韓国地検による産経新聞支局長名誉毀損起訴事件

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韓国地検による産経新聞支局長名誉毀損起訴事件
場所 韓国の旗 韓国 ソウル特別市
日付 2014年8月3日 (韓国標準時)
原因 産経新聞のウェブサイト上で朴槿恵韓国大統領名誉毀損した疑い
対処 在宅起訴、韓国出国禁止処分
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韓国地検による産経新聞支局長名誉毀損起訴事件(かんこくちけんによる さんけいしんぶんしきょくちょう めいよきそんきそじけん)とは、2014年平成26年)8月3日産経新聞の公式ウェブサイトに、同紙の加藤達也ソウル支局長(当時)が、セウォル号沈没事故当日韓国朴槿恵大統領が第一報を受けた後、7時間に渡って所在不明の状態になり、この時間帯(いわゆる「空白の7時間」)に、元補佐官のチョン・ユンフェと密会した可能性があるという風評が流布している、という朝鮮日報や証券街の報道を元にした署名コラム「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」を掲載し[1]韓国大統領府東京都港区の駐日本国大韓民国大使館が「名誉毀損などに当たる」として、当該記事の削除を要請したが、産経新聞社が当該記事の削除に応じなかったため、検察当局は加藤前支局長が「朴大統領の名誉を毀損した」と見做して在宅起訴し、大韓民国からの出国を禁止する行政処分とした外交問題である[2][3]

経緯[編集]

2014年[編集]

2015年[編集]

  • 2月13日 - 自民党・二階総務会長が朴大統領と会談した際に「加藤前支局長が自由に日本に渡航し、家族と会えるようになることを望む」という安倍晋三首相の意向を伝えた。朴大統領は「問題は司法の場に移っており、司法の判断に委ねるしかない」と二階総務会長に意向を伝えた[8]
  • 2月20日 - 自民党・二階総務会長が記者会見で「産経(新聞)側も努力していただかなきゃならないが、自民党としても今後引き続きしっかりやっていきたい」と発言した[9]
  • 4月14日 - 韓国法務部は「加藤前支局長が今後の裁判にも必ず出席すると約束しており、産経新聞も出席を保証している」として、ソウル中央地検から要請のあった加藤前支局長の出国禁止措置解除を決定[10]。同日夜、加藤前支局長は日本に帰国した[11]
  • 4月15日 - 首相官邸で安倍首相と加藤前支局長が会談[12]
  • 10月19日 - 検察側が加藤前支局長に懲役1年6月を求刑[13]
  • 11月23日 - 11月26日に行われる予定だった判決公判が、12月17日に延期される[14]
  • 12月17日 - ソウル中央地方裁判所韓国語版で加藤前支局長に無罪判決が言い渡された[15]。その際、裁判長は加藤前支局長に3時間に渡って立ち続けることを強要した[16]
  • 12月21日 - 首相官邸で安倍首相と加藤前支局長が会談した[17]
  • 12月22日 - 1審判決について、韓国検察当局は控訴断念を決め、加藤前支局長の無罪判決が確定した[18]

2016年[編集]

  • 10月28日 - 2016年10月、朴槿恵大統領の友人で、シャーマン・実業家の崔順実を中心とした国政介入疑惑などの政治スキャンダルが発覚する中、加藤前支局長は「ソウル中央地検で取り調べを受けた際、記者(加藤前支局長)に、検事がしつこく聞いてきたことの一つが「崔太敏、順実親子に関すること」だった」と述べ、「崔太敏氏と崔順実氏が朴槿恵政権の最大のタブーだった」と明らかにした。加藤前支局長の主張について、主張を引用した中央日報は「検察は当時すでに朴大統領と崔順実氏の関係を知っていたという話になり、今後、波紋が予想される。」と論評し、韓国国内では、崔の元夫であるチョン・ユンフェを取り上げた加藤前支局長について「韓国のタブーに切り込んだ義士」などという評価もなされた[19]
  • 11月20日 - 韓国大統領府はこの事件の発端となった、セウォル号沈没事故当日に朴槿恵大統領が第一報を受けた後、7時間にわたって所在不明の状態になっていたとされる時間帯(いわゆる「空白の7時間」)に関する経過説明を公式ウェブサイトで行った。それによると、朴槿恵大統領は問題となった「空白の7時間」を大統領府内で過ごしており、事故の状況について報告を受け、指示を出していたことを説明した[20]
  • 12月2日、韓国の全国言論労働組合は、2016年8月に死去した朴大統領の元首席秘書官・金英漢韓国語版の遺族から提供されたメモを公表し、この事件が「青瓦台(大統領府)の指示で捜査が進められた疑いが濃い」と発表した。全国言論労働組合によると、金英漢のメモには「産経に懲罰を」の記述があったという[21]。また、メモは大統領府は懲戒リストを作成し、警察国家情報院に捜査班を設けることなどを指示していたとされる[22]。韓国の首席秘書官は、大統領府にあって検察情報機関警察など政権を守るために動く権力機関の司令塔として知られる。金秘書官は検察出身である[23]。加藤元支局長はこの報道を受けて「政権総掛かりの個人攻撃だったことが明らかとなり、怒りというよりも恐ろしさを覚える」とするコメントを出した[22][23]
  • 12月4日 - 11月29日に行われた、加藤元支局長の著書『なぜ私は韓国に勝てたのか』ISBN 978-4819112741PHP研究所山本七平賞の受賞記念パーティーの席上で、産経新聞社代表取締役社長の熊坂隆光が「この事件の過程で驚いたのは、意外なほど多数の日本側の政治家、元外交官、評論家というような人達が、産経新聞に対して『韓国側に謝罪の意を表明すべきだ』と持ちかけてきたことだった。社長の私がソウルへ行って、一言でも謝れば、韓国側は加藤元支局長の起訴を取り下げ、日本への帰国も許すだろうというのだ。ソウルへ行けないのならば、東京の韓国大使館を訪れて『遺憾』という言葉を述べるだけでもよい。その謝罪を内密にしてもよい。そんなことを伝えてくる日本の政治家たちが後を絶たなかった。有力な政治家たちも含まれていた」と、当時の状況を暴露した[24]

事件に対する反応[編集]

  • 加藤(前支局長)ら特派員をとりまとめる産経新聞外信部長の長戸雅子は、韓国政府からの数多くの圧力の実例として、長戸自身がソウル出張時、監視尾行盗聴傍受され、宿泊先ホテルの鍵まで壊された。加えて、韓国ではメディアも「事実ではなく『あるべき姿』」を重要視しているため、報道の自由の面でも民主主義の面でも不完全で危うい国だ、と批判している。一連の言論の自由の危機について、国際社会、特に国連へ訴えたが、韓国出身の国連事務総長潘基文は何もせず、日本でも西日本新聞を除いてメディアは動かず、人権を声高に唱える日弁連に連絡したが現在まで“沈黙”されたままだ、と語っている[25][26][27]
  • 産経新聞東京編集局長の小林毅は「問題とされた記事は、韓国国会でのやりとりや朝鮮日報コラムの紹介が中心であり、この記事を理由に、名誉毀損容疑で出頭を求められるというのは、理解に苦しむ」と述べている[3]
  • 日本ペンクラブは、韓国の検察当局に対して深い憂慮を表明した[28]
  • 日本外国特派員協会は「韓国の検察当局が取った措置を懸念する」とするルーシー・バーミンガム会長の声明を発表した[28]
  • アメリカ国務省ジェン・サキ報道官は2014年10月8日の記者会見で、加藤前支局長が朴大統領らに対する名誉毀損で、在宅起訴されたことに関連して「われわれは言論表現の自由を支持する」と強調し、韓国の名誉毀損に関する法律について、アメリカ国務省が毎年公表している人権に関するアメリカ合衆国記録報告書英語版でも指摘したように「懸念している」と述べた[29]
  • フランスの日刊紙『ル・モンド』は、加藤前支局長の起訴やインターネット上の名誉毀損に対する監視の強化など、表現の自由に関する韓国の言論の現状に懸念を示した[30][31]
  • 国際新聞編集者協会は「言論の自由を著しく傷つけている。加藤氏に対し刑罰上の名誉毀損を適用することは国際法の基準を逸脱している。政府関係者や公人は批判に対して寛容であるべき」と述べ、韓国当局は加藤前支局長に対する全ての処罰を即刻撤回すべきだと要求した[32]
  • 新潟日報社説で、加藤前支局長への無罪判決は当然の判決であるとしたうえで、政治権力者の顔色をうかがうかのような司法の在り方を見直すべきであり、起訴をした検察の判断が厳しく問われるものであるとしている[33]。被害者が処罰を望まないと意思表明すれば処罰できないとする規定があったにもかかわらず、朴大統領が沈黙したことや大統領府高官が責任を最後まで追及すると発言していることから検察が大統領は処罰を望んでいるとして起訴した疑念はぬぐうことはできないと批評した[33]
  • ジャーナリストの田原総一朗は、「産経新聞の元支局長が在宅起訴される一方で、元支局長が記事を引用した韓国の新聞社も、その記事を書いた記者も処罰されていないことに合点がいかないし、問題だと思っている。」と述べ、韓国の言論の現状が海外メディアに及ぼす影響を危惧している。また、2011年8月に韓国の憲法裁判所が下した「韓国政府が具体的措置を取らないことは違憲である」とした慰安婦問題に関する判断もあわせて、韓国の司法のあり方に疑問を呈している[34]
  • 朝日新聞社主筆の若宮啓文は、「根拠薄弱な噂話を書かれたのですから。「韓国と結婚した」と公言する大統領の無念は想像に余りあります。」「実は、一国の元首に対して何とも失礼な記事だと感じていた日本人は多かったのです。まるでゴシップ週刊誌の記事みたいだと、恥ずかしさを口にする人もいました。その後に記事が事実無根とはっきりしてみれば、なおのことでした。」など、朴大統領に同情的な態度を示した[35][36]産経新聞出版社長の皆川豪志は、検察側が公判に弁護側証人として出廷した西日本新聞社のソウル支局長に「若宮を知っているか」と質問したことを挙げて、「日本の一流紙である朝日新聞の一流ジャーナリストでさえ、このように書いているのだから、加藤(前支局長)や産経はやっぱり悪い奴らだ」と印象付けようという意図が、韓国検察側にあったと主張している[35]

出典[編集]

  1. ^ a b 加藤達也 (2014年8月3日). “朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?”. 産経新聞 (産経新聞社). http://www.sankei.com/world/news/140803/wor1408030034-n1.html 2017年3月21日閲覧。 
  2. ^ “産経前ソウル支局長を在宅起訴 「朴大統領の名誉毀損」”. 朝日新聞. オリジナル2014年10月8日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141008124755/http://www.asahi.com/articles/ASGB86VTKGB8UHBI037.html 
  3. ^ a b “本紙ソウル支局長に出頭要請 ウェブ記事「大統領の名誉毀損」 韓国検察”. 産経新聞. (2014年8月9日). http://www.sankei.com/world/news/140809/wor1408090018-n1.html 
  4. ^ “韓国検察 産経前ソウル支局長を在宅起訴”. 聯合ニュース. (2014年10月8日). http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2014/10/08/0200000000AJP20141008002900882.HTML 
  5. ^ 平成26年10月9日(木)午前 官房長官記者会見 首相官邸
  6. ^ “【本紙前ソウル支局長起訴】「大人の対応ができるように努力を」自民・二階総務会長”. 産経新聞. (2014年10月9日16時15分). http://www.sankei.com/politics/news/141009/plt1410090044-n1.html 
  7. ^ “産経前ソウル支局長の出国禁止処分 3カ月延長=韓国”. 聯合ニュース. (2014年10月14日). http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2014/10/13/0200000000AJP20141013001800882.HTML 
  8. ^ “「司法の判断に委ねるしかない」と朴槿恵氏 訪問の二階氏は「家族と会えるように」との首相の意向伝える”. 産経新聞. (2015年2月13日). http://www.sankei.com/world/news/150213/wor1502130067-n1.html 
  9. ^ “自民・二階氏「産経も努力を」 慰安婦問題で新聞批判も 訪中には3千人同行予定”. 産経新聞. (2015年2月20日). http://www.sankei.com/politics/news/150220/plt1502200018-n1.html 
  10. ^ “韓国政府、加藤前支局長の出国禁止措置を解除 8カ月ぶり”. 2015-04-14. (産経新聞). http://www.sankei.com/world/news/150414/wor1504140017-n1.html 
  11. ^ “産経前ソウル支局長が帰国 韓国検察「人道的な配慮」”. 日本経済新聞. (2015年4月15日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14H8S_U5A410C1CR8000/ 
  12. ^ “首相「ご苦労さま」 産経新聞前ソウル支局長をねぎらう”. 産経新聞. (2015年4月15日). http://www.sankei.com/politics/news/150415/plt1504150008-n1.html 
  13. ^ “判決は11月26日 検察側が懲役1年6月を求刑 加藤前支局長「コラムに公益性」”. 産経新聞. (2015年10月19日). http://www.sankei.com/world/news/151019/wor1510190057-n1.html 
  14. ^ “26日の判決公判が急遽延期 来月17日に”. 産経新聞. (2015年11月23日). http://www.sankei.com/world/news/151123/wor1511230039-n1.html 
  15. ^ “本紙前ソウル支局長に無罪判決”. 産経新聞. (2015年12月17日). http://www.sankei.com/affairs/news/151217/afr1512170041-n1.html 
  16. ^ “判決文読み上げ3時間、産経前支局長は着席許されず”. 朝鮮日報日本語版. (2015年12月17日). オリジナル2015年12月17日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151217173627/http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/17/2015121703624.html 2015年12月19日閲覧。 
  17. ^ “安倍首相が加藤前支局長を慰労 「よかったですね」”. 産経新聞. (2015年12月21日). http://www.sankei.com/politics/news/151221/plt1512210025-n1.html 
  18. ^ NHK (2015年12月22日). “産経新聞 前ソウル支局長 無罪確定へ”. NHK NEWSweb. オリジナル2015年12月22日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151222102517/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151222/k10010349901000.html 2015年12月23日閲覧。 
  19. ^ “産経新聞前ソウル支局長「私を取り調べた韓国検事が崔太敏親子についてしつこく聞いた」”. 中央日報/中央日報日本語版. (2016年10月28日). http://japanese.joins.com/article/109/222109.html 2016年10月28日閲覧。 
  20. ^ “세월호 7시간, 대통령은 어디서 뭘 했는가? - 이것이 팩트 입니다(「セウォル号の7時間、大統領はどこで何をしていたのか? ――これが事実です。」)” (朝鮮語) (プレスリリース), 青瓦台, (2016年11月19日), オリジナル2016年11月20日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20161120211533/http://www1.president.go.kr/news/briefingList2.php?srh%5Bview_mode%5D=detail&srh%5Bseq%5D=18338 2017年3月26日閲覧。 
  21. ^ “産経支局長の処罰指示か 韓国大統領府 元秘書官がメモ”. 北海道新聞. (2016年12月3日). http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/international/international/1-0344636.html 2016年12月3日閲覧。 
  22. ^ a b “「産経を懲らしめなければ」 韓国大統領府、捜査指示か”. 東京新聞. (2016年12月3日). http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201612/CK2016120302000127.html 2016年12月3日閲覧。 
  23. ^ a b 加藤達也 (2016年12月3日). “産経標的に激しい敵意…朴政権の怖さ・不気味さ 元ソウル支局長・加藤達也”. 産経新聞. http://www.sankei.com/world/news/161203/wor1612030014-n1.html 2016年12月3日閲覧。 
  24. ^ 古森義久 (2016年12月4日). “「韓国に謝れ」産経に圧力をかけていた日本の政治家 内なる敵がいた産経ソウル支局長起訴事件”. JBpress. http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48558 2017年3月26日閲覧。 
  25. ^ 山形「正論」友の会
  26. ^ 2月7日 産経新聞大阪本社での正論サロン講演会
  27. ^ 栃木「正論」友の会
  28. ^ a b “産経支局長聴取問題 ペンクラブ、FCCJが声明”. 日本新聞協会. http://www.pressnet.or.jp/news/headline/140916_4371.html 
  29. ^ “「言論の自由を支持」=産経前支局長起訴で懸念”. 時事通信. (2014年10月9日9時51分). オリジナル2015年2月1日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/20150201010224/http://www.jiji.com/jc/zc?k=201410/2014100900124 
  30. ^ “仏紙ル・モンド「言論の自由、韓国で受難」”. 朝鮮日報 
  31. ^ ル・モンド紙 En Corée du Sud, la
  32. ^ “韓国は「言論の自由」を遵守すべし”. ビューポイント. (2014年10月23日). http://vpoint.jp/world/korea/29332.html 
  33. ^ a b “【新潟日報】<社説>産経記者の判決 後味の悪さが残る無罪だ”. 新潟日報. (2015年12月19日). http://www.47news.jp/47topics/e/272042.php 
  34. ^ “「引用元の韓国新聞社に処分が無いのは問題」ジャーナリストの田原総一朗さん”. 産経新聞. (2014年10月8日). http://www.sankei.com/world/news/141008/wor1410080045-n1.html 
  35. ^ a b [1] “[東京小考] 名誉毀損の起訴で毀損される名誉”]. 東亜日報. (2014年10月23日). http://japanese.donga.com/List/3/all/27/426354/1] 
  36. ^ “【iRONNA発】「朝日の若宮氏を知っていますか」 (1/2ページ)”. ZAKZAK: p. 1/2. (2016年2月21日). http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160221/dms1602211113006-n1.htm 

関連項目[編集]