獄門島

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獄門島』(ごくもんとう)は、横溝正史の長編推理小説、およびそれを原作とした映画テレビドラマ作品である。1947年1月から1948年10月までの計17回、雑誌『宝石』に掲載された。ささやななえ作画で漫画化され、少女漫画誌『別冊少女コミック』(小学館)に1977年7月号から10月号まで連載された。2005年12月現在までに、映画2作品・テレビドラマ4作品が制作されている。


注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。


目次

[編集] ストーリー

終戦から1年経った昭和21年9月下旬。金田一耕助は、引き揚げ船内で死んだ戦友・鬼頭千万太(きとう ちまた)の手紙を届けるため、千万太の故郷・獄門島へと向かった。瀬戸内海に浮かぶ獄門島は封建的な古い因習の残る孤島で、島の漁師たちの元締めである鬼頭家の本家・本鬼頭と分家・分鬼頭が対立していた。金田一には、彼が息絶える前に残したある言葉が気に掛かって仕方がなかった。

「俺が生きて帰らなければ、3人の妹達が殺される…」

金田一が島を訪れたその日を境に、その島で凄惨な連続殺人事件が次々と巻き起こり始める。

金田一は鬼頭家に客として迎えられる。この日、島の寺である千光寺の釣鐘が島に戻り、千万太の従兄弟である一(ひとし)の無事が知らせられた。鬼頭家には千万太の妹3人と一の妹の早苗、それに後見人として千光寺の和尚、了念・村長の荒木、医者の幸庵がおり、彼女らを支えていた。また、復員兵が海賊として周囲に出没するとの噂。金田一は千光寺に宿泊。目を覚ますと、鬼頭家の前当主、嘉右衛門の書いた俳句屏風が三つあった。うちの二つ、「むざんやな 冑の下のきりぎりす」「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」は読めるが、もう一つが読めない。

その日、千万太の葬式が行われた。その直後、末妹の花子が所在不明であることが発覚、了念和尚の指示で、各自捜索に出る。金田一は分鬼頭に出向き、寺に戻る。目の前に、和尚の提灯が見えるのを追っていると、彼は寺から飛び出してきて、金田一を呼ぶ。寺の庭では、花子が足を帯で縛られ、梅の古木からぶら下げられて死んでいた。金田一は、和尚が「きちがいじゃが仕方がない」というのを聞く。

[編集] 登場人物

  • 金田一耕助(きんだいち こうすけ) - 私立探偵
  • 磯川常次郎(いそかわ つねじろう) - 岡山県警警部
  • 清水(しみず) - 獄門島駐在巡査
  • 鬼頭嘉右衛門(きとう かえもん) - 鬼頭家前当主、故人
  • 鬼頭与三松(きとう よさまつ) - 鬼頭家当主、精神病を患っている
  • 鬼頭小夜子(きとう さよこ) - 与三松の妾、女役者、故人
  • 鬼頭千万太(きとう ちまた) - 与三松の息子
  • 鬼頭月代(きとう つきよ) - 小夜子の長女、千万太の腹違いの妹
  • 鬼頭雪枝(きとう ゆきえ) - 小夜子の次女、千万太の腹違いの妹
  • 鬼頭花子(きとう はなこ) - 小夜子の三女、千万太の腹違いの妹
  • 鬼頭一(きとう ひとし) - 千万太の従兄弟
  • 鬼頭早苗(きとう さなえ) - 一の妹
  • お勝(おかつ) - 嘉右衛門の妾
  • 鬼頭儀兵衛(きとう ぎへえ) - 分鬼頭当主
  • 鬼頭志保(きとう しほ) - 儀兵衛の妻
  • 鵜飼章三(うかい しょうぞう) - 分鬼頭居候、復員軍人
  • 荒木真喜平(あらき まきへい) - 獄門島村長
  • 了然(りょうねん) - 千光寺和尚
  • 了沢(りょうたく) - 千光寺典座
  • 村瀬幸庵(むらせ こうあん) - 漢方
  • 竹蔵(たけぞう) - 潮つくり
  • 清公(せいこう) - 床屋

[編集] 作中に用いられた俳句

  • 鶯の身をさかさまに初音かな (宝井其角
  • むざんやな冑の下のきりぎりす(松尾芭蕉
  • 一つ家に遊女も寝たり萩と月 (松尾芭蕉)

[編集] 解説

この作品では金田一耕助は復員してすぐということになっており、「百日紅の下にて」のすぐ後ということになる。しかし作品としては『本陣殺人事件』の直後ということになる。作者は後の作品『悪魔の手毬唄』との関わりで、この作品が国外の童謡殺人事件に触発されたことを述べている。特にヴァン・ダインの『僧正殺人事件』の名を挙げ、いわゆるマザーグース殺人事件のようなものを日本で書きたい、と言う希望があった。しかし、二番煎じと批判されることを恐れて諦めていたところ、アガサ・クリスティーが『そして誰もいなくなった』で同じようなことをやっており、それが許されるのだから自分もやってみようと思い立った。また、それに当たるような童謡を発見できず、それに変わるものとして俳句を用いるようにしたのがこの作品だ、と言うのである[1]。しかし作者はこれに満足できず、それが後の『悪魔の手毬唄』の創作につながったという。

作品全体に敗戦直後の混乱が描かれるのも一つの特徴で、復員詐欺、ラジオ番組の復員だより、カムカムの時間などと言った話題があちこちにみられる。

また、事件の内容は、歌舞伎「京鹿子娘道成寺」とも関係性が深く、3人娘の母親であるお小夜(既に故人)が「娘道成寺」を得意とする旅役者だったことが語られる他、第1被害者・花子は「娘道成寺」に登場する白拍子の名前であり、第2被害者・雪枝は「娘道成寺」の主要テーマである釣鐘の中で発見され、第3被害者・月代は白拍子のような装束で殺害されており、さらに、被害者の死因は総じて日本手ぬぐいによる絞殺であるが、これも「娘道成寺」での小道具の一つである手ぬぐいと符合する。

この作品のヒロイン鬼頭早苗は、金田一耕助が生涯愛した女性の1人として知られる[2]。金田一は獄門島を離れる際、早苗に「島を出て一緒に東京へ行きませんか」とプロポーズとも取れる言葉を掛けている。しかし、早苗は「島で生まれたものは島で死ぬ。それがさだめられた掟なのです。もうこれきりお眼にかかりません。」と島に残る決意を固めており、金田一は振られてしまうという結果に終わっている。

発表当初より高い評価を受けた本作は、1949年に「第2回探偵作家クラブ賞」候補にノミネートされる[3]とともに、後の本格推理派作家などに大きな影響を与えている。また、横溝作品の中でも「見立て殺人」ものとして高い人気がある。

また、この事件の謎を解くのに極めて重要な鍵として、俳句用語である「季違い」と、「気違い」の聞き間違いというものがあるが、最近のテレビ放送においては過度の自主規制が行われているため、下記の1970年代製作のドラマや映画が後年テレビ放送された際、「キチガイ」という音声が消されたり「ピー音」がかぶせられたりするなど[要出典]、原作未読の視聴者にとってはなぜ金田一が謎を解けたのか、わけの分からない展開となってしまったことがある(DVDなどではオリジナルのまま収録されている)。近年の映像化作品では、謎解きの部分を変更することで「気違い」という言葉を出さなくとも話が成立するようにされている。

2007年5月1日NHK-BS2衛星映画劇場」で市川崑監督作品が放送された際には、上記のような音声処理はまったく行われなかった。本編終了後、現代からすれば不適切な用語・表現などが含まれるが、作品のオリジナリティーを尊重してそのまま放送した旨の断りが表示された。

所在地の設定は、笠岡諸島最南端ということ、作中に登場する定期便の航路(笠岡から出発して真鍋島の次に停泊する島)など、六島と共通する点が見られ、1977年の映画化や1990年のドラマ化の際にも、六島でロケ撮影が行われた。

[編集] 『夜光怪人』での獄門島

ジュブナイル『夜光怪人』でも、目的地であるとなりの島への経由地点として、獄門島は終盤のページに登場(ただし読みは「ごくもんじま」)。瀬戸内海の島という地理関係、その昔海賊が跋扈していた地という設定も『獄門島』に準じたもので、島の駐在である清水巡査も再登場する。

この作品は、探偵役として『蝶々殺人事件』などで活躍する由利麟太郎が登場する作品だったが、ソノラマ文庫版および角川文庫版、角川スニーカー文庫版では山村正夫の手により、その部分が金田一耕助に書き換えられている。そのため、清水巡査が金田一のことを知らないという描写がなされており、また金田一の描写もろくに推理をせずピストルを発砲するなど、通常の金田一作品とは大きくかけ離れている。

由利シリーズのジュブナイル作品は、1作ごとに世界観がリセットされるため、この作品も特に『獄門島』との整合性を考慮して執筆されてはいない。

[編集] 映像化リスト

[編集] 映画

獄門島獄門島 解明篇 (1949年公開、東横映画
監督:松田定次、脚本:比佐芳武、主演:片岡千恵蔵
  • この作品では、「獄門島」の読み仮名は「ごくもんじま」となっている。
獄門島 (1977年8月27日公開、東宝
監督:市川崑、脚本:久里子亭(日高真也+市川崑)
出演:石坂浩二(金田一)、加藤武(等々力警部)、大原麗子(早苗)、司葉子(勝野)、太地喜和子(巴)、ピーター(鵜飼)、浅野ゆう子(月代)、中村七枝子(雪枝)、一ノ瀬康子(花子)、草笛光子(お小夜)、内藤武敏(与三松)、武田洋和(千万太)、大滝秀治(儀兵衛)、上條恒彦(清水巡査)、松村達雄(幸庵)、稲葉義男(荒木村長)、小林昭二(竹蔵)、辻萬長(阪東刑事)、坂口良子(お七)、三木のり平(床屋の清十郎)、東野英治郎(嘉右衛門)、佐分利信(了然)、池田秀一(了沢)、荻野目慶子(少女時代の勝野)、三谷昇(復員服姿の男)、他。
  • 下記に記載されているように、映画公開の直前にテレビ版で同作品の放送があり、ネタバレを回避するために、[要出典]この作品では、犯人を原作とは別の人物に変更している。それにあわせて予告編では横溝正史本人による「金田一さん、私も映画の中の犯人を知らないんですよ」という語りがある。また、映画館でも入り口に、「テレビとは犯人が違います」という看板が立てられて宣伝されていた。

[編集] テレビドラマ

横溝正史シリーズ『獄門島』全4回(1977年7月30日~8月20日、毎日放送
監督:斎藤光正、脚本:石松愛弘
出演:古谷一行(金田一)、有島一郎(磯川警部)、島村佳江(早苗)、梶原恵(月代)、立枝歩(雪枝)、萩奈穂美(花子)、滝沢修(嘉右衛門)、浜木綿子(お志保)、富田仲次郎(儀兵衛)、角野卓造(千万太)、仲谷昇(与三松)、葉山葉子(お小夜)、中村翫右衛門(了然)、河原崎国太郎(荒木村長)、金子信雄(幸庵)、三善英史(鵜飼)、江幡高志(竹蔵)、三遊亭若円遊(清公)、河原崎長一郎(清水巡査)、他。
  • この作品では「きちがいじゃが仕方がない」を「きがかわっているが仕方がない」という言い回しにして禁止用語を回避している。
  • 磯川警部が清水巡査に、「『蝶々殺人事件』を解決した」と金田一を紹介している。
  • 豪華監督陣をそろえた同シリーズで斎藤光正監督は比較的地味な存在であったが、気合の入った演出を披露。角川春樹を感嘆させて角川映画の常連監督となる。[要出典]
男と女のミステリー 横溝正史サスペンス 獄門島 (1990年9月28日、フジテレビ
演出:福本義人、脚本:岸田理生
出演:片岡鶴太郎(金田一)、遥くらら(早苗)、牧瀬里穂(月代)、高橋由美子(雪枝)、持田真樹(花子)、岡田真澄(儀兵衛)、二宮さよ子(お志保)、渕野俊太(千万太)、フランキー堺(了然)、左右田一平(荒木村長)、今福将雄(幸庵)、尚舞(鵜飼)、坂西良太(竹蔵)、南野陽子(お小夜)、菅田俊(清水巡査)、潮健児(復員兵)、他。
月曜ドラマスペシャル 金田一耕助シリーズ『獄門島』(1997年5月5日、TBS
演出:関本郁夫、脚本:和久田正明
出演:古谷一行(金田一)、秋吉久美子(早苗)、櫻井淳子(月代)、沢木蘭野(雪枝)、木内美穂(花子)、金田龍之介(嘉右衛門)、うえだ峻(与三松)、安藤一人(千万太)、絵沢萌子(お小夜)、宮下順子(志保)、名古屋章(了然)、織本順吉(幸庵)、北村総一朗(荒木村長)、丹古母鬼馬二(竹蔵)、藤木直人(鵜飼)、趙方豪(復員詐欺師)、光石研(清水巡査)、谷啓(河合警部)、他。
金田一耕助ファイルII『獄門島』(2003年10月26日、テレビ東京
演出:吉田啓一郎、脚本:西岡琢也
出演:上川隆也(金田一)、高島礼子(早苗)、三倉茉奈・佳奈(月代・雪枝・花子)、笑福亭松之助(嘉右衛門)、原田貴和子(志保)、神山繁(了然)、鶴田忍(荒木村長)、寺田農(幸庵)、川村陽介(鵜飼)、田村友里(お小夜)、金田明夫(清水巡査)、他。

[編集] 関連イベント

[編集] 参考文献

  • 中島河太郎、(1971)、「解説」(角川文庫、横溝正史『獄門島』)
  • 大坪直行、(1971)、「解説」(角川文庫、横溝正史『悪魔の手毬唄』)

[編集] 脚注

  1. ^真説 金田一耕助』(横溝正史著・角川文庫、1979年)を参照。
  2. ^悪霊島』の中に、早苗のことを思い起こす記述がある。
  3. ^ このときの受賞作は 坂口安吾の『不連続殺人事件』で、ほかにも高木彬光の『刺青殺人事件』がノミネートされるなど、傑作と評価される作品が揃っていた。
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