大藪春彦

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大藪 春彦(おおやぶ はるひこ、1935年2月22日 - 1996年2月26日)は、日本小説家京城生れ。高松第一高等学校卒業。早稲田大学教育学部英語英文学科中退。

代表作に「伊達邦彦シリーズ」のほか、『蘇える金狼』『汚れた英雄』など。

没後10年以上を経た今でも主に徳間文庫光文社文庫から作品が復刊され続けている。

多くの作品が映像化されている。

目次

[編集] 年表

[編集] 幼少期

  • 1935年 - 2月22日 京城(ソウル)に生まれる。父は教師
  • 1935年 - 山形県酒田市に移転。
  • 1941年 - 当時、(「韓国併合ニ関スル条約」に基づき)日本の領土であった朝鮮半島北部の新義州に移転。国民学校入学。
  • 1945年 - 父が徴兵される。敗戦後、高官たちは民衆たちを見捨てていち早く帰国し、残された日本人の警官や憲兵たちが、朝鮮人たちの復讐でなぶり殺しにされるのを目撃する。生活苦の中、長男として盗みをしてまで、必死で食料を得る。ロシア兵に銃剣で刺されたこともあったという。ジフテリアにかかった妹を背負い、町の病院から病院へ血清を求めて走り回る。
  • 1946年 - 共同で闇船を雇い、日本へ帰る(新義州(8月)→仁川→ソウル→議政府→釜山→佐世保(9月17日)→香川県善通寺の祖母の家)。この一連の過酷な体験が大薮に国家権力への不信感を植え付けたと言われている。因みに終戦直後生き別れになった父はすでに帰国しており、高松で教師をしていたという。
  • 1952年 - 高松一高に入学。新聞部に入り革命を訴えるが、天皇を批判した号が回収され焼き捨てられる。そのため、文芸部、演劇部へと入学。
  • 1955年 - 東京外国語大学を受験するが不合格。この頃一時期牧師を目指し四国クリスチャン・カレッジに入学し、英語をマスター。図書館でアメリカのハードボイルドのペーパーバックに出会い、読みふける。学校クリスチァンの現実に失望し中退。
  • 1956年 - 早稲田大学教育学部英文科へ入学。射撃部に入部し銃に熱中。また、神保町の古本屋で買ったアメリカン・ミステリを濫読する。
  • 1957年 -創設されたワセダミステリクラブに入部。

[編集] デビュー

[編集] 死去

[編集] 大藪春彦の小説

[編集] 特徴

激しいアクション、暴力を描く通俗的な作品が多く、それゆえに「暴力賛美の小説」と批判されることもある。一方、日本における冒険小説ハードボイルド暗黒小説の先駆者と評される事も多い。

それらの作品には強烈なストイシズムと反権力志向を常に持ち合わせるタフな主人公が登場する。特に伊達邦彦(「野獣死すべし」ほか)や朝倉哲也(「蘇える金狼」)、北野晶夫(「汚れた英雄」)はその典型的な例であり、大藪にとっても思い入れが深い登場人物であるという。「ギリギリの生死の狭間では、善も悪もない」という作者の哲学を強烈に推進する為に肉体・精神的屈強さを仮託されているとも言えよう。

大藪作品に暴力を取り入れたものが多いのは、大学生時代に愛読したアメリカのハードボイルド小説に多大な影響を受けているからである。彼はレイモンド・チャンドラーロス・マクドナルドなどの人間の心理を描く作品よりも壮絶なバイオレンスアクション小説を得意としたダシール・ハメットミッキー・スピレーンらの作品を好んだ。大藪自身も「チャンドラーのペーソスも、マクドナルドの深層病理学も、ハメットの短編ひとつに及ばない」と発言している。

自身の銃、クルマについての知識を小説に取り込んでいる。しかし、「大藪作品から銃と車をとったら何も残らない」と評されたこともある。また、伊達邦彦に象徴されるように、超人思想やニヒリズムアナーキズムに通ずる反国家・反組織・反体制要素が含まれている。

その一方で家族への愛情は比較的深く、家族を政財界と癒着した暴力団によって惨殺された男が主人公の『黒豹の鎮魂歌』のように「復讐」をテーマにした小説が多数ある。

[編集] 執筆活動

デビュー作「野獣死すべし」は江戸川乱歩が推薦人となり1958年宝石」に掲載され、文壇からも注目された。しかし1960年街が眠るとき」の映画化に伴い、この作品及び「火制地帯」が海外の短編の盗作であるとの指摘・疑惑が浮上。結局入会した日本探偵作家クラブを脱会。1965年拳銃不法所持事件により、ミステリ作家の団体他殺クラブを脱会する。以後は「孤高の作家」とまで言われるほど文壇から離れた執筆活動を行った。

前述の通り大藪作品には激しい権力への嫌悪・反抗が描かれている。そのため文壇・体制側からの痛烈な批判は絶えなかった。彼がファンであったミッキー・スピレーンも作品こそベストセラーとなったが、文壇からの批判は多かった。彼の境遇は自身が尊敬する作家と全く同じになったといってもよい。

血の来訪者」は週刊新潮連載中1960年11月7日号掲載分の内容の一部に猥褻文書の疑いがあるとして警視庁に押収されたという経緯の為、連載中断後二ヶ月で200枚を加筆した状態で発行されることになった。この際に結末の変更を余儀なくされたともいわれる。 著者が同作にて伊達邦彦の勝利を描くつもりであったどうか定かではないが、邦彦の完全な破滅もまた構想していなかったと考えられる。

前述の通り大藪は文壇とは無縁な活動を行っていた。しかし、森村誠一西村寿行片岡義男など多くの同年代作家と交遊があった。また、馳星周花村萬月島田荘司夢枕獏小島一志船戸与一(対談したこともある)などの現代作家にもファンは多い。野崎六助関口苑生茶木則雄新保博久など彼の功績を称える評論家も数多い。

晩年の作『餓狼の弾痕』が作中で延々同じプロットを繰り返す内容で、山本弘トンデモ本として紹介した(『トンデモ本の世界R』)。しかし、山本は大藪と出版社(角川書店)を憚り、商業出版で公刊したのは大藪の死後であった(刊行時点で大藪が存命中だった『トンデモ本の逆襲』では、読者から紹介されたものの、本文での掲載を見送ったと後書きにある)。このことは、大藪が当人の意向はともかく、大作家として処遇されていたことを意味する。同書は『野性時代』に連載され、カドカワノベルズから単行本化、さらに角川文庫から文庫化されている。

[編集] その他

  • 大藪は大学時代に一連のハードボイルド小説を読みきってしまったせいか、作家生活に入ってからは本格推理小説を愛読したという。とくに横溝正史の作品に心酔。なかでも『獄門島』が気に入り、同作のような伝奇小説(しかも登場する武器は銃ではなくナイフ)を書いてみたいと語っていた(大藪の急逝により実現しなかった)。また、大藪は横溝正史ミステリ大賞の選考委員も務めている。横溝以外にも土屋隆夫鮎川哲也などの作品も好んだ。
  • 『野獣死すべし』を同人誌『青炎』に載せた際、編集長である友人を脅して掲載させたとまで言われている。
  • 江戸川乱歩邸を訪れた際、乱歩を応接間で待っているうちに眠ってしまい、横になったまま乱歩に挨拶をした。
  • 1965年(昭和40年)入手していた拳銃を友人が悪用し、銃刀法違反(不法所持)で逮捕され、翌年より3年間猟銃の所持許可を取り消される。これが原因で『マンハッタン核作戦』(連載時の題名は「ハーレムより愛をこめて」)の連載が中断された。同作が改稿の末に刊行されたのは1976年のことである。
  • 銃を取り上げられてから数年間、田中健二郎らのレーサーを率いて「チーム・マグナム」を結成、モータースポーツにのめりこんだ。また飛行機ヨットの操縦にものめりこんだ。愛車は、ダットサンブルーバード1200から、フェアレディスカイラインGT-B、スカイラインGT-R、BMWなどを乗り継いだ。とくにスカイラインGT-Rはレース用にチューン・アップしたものを長く愛用していた。
  • 1973年(昭和48年)オーストラリアダーウィンで、ワイルド・バッファロー43頭を射殺し、「ハリー・ザ・キラー」の異名をとった。
  • 三島由紀夫は大藪春彦の熱心な読者だったが、ごく親しい友人しかそのことを知らなかった。大藪春彦もまた、三島由紀夫の大ファンであった。二人は対談したこともある(「週刊プレイボーイ」“武器の快楽”、1968年、三島事件の2年前)。
  • 自分の作品スタイルに影響を与えた作家と作品として、以下の10作品をあげている。
  • 作風とは裏腹に、家庭では家族思いの温和な人物であった。妻の龍子は「週刊スリラー」の編集者で、初期の傑作『ウィンチェスターM70』を担当していたが、朝食も食べずに執筆している大藪に同情して、朝食を作って差し入れする等するうちに結婚することとなった。結婚後は二子をもうけた。
  • 実子が高熱に罹って病院へ搬送した際に「子供に何かあったら、お前を殺してやる」と医者に掴みかかったことがある。
  • 作品だけでなく、その凄まじい半生も半ば伝説として語り継がれている。
  • 狩猟が趣味であった。猟犬を単なる道具としてしか考えておらず、愛犬家だった西村寿行と酒の席で口論になったこともある。

[編集] 作品

[編集] 伊達邦彦全集

[編集] 矢吹貴シリーズ

[編集] ハイウェイ(エアウェイ)・ハンター 西城秀夫シリーズ

[編集] 蘇える金狼

  • 蘇える金狼 野望篇 アサヒ芸能、1964 
  • 蘇える金狼 完結篇 アサヒ芸能、1964 

[編集] 汚れた英雄

  • 汚れた英雄Ⅰ 野望篇
  • 汚れた英雄Ⅱ 雌伏篇
  • 汚れた英雄Ⅲ 黄金篇
  • 汚れた英雄Ⅳ 完結篇

[編集] アスファルトの虎(タイガー)

[編集] ウェポン・ハンターシリーズ

[編集] 女豹シリーズ

[編集] 処刑シリーズ

[編集] 掟シリーズ

[編集] 時代活劇

  • 孤剣 桃源社、1964 - 「赤い手裏剣」を改題、大藪唯一の時代小説、市川雷蔵主演で映画化。

[編集] 短編集

[編集] その他

[編集] エッセイ

  • GUN教室(桃源社、1965年)  
  • 荒野からの銃火
  • 4WDワイルドドライビング 大胆不敵な走りのテクニック
    アルシオーネとレオーネの足回りを滑らせた上で比較したり、林道に入っていったら行き止まりで延々バックで帰ってきたエピソードなど。普通の車好きの作家とは一線を画す読み物となっている。
  • 孤高の狙撃手
  • 男たちよ戦いの荒野に死ね(斯界の人物との対談集)

[編集] 漫画原作

  • 弔いは誰のために
  • 復讐の弾道

[編集] 翻訳作品

[編集] 映像化作品

[編集] 研究書

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク