雲のように風のように

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雲のように風のように』(くものように かぜのように)は、酒見賢一のデビュー作『後宮小説』を原作とするテレビアニメ1990年3月21日日本テレビ系で放送された。

概要[編集]

原作は日本ファンタジーノベル大賞最初の受賞作であり[1][2][3]、主催の三井不動産販売が一社提供のスポンサーとなって[2][3]春分の日の日中に本編放送中はCMを入れないという異例の形式で放送された[4]スタジオジブリ作品に多く参加しているアニメーターの近藤勝也作画監督を、動画チェックを舘野仁美が務めていることでも知られる[要出典](ただし、本作はスタジオぴえろの制作作品)。

アニメ化にあたって登場人物の人生や設定などに多少の変更、描写の省略がされており、それについて原作者は「幾つか物足りなさはあるが映像化に感謝している」と1993年に出版された文庫版のあとがきで述べている。

2002年にDVDが発売された。

2016年には、新潮社ギンレイホールのコラボイベント「神楽坂映画祭2016『新潮社から生まれた名作映画たち』」の中で、選ばれた20本の内一つとして、10月23日に飯田橋ギンレイホールで劇場公開された[4][5][6]

ストーリー[編集]

物語は広大な大草原から、そしてその中の廃都からはじまる。そこはかつて、素乾国の都であった。

その素乾国の皇帝が急死した。次に玉座が埋まるまで、宮廷内は官吏や皇太后の陰謀がいよいよ渦巻く。亡き先帝の后・琴皇太后は私欲のため皇太子の暗殺を企て、宦官たちは私利のため新皇帝の後宮(花嫁)を用意しようと宮女狩りを決定した。

宮女狩りとは、宦官が全国各地に赴き、花嫁候補となる妙齢の娘を宮廷に連れ帰ること。緒陀県(おだけん)という地方にも、宮女募集のお触れが立った。陶器職人の一人娘・銀河は、町で噂となっていた宮女の待遇が『三食昼寝付き』で学問もできることに惹かれ、都に行くことを決意する。そして、銀河を逸材と感じた宦官の真野に連れられ、故郷を後にした。

初めて目にする街の賑わい、そびえる素乾城、様々な人との出会い。貴族出身でプライドが高いセシャーミン、無愛想な才女コウヨウ、武術に秀でた謎の美女タミューンたちと同室になった銀河は、後宮の大学でカクート先生に教えを請う。城の〈たると〉の中で出会った中性的な魅力を持った女性コリューンは、神出鬼没に銀河の前に現れるが、何者かに命を狙われていた。

そして6か月の研修を経て、銀河は皇帝の妃・銀正妃となった。しかし夢が叶った後には、顔も知らない皇帝との結婚が待っている。それに気づいた憂い顔の銀河に姿を見せた皇帝は、コリューンであった。銀河が女性と思っていた人物は、義母である琴皇太后に命を狙われる新しい皇帝だった。

国内での反乱の勃発により、新皇帝コリューンは苦悩していた。反乱軍の将軍イリューダと参謀役コントンの2人が、退屈しのぎに起こした戦争だとは知る由もなく、反乱軍は日に日に兵士の数と勢いを増していき、ついにコリューンの頼みの綱であった北磐関(ほくばんかん)をも攻め落としてしまった。ほとんどの役人や街の金持ちは、朝廷への進軍を止められぬ皇帝を見限り、都を去っていく。

だが、後宮では銀河が発起人となり、宮女と宦官で「後宮軍」を結成。後宮軍は後宮に立て篭もり、女を求めて侵入をこころみる反乱軍と戦闘を開始し、大砲、鉄砲、投石機などを手にし、それぞれの能力を活かして戦いを繰り広げる。

そしてすべては終わり、都は廃都と化し、すべては大草原の彼方へと消えていった。

登場人物[編集]

新皇帝側[編集]

銀河(ギンガ)
主人公。片田舎「緒陀県」に住む平民出の陶匠の娘だったが「三食昼寝付き」の言葉につられて、皇帝の后候補となる。お世辞にも美人とはいえなかったが、物怖じしない天衣無縫の性格で宮女たちのリーダー的存在になる。向学心旺盛で女大学では優秀な成績を修め、角人先生と双槐樹の協議によって形式的に正妃に選ばれた。
反乱軍から後宮を守るため、他の宮女たちと共に奮闘するが、双槐樹が降伏したことを知ると自らの命を盾にして幻影達(旧名:平勝)に会いに行く。馬小屋に幽閉された双槐樹が折を見て殺害される見通しであることを混沌に聞かされ、最後の接見となるかもしれぬと覚悟し、混沌に案内されて馬小屋で双槐樹と再会。馬小屋で彼と初めて結ばれ、後にその一度限りの契りで身籠り、その息子・黒耀樹は次期王朝・乾朝の初代皇帝「神武帝」となる。その後も銀河は真野をはじめとする旧臣や、世沙明ら宮女仲間たちと親交を深め、生涯にわたって少女時代の心を忘れぬ溌剌とした人生を生き抜き、天寿を全うする。
双槐樹(コリューン)
素乾国の第18代皇帝。先帝の側室の子であるため、先帝の正室(正妃)である琴皇太后は義理の母である。琴皇太后は実子、正徹を皇帝にするため、双槐樹の暗殺を企てていた。そのため、琴皇太后から身を守るため、後宮に身を隠す。そこで出逢った銀河を信頼できる人物と見込み、角人先生と相談した上で正妃に選ぶ。女性のような風貌で銀河には女性だと思われていた。落城の際、後宮の女たちを救うため自ら投降するが、聞き入れられず、幻影達によって馬小屋に幽閉される。決死の覚悟で馬小屋を訪ねた銀河と最初で最後の契りを結ぶ。銀河から生きるためにと短銃を託されるが、自らの無力感を悲観する気持ちは変わらず、皇帝として責任を取る形でその直後に自害する。彼と銀河の息子・黒耀樹は次期王朝・乾朝の初代皇帝「神武帝」となる。
黒耀樹 (コクヨウジュ)
銀河と双槐樹の息子。劇中では誕生しておらず、後日談として名前と活動内容が語られるのみである。反乱軍によって滅亡した素乾国に代わって幻影達が建国した王朝「新周」がわずか3年で滅亡したことで王朝が存在しなくなったため、国を統治する者が居なくなり、国は乱れに乱れて彼が大人になるまでの長期間に亘って廃都の一途とたどるが、彼が成長して新王朝「乾朝」を建国し、その初代皇帝である「神武帝」に即位後、国の一大復興事業を成し遂げることがナレーションによって語られている。新王朝「乾朝」の「乾」は旧王朝である「素国」の後継王朝であることに因む。
世沙明(セシャーミン)
娥舎(女大学の寮。4人一部屋)での銀河のルームメイト。4人の中では、一番まともといえる。貴族出身でプライドが高い。部屋の鏡台を独占し、自慢の美しい髪をいつも梳いているが、玉遥樹に「そなた、そんなに四六時中、髪を梳かしているとそのうちハゲてくるぞ」と言われてしまった。官職は「嬪妃(第四夫人)」。
江葉(コウヨウ)
娥舎での銀河のルームメイト。茅南州出身であることを本人が語っているが、それ以外のことについては主要人物となるルームメイト4人の中で具体的な出自が劇中で明かされていない唯一の人物である。異国風の少女で、頭脳明晰で冷静[注 1]、美人だが無表情で無口。娥舎では煙管を吸っている。官職は「才人(第七夫人)」。銀河よりも頭がよく、学識の高さは候補生の中でも随一。後宮軍においては軍師のような役目に就き、兵器の扱いに関する書物を読みながら砲撃などの指揮を執った。
玉遥樹(タミューン)
娥舎での銀河のルームメイト。実は双槐樹の実姉で、彼の身を案じて娥舎にもぐりこんでいた。双槐樹の実姉であるため、女大学を卒業しても皇帝の妃としての官職には就かない。両端に刃の附いた2本の小刀やを遣って複数の男性兵士を相手に大立廻りで戦うなど、劇中に登場する女性の中では最強の戦闘能力を持つが、決して戦い慣れているわけではないため、スタミナを落として息を切らしている隙を突かれて反乱軍の兵士数人から同時に矛や槍などで刺されて戦死する。銀河が双槐樹と既に面識が在ることを知り、銀河にだけ自分が双槐樹の実姉であることを明かしており、銀河とは早期から信頼を以て打ち解けている。
瀬戸角人(カクート先生)
後宮の女大学の先生。宦官によると素乾国一の学者で、膨大な量の本を読みそれとほぼ同数の本を書いた。双槐樹の相談役にもなる。男と女の哲学について50年研究し続けてきた。
真野(マノ)
出身地である緒陀県から銀河を連れ帰った宦官。銀河との面接の際、長年の経験と勘から銀河に正妃としての可能性を感じ取り、候補生として採用する。正妃となる人材を見つけた功績で出世する事を夢見る。銀河が正妃になった時は一番喜び、理想の未来に笑いを隠せなかった。自身の出世を第一に考えている側面はあるものの、銀河が正妃に選出されて以降も「銀河」と呼び捨てで呼んでおり、飄々とした性格をしているところもあって、どちらかというと銀河とは友達感覚に近い立ち位置となっている。
亥野(イノ)
祖乾城にやってきた銀河を娥舎に案内したり、女大学に入学した女性たちに瀬戸角人を紹介するなど、主に案内役を務める宦官。銀河に「(追放処分にならず)良かったじゃないか」と温かい言葉を掛けるなど、温和な性格。

皇太后側[編集]

琴皇太后(キン皇太后)
先帝の正妃。幼い実の息子・正徹を皇帝にするべく双槐樹の命を狙う。反乱軍に新皇帝を討ってもらおうと画策するが失敗に終わった。反乱軍が場内に乱入する際、正徹とともに服毒自殺する。
菊凶(キッキョウ)
角人先生の助手。艶かしい容貌(いわゆるオカマで言葉遣いにもそれが表れている)で、宮女候補生から人気を集めるが、外見とは裏腹にかなりの野心家。琴皇太后と結託して双槐樹の暗殺や反乱軍との和平交渉を実行する。しかし、琴皇太后が謀って王斉美将軍を暗殺したことを伝えたところ、その行動や発言が仇となり、混沌の命令により首を刎ねられて殺害される。

反乱軍[編集]

幻影達(イリューダ)
渾沌の義兄弟の弟分。当初は平勝(ヘイショウ)という名前で混沌と共に銀河を素乾国まで安全に護衛するなど、用心棒のような仕事をしていた。後に出身地の官職に就き、嫁も貰ったのを機に名を「平勝」から「幻影達」に改名するが安穏な生活に飽きて混沌と共に反乱を企て、反乱軍の将軍になる。退屈しのぎの遊びで始めた戦争だったが、いつしか本気で玉座を望むようになる。このことで混沌と意見が分かれ、混沌が反乱軍から事実上離反することになるが、混沌は兄貴分で頭が上がらない存在であり、長年の付き合いによる義理感情もあり、後宮の女らを解放せよという銀河と混沌の芝居に気付き、同意する。最終的に念願叶って「新周」を建国し、初代皇帝となるが、混沌曰く「皇帝になるには器量が必要」であり、器量面で劣るだけでなく、統率の才能や人望の無さが災いし、わずか3年の栄華で幕を閉じ、故郷の瓜祭村に戻った末に刑死する。
渾沌(コントン)
幻影達の義兄弟の兄貴分。国政に少なからず不満を抱いており、読書にも飽きたことから幻影達に挙兵をもちかける。頭がよく、反乱軍では参謀役を務めるが、調子に乗った幻影達と意見が合わなくなり、離反する。その後、銀河に協力して後宮の女たちを逃がす手伝いをする。

備考[編集]

朝廷を後にした宮女たちは無数の馬車に分散して乗り、途中で散り散りに別れていき、最終的に銀河に同行する馬車は居なくなる。銀河の乗った馬車には当初、銀河・江葉・世沙明・混沌・瀬戸角人・真野・亥野・垂戸婆・運転担当宦官(氏名不明)の9人だったが、最後まで乗車しているのは銀河・江葉・世沙明・運転担当宦官の4名のみとなり、混沌を初めとする他の同乗者は途中で別れており、その後の各位の消息については劇中では語られていない。原作では、混沌は袂を分けた幻影達に殺され、真野は混沌に殺され、瀬戸角人は銀河の懐妊を見届けた後に病没、江葉は銀河の子である黒耀樹の養育を担当、世沙明は妓楼の女将となっている。

用語解説[編集]

素乾国(そかんこく)
実在しない架空の帝国。数百年にわたりコリューンの先祖が代々治めてきた。
宮女(きゅうじょ)
後宮に住む女のこと。規模は数百から数千人と皇帝によって異なる。女は貴賤の別なく全国から集められ、研修や試験に合格した者が晴れて宮女、すなわち皇帝の妻と認められる。
たると
後宮に上がる者が必ず通る入口。漢字表記は「垂戸」。暗い上に長いトンネルの形をしており、案内婆という老女が宮女候補生の手を引いてたるとの出口まで案内する。女性の生理現象に習って月に一度、候補失格になった娘が入った時と同じようにここを通って城から去って行く。
女大学(おんなだいがく)
素乾国唯一の女子校。集まった宮女候補生はここで研修を受ける。開講期間は半年間で、皇帝の妻を務めるために必要な知識を学び、健康な子供を産むための運動もする。
正妃(せいひ)
皇帝の第一夫人に与えられる官職の名。女大学の卒業試験結果や皇帝と教師の協議などによって宮女の順位は決まる。第二夫人以下第七夫人までの官名は上から順に、后妃(こうひ)・夫人(ふじん)・嬪妃(ひんひ)・婕婦(しょうふ)・美人(びじん)・才人(さいじん)という。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

主題歌[編集]

  • 「雲のように風のように」
    • 作詞:真名杏樹、作曲:釘崎哲朗、編曲:山川恵津子 歌:佐野量子

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 玉遥樹が初めて部屋を訪れていきなり刀の舞を披露し、銀河や世沙明が驚く中で彼女だけが驚きもせず冷静に見ていた。
  2. ^ 劇中では「栖斗野」という役名付きの人物を演じているが、エンディングテロップでは水鳥の氏名のみがクレジットされており、役名の記載は無い。
  3. ^ 劇中では「飛令郭」という役名付きの人物を演じているが、エンディングテロップでは峰の氏名のみがクレジットされており、役名の記載は無い。

出典[編集]

  1. ^ 酒見賢一 『後宮小説』 - 新潮社”. 新潮社. 2019年11月20日閲覧。
  2. ^ a b 雲のように風のように - 株式会社ぴえろ 公式サイト”. 株式会社ぴえろ. 2019年11月20日閲覧。
  3. ^ a b 雲のように風のように”. 株式会社バップ. 2019年11月20日閲覧。
  4. ^ a b 神楽坂映画祭2016チラシ”. 新潮社 (2016年). 2019年11月20日閲覧。
  5. ^ イベント情報 - 飯田橋ギンレイホール”. 株式会社 ギンレイシネマックス (2016年). 2019年11月20日閲覧。
  6. ^ 特集:神楽坂映画祭2016「新潮社から生まれた名作映画たち」の上映スケジュール・映画情報-映画の時間”. ジョルダン株式会社 (2016年). 2019年11月20日閲覧。

外部リンク[編集]