安居
安居(あんご)は、それまで個々に活動していた僧侶たちが、一定期間、1か所に集まって集団で修行すること[1]。および、その期間のことを指す。
また、法臘(ほうろう)は夏安居に参加するごとに一つ増えるとされた。
仏教界での用例
安居とは、雨期を意味する梵語(サンスクリット)の vārsika (または varsa 〈ヴァルシャ〉)、パーリ語での vassa (ヴァッサ)を漢語に訳したものである[1]。
本来の目的は、雨期には草木が生え繁り、昆虫、蛇などの数多くの小動物が活動するため、遊行(外での修行)をやめて1か所に定住することにより、小動物に対する無用な殺生を防ぐことである[1]。後に、雨期のある夏に行うことから、夏安居(げあんご)、雨安居(うあんご)とも呼ばれるようになった。
釈尊在世中より始められたとされ、その後、仏教の伝来とともに中国や日本に伝わり[1]、夏だけでなく冬も行うようになった(冬安居)。安居の回数が僧侶の仏教界での経験を指すようになると、その後の昇進の基準になるなど、非常に重要視された。
現在でも禅宗では、修行僧が安居を行い、安居に入る結制から、安居が明ける解夏(げげ)までの間は寺域から一歩も外へは出ずに修行に明け暮れる。
タイ仏教
タイ仏教では、パンサー(タイ語: พรรษา)と呼び、安居に入ることをカオパンサー(ワン・カオパンサー、タイ語: เข้าพรรษา、入安居)といい、毎年旧暦6月の満月の日をその日に当て、また、安居を終えることをオークパンサー(ワン・オークパンサー[2]、タイ語: ออกพรรษา、出安居・明安居)として[3]、旧暦9月の満月の日をこの日に当てている。
社会での用例
日本書紀の成務天皇の項で、「百姓安居」という言葉が見られるが、これを指したものであるかどうかは定かではない。また、683年の天武天皇の項から、宮中で安居が行われたとの記録が複数見られる[4]。
脚注
関連項目
- 安居院(飛鳥寺)