30日 - 臨時宗会招集。石上智康総長の辞職が承認される。大谷光淳門主より総長候補者として池田行信(前総務)、保滌祐尚(元統合企画室長)の2名が指名[8]される。

5月31日 - 総長指名選挙の投票が宗会議員により行われる。池田行信(47票)、保滌祐尚(22票)、白票(4票)、無効票(1票)となり、池田前総務が総長に指名される。池田氏は受諾のうえ、石上氏の路線を継承し、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の唱和を推進していくことを表明した。選挙を踏まえ、即日石上智康氏が総長解任となり、池田行信氏が総長・宗教法人浄土真宗本願寺派代表役員に就任した。同日付で総務、副総務が選定され、池田総局が始動する。

池田総局下における経過(2023年)[編集]

池田総局発足後[編集]

池田総局発足のころになり、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)が住職、坊守、僧侶の人材育成の場でも用いられることが明らかになった。

特にこれまでは必ず従来の領解文が出言されていた得度式(僧侶になる儀式)においては、従来の領解文をとりやめ、新しい「領解文」に置き換えられることになった。

さらに、毎年のように開催され、宗派の方針説明と質問等を受付する公聴会に際して、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)については議題にあげず、質問を受け付けないことが通達されている。

6月8日 - 宗会では僧侶議員は4つの会派があるが、所属会派からの脱会や移籍の動きが盛んになっているなかで、池田総長所属会派「大心会」は成立要件の7人を下回り、事実上の会派解散となった。

6月10日 - 勧学・司教有志の会により「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明(六)が発表される。同日、これまでの文書のpdfデータをインターネット上に公開した。

6月12日 - 淺田勧学寮頭が5月10日の石上総長(当時)の要請に対し回答書を提出する。それによると、法規により勧学や司教への指導はできないこと、また有志の会の主張は宗制に定める教義に相違していないことから教諭できないことが示されている。この内容は9月に宗報に掲載されている。[9]

6月28日 - 翌日にかけて総局出席のもと本願寺鹿児島別院にて九州地区組長研修協議会(九州組長会)が開催される。この全体協議会で新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての質問が事前にあり、総局がはじめて公式に答弁する場となった。各組長[10]からの質問に対し総局は従来の説明を繰り返す形となった。

7月1日 - 池田総局で就任した菅原俊軌副総務が願い出により副総務を解任される。

7月1日 - 中外日報が新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)について賛同する者を取材し、反対派から過剰に攻撃されていることが報じられる。また、新しい領解文について考える会は本来中立の立場で組織されているが、会内外でのこうした事案もあって活動が停滞していることが明らかとなった。

7月1日 - 月末にかけてオンラインでの公聴会が開催される。リアルタイムの意見聴取は5日から28日まで各教区会場にて宗務所とリモートで行われる。ただし、今回の議題にない新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)については別途行う宗派による学習会のときに発言するよう事前通告があった。

7月2日 - 新しい領解文を考える会が、6月の得度式からの領解文の置き換えをうけて、得度を願い出ていた門徒が、新しい領解文を本人の信条に反して仏前で唱和することを理由に辞退していたことを公表する。

7月14日 - 新しい領解文を考える会によるオンライン連続講座(全8回)が始まる。

新総局の対応と明かされる事実[編集]

7月14日 - 布教団連合[11]総会にて次年度本山常例布教における布教使の教区推薦基準について議論。宗派が当初示した推薦基準案の「新しい『領解文』の内容を踏まえた法話を行えること」への大きな反発をうけて議論と変更を重ねた結果、「重点目標(新しい『領解文』の学びを深め布教活動を展開するなど)を確認のうえで出講する」とした。反対する在野の布教使に事実上歩み寄るものとなった。

7月18日 - 本願寺派の教学研鑽会の最高峰である安居(あんご)が龍谷大学大宮学舎にて始まる。本講は前年の閉会時に予告の通り、満井秀城勧学(本願寺派総合研究所長)。

7月27日 - 新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)について学ぶ宗会議員勉強会が開催される。2月の第321回定期宗会で新しい「領解文」の推進策を可決したが、宗門内で混乱が広がっている事態を重く受け止め、宗会議員それぞれが根本となる宗意安心について学び考えるため開催。深川宣暢勧学を講師に、53人の宗会議員が出席する。

7月31日 - 安居が最終日を迎え、閉講。例年告知されている次回(翌年7月)の講師・内容は告知されなかった。勧学寮から申達はあったものの、講師に新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に疑義を唱えるものが含まれており、内事部で認証されていないという。

8月4日 - 徳永一道前勧学寮頭からの情報をうけて武田昭英前執行長が徳永氏の寮頭辞任理由説明文書の「原案」を宗会議員に送付する。このなかで新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の発布に至る経緯で瑕疵があったことや石上前総長らによる消息発布及び寮頭辞任の説明に事実と異なることがあったと明かされる。

武田氏が文書において指摘する点[編集]

制定方法検討委員会答申の無視 - 石上智康前総長は、「現代版領解文策定方法検討委員会」において、委員(勧学、入澤崇龍谷大学学長)に「新しい領解文」の内容については全く議論をさせないまま、さらに「領解文という用語を使用しない事を条件として、門主に制定していただく」しかないという委員会の答申を無視して、「新しい領解文」という名称で消息を発布した。

勧学寮の答申の無視 - 2022年末、勧学寮に「新しい領解文」の内容に関する諮問があり、それを受けて寮員会議が開催されたが、その会議では、内容に関する同意はなく、むしろ多くの問題点が指摘された。その中から、宗意安心に関する三つに絞って再考を願うように答申したが、総局の対応は全くなかった。その後、この内容に関する寮員会議は一度も開催されていない。

統合企画室長の越権行為 - 勧学寮は宗意安心上の3点の問題点を12月19日に答申したが、その直後に葛谷英淳・統合企画室長が勧学寮に直談判に来ており、徳永一道勧学寮頭と一対一で面談し、再考を願う勧学寮の答申を無視して、原文のままで同意するように執拗に要求している。この葛谷室長の行為は、宗法第70条に定められる「宗門の宗務機関は、その職務に属する事項を行うについて、互いに他の宗務機関に不当に干渉してはならない」という規定に抵触する不当な行為であることは明白であり、さらに言えば、宗法第22条の2「和合をむねとし、宗門の秩序を乱さないこと」にも抵触している。

勧学寮頭の独断と引責辞任 - 独断で同意した徳永一道勧学寮頭の行為は、宗法第59条に定められた勧学寮の合議制に抵触している。すなわち、葛谷室長の直談判による強い要求・干渉があったとはいえ、そのほかの寮員に相談なく、しかも寮員会議での結論に相反しながら独断で同意の署名捺印をした責任は、徳永寮頭にある。そのための引責辞任であったことが明記されている。徳永前寮頭は、この行為を深く悔やみ、監正局による「宗門懲戒」をも受ける覚悟で、辞任説明書類の「原案」を提出している。

解説文にも問題がある - 大谷光淳門主を護るためであったとはいえ、苦渋の選択で勧学寮は「新しい領解文」の解説文を書いたが、その内容は問題点の多いものであることを、勧学寮自身が認めている。したがって、解説文を熟読したとしても「新しい領解文」は法義に対する誤解を避けられるものではない。

徳永氏による経緯の実相

2022年

4月1日 - 宗則「現代版領解文制定方法検討委員会設置規程」施行

8月9日 - 委員会発足。[委員メンバー]徳永一道(勧学寮頭、委員長)、浅田恵真勧学(現勧学寮頭)、太田利生勧学、北塔光昇勧学、満井秀城勧学、入澤崇(龍谷大学学長)

9~11月 - 計5回の委員会開催

11月8日 - 徳永委員長より領解文という語を使用しない条件の答申が石上総長へ提出 (総局からの返答はなし)

12月中旬 - 消息の勧学諮問

12月19日 - 徳永寮頭から門主へ再考を願う答申提出する。統合企画室の葛谷英淳室長が徳永寮頭へ1対1の直談判で強く要求する。徳永寮頭が独自判断で、解説文で理解を図るとした上で同意し、寮員は事後了承。

2023年

1月16日 - 消息発布

2月1日 - 勧学寮「ご消息解説」(本願寺新報掲載)

2月3日 - 徳永寮頭が辞表提出(引責辞任)

2月11日 - 徳永寮頭辞任理由説明文の「原案」がFAXで寮員に回覧される

2月16日 - 徳永寮頭辞任理由説明のためのオンライン司教会開催

4月1日 - 徳永寮頭解任

以上となっている。

宗会や公式学習会(9月まで)の動き[編集]

2024年にかけて行われる宗派公式学習会の内容について、2024年1月24日現在本願寺派公式報告はないため、特に記載のない限り新しい「領解文」について考える会[12]による。

8月28日 - 宗会会派の会長・幹事長会が招集される。園城義孝議長、内田孝副議長、「八五倶楽部」「顕心会」「誓真会」「門徒議員会」の会長・幹事長が出席。武田昭英前執行長から宗会議員へ「徳永一道前勧学寮頭が制定に瑕疵があった」と指摘する文書送付や、一般寺院からの新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に関しての声をうけて会派の意見を聞き取る。宗門での混乱の広がりを受け、宗会のとるべき対応が議論され、宗会から総局に推進策の取り下げを申し入れることを決めた。[13]

8月30日 - 新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の理解を深めるため、2023年度の宗務の基本方針に基づき、宗派(総局)が主催する各教区での学習会が北豊教区から始まる。新しい「領解文」について考える会によると、会場参加者40名程度、オンライン数名。開会にあたり新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を唱和することとなっていたが、誰となく従来の領解文を唱えはじめ、自然と参加者全員が唱和するなど、冒頭からハッキリと宗派の方針にNOを突き付けた形となった。

8月31日 - 安芸教区で開かれた学習会では、会場参加は110名、オンライン70名。開会での新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を唱和は無し。宗意安心と消息の発布手続きを中心に質疑が行われたが、終了後に会場参加者の大半が内容と説明に「全く理解できなかった」と意思表示し、総局に学習会の在り方の再検討や再度学習会の開催を求めた[14]

9月4日 - 熊本教区での学習会は会場参加者50名以上、オンライン50名以上。開会での新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の唱和は無し。新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の出拠は石上智康前総長の書籍ではないかという質問に対して、満井秀城総合研修所長・勧学は「制作の過程については想像の域を出ないが、考えられる出どころかもしれない」と返答。コロナ禍に発表されたメッセージポスターに関しても同様に似た表現があり「オマージュ的」と答える。最後に座長が本日の学習会で内容に納得できたか参加者に挙手制で回答を求めるが、ひとりも挙手はなかった。

9月4日 - 本願寺派の専門学校である中央仏教学院において通信教育入学式が行われる。入学式で新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を唱和する。[15]

9月5日 - 佐賀教区での学習会は会場参加者35~40名、オンライン30名、開会での「唱和」無し。多くの質疑に対して満井所長は、「それを伝えるのは勧学寮」「勧学寮には別途説明会を催して欲しい」という言葉を繰り返し、勧学寮がいないと学習会の質疑は答弁出来ないことを露呈。発布当時の総局は荻野総務以外すべて入れ替わり、勧学寮頭も交代しているなど、質問に答えるべき人が不在の中で学習会が行われていることが浮き彫りとなった。最後に、座長が新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を受け入れることができるかという問いに、参加者の多くは受け入れることができないと回答した。

9月10日 - 8日から東京外国語大学府中キャンパスで開催されていた日本宗教学会第82回学術大会で新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についてパネル発表が行われる。本願寺派僧侶4名が登壇し問題点や評価について議論された。[16]

9月12日 - 8月に開催された先述の宗会各会派代表らによる協議に基づき、園城義孝議長と宗会事務局長から、池田行信総長と葛谷統合企画室長に申し入れを行う。しかし、申し入れは退けられ、推進を継続し、学習会で理解を得られるようにすると回答される。理由について、唱和推進は消息の中で門主が語っており、宗会でも可決したこと、さらには消息の内容は事前に勧学寮が同意しており、手続きに瑕疵はないとしている。[17]

9月26日 - 福岡教区での学習会が開催される。冒頭に新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の唱和については、大半が従来の領解文を唱和したり南無阿弥陀仏の称名念仏していたという。質疑応答では内容に関する質問や総局の責任が問われ、公文名総務は「総局の責任は申達するという手続きに責任があるのであり、総局に内容についての責任はない」と返答する。座長による参加者への納得度の聞き取りでは、参加者全員が納得できないとの回答。

公式学習会(2023年10月)[編集]

10月3日 - 鹿児島教区にて学習会が開催される。質疑応答では宗務行為の責任に関して問われ、三好総務は申達をした宗務機関の総局には門主が発布した消息を周知していく責任があると回答した。なかには新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を絶賛し、このまま反論に負けず唱和を推奨していくことを要望した者もいた。

10月4日 - 長崎教区にて学習会が開催される。勧学寮員でもなく解説文作成にも携わっていない満井秀城所長がこの学習会担当していることについて、満井氏がその責務を辞退し、勧学寮を伴った学習会を開くべきと指摘がされる。また機の深信が示されていない背景として、「8割以上は自己肯定感が高い」とする満井氏の見解の根拠が問われ、海外の布教現場での事例と自身の経験値による意見であるとしている。ところが、満井氏に対して日本人の自己肯定感は30年間下がり続けていること、教育現場においても自己肯定感が低いことを前提に教育が行われていることが指摘された。

10月10日 - 山口教区にて学習会が開催される。会場参加者68名、オンライン約30名。新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に他力が見られる部分はあるのかという問いに、満井所長は他力をどのように伝えていくかは我々に課せられていると示した。 一連の混乱の解決に関して公文名総務は、1つは消息の撤回もしくは見直しだが、現在の宗門法規では100%不可能と認識しており、解決があり得るとしたら、宗会、もしくは常務委員会で決められたことであるから、これを宗会で改めて見直すということはあり得るとした。

10月11日 - 四州教区にて学習会が開催される。

10月24日 - 奈良教区にて学習会が開催される。

10月25日 - 兵庫教区にて学習会が開催される。

公式学習会(2023年11月)[編集]

11月7日 - 東京教区にて学習会が開催される。

11月14日 - 東北教区にて学習会が開催される。

11月28日 - 北海道教区にて学習会が開催される。

公式学習会(2023年12月)[編集]

12月5日 - 大分教区にて学習会が開催される。

12月6日 - 備後教区にて学習会が開催される。

12月12日 - 石川教区にて学習会が開催される。

12月13日 - 京都教区にて学習会が開催される。

公式学習会(2024年1月)[編集]

1月17日 - 滋賀教区にて学習会が開催される。

1月18日 - 富山教区にて学習会が開催される。

1月23日 - 岐阜教区にて学習会が開催される。

1月24日 - 山陰教区にて学習会が開催される。

1月30日 - 東海教区にて学習会が開催される予定。

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)への評価[編集]

東京大学名誉教授の末木文美士は朝日新聞の取材に対し、大胆なものであり、今まで親鸞の教学を守ってきた人から見ると、受け入れにくいのも無理はないとしている。[18]

武蔵野大学名誉教授のケネス田中は信心を正しくわかりやすく伝えるという部分では問題点があるとしつつも、時代状況や人々の意識に応じた伝道方法で若い人やこれまで浄土真宗に親しみのなかった多くの方々にわかりやすく伝えることはできており、入り口付近の人々を対象にしているのであれば、だいたい評価基準を満たしているとしている。また、教学面でも批判があっても、似たようなものとして米国で親しまれているゴールデンチェーンよりは優れているとしている。[16]

また、中外日報の取材[15][16]に対して僧侶たちからは次のような声が上がっている。

  • 大谷光淳門主が親鸞の「いし、かはら、つぶてのごとくなるわれら」という言葉を念頭に親鸞に多様性と共感のメッセージがあると述べている。そのうえで、この新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を巡る混乱は「他者を取り込むために開祖の教学を歪曲させる教団」か「安易な言語表現にとらわれず正しいみ教えを外部に発信することを目指す教団」かの路線競争である。
  • 三業惑乱のあとの「宗意安心」は体制への批判を自粛し教団の温存を図ることが前提で、私と如来という縦の関係については緻密に理論化されていても、私と他者(教団、社会)という横の関係については欠如している。その結果、いわゆる戦時教学や差別の助長につながった。
  • 難しい教学用語を用いず、わかりやすい言葉で示すことを試み従来より総局が指揮を取り取り組んできたものである。しかしながら現代的日本語として読みやすくはあるが、その意味が正確に伝わるものとはなっておらず、正しい親鸞教学を伝えるものとは言えない。また、そもそも本来出言者自身の「領解」を述べるものである「領解文」を、外部の立場にわかりやすくする、と言う方向性自体問題が散見される。戦争協力や差別の助長を歩んできた外部からの視点による史実を門主が述べているように、外部からの視点に敏感となるべきことを門主は指摘しているのではないか。内部と同時に外部でもある門徒の視点も取り入れるべきであり、門徒にとっては受け入れ難いという意見が大半である。

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)をめぐる問題点[編集]

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)については教学や組織運営などの面で多方面から問題点が指摘されている。

教学的問題[編集]

  • 「私の煩悩と仏のさとりは本来一つ」とする部分はこれは仏の見方であることから、ここを信仰告白する衆生が読むことが本覚思想的であること。
  • 「宗祖親鸞聖人と法統を伝承された歴代宗主の尊いお導きによる」とする「これ」が何を対象としているのかが不明瞭であること。
  • 「宗祖親鸞聖人と法統を伝承された歴代宗主の尊いお導きによるもの」とあるように、宗祖と宗主を同格視しているように見られ、消息を発布する門主が自らも含むかのように発してしまうこと。また、従来の領解文でいう次第相承の善知識を歴代宗主に限定解釈していることも知識帰命的であること。
  • 「執らわれの心をを離れます」ということについて、浄土真宗的には臨終まで煩悩をなくすことはできないうえ、大谷光淳門主が2016年に教諭した親教「念仏者の生き方」では、少しでも仏の願いに適う生き方をとしていることと矛盾していること。

宗門法規(組織運営)的問題[編集]

  • 現代版領解文制定方法検討委員会の答申にある「領解文」の文言を使わないようにという答申内容を無視していること。
  • 消息の扱いについて戦時教学の反省から聖教としないとしているが、領解文の語を用い、唱和を呼びかけるなど聖教のように扱っていること。
  • 消息発布の責任の所在について発布した門主ではなく、同意した勧学寮でもなく、進達した総長にあるが、総長や勧学寮員が辞しても発布者たる門主の行為として永代に語り継がれてしまうこと。
  • 消息発布には教学面での司法機関である勧学寮の寮員会議での同意が必要だが、限られた時間で絶対に発布するように行政府である総局及び事務の中枢である統合企画室長による勧学寮頭への干渉があり、勧学寮頭が寮員会議を行わず独断で同意したと疑惑されていること。なお、宗務にあたってはそれぞれの独立性を尊重し、干渉があってはならないとしている。
  • 宗会において議員からの要望もあったが、新しい「領解文」にかかる勧学寮の寮員会議の議事録が一切開示されないこと。
  • 消息批判が門主批判を意図するものでないとしても、形式上は発布者である門主及び宗門への批判という組織上重大な反逆行為となること。
  • 石上総長(当時)が勧学寮頭に勧学・司教有志の会参加者へ指導を要請するが、寮員以外であり、宗制に規定される教義に反していないことから、勧学寮頭が有志の会に指導する権限がないこと。

その他の問題[編集]

  • 現代版領解文の検討を進める中で、すでにまとめられ、現代版御文章ともいえる『拝読 浄土真宗のみ教え』に掲載されていた「浄土真宗の救いのよろこび」を典拠不明として改定版において不掲載としたこと。
  • 元となる文章は「浄土真宗のみ教え」として、2021年4月15日の親教で述べられているが、石上智康総長の書籍に見られる文章と酷似していること。
  • 元の親教ではなく、この消息の発布後により大規模な反対運動となっていること[19]
  • 当初の石上総局の説明と異なり、得度式での従来の領解文を取りやめるなど、事実上新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に置き換えられつつあること[20]
  • 反対派、賛成派が互いに人格否定的な言動を含む過剰な攻撃をしていること。
  • 本願寺教団組織の根本的問題として、親鸞教学に従えば当時門主も煩悩にとらわれた凡夫であるにもかかわらず、門主の言行動が全肯定されるべきものであると扱われていること。

脚注[編集]

  1. ^ 本願寺派における消息とは、門主が浄土真宗の教えや宗派に関係する事項への思いを広く発信するメッセージである。
  2. ^ 要職者の辞任など、本人から理由に挙げられてはいないものの関連が十分に疑われるものも含む。
  3. ^ 新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息 | 前門様のお言葉”. 浄土真宗本願寺派(西本願寺). 2023年5月23日閲覧。
  4. ^ 親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要「趣意書」付帯事項 一部変更について | お知らせ | 浄土真宗本願寺派 龍谷山 本願寺(西本願寺)”. 浄土真宗本願寺派 龍谷山 本願寺(西本願寺). 2023年5月24日閲覧。
  5. ^ 2023年1月 - 浄土真宗本願寺派(西本願寺)
  6. ^ a b c d e f g 浄土真宗本願寺派 勧学・司教有志の会”. www.facebook.com. 2023年5月24日閲覧。
  7. ^ a b c 浄土真宗本願寺派『宗報』(宗派の官報雑誌)5月号による。
  8. ^ 総長候補者の指名は門主の一身存属権(専権事項)である。この候補者から1名を宗会議員による選挙で新総長として指名する。
  9. ^ 新しい領解文を考える会https://note.com/ryouge/n/na1cf7d3557d3
  10. ^ 組長…"そちょう"という。各教区内にある更に細分化された寺院の地域集合体である組(そ)の代表者である。
  11. ^ 全国の本願寺派布教使(布教のプロ)の連絡会。
  12. ^ 新しい「領解文」について考える会よりhttps://note.com/ryouge/n/nc1416696d481
  13. ^ (9月1日中外日報https://www.chugainippoh.co.jp/article/news/20230901-002.html
  14. ^ 9月6日 中外日報 https://www.chugainippoh.co.jp/article/news/20230906-001.html
  15. ^ a b 2023年9月13日中外日報より。
  16. ^ a b c 2023年9月15日中外日報より。
  17. ^ 2023年9月20日中外日報より。
  18. ^ https://www.asahi.com/sp/articles/ASR6P4GDGR6JPLZB00H.html
  19. ^ 勧学・司教有志の会の記者会見によると親教は門主個人の法話として勧学寮の同意なく示すことができ、広く公的に周知する消息が勧学寮の同意が必要とのようにその性格や関係が異なるため活動できなかったとしている。
  20. ^ 得度式については本山本願寺の所掌事項であり、宗派総局とは制度上分離しているものではある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]