T-14 (戦車)

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T-14/オブイェークト148
Т-14/Объект 148[1]
VDayRehearsal05052016-28.jpg
種類 主力戦車(第4/第5世代主力戦車[2]
原開発国 ロシアの旗 ロシア
運用史
配備先 RGF emblem.png ロシア陸軍
開発史
開発者
製造業者 ウラルヴァゴンザヴォート社[3]
値段 370万ドル[4][5](約4.4億円)
製造期間 2015年 - [6]
製造数 20輌+[6]
諸元
重量 48[3][7] - 49 t (市街戦装備含む)[3]
全長 10.8m
全幅 3.5m
全高 3.3m
要員数 3名(戦車長、砲手、操縦手)[3][6]

装甲

44S-sv-Sh[3][8]

1,000 – 1,100 mm (対APFSDS) 1,200 – 1,400 mm (対HEAT[9]
主兵装 125mm滑腔砲2A82-1M[6] - 45発
(うち32発自動装填装置に格納)
副兵装
エンジン 1,500[10] - 2,000馬力[10]
ディーゼルエンジン
出力重量比 31hp/t
変速機 12速オートマチックトランスミッション
行動距離 500km以上[10]
速度 80 – 90 km/h[10]
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T-14(テー・チィトゥルナッツァッチ、オブイェークト148、ロシア語: Т-14 Объект 148)とは、ロシア戦車である。

ロシア連邦軍(以下ロシア軍)の次世代装甲戦闘車両シリーズ、アルマータ」(Армата)共通戦闘プラットフォームを構成する車輛のひとつで、第4世代主力戦車に分類される(「第5世代主力戦車」とすることもある[2]等諸説あり)。無人砲塔を採用し、乗員の生残性や市街戦を考慮した構造となっている。

2015年モスクワ戦勝記念日パレード英語版において初めて公開された[11]。2017-18年に量産を開始予定で[12]、2015年から2020年まで、ロシア軍はT-14を2,300輌取得する計画である[13][14]。近い将来遠隔操作が可能になるとされている[12]

なお、「アルマータ」とは前述のようにT-14をはじめとする装甲戦闘車両シリーズの総称なので、T-14自体を指す名称が「アルマータ」というわけではない点には注意が必要である[15]

開発の経緯[編集]

T-95。T-14の最大の特徴ともいえる無人砲塔はT-95ですでに採用されていた。

ソ連時代から続くロシアの現用主力戦車といえばT-64/T-72/T-80だが、これらの戦車は西側の第3世代主力戦車に対してやや見劣りした。2008年のグルジア戦争を機に予備保管となったT-64はともかく、1980~1990年代から(後述のチョールヌィイ・オリョールなど)T-72やT-80の近代化計画は存在したものの、ソ連崩壊のあおりや予算不足によりこれらの計画は頓挫するか、近代化が施されても少数の戦車にとどまった。だが2000年代にウラジーミル・プーチンがロシア大統領に就任すると国防予算も増加傾向に転じたため、2004年には(実質的にT-72の近代化版である)T-90の中でもさらなる発展型であるT-90Aの配備が可能となった[16]

これと並行してロシアではソ連末期から「西側の第3世代主力戦車にも対抗可能な新型戦車」として次世代主力戦車の開発が進められていた。T-80UM2「チョールヌィイ・オリョール」とT-95(オブイェークト195)である。のちにチョールヌィイ・オリョールは2000年に製造メーカーのオムスク輸送機械が倒産したことから開発が中止され、次世代主力戦車はT-95に一本化されることとなる[17]。T-95は135mmまたは152mm滑腔砲を搭載した無人砲塔を採用し、乗員は車体前部の装甲カプセルに乗せ、自動装填装置はロシア戦車おなじみの誘爆の危険性が高いカセトカ式を改めるなど、生残性を重視した設計となっていた。ロシア軍はT-90Aを配備しつつ、T-95の実用化を急ぎ、T-72やT-80の近代化はもうしないという方針を2000年代末の時点でとっていたが、2010年、T-95は「冷戦時の計画に基づくT-95はコンセプトが古い[18]」「費用対効果が低い」などの理由で開発中止となってしまった。また2011年、T-90Aも所詮は「(湾岸戦争で惨敗した)T-72の17番目の改良型」であり、世界の水準に達していないとして配備中止が決定、5年間は戦車の新規調達を行わず、当面はT-72の近代化改修にとどめることになった(2017年現在、既存のT-72Bを順次最新型のT-72B3及びT-72B4に改良している)。

しかし同時に、2015年をめどに新型戦車の調達を開始するという方針も打ち出され、翌2012年にロシア軍装甲車輛体系の近代化計画が発表された。この計画は複雑化していた(ロシア軍で装甲戦闘車輛の調達・運用を担当する国防省装甲車輛総局(GABTU)英語版の管轄だけで20車種55タイプの装甲車輛が存在した[16])ロシア軍の装甲戦闘車輛を4つの共通車体によるファミリー化で整理するという計画である[15]。その4つの共通車体とは、

であり、T-14はこのうち、「アルマータ」の車体を利用して製作された主力戦車である。開発には5年を要した。[19]

構造[編集]

T-14は無人砲塔を採用し、3名からなる乗員は全員車体に搭乗する。砲塔にハッチが見られないことに注目。

T-14の最大の特徴として、無人砲塔を採用し3名からなる乗員は全員車体に搭乗していることがあげられる。これはT-14が最初というわけではなく、T-95やアメリカMCS(車載戦闘システム)で無人砲塔の導入を検討していたが、両車とも開発中止になっている。

従来の戦車では戦車長は砲塔の上からおもに肉眼や聴覚により周囲を索敵していたが、T-14ではこれができないので、テレビジョンや赤外線暗視システム等をはじめとする電子光学的手段で周囲を索敵することになる。しかし果たして戦車長が「五感」無しに周囲の状況を把握しきれるのかなど、実戦に投入しなければ分からない部分もある[20]

武装[編集]

T-14の主砲は、かつてのソビエト/ロシア戦車が採用していた125mm滑腔砲2A46に代わり、125mm滑腔砲2A82-1Mが採用された[6][21]。これは排煙器(エバキュエーター)がないこと(T-14は無人砲塔なので発射ガスの砲塔内への逆流を考慮する必要がない)、発射速度が10 - 12発/分と高いこと、有効射程8kmであることが特徴である。公式発表によれば戦車サイズの目標捕捉距離は光学照準器を使った昼間で5km以上、熱画像装置を使った夜間で3.5kmほどとされる。砲手用光学照準器は倍率4倍と12倍の切り替えが可能[3]で、レーザー測距儀の有効射程は7.5kmとされる[10]。これらのシステムは重複して搭載され、その他に乗員の車外視察用に360度旋回の高解像度カメラが用意されている[22]

2A82-1Mの主砲弾として開発された「ヴァキューム1」装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)は900mm長の貫徹体からなり、射程距離2,000mからRHA換算で1,000mm相当の貫徹力を有する[23][24]。また爆発モード切り替えが可能な「テリンク」榴弾が用意されている。主砲発射型対戦車ミサイルとして2A82-1M専用に開発された3UBK21「スプリンター」[25]は対空目標にも使用が可能である[10]。砲弾搭載総数は45発で、うち32発を自動装填装置に格納する。

T-14の副武装として12.7mmKord(6P49)重機関銃(パレードの際には搭載されていない)と7.62mmPKTM(6P7К)機関銃があり、弾数はそれぞれ300発と1,000発が装填される[3][25][26]。これらは2つとも遠隔操作により使用される[25]。また再装填用に(おそらく7.62mm)銃弾が1,000発搭載される[19]。12.7mm機関銃は砲塔上に装備され、砲塔前面にもおそらく 7.62mm機関銃を積載するためと思われるスリットがある。

機動性[編集]

防御力[編集]

通信およびセンサー[編集]

輸出[編集]

エジプト[編集]

デニス・マントゥロフロシア産業貿易大臣は2015年5月26日のカイロ訪問において、通信社「ロシアの今日」に対してT-14をエジプトに輸出する準備ができていると話している[27]。また、T-14の製造元であるウラルヴァゴンザヴォート社はロシアの軍事装備や武器博覧会にエジプトからの代表団を招待した[28]

その他の国々[編集]

ロシア大統領補佐官ウラジーミル・コージン英語版は2015年の戦勝パレードに出席した中国インドベトナムアルジェリアといったロシアの友好国や第三世界の国々はT-14などのロシア製軍事装備に興味を示した、と語った[29]。だが中国の兵器製造企業、中国北方工業公司(ノリンコ)は自社製のVT-4 の方がT-14より機械的信頼性、火器管制装置、コストの面で優れていると主張する[30]

関連項目[編集]

映像外部リンク
2015年モスクワ戦勝記念日パレードのリハーサルにおけるT-14。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Die Presse: российская "Армата" знаменует революцию в танкостроении
  2. ^ a b “Арсенал Платформа АРМАТА и другие образцы бронетехники: Вячеслав Халитов” (ロシア語). Echo of Moscow. (2015年1月26日). http://echo.msk.ru/programs/arsenal/1480668-echo/ 2015年5月16日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f g h “Танк Т-14 "Армата" или Т-99 "Приоритет" [Tank T-14 "Armata" or T-99 "priority"]” (ロシア語). vpk.name. http://vpk.name/library/f/armata.html 2015年5月6日閲覧。 
  4. ^ Названа цена танка «Армата»
  5. ^ Названа цена "Арматы"
  6. ^ a b c d e “Russia's new Armata tank on Army 2015 shopping list”. TASS. RT. (2015年2月21日). http://rt.com/news/234363-armata-tracked-armored-platform/ 2015年2月21日閲覧。 
  7. ^ “Russischer T-14 schneller als US-amerikanischer Abrams [Russian T-14 faster than US-American Abrams]” (ドイツ語). Sputnik. (2015年5月6日). http://de.sputniknews.com/militar/20150506/302205787.html 2015年5月6日閲覧。 
  8. ^ “Russia Created New Steel Armor for Armored Vehicles”. Siberian Insider. (2014年7月3日). http://www.siberianinsider.com/russia-created-new-steel-armor-for-armored-vehicles.html 2015年2月22日閲覧。 
  9. ^ Видимые преимущества перспективного танка Т-14 «Армата»
  10. ^ a b c d e f Ракеты собьют на подлете
  11. ^ 1st PHOTO: Russia's secretive Armata battle tank revealed”. 2015年4月21日閲覧。
  12. ^ a b «Армата» может стать полностью дистанционно управляемой
  13. ^ MacFarquhar, Neil. “As Putin Talks More Missiles and Might, Cost Tells Another Story”. http://www.nytimes.com/2015/06/17/world/europe/putin-40-new-missiles-russian-nuclear-arsenal.html 
  14. ^ Литовкин, Дмитрий (2015年5月9日). “Цена танка "Армата" вызвала споры” (ロシア語). vestifinance.ru. http://www.vestifinance.ru/articles/57080?page=6 2015年6月9日閲覧。 
  15. ^ a b Col.Ayabe 2015, p. 35.
  16. ^ a b JGround編集部 2015, p. 66~67
  17. ^ 清谷信一 2011b, p. 167.
  18. ^ 清谷信一 2011b, p. 168.
  19. ^ a b «Армата» против «Леопарда»: новый русский танк превзойдет все мировые аналоги - Телеканал «Звезда»
  20. ^ 清谷信一 2011a, p. 26.
  21. ^ Бойко, Александр (2014年12月19日). “Танковые войска России переcаживаются на "Арматы"” (ロシア語). Komsomolskaya Pravda. http://www.kp.ru/daily/26322/3202977/ 2015年5月6日閲覧。 
  22. ^ Танк Т-14 "Армата" или Т-99 "Приоритет"
  23. ^ “Танк "Армата" получит 152-миллиметровую пушку” (ロシア語). Lenta.Ru. (2014年12月19日). http://lenta.ru/news/2015/05/14/armata/ 2015年5月18日閲覧。 
  24. ^ Птичкин, Сергей (2015年5月5日). “Ракеты собьют на подлете” (ロシア語). Rossiyskaya Gazeta. http://www.rg.ru/2015/05/05/armata-site.html 2015年5月13日閲覧。 
  25. ^ a b c Щеголев, Илья (2015年1月23日). “"Армата" против "Леопарда 2" и "Абрамса"” (ロシア語). Rossiyskaya Gazeta. http://www.rg.ru/2015/01/23/armata-site.html 2015年5月13日閲覧。 
  26. ^ Антикризисная модель "Арматы"” (ru) (2015年3月10日). 2015年5月6日閲覧。
  27. ^ РФ обсудит с Египтом поставки "Арматы" после выполнения госпрограммы – RIA Novosti.com, 26 May 2015
  28. ^ Rush for Russian Armata: Foreign Buyers Line Up For Super Tank – Sputniknews.com, 26 May 2015
  29. ^ Armata main battle tankChina, India Interested in Purchasing Russia’s Armata - Putin's Aide – Sputniknews.com, 4 June 2015
  30. ^ Franz-Stefan Gady, "Can This Chinese Tank Beat Russia's T-14 Armata?", The Diplomat, 9 June 2015

参考文献[編集]

  • Col.Ayabe編 『イラストでまなぶ!ロシア連邦軍』 株式会社ホビージャパン、2015年ISBN 978-4-7986-0995-9 
  • JGround編集部編 『JGround特選ムック 陸自戦車最前線!!』 イカロス出版、2015年ISBN 978-4-8022-0060-8 
  • 清谷信一編 『新・現代戦車のテクノロジー』 アリアドネ企画、2011aISBN 978-4-384-04439-3 
  • 清谷信一編 『新・世界の主力戦車カタログ』 アリアドネ企画、2011bISBN 978-4-384-04410-2 
  • 『月刊PANZER』各号、アルゴノート社。
  • 軍事研究』各号、ジャパン・ミリタリー・レビュー。

外部リンク[編集]