黒崎 (北九州市)
黒崎(くろさき)は、福岡県北九州市八幡西区にある地名で、北九州市の副都心に位置付けられている。江戸時代は長崎街道の宿場町として栄え、近代からは交通の要衝や重化学工業の拠点として発展、戦後は市西部や筑豊・遠賀等を商圏に発展してきた歴史を持つ[1]。
地理[編集]
黒崎地区は、北九州市西部の拠点として高次都市機能が集積している。JR鹿児島本線南側の地域に、商業、医療・福祉、交通拠点など多様な都市機能が集積し、市民をはじめ、多くの人々が行き交う市街地となっている。駅前商店街や百貨店等の大規模商業施設は、市西部を含め、遠賀・中間地域や直方・鞍手地域を含めた北九州都市圏西部からの集客がある[2]。また、交通機関では、JR黒崎駅、西鉄黒崎バスセンター、筑豊電鉄黒崎駅前駅などがあり、市西部の交通結節点となっている[3]。
黒崎地区の商店街は、14の商店街・市場が存在し、黒崎駅から放射状、同心円状に伸びるアーケード街となっている。かつて、小倉都心部に次ぐ商業集積地として賑わっていたが、大型ショッピングセンターの郊外立地や中心部に立地する大規模店舗の撤退などが続き、吸引力が低下し、特に駅前の活性化が喫緊の課題となっている[2]。
活性化を図るべく黒崎地区では約40もの事業が行なわれ、八幡西図書館や黒崎ひびしんホールの開館、コムシティの再生、九州厚生年金病院の再整備など、都市機能の充実が進められている[1][3]。
歴史・史跡[編集]
概略[編集]
黒崎は江戸時代、脇街道である長崎街道の宿場町として整備された。筑前六宿の東端に位置し、長崎街道最大の宿として繁栄すると共に、商人町としてもにぎわい、熊手では市(いち)が開かれていた[4]。
明治に入ると門司~黒崎間の鉄道開通、洞海湾の干拓、埋め立てが行われた。大正には安川電機、昭和初期には三菱化学など大型工場の立地が相次ぎ、就業人口の定着により急速に都市化が進展した[4]。
昭和初期には黒崎駅前の土地区画整理事業が行われ、現在の商店街の骨格となる放射線状の道路配置がなされた。戦後には、空襲により八幡製鉄所周辺の住宅地から焼け出された人々が黒崎に移り住んだことや、戦後の復興とともに大型工場の社宅が建設されたことなどから、商店街が急速に発展を遂げ、市街地が拡大していった[4]。
江戸時代以降の年表[編集]
- 1750年頃 - 熊手で市(いち)が開かれるなど、商人町としても栄える。
- 1889年(明治22年) - 明治の大合併により、鳴水・熊手・藤田・前田4村合併し、遠賀郡黒崎村が誕生。
- 1891年(明治24年) - 九州鉄道が黒崎 - 門司間で開通。
- 1897年(明治30年) - 町制施行により遠賀郡黒崎町が誕生。
- 1901年(明治34年) - 官営八幡製鐵所が遠賀郡八幡村(現北九州市八幡東区)にて操業開始。
- 戦後、八幡製鐵所や三菱化学等の社宅建設が進む。
- 1963年(昭和38年) - 八幡市が小倉市・門司市・戸畑市・若松市とともに合併し、北九州市の一部となる。北九州市が政令指定都市になり、八幡区となる[8]。
- 1974年(昭和49年) - 八幡区が分区され、八幡西区となる[8]。
- 1979年(昭和54年) - 黒崎駅前東地区再開発竣工、黒崎そごう・メイト黒崎開業[9]。
- 1989年(平成元年) - 三菱化学社宅跡地に北九州プリンスホテル(現ホテルクラウンパレス北九州)開業[10]。黒崎駅前ペデストリアンデッキ完成[11]。
- 1998年(平成10年) - 黒崎駅西地区第一種市街地再開発事業認可。
- 1999年(平成11年) - 黒崎フォーラス(イオングループ)閉店。
- 2000年(平成12年) - 黒崎そごう閉店。翌2001年、黒崎井筒屋が移転開業。
- 2001年(平成13年) - 黒崎駅西地区第一種市街地再開発竣工、コムシティ開業[9]。「黒崎再生10ヵ年計画」を策定[11]。
- 2003年(平成15年) - コムシティ商業部分を運営する黒崎ターミナルビルが経営破たん。
- 2007年(平成19年)1月 - 北九州市黒崎地区中心市街地活性化協議会設立。
- 2008年(平成20年)7月 - 中心市街地活性化基本計画に認定[12]
- 2011年(平成23年)7月 - コムシティ商業部分を北九州市が取得。
- 2013年(平成25年)5月 - 八幡西区役所が筒井町からコムシティ内に移転[11]。
- 2015年(平成27年)6月 - 安川電機の事業所内に「ロボット村」がオープン[13]。
- 2016年(平成28年)3月 - JR黒崎駅駅舎の改築開始。2018年に終了[14]。
長崎街道の史跡[編集]
長崎街道筑前六宿の一つとして栄えた黒崎には、藩主の別館としての御茶屋(本陣)や町茶屋(脇本陣)が設けられ、宿駅の機関である人馬継所、行政上の施設である制札場、関番所、郡家、代官所が整備され、一般の旅籠屋(旅館)や商店も軒を並べていた[6]。 町の各所に当時の位置を示す史跡や石碑がたてられている(以下、主なものを記載)。
- 御茶屋跡:御茶屋周辺の田町は黒崎宿の中心で、旅籠屋や商店が並んでいた。
- 人馬継所跡:人足や馬が常備され、参勤交代の人馬の手配や飛脚の荷物も取り扱った。
- 常夜灯:1849年、航海安全を守る灯台として黒崎湊の入口に建立された。
- 黒崎城址(城山緑地公園):福岡城の端城の一つ黒崎城があった。
- 西構口跡:黒崎宿の西の出入口。
- 岡田神社:1605年に現在地に移転。黒崎祇園山笠が奉納される神社。
- 春日神社:岡田神社と同じく黒崎祇園山笠が奉納される。
交通[編集]
鉄道[編集]
バス[編集]
- 西鉄バス北九州:西鉄黒崎バスセンター(コムシティ1階)・黒崎駅バスターミナル(井筒屋前・ペデストリアンデッキ下)
- 西鉄黒崎バスセンターには西鉄バス筑豊と、北九州市交通局も乗り入れている。西鉄バス筑豊は直方 - 黒崎急行線を、交通局は若松区方面の一般路線バスを運行している。
道路[編集]
主な施設[編集]
役所・公的機関[編集]
公共施設[編集]
- 北九州市立八幡西図書館
- 北九州市立子どもの館(コムシティ7階)
- 北九州市立黒崎市民センター
- 黒崎体育館
医療・福祉施設[編集]
- 地域医療機能推進機構九州病院(旧・九州厚生年金病院)
- 王子病院
- 浜田病院
- 黒崎整形外科病院
- ニューハートピア(元・厚生年金ハートピア北九州)
商業施設[編集]
- 井筒屋黒崎店(2020年8月閉店)
- メイト黒崎(2020年8月閉店)
- コムシティ
- イオンタウン黒崎
- アプライド黒崎店
- フレスポ黒崎(ドン・キホーテ、ニトリ、ファッションセンターしまむら、西松屋、楽市楽座等)
- サンリブ黒崎
商店街[編集]
- カムズ通り(名店街、1番街)
- 表参道新天街(旧称 新天街)
- ひまわり通り
- 公園通り
- 三番街
- 栄町通り
- くまで通り
- 千日名天街
- 藤田銀天街
- 寿通り
ホテル[編集]
- 西鉄イン黒崎(コムシティ9 - 12階)
- アルクイン黒崎、アルクイン黒崎プラス
- コンフォートホテル黒崎
- ホテルパールシティ黒崎
- ステーションフロントイン黒崎
- ホテルクラウンパレス北九州
金融機関[編集]
- 福岡銀行黒崎支店
- 西日本シティ銀行黒崎支店
- 北九州銀行八幡支店(旧山口銀行八幡支店)
- 佐賀銀行八幡支店
- 筑邦銀行黒崎支店
- 日本政策金融公庫八幡支店
- 福岡中央銀行黒崎支店
- 福岡ひびき信用金庫黒崎支店
- みずほ銀行八幡支店黒崎出張所(ATMコーナー)
- 八幡西郵便局
- 八幡熊手郵便局
- 八幡熊西郵便局
寺社[編集]
- 春日神社 - 黒崎祇園山笠(藤田西、藤田東、東町山笠)
- 岡田宮 - 黒崎祇園山笠(熊手一番、熊手二番、熊手参番山笠)
- 興玉神 - くまで通り商店街
- 正覚寺 - 浄土真宗本願寺派
- 善定寺 - 浄土真宗本願寺派、脇の通りに善定寺通りと名づけられている
- 浄蓮寺 - 浄土宗
- 平等寺 - 黄檗宗
祭り・イベント[編集]
代表的な祭りとして、7月に開催される黒崎祇園山笠は、春日神社、岡田宮、一宮神社の氏子によって、およそ400年前から行われ、福岡県の無形民俗文化財に指定されている[15]。
- 全力!黒崎(3月下旬)[16]
- 城山さくら祭り(4月初旬)[17]
- 黒崎よさこい祭り(5月中旬)
- 黒崎祇園山笠(7月20日 - 24日)
- 黒崎96(クロ)の日(9月6日)
- 長崎街道黒崎宿あかりと大名行列まつり(9月下旬)
- 筑前黒崎宿場祭り(10月上旬)
- 黒崎ハロウィン(10月下旬)
- くろさき 光のマジカルランド(12月)
上記は過去開催されたものを参考に記載したが、イベントの内容や開催時期の変更などもあるため、詳細は下記サイト、ニュース、新聞、雑誌等で十分確認されたい。
脚注[編集]
- ^ a b “八幡西区紹介”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b “認定中心市街地活性化基本計画”. 北九州市. p. 1. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b “北九州市中心市街地活性化基本計画(小倉地区・黒崎地区)について”. 北九州市. p. 2-3. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b c “北九州市中心市街地活性化基本計画(黒崎地区)”. 北九州市. p. 7. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b c “黒崎城址”. 北九州市八幡西区役所. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b “黒崎宿とは”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ “黒崎湊跡”. 北九州市八幡西区役所. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b c “八幡西区の成り立ち”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b “再開発事業 事業地区一覧”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ “建築文化賞”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b c “八幡西区のあゆみ”. 八幡西区役所. 2019年3月2日閲覧。
- ^ “北九州市中心市街地活性化基本計画”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ 安川電機がロボット村をオープン北九州イノベーションギャラリー
- ^ 黒崎駅南北自由通路供用開始北九州市
- ^ “黒崎祇園山笠”. 北九州市. 2019年3月2日閲覧。
- ^ “ランタン祭りに代わる新イベント”. 毎日新聞 (2018年2月24日). 2018年3月22日閲覧。
- ^ “平成30年度イベントカレンダー”. 北九州市. 2018年3月25日閲覧。