滑腔砲

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L16 81mm 迫撃砲の砲身内部(滑腔砲)。ライフリングは刻まれていない
120mm迫撃砲 RTの砲身内部(施条砲)。ライフリングが刻まれている

滑腔砲(かっこうほう)[1]は、砲身内にライフリング(旋条)がない砲のこと。スムーズボア(英:smoothbore)。

概要[編集]

16世紀頃から戦争火砲が普及し始めるが、これらは滑腔砲身に球弾を詰めて砲撃するものであった。やがて投射重量を増やすため、弾が細長い円筒状になり、弾道を安定させるためにはジャイロ効果を利用し、弾を回転させる事が有効である事が知られると、火砲は砲身内に螺旋状の溝(ライフリング)を切り、砲弾に食い込ませて回転を与える、いわゆる施条砲に切り替わっていった。

第二次世界大戦後、戦車に搭載する戦車砲において、装甲が増強された戦車を撃破するために高威力の砲が求められた。従来のライフル砲では砲弾の回転に使用されるエネルギー損失と、施条(ライフリング)と砲弾の隙間からの発射ガス漏洩が問題になった。このため砲身内部の螺旋状の溝を廃止し、平滑にした滑腔砲が開発された。滑腔砲では砲弾の回転による弾道の安定性は期待できないため、弾に羽を付けて空力的に安定させる方式が利用される。近代における世界最初の滑腔砲はソ連T-62に搭載された55口径115mm滑腔砲 U-5であり、イギリスのロイヤルオードナンス製105mm ライフル砲 L7に対抗するために採用された。

戦車砲としての滑腔砲は、高初速が求められる APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)や、回転させると貫通力が低下する HEAT(対戦車榴弾)の発射に適する。滑腔砲の砲弾は、弾の後部に小型の安定翼を付けて弾道を安定させる必要があるため横風の影響を受けやすく、西側で最初の滑腔砲となったラインメタル社の 120mm 滑腔砲を搭載した戦車には、風向センサーを搭載した物が多かった。これは風向を計測して照準精度を向上させるための物だが、砲弾が飛翔する距離が長くなればなるほど風向や風速が一定せず、そのため現在では搭載しないことが多い。また、砲弾ひとつひとつに安定翼の加工誤差による弾道の差が生じるという問題もあるなど、命中精度に関してはライフル砲に劣る部分があると言われ、実際、陸上自衛隊の射撃競技会においても、天候によってはライフル砲を積む74式戦車が滑腔砲を積む90式戦車に勝利する場合がある。

ソビエト連邦のT-62戦車に採用されたU-5、同じくT-64戦車に採用されたD-68 115mm滑腔砲、T-64とT-72に採用された2A46 125mm滑腔砲など、戦車の滑腔砲搭載はソ連が先んじた。西側ではラインメタル社の44口径120mm滑腔砲 Rh120の採用が最初である。このように1960年代-1970年代以降に開発された戦車の大半は滑腔砲を装備しているが、イギリス軍チャレンジャー2戦車など一部の戦車はライフル砲を装備している。

脚注[編集]

  1. ^ 「腔」の字は本来「こう」であるが、「くう」も複数の漢和辞典に慣用読みとして認められている。また、医学分野においては「腔」の字を「くう」と読む。(「腹腔」→「ふくくう」、「口腔」→「こうくう」など)参考:[1]

関連項目[編集]