コンテンツにスキップ

BTR-80

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
BTR-80
ロシア国内軍第604特務部隊「ヴィチャーズ」を支援するBTR-80。2013年に開催された安全保障展示会での機動展示にて撮影。
基礎データ
全長 7.65m
全幅 2.90m
全高 2.46m
重量 13.6t
乗員数 3名
乗員配置 乗員3名、歩兵7名
装甲・武装
主武装 KPVT 14.5mm機関銃×1
副武装 PKT 7.62mm機関銃×1
機動力
速度 10km/h(水上)
整地速度 90km/h
不整地速度 60km/h
エンジン V-8KamAZ-7403
4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル
260hp/2,600rpm
懸架・駆動 8輪駆動
行動距離 600km
出力重量比 19.1hp/t
テンプレートを表示

BTR-80ロシア語БТР-80ベテエール・ヴォースェミヂェシャト)は、ソビエト連邦で開発された装甲兵員輸送車である。1984年に採用された。BTR-70の改良型にあたる。

開発

[編集]

ソビエト連邦軍では、装甲兵員輸送車として装輪装甲車であるBTR-60PBBTR-70を運用していた。しかし、1979年から始まったアフガニスタン侵攻では、出入り口が上面にしか無いため、乗降しようとした兵士がムジャーヒディーン狙撃される、BTR-70で追加された側面出入口が小さ過ぎて使いづらい、ガソリンエンジンは被弾するとたちまち発火・炎上し、しかも小型のエンジン2基という組み合わせでは荒地での運用が困難、といった欠点が次々と露呈し、BTR-60、70共々「燃える車輪付き棺桶」という不名誉なあだ名が流布する有様であった。

こうした欠点を改善すべく、アルザマス自動車工場では1984年から新型装甲兵員輸送車の開発を開始した。

構造

[編集]

BTR-70がBTR-60PBからの小改造にすぎなかったのに対し、BTR-80では多岐にわたっている。

主機は、BTR-70までは120馬力のガソリンエンジンを2基搭載していたのに対して、BTR-80では260馬力のディーゼルエンジン1基にまとめられた。ディーゼルエンジンは被弾した際に発火しにくく、また燃費も良いことから、出力の向上と信頼性の確保がはかられている。

BTR-70で小型で逆三角形の実用性に欠けていた側面ハッチは、上部にもハッチを追加して大型化している。そのため上半分が前方向、下半分が真下に開くやや複雑な二分割構造になっている。兵員室は天井がやや高くなり、容積が増加している。完全武装の兵員8名が乗車でき、座席として、銃塔の前の左右側面(計2名)と、銃塔の後ろ中央に背中合わせのベンチ(計6名)が用意されている。BTR-60以来のガンポートは形状が変化しており、いずれも斜め前方向を向いている。

砲塔も、BTR-60PB以来となるKPVT 14.5mm重機関銃PKT 7.62mm機関銃を各1丁装備したものが搭載されるが、アフガン侵攻時に高所から攻撃を受けた戦訓から、機関銃の最大仰角をBTR-70よりも拡大している。また、発煙弾発射機も装備している。

一方で、主機は相変わらず後部に搭載されているため、兵員は車体側面のドアや上部ハッチを用いて乗降しなくてはならない。

運用

[編集]

BTR-80は1987年からソ連陸軍自動車化狙撃師団に配備され始め、現在もロシア連邦陸軍自動車化狙撃師団の主力兵員輸送車になっている。輸出も積極的に行なわれており、旧ソ連諸国を中心に22ヶ国以上に輸出されており、5,000両以上が配備されているとみられる。

運用国

[編集]

派生型

[編集]

旧ソ連・ロシア

[編集]
BTR-80K
指揮型。
BTR-80A
1995年頃から生産が始まった歩兵戦闘車型。砲塔を大型化し、2A72 30mm機関砲ロシア語版を外装式に搭載。ハンガリー陸軍朝鮮人民軍陸軍に少数採用された。
BTR-80S
ロシア国内軍向け仕様。BTR-80Aの2A72 30mm機関砲をKPVT 14.5mm重機関銃に再換装。
BTR-82
2009年に登場した最新型。対地雷性能の向上、新型暗視装置GLONASS端末の搭載、300馬力のエンジンへの換装などの改造が行われており、以前のタイプよりも大幅に性能が向上している。武装は14.5mm重機関銃と7.62mm機関銃
BTR-82A
BTR-82A
30mm機関砲を装備したBBPU砲塔を搭載したタイプ。
BTR-82AT
増加装甲板とスラットアーマーを取り付け、夜間交戦能力を向上させたタイプ[6]
BTR-BM
BTR-82ATにDUBM無人砲塔システムを搭載したタイプ[6]
BTR-BM
BRDM-3
偵察戦闘車型。
BPDM「タイフーンM」
戦略ロケットの護衛用
BREM-K
装甲回収車型。
2S23「ノーナSVK」自走迫撃砲ロシア語版
2S23「ノーナSVK」
2S9の2A60 120mm直射・迫撃両用砲塔を搭載した自走迫撃砲
RHM-6
化学偵察車
GAZ59032
民間向けの装甲車。天井をさらに高くして、10名が乗車することが可能。
GAZ59037
極地・寒冷地調査用の民間向け車両。暖房設備・物資輸送フォームを搭載。

ウクライナ

[編集]
BTR-80UMロシア語版
ウクライナで開発された発展型。
BTR-80UPロシア語版
ウクライナで開発された発展型。
BTR-94
ウクライナで開発された発展型。
BTR-3U
BTR-94の発展型。

ルーマニア

[編集]
B33ツィンブルルーマニア語版
B33ツィンブル(国家の日のパレードに参加した車輌)
ルーマニアのライセンス生産型。
ツィンブル 2000
ツィンブル 2000
B33の発展型。エンジンをドイツ AG社製のBF6M1013FCに、トランスミッションをアリソン製のものに換装。また砲塔もMLI-84M1と同じOWS-25Rを搭載した。試作車のみ。

北朝鮮

[編集]
2013年の軍事パレードに参加したM2010
M2010
北朝鮮がBTR-80Aを参考に開発した装輪装甲車。エンジンとしてPT-76Bと同じV-6Bディーゼルエンジンを搭載し、銃眼もBTR-60やVTT-323と同型の物にするなど北朝鮮が運用している様々な装甲車両の特徴を引き継いでいる[7]

登場作品

[編集]

ゲーム

[編集]
Project Reality(BF2)
中東連合軍(MEC)・ロシア連邦軍装甲兵員輸送車(APC)としてBTR-80、BTR-80Aが登場する。
BRE-80の装備はTNP-B・TKN-3のカメラ2種、クラクション、歩兵用の給弾箱、KPVT 14.5mm重機関銃PKT 7.62mm同軸機銃、902B スモークランチャー。
BTR-80AはKPVT 14.5mm重機関銃の代わりに2A72 30mm機関砲ロシア語版PKT 7.62mm同軸機銃を装備。
コール オブ デューティシリーズ
CoD:MW2
ロシア軍装甲車として登場する。破壊するにはUAVからの対戦車ミサイルのほか、ロケットランチャーが必要となる。
CoD:MW3
ロシア軍・ロシア超国家主義派の装甲車として登場。
CoD:G
連邦軍の車両として登場。
メタルギアソリッドV
「ZHUK BR-3」という名称で登場。
WarThunder
大型アップデート「ラ・ロワイヤル(LA ROYALE)」にてBTR-80Aがソ連のランク4の軽戦車として登場。

脚注

[編集]
  1. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 179. ISBN 978-1-032-50895-5 
  2. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 181. ISBN 978-1-032-50895-5 
  3. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 182. ISBN 978-1-032-50895-5 
  4. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 198. ISBN 978-1-032-50895-5 
  5. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 205. ISBN 978-1-032-50895-5 
  6. ^ a b 荒木雅也、Vitaly V. Kuzmin 「ARMY 2021 ACT.2 STATIC DISPLAY」『月刊パンツァー』 2022年2月号 アルゴノート社 P32
  7. ^ ステイン・ミッツアー、ヨースト・オリマンス 2021.

参考文献

[編集]