閏秒

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追加する場合は、通常は存在しない23時59分60秒を追加し調整する

閏秒(うるうびょう、: leap second)は、現行の協定世界時 (UTC) において、世界時UT1との差を調整するために追加もしくは削除されるである[1][2]。この現行方式のUTCは1972年に始まり、2012年までに実施された計25回の閏秒は、いずれも1秒追加による調整であった[3][4][5]

概要[編集]

1日の長さ LOD (Length of Day)[編集]

1962年から2011年までの1日の長さ(LOD)の変動(緑線が一日の長さから86 400秒を差し引いたものの365日移動平均)

地球の自転に基づく世界時は、太陽が朝に出て夕方に沈むといった、日常生活に関係する時間観念からは便利である。しかし、地球の自転の角速度、すなわち「1日の長さ (LOD : Length of Day)」は一定ではない[6]。なお「LOD」は、1日の長さそのもの(例えば、86 400.002秒)をいう場合もあるが、1日の長さから86 400秒を差し引いたもの(例えば、0.002秒または2ミリ秒)をいうことが多い[7]ので注意が必要である。

24時間×60分×60秒 = 86 400秒であるから、1秒の長さは1日の長さの86 400分の1であるべきだが、問題は、この1日の長さとしていつの時期の1日の長さを採用するかである。1956年に秒の長さを1900年1月1日時点の地球の公転速度によって定義した(これを暦表秒という。)とき、その秒の長さは、1750年から1892年までの間(約140年間)のLODの天文観測結果によっていた(これはほぼ1820年時点でのLODの1/86 400を1秒と定めたことになる)。

1955年頃に、アメリカ海軍天文台 (USNO)のウィリアム・マーコウィッツイギリス国立物理学研究所(NPL)のルイ・エッセンは、セシウム原子の超微細遷移周波数と暦表秒との関係を研究し[8]、1秒が9192631770周期だという数値を得たのであるが、彼らが基準とした秒の長さは、上記の暦表秒であった。そして、1967年に国際原子時 (TAI) におけるの長さを決めたとき、その長さは、マーコウィッツとエッセンが求めた9192631770周期の通りに定義された。

LODは長期的な傾向として100年間につき約1.4ミリ秒/日だけ長くなる[9]。1967年は、暦表秒の基準であった1820年から約150年が経過しており、この時点で、LODは86 400.002秒(つまり2ミリ秒だけ長い。)程度になっていたのである[10]。こういうわけで、国際原子時による秒の定義がスタートしたときから、すでに1日の長さ(LOD)と86 400秒との数ミリ秒の差は存在していたのである。

秒の定義の基であるセシウム原子の振動数(精度は10-11)は、いうまでもなく、地球の自転(1日の長さ)(精度は10-8)とは全く無関係かつ精度が1000倍も違うのであるから、国際原子時世界時との差が1950年代からすでに生じていたことと、そして、その差(マイクロ秒~ミリ秒単位)がそれ以降は不安定になることは、当初から予定されていたことなのである。

LODの変化[編集]

LODは、1820年から150年後の1967年に約2ミリ秒/日程度長くなっていた。そして閏秒が導入された1972年のLODは約3ミリ秒/日に、1990年のLODは約2ミリ秒/日となり、1820年時点と比べて約2~3ミリ秒程度長くなってしまった[6]。1秒 ÷ 3ミリ秒/日 = 333日 であるから1972年頃には約1年( = 約365日)おきに、1秒 ÷ 2ミリ秒/日 = 500日 であるから1990年頃には約1年半( = 約500日)おきに閏秒を挿入する必要があったのである。

更に2003年のLODは 約86 400.001秒であり、1990年頃と比べてLODは更に短くなった。1秒 ÷ 1ミリ秒/日 = 1000日 であるから、2003年頃には、約3年( = 約1000日)おきに閏秒を挿入することとなった。

LODが長期的には100年間につき約1.4ミリ秒/日だけ長くなることは前述のとおりであるが、上記の1972年(3ミリ秒/日)、1990年(2ミリ秒/日)、2003年(1ミリ秒/日)の値からわかるように、ここ40年間では、一日の長さ(LOD)はむしろ短くなっている(地球自転速度が速くなっている。)のである。日々のLODが86 400秒と比べてどれほど長いかは、IERS(後述)のウェブページで見ることができる[11][12]。また、これまでの約50年間のLODの変動も、IERSのウェブページで見ることができる[13]。これらによれば、現在(2012年 - 2013年)の平均的なLODは、86 400.001秒程度であり、年間を通じると86 400秒より長いのであるが、6月 - 8月にかけては86 400秒より短くなる期間さえあることがわかる。

精度と歩度のずれ[編集]

上記のように、「1日の長さ」LODは一定でなく、10-8程度の精度しかない。このためUT1における1秒も一定しておらず、時間の精密な標準としては不適当である。この点では1秒の長さに10-11以上の精度がある国際原子時の方が適切である。しかし国際原子時の歩度(時間の進み方)は地球の自転とは全く無関係であるので、両者の歩度のずれは避けられないのである。

LODの変動要因[編集]

1年から数年より短い周期のLOD変動の原因は、その大部分が大気(地殻の相互作用)によることが確かめられている[14]

一方、LODの年単位より長周期の変動の原因は分かっておらず、未解決の課題である[15][16]による潮汐摩擦、地震による地球内部の質量の分布変化、マントルと外核の相互作用[17]、地球内部の核、風、海水や氷河の分布変化などによる影響が考えられているが、定量的には分かっていない。

閏秒による調整の概要[編集]

現行の協定世界時 (UTC) は、国際原子時 (TAI) とUT1という2つの時刻系を基にしており、TAIと同一のSI秒の定義を用いている。

国際原子時は「原子や分子が2つのエネルギー準位間の遷移によって、ある特定の振動数を持つマイクロ波を放射する」原理を利用した原子時計に基づいており[18]、他方、世界時であるUT1は地球の自転に基いている[1][18]

国際原子時の利点を保ちつつ、昼と夜という生活感覚に合わせる方法が、閏秒による調整である。協定世界時は、1秒の長さは国際原子時に合わせつつ、UT1との時刻の差を閏秒によって調整しているのである[19]

閏秒挿入の理由についての誤解[編集]

閏秒の必要性や閏秒挿入の理由については、次のような説明がしばしば見られる。

  1. 地球の自転速度が徐々に遅くなっているために、これと国際原子時との差を調整するために閏秒を挿入している[20][21]
  2. 頻繁に閏秒が挿入されてきたのは、地球の自転が徐々に遅くなっており、この遅れを調整するためである。

以上の説明は、誤解に基づくものである[22][23][24]

正しくは、

  1. 国際原子時の歩度(セシウム遷移の9 192 631 770周期)は、1750年 - 1892年の間(平均的には、1820年頃)に行われた天文観測からサイモン・ニューカムが計算した(Tables of the Sunに基づく)秒の長さに基づいて決められたために、1958年当時の地球自転の歩度(86 400.0025 SI秒程度)とは、合わなくなっていた[25]
  2. したがって、後知恵ではあるが、国際原子時の歩度を、セシウム遷移の9 192 631 770周期ではなく、9 192 631 997周期にしておけば、1972年以降、2回のマイナス(閏秒の削除)と1回のプラス(閏秒の挿入)の3回だけの閏秒の削除・挿入で済んでいたはずである[26][27]。ただし、もし9 192 631 997周期にしたとすると、(9 192 631 997 - 9 192 631 770)/9 192 631 770 = 2.469×10-8だけ、秒の長さが長くなり、それまでに蓄積されていた物理定数の数値を変更しなければならなくなるという大きな問題が生じることになったはずである。
  3. 地球の自転が長期的な傾向としては徐々に遅くなっているのは事実であるが、それは1ユリウス世紀につき1.7ms/日程度[28]USNOの解説では、1ユリウス世紀につき1.4ms/日程度としている[29])の極めて小さなものである。1972年以降の地球自転速度の変化は、上記の遅れによるものではなく、数年ないし数十年周期の、もっと大きく、不規則な変動によるものである[30][31]

協定世界時の歴史[編集]

旧・協定世界時は、基本的に世界時 (UT1) の補正版である世界時 (UT2) を採用し[18]、現在とは異なる秒の定義を用いており、1971年まで使用された。

国際原子時 (TAI) が1958年1月1日0時に開始されたときはTAI=世界時 (UT2) と起点を定めた[18]。その後1967年に1の定義がセシウム133原子を用いた現行の定義へ変更された[18][2]

1972年1月1日0時に現行の協定世界時 (UTC) が、TAIと同じくSI秒の定義を用い、UTC = TAI - 10秒として開始された[2]。その後、1972年6月30日実施の第1回から2012年6月30日実施の第25回まで、いずれも正の閏秒(1秒追加)による調整が実施され、現在はUTC = TAI - 35秒となっている[3][5]

閏秒による協定世界時調整の仕組み[編集]

調整実施日
6月の末日 12月の末日
1972年 +1秒 +1秒
1973年 0 +1秒
1974年 0 +1秒
1975年 0 +1秒
1976年 0 +1秒
1977年 0 +1秒
1978年 0 +1秒
1979年 0 +1秒
1980年 0 0
1981年 +1秒 0
1982年 +1秒 0
1983年 +1秒 0
1984年 0 0
1985年 +1秒 0
1986年 0 0
1987年 0 +1秒
1988年 0 0
1989年 0 +1秒
1990年 0 +1秒
1991年 0 0
1992年 +1秒 0
1993年 +1秒 0
1994年 +1秒 0
1995年 0 +1秒
1996年 0 0
1997年 +1秒 0
1998年 0 +1秒
1999年 0 0
2000年 0 0
2001年 0 0
2002年 0 0
2003年 0 0
2004年 0 0
2005年 0 +1秒
2006年 0 0
2007年 0 0
2008年 0 +1秒
2009年 0 0
2010年 0 0
2011年 0 0
2012年 +1秒 0
2013年 0 0
2014年 0 0
10秒 15秒
25秒
TAI−UTC
35秒
世界時での実施日付。
すべて正の閏秒による調整である[3][4]
実施時刻はすべて当日の23時59分末尾である。
Leapsecond.ut1-utc.svg
UTCとUT1とのズレ。
垂直な緑の線は閏秒が追加されたことを表す。

基準とタイミング[編集]

UTCとUT1との差を±0.9秒以内に保つよう[1]、閏秒による調整が実施される。これまでの実際の運用では、調整はすべて正の閏秒(後述)で、典型的にはUT1-UTCが-0.5秒程度のとき挿入され、そのためにUT1-UTCが+0.5秒程度にジャンプする。差が-0.2秒台で早々と挿入されて+0.7秒台にジャンプすることも、-0.6秒台になってからようやく挿入され+0.3秒台にジャンプすることもあった。しかし、差の絶対値が最大0.7秒台となることはあっても(1972年の導入直後の初期状態を例外として)0.8秒台にはならないように運用されてきている[17]。これはDUT1が0.8秒を超えないようにするというCCIR勧告460-2[32](現 ITU-R勧告TF.460-6[33])とも合致している。

この調整は国際地球回転・基準系事業(IERS。国際観測を実施)が決定する[34]。実施日は協定世界時 (UTC) の月末とされ、年12回の可能性があるが、第一優先が6月末日または12月末日、第二優先が3月末日または9月末日[35][36][37]、これまでの実際の運用では第一優先の6月末日または12月末日だけで間に合っている。実施日23時59分台の末尾で1秒が追加または削除される[38]

現行の協定世界時(UTC) が始まった1972年当時は、世界時(UT1) との差を±0.7秒以内に保つよう6月末日か12月末日に調整することとされていたが、1975年1月1日から基準が緩和され、調整を実施しうる日も増やされた[39][40]

正の閏秒[編集]

今までに計25回実施された閏秒調整はいずれも、追加される1秒(正の閏秒: positive leap second[38])による調整で、協定世界時 (UTC) で6月末日または12月末日に1秒が追加された[3][4]

実施日23時59分59秒の1秒後に、通常なら存在しない23時59分60秒が追加される[38]。協定世界時 (UTC) を、23時59分60秒台によって1秒、遅らせる仕組みである。

  • 実施例[3]ウィキニュース
    • 2005年12月31日23時59分59秒 (UTC) の1秒後が、
    • 2005年12月31日23時59分60秒 (UTC)、ここで1秒追加されて次が
    • 2006年1月1日0時0分0秒 (UTC) となった。

負の閏秒[編集]

2012年までに実施例は一度もないが[3][4]、削除される1秒(負の閏秒: negative leap second[38])による調整方法も次のように定められている。

実施日23時59分58秒の1秒後に通常なら毎日存在する23時59分59秒が削除され、翌日0時0分0秒とされる[38]。つまりは23時59分59秒台をとばして、協定世界時 (UTC) を1秒進める仕組みである。

時刻情報サービスでの対応[編集]

協定世界時と日本標準時[編集]

日本では、総務省が所管する(担当部局課は情報通信国際戦略局技術政策課) [41]独立行政法人情報通信研究機構 (NICT) 電磁波計測研究所の時空標準研究室が協定世界時 (UTC) を高精度で生成し ("UTC (NICT)")、これに9時間を加えたものを日本標準時 (JST) として提供している[42]

日本標準時では、閏秒による調整のタイミングは、協定世界時より1つ進んだ日付の8時台の最後(午前8時59分)となる。

標準電波[編集]

NICTによって運用されている、日本標準時を提供する標準電波(無線局コールサインJJY)は、電波時計の時刻校正などに広く利用されている[43]

標準電波の時刻送信フォーマットには、閏秒の挿入(または削除)を予告する情報が含まれている。実際の電波時計では、単に00秒の1秒前(通常は59秒)を示すP0マーカーの次の1秒で00秒にリセットする動作だけが実装されていて、表示としては「9時00分00秒」(日本標準時。以下本節と次節で同じ)が2回繰り返される(または8時59分59秒が飛ばされる)という動作が多い。実際の電波時計は常時受信可能とは限らないため、1時間に1回、あるいは1日に1回程度しか校正しない場合がある。いずれの場合も、次の校正時刻でこのような動作になる。また標準電波を強制受信することにより、次回の校正時刻を待たずとも挿入後の時刻に合わせることができる[44]

NTTの時報サービス[編集]

NTT東日本NTT西日本の電話サービスにおける時報サービス(電話番号117)では、2012年7月現在、正の閏秒については標準電波と同様に「8時59分60秒」を挿入する形で対応している[45]

ただし、加入電話およびINSネットの電話サービスから発信された場合と、ひかり電話から発信された場合とで、9時のガイダンス方法が異なる。加入電話やINSネットから発信された場合は、8時59分57秒には予報音を鳴らさず、同58秒、同59秒および同60秒に予報音を鳴らし、9時に時報音(ポーン音)を1回鳴らす。これに対し、ひかり電話から発信された場合は、8時59分57秒、同58秒および同59秒に通常どおり予報音を鳴らし、時報音(ポーン音)を同60秒と9時に鳴らす(2回連続でポーン音が鳴る)[46]

なお、加入電話やINSネットから発信された場合、2009年1月1日実施の第24回閏秒調整までは、秒音を追加せずに、8時58分20秒より秒音間隔を0.01秒伸ばし(間隔を1.01秒にする)、9時の時報音で元の間隔に戻す対応がとられていた[47][48][49]。しかしこの場合、8時58分21秒の秒音から8時59分59秒の秒音までの99回は、正確な時報となっていなかった。

負の閏秒は前例がなく、対応方法が発表されたことはない。

NTP (Network Time Protocol)[編集]

NTP (Network Time Protocol) はコンピューター同士の時刻を同期させるプロトコルである。正確な時刻の同期が必要なサーバー系OSで広く使われており、現在ではMac OS・Windows系OS(「インターネット時刻に同期」)などパーソナルコンピュータでも利用可能である[50]

NTPサーバーは時刻を比較する相手となる他のNTPサーバーと時刻情報をやり取りするが、直前に閏秒が挿入・削除された場合にそれを示す警告情報も一緒にやり取りする。閏秒は1秒ステップさせるため、これがなければ突然他のNTPサーバーより時刻が遅れた(進んだ)ように見え、閏秒挿入・削除後しばらくの間、時刻精度に影響を及ぼすと考えられるからである。受け取った側がどう処理するかはNTPサーバープログラムの実装に任される。しかし、削除された1秒に自動起動するサービスがあるかもしれなかったり、外部要因で日付が変わると無効になるライセンスがありえたりするため注意が必要である[50]

また現実には、他のNTPサーバーの閏秒情報を鵜呑みにすると偽の閏秒情報で時刻が狂わされる危険が考えられるため、コンピューターの管理者が編集・設置する『閏秒情報ファイル』を使って時刻のオフセットを管理する場合がある[51]

GPS (Global Positioning System)[編集]

GPS測位に使われるシステムである。原子時計(これもまた地上からの指令で校正される)を積んだ複数の人工衛星から受信地点まで電波が届いた時間を計測して各衛星と受信地点の距離を求め、そこから立体三角法で位置を推定するのである。時間が肝要なシステムであるため、受信機は相対性理論すら考慮に入れられた、極めて高精度の時刻を得ている[52]

GPS衛星がもっている時刻はGPS時刻とよばれ、1980年1月6日時点ではUTと同一(TAI-19秒)であった。その後閏秒が挿入されても修正されていない。したがってGPS時刻はUTに比べ、このとき以降挿入された閏秒の実施回数秒だけ進んでいる。ただし前述のようにGPS受信機は高精度の時刻を得ているため、基準時計として利用されることが多い。よって、ブロードキャストメッセージにはUTとGPS時刻の差(閏秒の実施回数)が含まれており、受信機が閏秒の分を修正して出力している[50]

その他[編集]

小金井市にある情報通信研究機構 (NICT) の本部建物正面中央上部にあるデジタル表示の大時計が日本では代表的だが、閏秒の「60秒」という時刻の表示に対応している時計がいくつかあり、閏秒による調整があった、というニュースを伝える写真などで使われることがある[53]

コンピューターソフトウェアへの影響[編集]

うるう秒の影響により、コンピューター、特にサーバーが正常に動作しないことがある。

2012年7月1日のうるう秒では、Linux のカーネルのスレッド関係のバグにより、Java や MySQL など各種プログラムで高負荷になったり異常な動作をしたりした[54]。これにより、VPSなどの共有系のサーバーが過負荷になった。また、au、mixi、Gawker、StumbleUpon、Yelp、foursquare、LinkedIn[54][55][56]など世界中の様々なネットサービスで障害が発生した。Linux カーネル 2.6.29 で修正したはずであったが[57]、実際は、それよりも古いカーネルにバグ修正を加えたものではなく、それよりも新しいカーネルに未知のバグが存在しており、問題が発生した。

将来[編集]

廃止論と廃止反対論[編集]

閏秒の存廃については、国際電気通信連合で議論があり、2013年に閏秒を廃止することを目指す提案もなされていた[58][59][60]。しかし2012年1月の総会では2015年の総会まで結論を見送った[61][62]

廃止するべき理由としては、次のようなものが挙げられている。

  • 閏秒があるとUTCは一様の尺度ではなくなる(例えば23:00 UTCから翌0:00 UTCの時間間隔が場合によって異なる)ので不便。
  • 閏秒の調整を手動で行わなければならず、間違いや時計間の不整合が起こりやすい。航空管制システムなどのトラブルにつながる可能性もあり、人命への余計なリスクとなる。
  • 一様の尺度が望ましい局面では、GPSの時系のように「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」という新しいシステムが用いられることがあるが、「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」は実際上、閏秒の数だけバリエーションがあり、時刻システムの乱立につながるうえ、相対的にUTCの価値・有用性・権威を低下させ、度量衡統一の観念にも反する。

一方、廃止に反対する理由としては、次のようなものがある。

  • 天体観測・アンテナ制御などのソフトウェア、ハードウェアなどにはUT1-UTCの絶対値が1秒を超えないという前提で設計されているものも少なくなく、その前提が破れると大きな改修が必要になり、予期せぬトラブルの原因ともなる。
  • 市民生活は依然地球の自転と同期しており、UT1-UTCの差が累積するのは好ましくない。

長期的な問題[編集]

地球の自転は、短期的にはさまざまな予測困難な小さい揺らぎを示しつつ、長期的には、潮汐力を主要原因として減速傾向にあり、変化率は過去2700年間の平均で (+1.70±0.05) ms/cy、つまり、1ユリウス世紀ごとに1太陽日の長さは0.0017SI秒ほど長くなってきたとされる[63]。この状態が続くと正の閏秒の挿入頻度は徐々に増加し、21世紀中には毎年1回ずつが当たり前になるかもしれない。今後の地球の自転の変動をどう推定するかによって予測時期は変わるが、恐らく22世紀 - 23世紀には年2回の閏秒も一般的になり、西暦3000年 - 4000年ごろには年12回の閏秒が必要になると考えられ、それを超えると現在の閏秒の方法では平均的に間に合わなくなってしまうし、常にUTCとUT1の差を±0.9秒以内に保つという目標も、遅くとも同時期(場合によってはより早期)には達成不可能になる[64]。この問題について、いくつかの提案がなされている[65]

反対に、うるう秒を廃止した際の長期的な問題もあり、うるう秒がなくなることは、地球の自転に基づく時刻(天文時)と原子時計との同期が取れなくなるため、現在から100年経過すると原子時計のほうが15秒 - 70秒程度進むと考えられている。非常に長期的だがしまいには昼夜逆転の可能性もありうる。そのためうるう秒を廃止した場合も原子時計の時刻と天文時が同期されなくなり、時刻と昼夜の関係が崩れていく問題がある。

閏秒と閏日(閏年)[編集]

閏秒と閏日閏年)は全く無関係である。閏秒はLOD(1日の長さ)が一定ではない(すなわち地球の自転が一定ではない)ことにより生じる、原子時計とのズレの調整のためのものである。もし閏秒による時間調整がなければ、約12万年後には、昼夜の逆転があり得る(LODが86 400秒に比べて丁度1ミリ秒だけ長い状態が継続すると仮定すると、12時間 × 3600秒 / (0.001秒×365.2422日) = 118 278年となる)。

これに対して閏日(閏年に挿入される臨時の2月29日)は、地球の公転周期が約365.2422日と、365日に比べて0.2422日だけ長いことを調整するためのものである。閏日(閏年)を設けないとすると、0.2422日 × 750年 = 182日であるから、750年後にはカレンダー上は1月なのに、季節は7月というズレが起こってしまうのである。

このように閏秒と閏日閏年)、さらに閏月は全く関係のない現象であるのに、同じ名前(たとえば、日本語では「閏」、英語では "leap" )を使っているのは、暦を調節する事象という類似性によるものに過ぎない。なお、英語の "leap" は、平年では1日ずつずれる曜日と月日の対応が、閏日により閏年には2日ずれる(飛ぶ)ということに由来する。「閏」は余分の、という意味であり閏月に由来する。なお英語ではこれらによる暦の調整を intercalation と言う。

脚注[編集]

  1. ^ a b c うるう秒に関するQ&A|2009年1月実施版”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. 2008年9月6日閲覧。
  2. ^ a b c 原子時と「うるう秒」”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. 2008年9月12日閲覧。
  3. ^ a b c d e f うるう秒実施日一覧”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. 2013年9月30日閲覧。
  4. ^ a b c d Historical list of leap seconds since 1972”. Hong Kong Observatory(香港天文台). 2008年9月6日閲覧。英語
  5. ^ a b 3年半ぶりに「うるう秒」、7月1日が1秒長く”. 読売新聞 (2012年7月1日). 2012年7月1日閲覧。
  6. ^ a b 質問4-4) 1日の長さは変化しているの? 国立天文台 2012年12月7日閲覧
  7. ^ [1] The Astronomical Almanac Online!, Glossary, "length of day"の項目
  8. ^ W Markowitz, RG Hall, L Essen, JVL Parry (1958). “Frequency of cesium in terms of ephemeris time”. Physical Review Letters 1: 105–107. doi:10.1103/PhysRevLett.1.105. http://www.leapsecond.com/history/1958-PhysRev-v1-n3-Markowitz-Hall-Essen-Parry.pdf. 
  9. ^ [2] LEAP SECONDS, USNO "Through the use of ancient observations of eclipses, it is possible to determine the average deceleration of the Earth to be roughly 1.4 milliseconds per day per century. "
  10. ^ アメリカ海軍天文台(USNO)によるLEAP SECONDS の解説 「The Earth is constantly undergoing」から始まるパラグラフ及び次の「The length of the mean solar day has increased」から始まるパラグラフ "The length of the mean solar day has increased by roughly 2 milliseconds since it was exactly 86,400 seconds of atomic time about 1.88 centuries ago (i.e. the 188 year difference between 2008 and 1820). That is, the length of the mean solar day is at present about 86,400.002 seconds instead of exactly 86,400 seconds."
  11. ^ [3] LATEST EARTH ORIENTATION PARAMETERS Excess of the length of day. y軸が、観測されたLODと86 400秒との差(ミリ秒単位)を示している。
  12. ^ [4] 右側のグラフが最近1年間のLODと86 400秒との差を示している。
  13. ^ [5] (PDF) Length of Day (Earth rotation rate)
  14. ^ [6] 測地学テキスト、2-3-4-3自転速度の変化、日本測地学会
  15. ^ [7] 未解決の課題 川崎一朗(京都大学防災研究所)京都大学理学部(理学研究科)地球物理学教室同窓のつどい、2010年2月13日
  16. ^ [8]
  17. ^ 7月1日に挿入される「うるう秒」とは? 1日の長さは,実は日々変化している ニュートン 2012年6月29日閲覧
  18. ^ a b c d e 「時空分野、時間に関する用語集」”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 次世代時刻周波数標準プロジェクト. 2008年9月6日閲覧。
  19. ^ 質問4-3) 「うるう秒」ってなに? 国立天文台 2011年10月4日
  20. ^ [9] 星を見る・宇宙を知る・天文を楽しむAstroArts、来月1日午前9時、3年半ぶりのうるう秒挿入、2013年7月7日閲覧
  21. ^ [10] NHK解説委員室 解説アーカイブス、くらし☆解説 水野倫之解説委員、「うるう秒と時をめぐる対立」2012年6月29日、2013年7月7日閲覧
  22. ^ 「よく、閏秒が必要なのは、地球の自転が遅くなっているからだと言われている。本章や閏秒に関する他の文献を何の気なしに読めば、実際、地球は減速していて、時間がそれに合わせるために閏秒が必要になるのだと思うようになるかもしれない。しかしそうではない。1990年代の大半では、地球は速くなっていて(年ごとの比較だが)、この60年間でいちばん速くなっている。それでもこの27年間に22回の閏秒を置いてきた。となると、いったい閏秒はなぜ必要なのだろう。」、トニー・ジョーンズ (2000). 原子時間を計るー300億分の1秒物語. 青土社. p. 154. ISBN 9784791759323. 
  23. ^ Jones, Tony (2000). Splitting the Second - The Story of Atomic Time. IOP Publishing Ltd. ISBN 0750306408. 
  24. ^ [11] アメリカ海軍天文台によるLEAP SECONDS の解説 "Confusion sometimes arises over the misconception that the regular insertion of leap seconds every few years indicates that the Earth should stop rotating within a few millennia. The confusion arises because some mistake leap seconds for a measure of the rate at which the Earth is slowing. The 1 second increments are, however, indications of the accumulated difference in time between the two systems. (Also, it is important to note that the current difference in the length of day from 86,400 seconds is the accumulation over nearly two centuries, not just the previous year.) As an example, the situation is similar to what would happen if a person owned a watch that lost 2 seconds per day. If it were set to a perfect clock today, the watch would be found to be slow by 2 seconds tomorrow. At the end of a month, the watch will be roughly a minute in error (30 days of 2 second error accumulated each day). The person would then find it convenient to reset the watch by one minute to have the correct time again. This scenario is analogous to that encountered with the leap second. The difference is that instead of setting the clock that is running slow, we choose to set the clock that is keeping a uniform, precise time. The reason for this is that we can change the time on an atomic clock, while it is not possible to alter the Earth's rotational speed to match the atomic clocks! Currently the Earth runs slow at roughly 2 milliseconds per day. After 500 days, the difference between the Earth rotation time and the atomic time would be 1 second. Instead of allowing this to happen, a leap second is inserted to bring the two times closer together."
  25. ^ [12] (PDF) "THE PHYSICAL BASIS OF THE LEAP SECOND" (The Astronomical Journal, 136:1906–1908, 2008 November)、2.2. Ephemeris Time 及び4. THE LEAP SECONDの章
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]