ウチナーヤマトグチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
沖縄弁から転送)
移動: 案内検索

ウチナーヤマトグチとは、第二次世界大戦後の沖縄県に成立した、新しい日本語の方言である。沖縄県民が「方言」として認識する土着の諸方言(琉球語)とは異なり均質性が強く、県外の人が俗に「沖縄弁」と呼ぶ言葉とほぼ同義である。

特徴[編集]

語彙文法は、標準語とほとんど変わらない。そのため、本土の人間がウチナーヤマトグチを聞いても理解は可能である。ただし、その構造は、琉球語(沖縄県土着の諸方言)のうち人口行政経済マスメディアなどの中心である沖縄本島のそれも沖縄方言の語彙・文法・アクセントが影響し、社会的風土や、若者から生まれた新語が含まれているなど、標準語との差が現れている。

第二次世界大戦後、標準語(ヤマトグチ)を使ったメディアの普及や、学校における標準語普及運動(方言札)により、旧来の話者は次第に高齢者に限られ、土地の方言が分からない、もしくは聞けても話せない若者が増えた。一方、普及した標準語は元の方言の影響を強く受け(言語接触)、また米軍統治によって本土との交流が断たれたことで、言葉本来の意味とは異なる独自解釈や誤読が訂正されることなく定着したことなどによって、伝統的な方言と標準語のどちらでもない新しい方言とも言える「ウチナーヤマトグチ」と化していった。戦後教育より下の世代は、概ねこのウチナーヤマトグチの話者である。

1980年代後半以降、標準語に対する独自性が、沖縄県のサブカルチャー愛好家の若者たちの間で見直され、戦後の沖縄県独自の習慣や風物ともども再発見され、書籍なども刊行された。1990年代には、ウチナーヤマトグチを使った劇団お笑い音楽などが沖縄県で流行し、2000年代には、沖縄県の食文化、ライフスタイルなどへの興味を中心とした新しい「沖縄ブーム」や、テレビNHK連続テレビ小説ちゅらさん』や、同ドラマに出演したガレッジセール等の沖縄出身タレント)を通じて、スローで優しい印象が全国で認識されるようになった。ただし、語尾を伸ばすためにそう聞こえるだけで、実際にはやや早口で喋ることが多い。

音韻[編集]

漢語における「え段+い」を[e:]ではなく、[ei]と発音する事が多い。これは九州や四国にも広く見られる。

アクセントは特殊アクセントとされ、肥筑方言薩隅方言など、九州地方西南部のアクセントとの類似が見られる。関東地方の出身者には京阪式アクセントに近い印象を与えるが、実際には、京阪式アクセントとはかなり異なり、むしろ東京式アクセントが変化したものであるとみられている。

文法[編集]

命令形は、九州地方でよく使われるように、e段で活用される。つまり、標準語では「着ろ」「見ろ」と活用されるものが、「着れ」「見れ」と活用される。

語彙[編集]

「コーヒーシャープ」と書かれた食堂の看板

語彙に関しては、九州方言(とりわけ鹿児島弁)と共通する部分が多い。例えば、「来る(come)」が「行く(go)」という意味になる事は九州地方にもよくあるケースである。また、「濃い」を「こゆい」と発音したり、語尾に「~ねぇ」を多用したり、地名などでも「原」(はら)を「ばる」と読むなど、幾つかの共通点が見られる。

実質的な宗主国が何度か変わっていることから、中国語や第二次世界大戦後のアメリカ統治時代に定着した英語に由来する語彙も豊富である。大半が食べ物に関する語彙である。英語の接尾辞"er"を用いたものであると説明されることがよくあるが、「アー」や「ヤー」、「サー」などを付けて「〜する人」という意味にするのは、アメリカ占領時代以前からある琉球方言の語法である。例として、ウミアッチャーは海を歩く人(漁をする人)すなわち漁師、リッチャーはrichの人でお金持ち、ハルサー=原(畑)の人、つまり農民などである。

現在の沖縄では、元来の意味や語源が忘れ去られているものも多い。これは日本語に由来する語彙に関しても同様で、識字率が低くあまり漢字を用いなかったという事情もあり、正確な語源が特定できない言葉も少なくない。

参考文献[編集]