在日認定

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在日認定(ざいにちにんてい)は、ある特定の人物を、事実や根拠の有無にかかわらず「在日韓国・朝鮮人や韓国・朝鮮系の人物である」と断定する行為。元々は朝鮮半島における民族優越主義から特定の日本人を在日であると主張する意味のみであった。しかし、親韓、親北的と見なされた日本人へ使われる際には、中傷的な意味も持つ[1]

概要

韓国や北朝鮮の国民、在日など朝鮮民族(韓民族)では韓民族優越主義小中華思想に基づく対日蔑視(日本民族差別教育)、自民族中心主義的な民族主義教育(反日教育)の観点から、日本の高名な文化や人物を「優れた文化≠日本文化」「特定分野で優れた日本在住者≠日本人」との考えから、根拠なく朝鮮半島起源とすることがある。韓国起源説の一種であると批判される。

一方、近年におきた日本のネットなどで自らの主張と相反する親韓・親北・反日と見なした人物、犯罪者など、それらの人物を在日韓国・朝鮮人であるとする侮蔑的な認定への意味もある。主にまとめサイト2ちゃんねるのネット上で流通する事が多い。

両者とも呼び名は「在日認定」ではあるが、その意味がまったく異なる別の社会現象である。在日認定は「韓民族が特定の日本人を同胞と主張する」意味の歴史が、後者の「日本人が特定の日本人を在日と中傷する」意味より先である[2]

事例

韓国系による在日認定

韓国メディアや韓国人や在日韓国・朝鮮人が、日本の著名人を根拠なく同胞であると思い込み在日認定する例が見られ、過去にはこちらが元の意味であった[1]。以下に一部の事例を挙げる。

本国の韓国人・在日韓国人による在日認定
  • 朝鮮日報』が伊良部秀輝が死去したことを報じた際に「妻が在日韓国人3世で、米国人の父と日本人の母の間に生まれたが韓国系という噂もある伊良部氏」と報じた[3]
  • 前田日明は典型的な民族主義者かつ半島民族優越主義者である祖母に、テレビや新聞に出てくるような日本人を「実は在日」「実は韓国系」と教えられてきた。周囲にも知名度や優れた日本人を見ると同胞同士で集まると、よく言われていた  事を語っている。時が経つと、相手にしなくなったが、信じていた時期があったことをプロレスラー先輩後輩対談の中で語っている。昨今に一部の日本人による在日認定が起きていることに、民族主義者が優秀な人だけを同胞とすることは同じだなと語っている[1]
  • スポーツ2.0が米田哲也を「日本のスカウトから阪急ブレーブスに入団した米田哲也も韓国系という言葉は聞いた記憶がある」「米田は自分が韓国系なのか否かを言わなかった」と韓国系として報じた[4]
  • 稲尾和久が亡くなった時、 韓国国内で骨格スタイル風説を理由に稲尾が韓国系という主張がなされ、韓国メディアが「韓国系として知られ、韓国に来て我が国の選手の指導もした稲尾」と報じた。この中で姜秉徹韓国ロッテ・ジャイアンツ元監督は、「稲尾さんに関して韓国系という噂が流れ、本人がこれを正式には明らかにしなかったが、骨格やスタイルから見て韓国系だと誰も分かっていた」と話している[5]。稲尾の日本プロ野球入団時の同期生だった金永徳ピングレ監督は稲尾が韓国系と言う言葉を彼から聞いた事がなく、日本でもそんな風説を聞いたことはないと否定し、稲尾が韓国系かどうかを確認するために、日本のスポーツ記者と連絡をとったが「専ら初耳」と否定されている。
  • 安藤美姫という名前の「藤」の字を取り韓国語読みすれば「安美姫(アン・ミヒ)」という韓国風の名前になることを根拠に、安藤美姫の父親が韓国人の間に生まれた在日韓国人2世で、日本で差別されるのを避けるため幼い時に日本式の名前に変えたものであり、日本メディアが安藤美姫より浅田真央を持ち上げるのは、在日韓国人と地元日本人の差であるとデイリー・アンが報道した[6]。これに対して安藤自身からは「親戚の中に韓国人はいません。わたしが韓国人だと期待していた方々には申し訳ないですが」と否定されている[7]
  • 金忠植東亜日報論説委員が著書『悲しい列島-永遠の異邦人四百年の記録』(ヒョヒョン出版)で、壬辰の乱直後の1598年に日本に連れて来られた陶工の沈寿官家門の14代子孫をインタビューする過程で、佐藤栄作岸信介安倍晋三は韓国系と明らかになったという根拠が乏しい発表をし、それを韓国のインターネット新聞が「安倍晋三官房長官が壬辰の乱以後、朝鮮から日本に渡った韓国人の子孫であることが明らかになって注目されている」「岸総理と佐藤総理はもちろん安倍長官にも韓国人の血統が混じっているわけだ。これと共に安倍長官の父親で同時に80年代4期連続日本外相を引き受けた安倍晋太郎にも韓国系が多い山口県出身という事実は、安倍に韓国人の血が濃く流れていることを傍証する。『対韓半島タカ派の先頭走者が韓民族後裔だなんて』金委員は本で『日本総理の靖国神社参拜を積極支持する人物に韓半島血統が伝えられているということはまことに問題だ』と言った」という形で報じた[8]。また、2006年10月に『中央日報』や世界日報統一教会系の新聞)は、日本の雑誌『週刊朝日』2006年10月6日号で「安倍晋三研究-家政婦が見た安倍、岸3代」の記事が掲載されたと紹介して、その週刊朝日の記事のなかで岸と安倍の家門家政婦として40年を過ごした久保ウメが「パパ(安倍元外相)は誰にも言えないことを私には言ってくれた」「(安倍元外相死去直後)入棺のとき、この人の骨格を見ながら本当に日本人の物ではないと思った」「頭からつま先までまっすぐに横になっていたが、完全に韓国人の体形だ。(安倍元外相)自らも『私は朝鮮人だ。朝鮮』と言っていたが、この人は朝鮮人だと思った」と語ったと報道した[9]。また、中央日報2006年9月30日記事によれば、安倍晋太郎元外相は生前に安倍家の起源は10世紀くらいまで韓半島北で中国大陸にかけて存在した渤海に始まったという考えを持っていたが、日本での安倍家の起源は明らかではないとし、安倍家の起源については「安倍家の本流は青森県だ。安倍元外相が朝鮮だと言ったが、これは今の北朝鮮ではなく、その北と吉林省の下側にあった渤海」と「11世紀平安時代の武将だった安倍が今の安倍家の祖先と一致する」と報道した[9]
  • 韓国SGIや在日韓国人の創価学会員が創価学会名誉会長池田大作は在日韓国人であり先祖は朝鮮半島から連れてこられたと主張している。韓国SGI発行の機関紙『和光新聞』2001年11月15日号で「わが同胞池田会長」との記述がある。しかし、韓国マスコミが池田が韓国人であるという具体的な根拠は示されていないと反論している[10]。月刊朝鮮は「1997年の大統領選挙前に、金大中が日本で秘密裏に公明党幹部と面会し、創価学会の禁教解除と引き換えに(日本の公明党の影響下にある)韓国創価学会の支持を得られるように依頼、その影響で金大中が勝利した」という記事を発表した[11]。同誌は当時、韓国SGIの会員数を60万から70万人と分析、最終の得票差が約40万票だったこと、さらに金大中が大統領に就任後の1998年、日本文化の韓国流入とともに創価学会の禁教が解除されたため(SGI日本と)密約があったと指摘、韓国SGIの主張を反日集会(活動)や組織拡大を行う上で創価学会 (SGI) 名誉会長の池田大作が日本人であるのは都合が悪いためと報道している。しかし現実には韓国以外のSGIや韓国国内の他団体は池田大作が在日韓国人であるという主張をしていないものの、創価学会(SGI日本)は韓国を「日本文化の恩人」と位置付け機関紙聖教新聞や池田の著書「ありがとう韓国」ビデオ「韓日友好」シリーズなどを例に「日韓」を「韓日」と表記するなど一定の配慮を行っている。
  • 金丸信が訪朝した時、金日成と単独会談を行った。この時、何が話し合われたかは、同席者がなかったため正確なことはわからないが、重村智計の取材によると、この冒頭で金日成は金丸の「ご先祖が、わが国から渡られたことは、よく存じております」と切り出していて、その情報源は在日の関係者だった[12] という。

日本国内における在日認定

主に日本では反自民党主張を行なう人物や日本の犯罪者に対する、在日認定などがあり「在日認定」の例として、WiLLに掲載された花岡信昭執筆の土井たか子を在日朝鮮人であるとした記事や、2010年1月25日付の國民新聞に掲載された清水馨八郎による小沢一郎菅直人土井たか子福島瑞穂を在日認定する記事がある(WiLLは土井から提訴され賠償を命じられた。詳しくは後述)。

石原慎太郎が2010年4月17日の永住外国人への地方選挙権付与などに反対する集会において「与党の幹部に帰化した子孫が多い」主旨の発言をした。福島瑞穂はこれを自身への発言と捉え、同4月19日の記者会見において否定し、名誉毀損だと反論した[13]

桑田佳祐は、一部の楽曲やパフォーマンスが原因で在日認定をされたことがある[14]。詳しくは桑田佳祐#思想・哲学あなただけを 〜Summer Heartbreak〜#収録曲を参照。実際の桑田は自身が純粋な日本人である事を公言しており、日本の文化日章旗・国歌「君が代」を肯定する考えがある事も明かしている[15][16][17][18]

政治家の河野太郎は、Twitterにて、在日認定された事がある。もちろんデマであるため、デマを流した発信者を場合によっては法的処置を検討する可能性があると発言した[19]

在日認定に対する罰則

ある特定の人物の氏名や出身地について事実と異なる情報を公に喧伝する行為は、仮にそれが価値中立的なものであるとしても、日本の場合は当該人物の名誉感情や人格的利益の侵害にあたるとされ、民法709条に基づく損害賠償責任を免れない。この点についてのリーディングケースとなったのが2006年に起きた土井たか子衆議院議員に対する在日認定を巡る民事訴訟である。

訴訟の原因となったのは、元産経新聞編集部長の花岡信昭が論壇誌WiLL2006年5月号に寄稿した「拉致実行犯辛光洙釈放を嘆願した“社民党名誉党首”」と題する記事である。記事の中で花岡は「土井たか子は朝鮮半島出身で本名は『李高順』である」と土井に対する在日認定を行った上で、「そのことが土井の拉致事件を見る目を曇らせたのか、すべて知った上で政治的演技をしていたのか」と論じ、祖国・北朝鮮の利益を図るために日本の利益を蔑ろにしたのだと土井を婉曲的に糾弾した。

戸籍謄本および改製原戸籍謄本の記載によると土井は日本人夫婦の次女として兵庫県神戸市に生まれており、花岡による在日認定は事実に反していた。また花岡は土井に対する取材等の裏付けを全く行わず、インターネット上で流布されていた情報のみに基づいて在日認定を行っていた。これに対して土井は記事によって名誉感情や信用を含む人格的権利を侵害されたとして、2007年4月18日、WiLLを出版するワック・マガジンズと同社代表取締役(当時)の花田紀凱、記事を執筆した花岡の三者を相手取り、1000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める民事訴訟を起こした。

神戸地裁尼崎支部は2008年11月13日、記事はあたかも土井が朝鮮人であるがゆえに日本以外の本国の利益を優先して、日本国民の安全などの利益を蔑ろにするという日本の政治家としてあるまじき行為をしていたかのような印象を与えるものであり、土井の社会的評価を低下させたとして名誉権の侵害を、また虚偽の在日認定について以下のように述べて名誉感情および人格的利益の侵害をそれぞれ認め、被告らに対して200万円の賠償を命じた。謝罪広告については記事の影響力の小ささを理由に退けた[20][21]

…また、氏名は、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容として構成するものというべきであることや、人は、自己の氏名や出身地を人格の重要な構成要素として捉え、これらに強い愛着を抱くことが自然であること(原告が自己の氏名や出身地に強い愛着を持っていることは弁論の全趣旨から明らかである。)などによれば、本件記載が氏名や出身地について価値中立的な事実を摘示するものであるとしても、明らかに虚偽の事実を記述するものである以上、本件記載は原告の名誉感情や人格的利益を侵害するものということができる。

被告らは判決を不服として大阪高裁控訴したが棄却され、さらに最高裁上告したものの、2009年9月29日上告を退ける決定が下された。これにより神戸地裁の判決が確定した[22]


脚注

  1. ^ a b c 山本小鉄前田日明『日本魂』p.26、講談社、2009年9月
  2. ^ 日本魂p26,講談社 山本小鉄, 前田日明2009年9月
  3. ^ 野球:伊良部氏死去、自殺と推定、2011年7月30日 朝鮮日報、2011年8月1日閲覧
  4. ^ 2007年11月26日 スポーツ2.0
  5. ^ NAVER/OSEN(韓国語) 2007年11月14日
  6. ^ 2008年2月13日 デイリー・アン
  7. ^ 2008年2月16日 朝鮮日報
  8. ^ 日本次期総理1順位安倍晋三は韓国系 プレシアン(韓国語)2006年5月17日
  9. ^ a b 安倍日本首相の父親「私は朝鮮人だ」中央日報2006年9月30日([1] web魚拓)
  10. ^ 『ソウル新聞』2004年10月30日号
  11. ^ 朝鮮日報社「月刊朝鮮」(2002年5月号)特集記事「金大中〜藤井富雄ミステリー」
  12. ^ 重村智計 (2006). 外交敗北. 講談社. p. 94 
  13. ^ 2011年4月30日朝日新聞
  14. ^ <布帳馬車>LOVE KOREA在日本大韓民国民団 2016年9月28日配信 2021年2月8日閲覧。
  15. ^ 『週刊文春』2014年9月18日号でのインタビュー特集(p17)
  16. ^ 桑田佳祐 – 涙をぶっとばせ!!(Full ver.) 2:15 - 2:17を参照。 2020年5月5日配信 2020年12月9日閲覧 youtube
  17. ^ ぴあDay(1984年)1984年7月の「ぴあ」 2019年7月5日配信 2020年12月8日閲覧 ぴあDAY
  18. ^ シークレットライブ '99 SAS 事件簿 in 歌舞伎町 SOUTHERN ALL STARS OFFICIAL SITE
  19. ^ 河野太郎議員、「在日認定」ツイートに激怒 発信者に「法的措置も検討します」”. J-CAST ニュース (2013年4月10日). 2021年9月15日閲覧。
  20. ^ 神戸地方裁判所尼崎支部平成19年(ワ)第540号、平成20年11月13日民事第二部判決
  21. ^ “土井たか子氏名誉棄損で賠償命令 神戸地裁”. 共同通信社. 47NEWS. (2008年11月13日). オリジナルの2009年8月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090817054503/http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111301000881.html 2014年4月1日閲覧。 
  22. ^ “土井元議長の勝訴確定 月刊誌WiLLで名誉棄損”. 共同通信社. 47NEWS. (2009年9月29日). オリジナルの2009年10月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091003012721/http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009092901000840.html 2017年2月21日閲覧。 

関連文献

関連項目

外部リンク