夏時間
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夏時間(なつじかん)又はサマータイム(イギリス英語:summer time。ヨーロッパ大陸でも用いる)、デイライト・セービング・タイム(アメリカ英語:daylight saving time (DST)。カナダ、オーストラリアでも用いる)とは、夏の間、太陽の出ている時間帯を有効に利用する目的で、現行の時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用する制度、又はその加えられた時刻のこと。 なお、オーストラリアのロード・ハウ島では夏時間と通常の時間の差が1時間でなく30分である。
明るいうちに仕事をして、夜は早く寝るようになるから、結果的に省エネルギーにつながるとされている。緯度が高く夏の日照時間が長い欧米諸国などでは一般化した制度である。
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[編集] 目的と効果
以下のような効果が期待できると考えられている。
- 省エネルギーにつながる[1]。明るい時間を有効に使えるので照明などの石油消費の節約になる(環境問題への対応)。また企業の経費削減にもなる。
- 日照を利用した余暇の充実[1]
- 交通事故や犯罪発生率の低下[1]
しかし、夏時間の導入については反対論も存在する。夏時間に対する批判としては、以下のようなものが挙げられる。総じて言えば「導入派の主張は理想論にすぎない」。
- 近年は冷房が各家庭に普及しているため、明るいうちに帰宅すると暑い時間を家で過ごすことから冷房需要が増え、照明の節約効果以上にエネルギー消費量が増える[2]。
- 始業時刻は夏時間でも、終業時刻は外の明るさを基準にする人が出れば、逆に残業が増加する[3]。
- 日没時刻が遅くなることにより、未成年者の夜間外出、深夜徘徊等が助長される懸念がある。
- 時計合せの手間が生じる。企業・家庭で使用される多くの機器に時計が内蔵されており、夏時間⇔通常時間の切り替え時に、それらの時計を修正する負担が掛かる。
- 時刻切り替え時にヒトの睡眠リズムが狂い、睡眠などの健康に悪影響を与え、睡眠不足や、抑うつ、自殺が発生する[5]。
- 交通事故がかえって増加するという報告もある[5]。
[編集] 歴史
18世紀にベンジャミン・フランクリンが提唱したが、フランクリンの時代には実現しなかった。第一次世界大戦中のドイツで、1916年4月30日から10月1日まで、同じくイギリスが1916年5月21日から10月1日まで採用したのが始まりである。
アメリカ合衆国では1918年と1919年に各7か月間、夏時間が導入されたが、大変に不評のため廃止になった。その後第二次世界大戦中に資源節約目的で復活し、今に至る。1986年までは現地時間4月最終日曜日午前2時から10月最終日曜日午前2時までの間、それまでの時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用する「1966年方式」が主に使われていた。その後1986年より、開始日は4月第1日曜日となり、2007年からは「包括エネルギー法案」の可決により期間が約1ヶ月延び、開始日は3月の第2日曜日、終了は11月の第1日曜日となった。なお、議会で法案が通れば、その自治体は夏時間を使用しなくてもよいため、2008年現在、ハワイ州は州全体、アリゾナ州では大半の自治体で夏時間を採用していない。なお、2005年まで大半の自治体で夏時間を採用していなかったインディアナ州は、2006年から州全域で夏時間を採用している。
日本でも、進駐軍の施政下にあった1948年〜1951年の間のみ実施されていた(後述)。
[編集] 主な地域の実施期間
2007年現在。
- アメリカ合衆国(一部除く。前述のとおり2007年から次のように変更され実行されている)、カナダ(一部除く)、メキシコ(一部除く) - 3月第2日曜日午前2時〜11月第1日曜日午前2時(現地時間基準。開始日には2時が3時になり(1時59分59秒の次が3時00分00秒)、終了日は2時が再度1時(1時59分59秒の次が1時00分00秒)になるため、開始日は1日が23時間、終了日は逆に25時間になる)
- ヨーロッパ各国(一部除く) - 3月最終日曜日午前1時〜10月最終日曜日午前1時(UTC基準)
- ロシア - 3月最終日曜日午前2時〜10月最終日曜日午前3時(現地時間基準)
- オーストラリア(北部は実施なし、西部は2006年度から3年間試行中) - 10月第一日曜日午前2時〜翌年4月第一日曜日午前3時(現地時間基準、2008年から)
- ニュージーランド(一部除く) - 9月最終日曜日午前2時〜翌年4月第1日曜日午前3時(現地時間基準)
- ブラジル(一部除く) - 10月第3日曜日午前0時〜翌年2月第3日曜日午前0時(現地時間基準)
[編集] サマータイムを実施していたが廃止した地域
- 日本(1948年-1951年、後述)
- 香港(1941年-1979年)
- 韓国(1987年-1988年)
- 中国(1986年-1992年)
- オーストラリア北部・西部(1917年、1942年-1944年)
- 台湾(1945年-1979年)
- フィリピン
- アイスランド
- コロンビア
- モロッコ
- アルゼンチン
- イラク
- リビア
[編集] サマータイムを実施したことがない地域
赤道に近く緯度が低い国では、サマータイムを実施しない傾向が強い。
[編集] 導入国における廃止議論
- ドイツで2008年に実施されたアンケートでは制度維持に賛成は30.6%、廃止が66.0%、その他3.3%という結果であった[6]。その理由としては「省エネ効果が無い」「切り替えの時期に体調を崩す人が多い」というものが挙げられている。
- ロシアでは切り替えの時期に救急車の出動や心筋梗塞による死亡者が増加するとの理由で、2008年にサマータイム廃止法案が議会下院へ提出されている[7]。
[編集] 日本におけるサマータイム
[編集] 米国などにより占領された期間
日本は敗戦し、米軍などにより占領統治された。その時期に、1948年4月28日に公布された夏時刻法に基づいて、同年5月から毎年(ただし、1949年のみ4月の)第1土曜日24時(=日曜日1時)から9月第2土曜日25時(=日曜日0時)までの夏時間を実施していた(詳しくは夏時刻法を参照)。結局、サマータイムは4回(4シーズン)実施された、1951年に講和条約(=占領を終わらせる条約)が締結され、翌1952年4月28日に占領が終了した。それに先立って1952年4月11日に夏時刻法は廃止された。よって5回目の夏時間は実施されていない。
以後、日本では法律に基づく全国一斉の本格的なサマータイムは実施されていない。
[編集] 平成における制定過程
1995年頃からは省エネなどを名目としたサマータイムの再導入が一部議員を中心に検討され始めた。
衆参両院超党派の100名を超える国会議員たちにより2004年8月に「サマータイム制度推進議員連盟」が設立された。会長は第一次小泉内閣経済産業大臣だった平沼赳夫(経産省は電力などを管掌)。2005年に法案提出の動きがあったができなかった。平沼自身は、郵政選挙で自民党を離党し、政治権力の中心から離れるとともに“反自民”の象徴となった。以降この議連による動きは止まったままである。
2007年春には、日本経済団体連合会(日本経団連)が自由民主党に対して夏時間の導入を提案した。同年8月1日から8月31日までの1か月間、日本経団連は経団連会館内で、始業・終業時刻を通常より1時間繰り上げる(早める)「サマータイム勤務」(エコワーク)を実施した。
福田康夫内閣は地球環境(特に地球温暖化対策)と生活者の重視を旗印にしており、洞爺湖サミット等でも強力に推進する予定である。自民党は2008年4月に地球温暖化対策推進本部を立ち上げた。会長は野田・元自治相であり「(国民の)地球温暖化対策に対する意識変化を国民運動的に求めていく」としている。サマータイムは政府のなすべき温暖化対策・環境対策の切り札として位置付けられている。とりわけ、地球温暖化対策に対する意識変化を起こさせるという意味で決定的と考えられている。2008年5月13日、自民党地球温暖化対策推進本部は、サマータイム法制化・完全導入への作業を本格的に開始した。2009年夏から制度導入させたい意向である。
[編集] サマータイム制への批判
日本では過去サマータイム制を導入しながらも廃止した経緯があり、根強い不信感がある。NHKオンラインの実施したアンケート[8]では、反対派が賛成派をわずかに上回った。具体的には、次のような懸念がある。
- 生活リズムが混乱する。これについては「昼食の時刻は昼間の真ん中の12時」と子供のころから習慣になっている日本人の場合、諸外国と異なり「昼食時刻の認識の正確さを利用して、無意識のうちに日周体調リズムを取っている」との説がある。そして夏時間の導入は、西日本においては「(自然時間の)正午」と「12時」とを分裂させるため、「2つの昼食時刻」を生じさせ、リズムを取る方法として利用できなくなることが、その混乱の引き金になるのである。なお昼と夜の日照有無の認識だけで24時間リズムが常に保たれるとは限らない点については、下記参考文献を参照のこと。このことは、既に夏時間を導入している国であるスペインで、夏季に時差を慣らす実験がこれらの問題に興味を持つ執筆者ら有志により行なわれ、確認された。おそらくは、これと(日本における)前回導入時の、もともと自然の少ない都市部での苦情「疲れてだるい(日本睡眠学会 ノートルダム清心女子大学 石原金由教授らの調査)」とは何らかの関連があるものと見られる。
- 日本列島は東西に細長いため、東日本と西日本で日の出・日の入りの時刻に大きな差があり、全国一律にサマータイムを導入するには不適。西日本においては、日の出時刻が1時間繰り下がる(遅くなる)と生徒・児童は暗い中を登校することになり、交通事故等の危険性が高まる(沖縄県那覇市の場合で4月1日は6時20分ごろから7時20分ごろになる。中央ヨーロッパ時間も参照)。
- 日本は湿度が高く日没後も蒸し暑いため、帰宅後の冷房需要が他国と比べて大きい。
- そもそも日本においては、伝統的に夏の強烈な日差しは忌むべきものであり、夏の風物(花火・夕涼み・蛍狩り)も夜を主体としたものが多い。
- 日本においては通勤時間が長い勤労者が多く、また多くの民間企業や一部官庁では21時〜22時過ぎ、あるいはそれ以降までの残業が常態化しており、1時間程度帰宅が早まったからといって「明るい間に帰宅する」ことはとうてい不可能である。
- 一部の学校で行われている「冬時間」のように、金融機関が音頭をとる形で就業規則で変更すればよいだけの話である。また、自衛隊でも夏期と冬期で起床・朝食時間を変更しているが、日照の有効活用ということであればその程度の変更で事足りる。
- 日本は島国であるため、欧米のサマータイムに合わせる必要性が薄い。仮に欧米のサマータイム制度に合わせる必要性を認めたとしても、日本の周辺国の多くはサマータイム制を導入していないので、サマータイム制を導入しないことが隣国に合わせることである。
- サマータイム制の一般的なメリットは認めるものの、日本列島には地理的に特異性があることから、単に標準時を改定する(加える)だけでメリットを享受でき、デメリットは回避できるという議論もある。
[編集] 北海道サマータイム
高緯度である北海道の夏は日中時間が日本一長いため、北海道全域を中央標準時より1時間又は2時間加えることによって、明るい時間を有効に利用しようという「北海道サマータイム特区構想」にからんだ実験として実施されている。
最終的には北海道全域に限り4月第1日曜日から9月最終日曜日までの期間、1時間又は2時間時計を進める仮構想が提唱されている[1]。
札幌商工会議所は、2004年7月の1ヶ月間、北海道内の企業、官公庁に対し、就業時間を1時間繰り上げる(早める)よう呼びかける「北海道サマータイム月間」を実施。2005年は6月20日から7月31日までの期間内で実施。企業へのアンケートでもおおむね好評で、夏のイベントとしての定着が進められている。しかし、北海道サマータイムは時計をいじらず、出退勤時間を1時間早めるという時差出勤の一種であり、本来の「サマータイム」とは異質な制度である。
[編集] 滋賀県庁
2003年7・8月には、滋賀県庁で職員を対象にサマータイム導入実験が行われた。
[編集] 奥州サマータイム
2006年6月〜8月にかけ岩手県奥州市において、水沢青年会議所が主導となりサマータイム導入実験が行われた。
[編集] 関連項目
- アラスカ夏時間 (AKDT)
- 太平洋夏時間 (PDT)
- 山岳部夏時間 (MDT)
- 中部夏時間 (CDT)
- 東部夏時間 (EDT)
- 大西洋夏時間 (ADT)
- ニューファンドランド夏時間 (NDT)
- 英国夏時間 (BST)
- 西ヨーロッパ夏時間 (WEST)
- 中央ヨーロッパ夏時間 (CEST)
- 東ヨーロッパ夏時間 (EEST)
- モスクワ夏時間 (MST)
- 西アフリカ夏時間 (WAST)
- 夏時刻法
[編集] 脚注
- ^ a b c 「サマータイム制度導入に向けて議員連盟発足」。2001年8月6日、サマータイム制度推進議連発足会。2008年6月8日閲覧。
- ^ 「夏時間を採用するとエネルギー消費量は逆に増える、米経済学者」2008年3月5日、テクノバーン。2008年6月8日閲覧。
- ^ 「サマータイム本当にいいの? 省エネ、余暇増加へ疑問の声も」。2008年5月28日、J-CASTニュース。2008年6月8日閲覧。
- ^ 「3週間早い夏時間切り替えでIT製品に問題多発」。2007年3月13日、ITmedia。2008年6月8日閲覧。
- ^ a b 「サマータイムに関する声明」。2008年6月5日、日本睡眠学会。2008年6月8日閲覧。
- ^ 竹森健夫ドイツマスコミスキャン〜サマータイムなんかいらない(JANJAN・2008年4月8日)
- ^ 北海道新聞・2008年6月2日
- ^ http://www.nhk.or.jp/toppage/enquete2005/050812.html
[編集] 参考文献
[編集] 外部リンク
- サマータイム問題を考える(伊藤毅)
- サマータイム法案の上程に反対する意見(日本労働弁護団)
- 滋賀県職員の夏季早出勤務実証研究報告書
- グラフィカルディスプレイ 2地点の時差、夏時間の開始・終了日をグラフで表示

