ミラージュF1 (戦闘機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ミラージュF1

フランス空軍のミラージュF1C(1979年)

フランス空軍のミラージュF1C(1979年)

ミラージュF1(Mirage F1)はフランスダッソー社製の戦闘機である。1970年代を代表する戦闘機の一つであり、多くの国で使用されている。ダッソー社が世に送り出した戦闘機ミラージュ・シリーズにおいて唯一、通常の水平尾翼を備えている。

概要[編集]

1960年代中頃からダッソー社が新世代機のホープと位置付けて自社資金で開発していた単発エンジンの戦闘機であった。しかしながら技術面では50年代の超音速戦闘機と比してさほどの進歩はなく、旧態依然としたものであった。同時期のダッソー社は可変翼VTOLなどの革新的な新機軸を採用した機体を開発していたものの、価格面から折り合いがつかずフランス空軍の採用が無く、結局の所は保守的な性能の本機が採用された。

ダッソー社製にしては珍しく無尾翼デルタ翼ではなく、通常の後退主翼と尾翼付きの形状となっている。無尾翼形式を採用しなかった理由は、STOL性能の向上のためである。前作ミラージュIIIは、無尾翼形式によりSTOL性に劣り、フランス海軍の艦上戦闘機として採用できないという問題を生じた。その結果、本機はミラージュIIIよりも大幅にSTOL性能を向上させたが、海軍での採用はなかった。

武装は、30mm機関砲2門を固定武装とし、空対空ミサイル4発を搭載可能。この他に、通常爆弾または空対艦ミサイルを搭載できる。なお、配備当初は空対空ミサイルが搭載できず、1976年までは武装は機銃のみであった。

試作初号機はシュペル・ミラージュの名称で1966年12月23日に初飛行し、1967年5月に飛行試験中に墜落して失われている。1973年よりミラージュF1Cとしてフランス空軍への配備が開始され、12月には最初の飛行隊が編成された。

ちょうど同時期には、NATO諸国においてF-104戦闘機の更新が求められており、後継機として輸出を狙ったものの、アメリカジェネラル・ダイナミクス社製F-16ファイティング・ファルコンと競合した。登場時期では数年の差だったが、旧態然として新機軸を採用しない本機と、フライ・バイ・ワイヤCCV設計など新機軸を採用したF-16との性能差は大きく、選定でことごとく敗れ去った。価格面から中東やアフリカ諸国への輸出は好調であり、約500機が輸出された。

その後、ダッソー社は本機において採用されなかった新機軸を採用した新型機として、ミラージュ2000を開発した。再び無尾翼デルタ翼形式を採用したが、最新技術によってリファインがなされた。続いてカナード翼を付加したデルタ翼機であるラファールを開発している。そのためダッソー社のマッハ2級の実用機において通常の水平尾翼形式を採用した機体としては、本機が唯一の存在となり、前述の通り異端児と評されている。

フランスでは2014年6月13日に運用を終了したが、海外ではまだ現役で運用されている。

実戦[編集]

ミラージュF1は、保有している国のほとんどで実戦に参加している。

湾岸戦争時の「砂漠の盾作戦」に参加するフランス空軍のミラージュF1C(先頭)とカタール空軍のミラージュF1EDA(2列目手前)。他の機体は奥から順にカナダ空軍のCF-18A、アメリカ空軍のF-16C、カタール空軍のアルファジェット

南アフリカ空軍機は、ブッシュ戦争において1機がキューバのパイロットの操縦するMiG-23により撃墜され(後日、修復)、またMiG-21と交戦し、少なくとも1機を撃墜している。これとは別個にアンゴラは、MiG-23による数機の撃墜を主張しているが、ほとんどの場合は損傷したものの帰還しており、損失の多くは離着陸の失敗及び機体トラブルであった。当時、短射程のR550マジック及び南アフリカ製のククリ空対空ミサイルしか装備しておらず、主力であったR530系ミサイルが供給されていなかったため、稼働率は低いとはいえ中射程のR-23/R-24を装備したMiG-23に対抗することは困難であった。

モロッコ空軍機は西サハラでのポリサリオ戦線との戦闘に投入され、少なくとも3機が地対空ミサイルによって失われた。リビア空軍機は1980年代チャド内戦への介入で、チャドに基地を置いていたフランス空軍機と同機種同士で交戦した。イラン・イラク戦争ではイラク空軍機が実戦に参加し、イラン空軍機との交戦で数機が撃墜されたが、中射程のシュペル530FミサイルによりF-4と互角の戦闘を行い、数機を撃墜している。

1990年のイラクによるクウェート侵攻の際はクウェート空軍機15機がサウジアラビアに逃れ、その際イラク軍のヘリコプター1機を撃墜した。続く湾岸戦争では、イラク空軍機の多くが地上で破壊され、空中でも多国籍軍の機体(主にF-15)に対して、早期警戒管制機の支援を受けての視程外戦闘能力に大差があったこともあり一方的な損害を被った。一部はイランへ逃げ込み、イラン空軍に接収されている。多国籍軍側のミラージュF1(フランス、クウェート、カタール空軍所属機)は、敵味方の識別に失敗して友軍が撃墜してしまう可能性があったため飛行が一時的に中止され、再開されてからは局地的防空や対地攻撃、偵察を行った。

エクアドル空軍機は、1995年のセネパ紛争でペルーSu-22Aと交戦し少なくとも1機を撃墜している。

2003年イラク戦争では、イラク空軍機1機がアメリカ空軍のF-15に撃墜されている。

2011年リビア内戦では、リビア空軍機2機が反政府デモ隊への爆撃を拒否しマルタへ亡命した。

派生型[編集]

Cyrano IV Radar
ミラージュF1C
全天候迎撃型。レーダーは空対空用のシラノIVを搭載。
ミラージュF1C-200
ミラージュF1Cの空中給油プローブ追加型。配管を通すため機首が7cm延長されている。
ミラージュF1A
対地攻撃用輸出型。レーダーを簡素な測距レーダーに換装、電子機器の削減により内部燃料の増加とペイロード強化を行った。南アフリカとリビアのみ採用。
ミラージュF1B
複座型。機関砲を外してシートを増設している。訓練用にダミーの空中給油プローブを装備可能。
ミラージュF1E
輸出用戦闘攻撃機型。レーダーを空対地能力も持つシラノIV Mに換装し、ヘッドアップディスプレイチャフフレアディスペンサーなどを追加。
ミラージュF1E/M53
プランのみで終わった、NATO向け推力強化・戦闘攻撃機型。エンジンをSNECMA M53に換装。
ミラージュF1D
ミラージュF1Eの複座型。
ミラージュF1CR
偵察型。レーダーを改良型のシラノIV MRに換装、機首下にカメラを搭載、偵察ポッドの運用能力を付加。副次的に対地攻撃任務を持つ。
ミラージュF1CT
余剰化したミラージュF1Cを対地攻撃用に改修した型。シラノIV MRへのレーダー換装、レーザー測距装置の追加、コックピットの改修、主翼のハードポイント増設などを行った。
ミラージュF1M
スペイン空軍のミラージュF1CE/BEの近代化改修機。対地攻撃能力を付加した他、コックピットが暗視ゴーグル対応型になり、HOTAS概念も導入された。

運用国[編集]

運用国(青)

要目[編集]

三面図

関連項目[編集]