対空砲
対空砲(たいくうほう、英: Anti aircraft gun)は、航空機などの空中目標を撃破するための砲のこと。
空中目標に対する兵器としては、他に戦闘機、地対空ミサイル、ロケット弾などがある。
歴史[編集]
航空機が戦争に使用されるようになると、当然その対抗策として対空攻撃手段が必要とされた。初期の低速の複葉機の時代は、地上戦用の銃砲を空に向けて撃つことで撃墜を狙っていたが、飛躍的な航空機の進歩にともない、次第に対空砲として通常の砲と異なる発展を遂げた。
高空を飛行し水平爆撃する重爆撃機に対して必要とされたのは射高の向上と射撃速度の向上であり、これらに対しては大口径の高射砲が用いられた。低空を飛行する戦闘機や軽爆撃機、攻撃機などに対しては比較的小口径で連射可能な機関砲(対空機関砲)や機関銃が用いられた。なお、大日本帝国陸軍と陸上自衛隊ではこれを高射機関砲と呼称する。対空機関砲では時間あたりの発射弾数を増やし、なおかつ加熱を抑えるために多砲身化され、それが主流となった。
第二次世界大戦では、機甲部隊に随伴する自走式対空砲が出現。また、電子技術の発達により、VT信管など、より効果的に榴弾を炸裂させるような工夫や、レーダーで目標を発見・追尾し、命中率向上が図られた。
地上戦に流用される事も多く、ドイツの8.8 cm FlaK 18/36/37高射砲は対戦車戦闘や陣地攻撃にも威力を発揮した事から、後に対戦車砲タイプの8.8 cm PaK 43が開発され、エレファント重駆逐戦車やティーガーII戦車の主砲として搭載された。また、M2重機関銃4基搭載のアメリカのM16対空自走砲は、朝鮮戦争で中国人民志願軍の人海戦術に対し威力を発揮、「ミートチョッパー(挽肉製造器)」の異名で呼ばれた。[1][2]
2010年代、朝鮮民主主義人民共和国では、朝鮮労働党・人民軍幹部が粛清される際に、みせしめの意味を含めて対空砲を使う事例が報道されている[3]。
長所[編集]
地対空ミサイルが主力対空兵器となった21世紀初頭においても対空砲の使用は続いており、ミサイルと組み合わせてお互いの弱点を補う形で運用されている。
ミサイルと比べた長所としては、
などが挙げられる。近年では、セミアクティブ・レーダー誘導により砲弾自身が目標を追尾する対空砲システムも開発されており、対空ミサイルとの境界は砲から打ち出されるか否かという所まで進化してきている。
分類[編集]
艦載対空砲の一覧[編集]
口径(mm) | 砲身の数 | 兵器名 | 開発国 | 時代 |
---|---|---|---|---|
20 | エリコンFF 20 mm 機関砲 | ![]() |
第二次世界大戦 | |
25 | 九六式二十五粍高角機銃 | ![]() |
||
28 | 4 | 1.1"/75 砲 | ![]() |
|
37 | 2 | 3.7 cm SK C/30 | ![]() |
|
40 | QF 2 pdr Mk II, Mk VIII ヴィッカース 2-パウンダー ポンポン砲 |
![]() |
第一次世界大戦 第二次世界大戦 | |
ボフォース 40mm機関砲 | ![]() |
第二次世界大戦 - 冷戦 | ||
76.2 | QF 3インチ 20cwt高射砲 | ![]() |
第一次世界大戦 | |
76.2 | 3"/23 口径砲 | ![]() |
第一次世界大戦 - 1920年代 | |
Mk 33 3インチ砲 | 第二次世界大戦 - 冷戦 | |||
2 | 3"/70 Mark 26 砲 | 冷戦 | ||
102 | QF 4 inch Mk V 艦載砲 | ![]() |
第一次世界大戦 第二次世界大戦 | |
QF 4 inch Mk XVI 艦載砲 | 第二次世界大戦 - 冷戦 | |||
113 | QF 4.5 inch Mk I - V 艦載砲 | |||
120 | QF 4.7 inch Mk VIII 艦載砲 | 1920年代 - 第二次世界大戦 | ||
四五口径十年式十二糎高角砲 | ![]() |
第二次世界大戦 | ||
127 | Mk 10 5インチ砲 | ![]() |
1920年代 - 第二次世界大戦 | |
Mk 12 5インチ砲 | 第二次世界大戦 - 冷戦 | |||
133 | QF 5.25 インチ Mark I 艦載砲 | ![]() |
第二次世界大戦 |
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ 『歴史を動かした兵器・武器の凄い話』207頁
- ^ 『歴史を動かした兵器・武器の凄い話』208頁
- ^ 北朝鮮、人民武力部長を対空砲で処刑 金第1書記に口答え AFP(2015年5月13日)2017年3月26日