十二夜

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十二夜』(じゅうにや、"Twelfth Night, or What You Will")は、イギリス劇作家ウィリアム・シェイクスピア作の喜劇。副題は「御意のままに」。

「十二夜」とは、12月25日から12日目、一連のクリスマス祝いの最終日にあたる1月6日顕現日の夜のこと。だが、劇中に十二夜の行事に関わるような台詞はない。

初演とテクスト[編集]

初演[編集]

従来この劇の初演は1601年1月6日にエリザベス1世宮廷で行われたと言われていた。これはシェイクスピア学者のレズリー・ホットソンが『「十二夜」の第一夜 The First Night of 'Twelfth Night'』(1954年)で唱えた説で、十二夜のその日その場所でシェイクスピアの劇団が劇を上演した記録があることと、その時の主賓が登場人物と同名のイタリア貴族オーシーノ公爵だったことを根拠にしている。だがこの説は、公爵が自分と同名の登場人物が道化にからかわれるのを見て喜んだのか、また公爵訪英の知らせが入ったのが12月25日のことで、いくらシェイクスピアでもこれ程の短期間で新作を仕上げるのは難しいのではないかという疑問がある。

執筆年代について確実に言えるのは1599年以後だということ程度。それは同年に出版されたエドワード・ライト(Edward Wright)のイギリス初の世界地図への言及が第3幕第3場のマライアのセリフにあることからわかる。

デイヴィッド・ベヴィングトン(David Bevington)は1599年の執筆の可能性を示唆。さらに英文学者の河合祥一郎はシェイクスピアの作品をパロディ化している作者不明の『気をつけろ Look About You』(1599年から1600年執筆、1600年出版)が『十二夜』の真似もしていることから、それ以前であること、つまり1599年1600年だという。しかし1601年説も根強い。

テクスト[編集]

『十二夜』の古い版本はファースト・フォリオのみで異本はないが、このテクストは以下のような問題を孕んでいる。何らかの理由で上演台本を底本に出来ず、草稿を用いたのか。

  • オーシーノ公爵が途中から伯爵と呼ばれている。
  • 「私、歌が歌える」といっていたヴァイオラが歌を歌わない。
  • マライアがマルヴォーリオいじめを計画する時、サー・トビーとサー・アンドルーと阿呆の3人にマルヴォーリオを隠れ見るように言っているのに、実際には阿呆ではなくフェイビアンなる人物がでてくる。

登場人物[編集]

ヴァイオラ(シザーリオ)
物語の主人公。シザーリオは男装時の名前。
オーシーノ公爵
ヴァイオラの仕えるイリリア公爵。オリヴィアに求婚。
オリヴィア
イリリアの伯爵令嬢。
サー・トービー・ベルチ
オリヴィアの叔父。
サー・アンドリュー・エイギュチーク
オリヴィアの求婚者。
マライア
オリヴィアの侍女。
マルヴォーリオ
伯爵家の執事
フェステ
伯爵家の道化
セバスチャン
ヴァイオラの双子の兄。
アントニオ
セバスチャンの友人。

あらすじ[編集]

双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラの乗った船が嵐に遭い、ヴァイオラはイリリアの海岸に打ち上げられる。彼女は消息の分からない兄を死んだと思い、身を守るために兄そっくりに男装してシザーリオと名乗り、イリリアの公爵であるオーシーノに小姓として仕えることにする。

オーシーノは伯爵の娘であるオリヴィアに恋をしていたが、彼女の兄の喪に服したいという理由で断られ続けていた。シザーリオをすっかり気に入ったオーシーノは、オリヴィアに自分の気持ちを伝えてくれるよう命じる。密かにオーシーノに淡い思いを抱いていたヴァイオラはその命令に苦しむが、小姓としてその勤めを果たす。オーシーノの想いを拒むオリヴィアだったが、使者としてやって来たシザーリオに心を奪われてしまう。それに気が付いたヴァイオラは、実るはずのない自分へのオリヴィアの想いを、オーシーノへの自分の想いと重ねて悲しむ。

一方、ヴァイオラがてっきり死んだと思っていた双子の兄セバスチャンは、別の船の船長アントニオに助けられており、彼と共にイリリアにやって来ていた。アントニオはセバスチャンを気に入っていたが、オーシーノと過去に因縁がある関係で、セバスチャンと別れて人目に付かないよう行動していた。

オリヴィアにはオーシーノの他にも求婚者がおり、オリヴィアの叔父トービーの遊び仲間であるアンドルーもその一人だった。愛しいオリヴィアが公爵の小姓に熱を上げていると聞いたアンドルーは、トービーにそそのかされてシザーリオに決闘を申し込む。シザーリオは仕方なくその決闘を受けたが、シザーリオのことをセバスチャンだと思い込んだアントニオが割って入り決闘を止める。その後警備員に捕まってしまったアントニオだったが、ヴァイオラは彼が自分の事をセバスチャンと呼ぶのを聞いて、兄が生きていることを知る。

その頃イリリア見物をしていたセバスチャンは、偶然にオリヴィアと出会う。セバスチャンは見ず知らずの美しい姫に求婚されて夢ではないかと戸惑うも、その申し出を受け入れる。オリヴィアはシザーリオに今まで頑なに拒まれてきたこともあり、相手の気が変わらぬうちにとすぐに結婚式を挙げる。

その後オリヴィアと出会ったオーシーノは彼女に求婚するも、いつも通り断られてしまう。さらには彼女が自分の小姓を夫と呼ぶのを聞いて、裏切られたと思ったオーシーノはシザーリオに激怒する。身に覚えのないヴァイオラはそれを否定するが、今度はオリヴィアが裏切られたと叫ぶ。そんな口論の最中にセバスチャンが現れ、一同は驚く。ヴァイオラとセバスチャンは互いに素性を確かめ合い、別れ別れになっていた兄妹と知る。ヴァイオラを男と思って求婚したオリヴィアは恥じ入ったが、オリヴィアもセバスチャンもお互いに悪い気はせず、一方のオーシーノはシザーリオが女だと知り、改めて求婚する。こうして二組のカップルがめでたく誕生した。

日本語訳[編集]

  • 坪内逍遙訳、新樹社 (シェークスピヤ全集4) 1957年
  • 菅泰男訳、新潮文庫 1957年
  • 小津次郎訳、岩波文庫 1960年
  • 福原 麟太郎 大山敏子共訳、角川文庫 1960年
  • 大山敏子訳、旺文社文庫 1972年
  • 福田恆存訳、『シェイクスピア全集 補2 -十二夜』 1972年のち『福田恆存翻訳全集』 第7巻 1993年
  • 小田島雄志訳、シェイクスピア全集 (22)白水Uブックス 1983年
  • 木下順二訳、 『シェイクスピア6 -オセロー/十二夜』 講談社 1988年
  • 三神勲訳、『十二夜―シェイクスピアコレクション』 角川文庫クラシック 1996年
  • 松岡和子訳、 『シェイクスピア全集6 -十二夜』 ちくま文庫 2004年
  • 安西徹雄訳、光文社古典新訳文庫 2008年
  • 河合祥一郎訳、角川文庫 2011年

映像化[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]