マザー・グース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マザーグースから転送)
移動: 案内, 検索

マザー・グース (Mother Goose) は、おとぎ話ナーサリー・ライムズ (Nursery Rhymes) の文学の中で有名な英国の伝承童謡の総称、またはマザー・グースを作った特定されていない典型的なイギリスの田舎の女性作家たちのことを指す[+ 1]。単に、ナーサリー・ライムズ (Nursery Rhymes) としても知られている[+ 2]。現代のイギリスではマザー・グースをクリスマス・パントマイムとだけしか認識されていないにもかかわらず、マザー・グースは伝統的なイギリスのパントマイムの元となっている。

目次

[編集] 概説

英語文化圏の多くの国で作者不詳の童歌が数多く歌われており、子守唄物語唄早口言葉数え唄なぞなぞ言葉遊びをはじめ、古い事件、政治家や王室、有名人への皮肉などが盛り込まれている。およそ1,000を超える童歌がある。「Mother Goose」、「マザーグースの唄」という呼び名は、伝承童歌のひとつCackle, Cackle, Mother Goose(魔女狩り時代(1617世紀)の魔女が題材と考えられる)の登場人物・Mother Gooseを童歌の総称として紹介した本によるもの。[要出典]

マザー・グース(フランス名:マ・メール・ロワ)は伝説上の童謡作家として扱われることもある。文献上、マザー・グースという文字が印刷物に記載されたのは、フランス人のオレ (Loret) という人物による『ラ・ミューズ・イストリク』(1650年)の中で、「マザー・グース物語のように (like a Mother Goose story) 」という箇所である。その当時、すでに童謡集を意味するタイトルとして一般化していたものと考えられている。

日本では、北原白秋(『まざあ・ぐうす』 アルス (出版社)、1921年)、竹友藻風(『英国童謡集』 研究社、1929年)、谷川俊太郎などが訳しており、とくに谷川俊太郎 訳・堀内誠一 画『マザー・グースのうた』全5集(草思社、1975年-1976年)の出版により「マザー・グース」ブームがもたらされ、広く一般的に知られるようになった[1]。また、1976年4月にマザー・グースを引用したミステリー作品として知られるアガサ・クリスティ 著『そして誰もいなくなった』がハヤカワ・ミステリ文庫創刊第1弾として刊行されたことも、このブームを後押ししたものと思われる[2]。さらにそれらと時期を前後して、萩尾望都 著『ポーの一族』(小学館、1972年-1976年)を読んでマザー・グースを知った当時の女子中高生たちによって、1つの読者層が形成されるようになった[3]

[編集] 代表的な唄

  • Old Mother Goose(マザーグースのおばさん)[+ 3][+ 4]
Old Mother Goose, マザーグースのおばさんは
When she wanted to wander, 散歩がしたくなったときは
Would ride through the air ご亭主の背中にまたがって
On a very fine gander. 空中を飛び回るんだとさ
Jack's mother came in, するとジャックのママがやってきて
And caught the goose soon, マザーグースを捕まえると
And mounting its back, その背中にまたがって
Flew up to the moon. 月まで飛んでいったとさ
London Bridge is broken down,
Broken down, broken down,
London Bridge is broken down,
My fair lady.

   2番は1番のLadyにかけているものなら

Take the keys and lock her up,
Lock her up, lock her up,
Take the keys and lock her up,
My fair lady.

   他に、木と粘土で架け替えろというものなど様々ある

Build it up with wood and clay,
Wood and clay, wood and clay,
Build it up with wood and clay,
My fair lady.
  • Georgie Porgie(ジョージ・ポージ)
Georgie Porgie, pudding and pie,
Kissed the girls and made them cry;
When the boys came out to play,
Georgie Porgie ran away.
など、英語の国際語化に伴い、日本でポピュラーになった唄も多い。

[編集] 代表的な早口言葉

  • Peter Piper
Peter Piper picked a peck of pickled peppers; ピーター・パイパーは1ペックのピクルスをつまんだ。
A peck of pickled peppers Peter Piper picked. ピーター・パイパーがつまんだ1ペックのピクルス。
If Peter Piper picked a peck of pickled peppers, もしピーター・パイパーがピクルスを1ペックつまんだら、
Where's the peck of pickled peppers Peter Piper picked? ピーター・パイパーはいくつピクルスをつまんだでしょう?
  • She Sells Seashells
She sells seashells by the seashore. 彼女は海岸で海の貝殻を売っている。
The shells she sells are surely seashells. 彼女が売っている貝殻は、きっと海の貝殻だ。
So if she sells shells on the seashore, だから彼女がもし海岸で海の貝殻を売っているのなら、
I’m sure she sells seashore shells. 貝殻はきっと海岸の貝殻だ。
  • Betty Botter bought some butter.(Betty Botterはバターを買った。)
"But," she said, "the butter's bitter.(彼女は「だけどバターが苦いわ」と言った。)
If I put it in my batter,(「もし生地に入れたら、)
It will make my batter bitter.(生地が苦くなってしまう。)
But a bit of better butter,(だけどもう少しいいバターがあったら)
That would make my batter better."(生地が良くなるでしょうね」。)
So she bought a bit of butter.(だから彼女は少しバターを買った。)
Better than her bitter butter.(彼女の苦いバターよりも良いバターを。)
And she put it in her batter.(そして生地にそれを入れた。)
And the batter was not bitter.(生地は苦くならなかった。)
So 'twas better Betty Botter(だからいいことにBetty Botterは)
Bought a bit of better butter. (もっといいバターを少し買った。)

[編集] マザー・グースが登場する作品

英語圏で一般的な童歌であるため、新聞などの見出しでパロディに用いられたり、歌の歌詞に引用されたり、その利用は数限りなく多い。

引用している作品、童歌と同じ登場人物が出てくる作品で、日本でポピュラーなものの例を以下にあげる。

小説
漫画
その他

[編集] 主な日本語訳された本

[編集] 日本のマザーグース研究者

など

[編集] 参考文献

[編集] 出典

  1. ^ English readers were familiar with Mother Hubbard, already a stock figure when Edmund Spenser published his satire "Mother Hubbard's tale", 1590; with "Mother Bunch" and her superstitious advice on getting a husband or a wife and was credited with the fairy stories of Mme D'Aulnoy when the first appeared in English. Ryoji Tsurumi, "The Development of Mother Goose in Britain in the Nineteenth Century" Folklore 101.1 (1990:28-35) p. 330 instances these, as well as the "Mother Carey" of sailor lore and the Tudor period prophetess "Mother Shipton".
  2. ^ Margaret Lima Norgaard, "Mother Goose", Encyclopedia Americana 1987; see, for instance, Peter and Iona Opie, The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes (1951) 1989.
  3. ^ Iona and Peter Opie, eds. The Oxford Nirsery Thume Book (Oxford) 1976:88, 90.
  4. ^ マザーグースのおばさん Old Mother Goose :マザーグース
  5. ^ 10人のインディアン、10人の黒人の男の子

[編集] 脚注

  1. ^ 1976年5月3日付の毎日新聞に掲載された「大変な人気『マザー・グース』」という記事に「“谷川俊太郎訳”が引き金に」との見出しで、草思社刊の『マザー・グースのうた』が出版社自身が仰天するほどの“爆発的”売れ行きであることと、それに伴う「マザー・グース」ブームが紹介されている。
  2. ^そして誰もいなくなった』が「マザー・グース」ブームを後押ししたことは、『ふしぎの国の『ポーの一族』』(いとうまさひろ著 新風舎文庫 2007年 ISBN 9784289503544)に指摘されている。また、毎日新聞の記事(「大変な人気『マザー・グース』」、1976年5月3日)にも、『そして誰もいなくなった』や『不思議の国のアリス』、『僧正殺人事件』などの外国文学を通してマザー・グースが親しまれ、受け入れられる下地となっていることが記載されている。
  3. ^ 毎日新聞の記事(「大変な人気『マザー・グース』」、1976年5月3日)に、萩尾望都 の少女漫画『ポーの一族』の愛読者である中学、高校の女生徒たちが萩尾の作品を通してマザー・グースを知り、萩尾ファンが横すべりして1つの読者層を形成したとみていると記されている。
  4. ^ "London Bridge is broken down"の詩と異なる、遊び唄としてよく知られる"London Bridge is falling down"の歌詞とそのメロディーはアメリカで派生したものが広まったものであると、鷲津名都江は『ようこそ「マザーグース」の世界へ』(日本放送出版協会、2007年)に記している。
  5. ^ 西田ひかるは『ケイト・グリーナウェイマザーグース』(飛鳥新社、2003年)のあとがきに「勘違いで子供の頃は、"Ring around a roses"と歌っていました」と記しているが、それは勘違いではなくアメリカ版の歌詞で、カリフォルニア育ちの西田がこのバージョンで覚えているのはむしろ当然であると、鷲津名都江は『ようこそ「マザーグース」の世界へ』(日本放送出版協会、2007年)に記している。
  6. ^ 鳥山淳子は『もっと知りたいマザーグース』(スクリーンプレイ、2002年)の中で、アメリカでは"Ring around the rosy"と歌われていると記している。
  7. ^ ドルリー・レーンは元シェイクスピア俳優の探偵で、「マフィン売り」というマザー・グースの中に、ロンドン最古の劇場であるドルリー・レーン劇場が現存するコヴェント・ガーデン地区の通りの名として唄われている。
  8. ^ バーナビー・ロスは、エラリー・クイーンが「ドルリー・レーン4部作」発表の際に使用した別名義。
  9. ^ フェル博士 (Doctor Fell) は、「フェル先生 (Doctor Fell) 、私はあなたが嫌いです」というマザー・グースの中に唄われている。
  10. ^ カーター・ディクスンは、ジョン・ディクスン・カーの別名義。
  11. ^ 作中に登場する「クックロビン音頭」という踊りは、直接的には『ポーの一族』(「小鳥の巣」)のパロディである。
  12. ^ 作中に登場するロビン・ザンダーが「クック・ロビン」と時々呼ばれるが、主人公の姉が彼のことを「萩尾望都のマンガに出てくるタイプ」と評していることから、これもまた「小鳥の巣」からの引用であると『ふしぎの国の『ポーの一族』』(いとうまさひろ著 新風舎文庫 2007年)に指摘されている。

[編集] 関連項目

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語