閏秒

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追加する場合は存在しない23時59分60秒を追加し調整する

閏秒(うるうびょう、: leap second)は、現行の協定世界時 (UTC) において、UT1との差を調整するために追加または削除される1である[1][2]1972年以来、これまでに閏秒の挿入が24回実施されている(2011年末現在)。

目次

[編集] 解説

調整実施日
6月末日 12月末日
1972年 +1秒 +1秒
1973年 0 +1秒
1974年 0 +1秒
1975年 0 +1秒
1976年 0 +1秒
1977年 0 +1秒
1978年 0 +1秒
1979年 0 +1秒
1980年 0 0
1981年 +1秒 0
1982年 +1秒 0
1983年 +1秒 0
1984年 0 0
1985年 +1秒 0
1986年 0 0
1987年 0 +1秒
1988年 0 0
1989年 0 +1秒
1990年 0 +1秒
1991年 0 0
1992年 +1秒 0
1993年 +1秒 0
1994年 +1秒 0
1995年 0 +1秒
1996年 0 0
1997年 +1秒 0
1998年 0 +1秒
1999年 0 0
2000年 0 0
2001年 0 0
2002年 0 0
2003年 0 0
2004年 0 0
2005年 0 +1秒
2006年 0 0
2007年 0 0
2008年 0 +1秒
2009年 0 0
2010年 0 0
2011年 0 0
2012年 +1秒
6月末日 12月末日
10秒 15秒
25秒
TAI − UTC
34秒
世界標準時での実施日付。
すべて正の閏秒による調整である[3][4]
実施時刻はすべて当日の23時59分末尾である。
Leapsecond.ut1-utc.svg
UTCとUT1とのズレ。
垂直な緑の線は閏秒が追加されたことを表す。
1962年から2010年にかけての一日の長さのズレ

協定世界時 (UTC) は、国際原子時 (TAI) と UT1 という2つの時刻系を基にしている。国際原子時は「原子や分子が二つのエネルギー準位間の遷移によって、ある特定の振動数を持つマイクロ波を放射する」原理を利用した原子時計に基づいており[5]、他方、世界時である UT1 は地球の自転に基いている[1][5]

地球の自転に基づく世界時は、太陽が朝に出て夕方に沈むといった、日常生活に関係する時間観念からすれば便利である。しかし、による潮汐摩擦や地球内部の核、海水や氷河の分布変化など、さまざまな原因により地球の自転運動は一定の速さではない[6]。ゆえに UT1 は1秒の長さが一定せず、時の標準を学術的に正確に定めるのに向いていない。この点では1秒の長さが一定である国際原子時は便利である。しかし国際原子時は地球の自転に従わないため、やがて両者のずれは拡大し、理論上は時間観念とも食い違うことになる。やはりこれだけでは時の標準を定めるにも不向きである。

国際原子時の利点を保ちつつ、世界時の利点をなるべく失わないようにする方法が、閏秒による調整である。協定世界時は、1秒の長さや秒を刻む歩調は国際原子時に合わせつつ、UT1 との時刻の差を閏秒による調整で縮めている[7]

[編集] 歴史

1958年1月1日0時に国際原子時(TAI) が開始されたときはTAI = 世界時(UT2) と定められていた[5]。この旧・協定世界時は世界時(UT2) は世界時(UT1) の補正版で、1971年まで使用された。が、国際原子時(TAI) と同調しておらず[2]、現在はUT2は使用されていない[5]。その後1967年に1の定義がセシウム133原子を用いた現行の定義へ変更された[5]

1972年1月1日0時に現行の協定世界時(UTC) が、UTC = TAI - 10秒 に調整されて開始された[2]。そして1972年6月30日、第1回の閏秒調整があり、これによりUTC = TAI - 11秒 となった[3]。2011年末現在、直近にあった閏秒調整は2008年12月31日の第24回の閏秒調整で、これによりUTC = TAI - 34秒 となった[3]

第25回は2012年6月30日に実施され、これ以降はUTC = TAI - 35秒となる。[8]

[編集] 閏秒による協定世界時(UTC) 調整の仕組み

[編集] 基準とタイミング

UTCとUT1との差を±0.9秒以内に保つよう[1]、閏秒による調整が実施される。これまでの実際の運用では、調整はすべて正の閏秒(後述)で、典型的にはUT1-UTCが-0.5秒程度のとき挿入され、そこでUT1-UTCが+0.5秒程度にジャンプする。差が-0.2秒台で早々と挿入され+0.7秒台にジャンプすることも、-0.6秒台になってからようやく挿入され+0.3秒台にジャンプすることあったが、差の絶対値で最大0.7秒台はあっても(1972年の導入直後の初期状態を例外として)0.8秒台にはならないように運用されてきている[1]。これはDUT1が0.8秒を超えないようにするというCCIR Recommendation 460-4とも合致している。

この調整は国際地球回転及び基準座標系事業英語版(IERS。国際観測を実施)が決定する[9]。実施日は協定世界時(UTC) の月末とされ、年12回の可能性があるが、第一優先が6月末日または12月末日、第二優先が3月末日または9月末日で、これまでの実際の運用では第一優先の6月末日または12月末日だけで間に合っている。実施日23時59分台の末尾で1秒が追加または削除される [10]

[編集] 正の閏秒

2011年末までに計24回実施された閏秒調整はいずれも、追加される1秒(正の閏秒、英: positive leap second[10])による調整で、協定世界時(UTC) で6月末日または12月末日に1秒が追加された[3][4]

実施日23時59分59秒の1秒後に、通常なら存在しない23時59分60秒が追加される[10]。協定世界時(UTC) を、23時59分60秒台によって1秒、遅らせる仕組みである。

実施例[3] ウィキニュース

2005年12月31日23時59分59秒 (UTC) の1秒後が、
2005年12月31日23時59分60秒 (UTC)、ここで1秒追加されて次が
2006年1月1日0時0分0秒 (UTC) となった。

[編集] 負の閏秒

2011年までに実施例は一度もないが[3][4]、削除される1秒(負の閏秒、英: negative leap second[10])による調整方法も次のように定められている。

実施日23時59分58秒の1秒後に通常なら毎日存在する23時59分59秒が削除され、翌日0時0分0秒とされる[10]。つまりは23時59分59秒台をとばして、協定世界時(UTC) を1秒進める仕組みである。

[編集] 各種標準時刻サービスでの対応

[編集] NTTの時報サービス

NTT東日本NTT西日本時報サービス(電話番号117)は過去、正の閏秒の調整には、秒音追加ではなく秒音間隔を伸ばすことで対応している。すなわち、「午前8時58分20秒」の秒音の後、「午前9時」の秒音まで、秒音間隔を通常より1/100秒長い101/100秒にし、秒音100回で101秒となるようにしている [11][12]。 この間につき日本標準時(JST) と比べると、「午前8時58分21秒」の秒音から「午前8時59分59秒」の秒音までの99回に限って符合せず、「午前9時」の秒音で符合することになる。

なお、両社の「ひかり電話」の時報サービスでは前述と異なり、挿入される「午前8時59分60秒」とその1秒後の「午前9時00分00秒」に2回続けて「ポーン」音を鳴らして調節している[13]

[編集] 電波時計

電波時計は標準電波を利用して時計の時刻を校正するサービスである。日本では独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) が提供する標準電波および標準時刻のサービスJJYを利用できる[14]

JJYの時刻送信フォーマットには閏秒の挿入または削除を予告する情報が含まれている。実際の製品では単に59秒を示すP0マーカーの次の1秒で00秒にリセットする動作だけが実装されていて、表示としては(日本標準時)9時00分00秒が2回繰り返される・8時59分59秒がとばされるだけという動作が多い。実際の電波時計は常時受信可能とは限らないため、1時間に1回、あるいは1日に1回程度しか校正しない場合がある。いずれの場合も、次の校正時刻でこのような動作になる。また電波を強制受信することにより、次回の校正時刻を待たずとも挿入後の時刻に合わせることができる。[15]

[編集] NTP(Network Time Protocol)

NTP(Network Time Protocol)はコンピュータどうしの時刻を同期させるプロトコルである。正確な時刻の同期が必要なサーバ系OSで広く使われており、現在ではMac OS・Windows系OS(『インターネット時刻に同期』)などPCでも利用可能である[16]

NTPサーバは時刻を比較する相手となる他のNTPサーバと時刻情報をやり取りするが、直前に閏秒が挿入・削除された場合にそれを示す警告情報も一緒にやり取りする。閏秒は1秒ステップさせるため、これがなければ突然他のNTPサーバより時刻が遅れた(進んだ)ようにみえ、閏秒挿入・削除後しばらくの間、時刻精度に影響を及ぼすと考えられるからである。受け取った側がどう処理するかはNTPサーバプログラムの実装に任される。しかし、削除された1秒に自動起動するサービスがあるかもしれなかったり、外部要因で日付が変わると無効になるライセンスがありえたりするため注意が必要である[16]

また現実には、他のNTPサーバの閏秒情報を鵜呑みにすると偽の閏秒情報で時刻が狂わされる危険が考えられるため、コンピュータの管理者が編集・設置する『閏秒情報ファイル』を使って時刻のオフセットを管理する場合がある。[17]

[編集] GPS(Global Positioning System)

GPS測位に使われるシステムである。原子時計(これもまた地上からの指令で校正される)を積んだ複数の人工衛星から受信地点まで電波が届く時間を計測して各衛星と受信地点の距離を求め、そこから立体三角法で位置を推定するのである。時間が肝要なシステムであるため、受信機は相対性理論すら考慮に入れられた、極めて高精度の時刻を得ている[18]

GPS衛星がもっている時刻はGPS時刻とよばれ、1980年1月6日時点ではUTと同一(TAI - 19秒)であった。その後閏秒が挿入(削除されたことはない)されても修正されていない。したがってGPS時刻はUTに比べ、このとき以降挿入された閏秒の実施回数秒だけ進んでいる。ただし前述のようにGPS受信機は高精度の時刻を得ているため、基準時計として利用されることが多い。よって、ブロードキャストメッセージにはUTとGPS時刻の差(閏秒の実施回数)が含まれており、受信機が閏秒の分を修正して出力している[16]

[編集] 将来

[編集] 廃止論と反対論

閏秒の存廃については議論があり、2013年に閏秒を廃止することを目指す提案もなされていた[19] [20] [21]

廃止するべき理由としては、次のようなものが挙げられている。

  • 閏秒があるとUTCは一様の尺度でない(例えば23:00 UTCから翌0:00 UTCの時間間隔が場合によって異なる)ので不便。
  • 閏秒の調整を手動で行わなければならず、間違いや時計間の不整合が起こりやすい。航空管制システムなどのトラブルにつながる可能性もあり、人命への余計なリスクとなる。
  • 一様の尺度が望ましい局面では、GPSの時系のように「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」という新しいシステムが用いられることがあるが、「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」は実際上、閏秒の数だけバリエーションがあり、時刻システムの乱立につながるうえ、相対的にUTCの価値・有用性・権威を低下させ、度量衡統一の観念にも反する。

一方、廃止に反対する理由としては、次のようなものがある。

  • 実質的に閏秒が原因で問題が発生したという報告がない。
  • 天体観測・アンテナ制御などのソフトウェア、ハードウェアなどにはUT1-UTCの絶対値が1秒を超えないという前提で設計されているものも少なくなく、その前提が破れると大きな改修が必要になり、予期せぬトラブルの原因ともなる。
  • 市民生活は依然地球の自転と同期しており、UT1-UTCの差が累積するのは好ましくない。

[編集] 長期的な問題

地球の自転は、短期的にはさまざまな予測困難な小さい揺らぎを示しつつ、長期的には、潮汐力を主要原因として減速傾向にあり、変化率は過去2700年間の平均で(+1.70±0.05)ms/cy、つまり、1ユリウス世紀ごとに1太陽日の長さは0.0017SI秒ほど長くなってきたとされる[22]。この状態が続くと正の閏秒の挿入頻度は徐々に増加し、21世紀中には毎年1回ずつが当たり前になるかもしれない。今後の地球自転の変動をどう推定するかによって予測時期は変わるが、恐らく22 - 23世紀には年2回の閏秒も一般的になり、西暦3000 - 4000年ごろには年12回の閏秒が必要になると考えられ、それを超えると現在の閏秒の方法では平均的に間に合わなくなってしまうし、常にUTCとUT1の差を±0.9秒以内に保つという目標も、遅くとも同時期(場合によってはより早期)には達成不可能になる[23]。この問題について、いくつかの提案がなされている[24]

[編集] 閏秒と閏日(閏年)

閏秒と閏日閏年)は無関係である。閏秒が地球の自転の不整と原子時計の間の調整である。長い目で見ると、閏秒などの時間調整がなければ、一日は24時間なのに地球が一周自転するのは25時間などのズレが生ずる[6]。対して閏日(閏年に挿入される臨時の2月29日)は地球の公転周期と地球の自転周期が簡単な比になっていないことを調整するためのものである。閏日(閏年)がない場合には、例えばカレンダーは12月なのに「北半球は真夏」というズレが起こりうる[25]

[編集] 脚注

  1. ^ a b c うるう秒に関するQ&A|2009年1月実施版”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. 2008年9月6日閲覧。
  2. ^ a b c 原子時と「うるう秒」”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. 2008年9月12日閲覧。
  3. ^ a b c d e f うるう秒実施日一覧”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. 2008年9月6日閲覧。
  4. ^ a b c Historical list of leap seconds since 1972”. Hong Kong Observatory (香港天文台). 2008年9月6日閲覧。(英語)
  5. ^ a b c d e 「時空分野、時間に関する用語集」”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 次世代時刻周波数標準プロジェクト. 2008年9月6日閲覧。
  6. ^ a b 質問4-4) 1日の長さは変化しているの? 国立天文台 2011年10月4日閲覧
  7. ^ 質問4-3) 「うるう秒」ってなに? 国立天文台 2011年10月4日
  8. ^ UTC Time Step on the 1st of July 2012”. SERVICE DE LA ROTATION TERRESTRE OBSERVATOIRE DE PARIS (2012年1月5日). 2012年1月22日閲覧。(英語)
  9. ^ 「うるう秒」挿入のお知らせ”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) の報道発表 (2008年9月12日). 2008年9月12日閲覧。
  10. ^ a b c d e Data elements and interchange formats — Information interchange — Representation of dates and times (PDF)”. ISO 8601:2004 (PDF版). ISO. 2008年9月6日閲覧。(英語): PDF p.10 (原典p.4)。
  11. ^ "時報サービス「117」番の「うるう秒」調整の実施について" 東日本電信電話株式会社ならびに西日本電信電話株式会社: 2005年12月16日ニュースリリース. 2008年9月7日 閲覧。
  12. ^ "別添資料" 東日本電信電話株式会社ならびに西日本電信電話株式会社: 2005年6月9日ニュースリリース. 2008年9月7日 閲覧。
  13. ^ "時報サービス「117」の「うるう秒」調整の実施について" 東日本電信電話株式会社・西日本電信電話株式会社連名: 2008年12月15日ニュースリリース. 2008年12月29日 閲覧。
  14. ^ 1秒を決める国内唯一の機関――情報通信研究機構(NICT)”. Business Media 誠. 2010年10月4日閲覧。
  15. ^ うるう秒の対応 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト 2011年10月4日閲覧
  16. ^ a b c 安藤幸央のランダウン44 時を欠ける症状-うるう秒から考えるサステナビリティ アットマーク・アイティ 2011年10月4日閲覧
  17. ^ AMSR Data Input Toolkit (ADIT) User’s Guide 宇宙航空研究開発機構 2011年10月4日閲覧
  18. ^ GPSと物理 九州大学理学部物理 2011年10月2日閲覧
  19. ^ Nelson, McCarthy; et al. (2001年). “The leap second: its history and possible future”. 2009年3月3日閲覧。
  20. ^ CGSIC 47th Meeting Summary Report” (2007年). 2009年3月3日閲覧。
  21. ^ Markus, Kuhn (2003年). “Leap seconds”. 2009年3月3日閲覧。
  22. ^ Stephenson, F. R.; Morrison, L. V. (1995年4月). “Long-term fluctuations in the Earth's rotation: 700 BC to AD 1990.”. Philosophical transactions of the Royal Society of London. 2009年3月2日閲覧。
  23. ^ Allen, Steve (2003年4月). “Mail to LEAPSECS on 2003-04-22: UTC is doomed”. 2009年3月2日閲覧。
  24. ^ Seaman, Rob (2003年4月). “A Proposal to Upgrade UTC”. 2009年3月2日閲覧。
  25. ^ うるう年って何のためにあるの? スゴモリ 2011年10月4日閲覧

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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