黄色いベスト運動

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黄色いベスト運動
Mouvement des Gilets jaunes
ManifGiletsJaunesVesoul 17nov2018 (cropped).jpg
東フランス・ヴズールでのデモ
日時 2018年11月17日 - 継続中
場所 フランスの旗 フランスレユニオン含む)
原因
目的
  • 燃料税と自動車税の引き下げ[7]
  • 生活水準の改善
  • マクロン政権の退陣
  • 緊縮財政政策の中止
  • 政治の透明化と国民に対する説明責任
  • 手段 抗議市民的不服従バリケード、交通遮断、暴動[8][9], ヴァンダリズム[10]放火[11][12]、略奪[13]
    現況 継続中(暴動は鎮圧傾向、デモは継続中)
    人数
    ピーク時で287,710人(フランス内務省による)[14]
    死傷者数
    死者 一般市民10人(フランス)(2018年12月22日現在)
    負傷者

    1843人以上の市民

    1048人以上の警察官
    運動のシンボルとなった黄色いベスト。

    黄色いベスト運動 (きいろいベストうんどう、フランス語: Mouvement des Gilets jaunes) は、フランス2018年11月17日から発生している政府への抗議活動を指す。黄色いジャケット運動ともよばれる。2018年5月にオンラインで開始され、2018年11月17日にフランスではじまった​。第二次大戦以後におきたフランスのデモの中でもっとも長い期間に渡るものとなっており、毎週土曜日に行なわれている[15]。2008年以降、フランスでは運転者は高い視覚認識性を持つ「蛍光色」のベストを車内に常備することが法律で要求されるようになった(安全対策として運転者が路肩で車両を離れる場合、それを着用する必要がある)。その結果、黄色い反射チョッキは広く利用され、安価で入手可能となったため、運動のシンボルとして選ばれた[16]

    2018年12月はじめ、シンボルはヨーロッパからイラクに至る諸国においてより共通のものとなった。異なる国の、異なるグループが彼らの主張に注意を引かせるため、このヴィジュアリックで目を惹くベストを着用した。

    抗議者(農村部や都市部周辺の人々)は「燃料価格の上昇」、「生活費の高騰」、「政府の税制改革の負担が労働者や中産階級に及んでいること」を主張している[17][18][19]。彼らは「燃料税の削減」、「富に対する連帯税(solidarity tax)の再導入」、「最低賃金の引き上げ」、そして「マクロン大統領の辞任」を要求している。

    目次

    背景[編集]

    ディーゼル[編集]

    1950年代から、フランス政府はディーゼルエンジンの生産に補助金を出してきた。特に1980年以来、プジョーはディーゼル技術の最前線にいる。大量購入する法人に対する付加価値税(VAT)の引き下げは、フランスにおけるディーゼル車を普及を加速させた[20]

    燃料価格[編集]

    原油価格は、2018年1月のリットルあたり1.4682ユーロから11月の最後の週には1.4305ユーロへと減少した[21]ガソリンとディーゼル(軽油)の価格は、2017年10月から2018年10月の間にそれぞれ15%と23%上昇した[22]。卸売業者向けガソリンの世界市場購入価格は前年度比で28%上昇した。ディーゼルの場合は35%増加し、流通費は40%増加した。 付加価値税(VAT)を含め、ディーゼル税は1年間で14%、ガソリン税は7.5%増加した。増税は2018年度にディーゼルで7.6セント、2018年にはガソリンで3.9セント、さらに2019年1月1日にディーゼルで6.5セント、ガソリンで2.9セントの増加が予定されている[23][24]

    燃料の売却時に徴収される税金は以下の通りである。

    フランスにおけるエネルギー製品消費税(TICPE[25])は石油価格に基づくのではなく、むしろ固定価格(fixed rate)の量から算出される。この税金の一部は、地方政府に送られ、また他の一部は中央政府に送られる。 2014年以降、この税には毎年増加する炭素への取り組み、化石燃料の消費削減が含まれている。ディーゼル燃料用TICPEは、2017年と2018年に急激に上げられ、ガソリンに対する税金と同じ水準まで引き上げられた。一方で、付加価値税(VAT)は税を除く価格とTICPEの合計で計算される。 2000年から2014年の間に19.6%に達した後、2014年以降20%で安定している。

    黄色いベスト運動抗議者の多くの職業及び活動はTICPEの一部または全面的な免除の要求しており、主に個人に関係している[26]

    抗議者は第二次エドゥアール・フィリップ内閣を炭素税(carbon tax)の大部分を個人に負担させていると批判している。炭素税はエコロジー的な目標を達成するため増加しており、市街地外(車が不可欠な場所)に家庭用化石燃料を使用した暖房を持つおおくの住民にとっては大きな負担となっている。マクロン大統領は、2018年11月初旬にこれらの懸念を払拭しようと試み、特別補助金とインセンティブを提供した[27]

    今回問題となっているディーゼル(軽油)。

    フランスのディーゼル燃料価格は2018年に16%上昇し、同時にガソリン、ディーゼルの両方の税が増加した。2019年にはさらなる増税が計画されており、ディーゼル燃料はガソリン並みに高価なものとなっている。 マクロン大統領は、オランド政権下で施行された政策の延長から抗議者の怒りに曝されることとなった[28]

    経済改革[編集]

    抗議者は燃料税(fuel tax)は大企業のための減税の資金調達を意図していると主張しているが、一部の批評家は、代わりに支出を削減すべきだと主張している[29]。 マクロン大統領は経済改革プログラムの目標は世界経済におけるフランスの競争力を高めることであり、燃料税は化石燃料の使用を阻止(décourager)することを意図していると語った。

    黄色いベスト運動の抗議者のおおくは、主に低給与と高エネルギー価格による経済的困難によって動機づけられている[30]。 彼らは気候変動とは闘いたいが、多国籍企業が引き起こした環境問題に対する労働者階級と貧困層の負担に対しては反対している[31][32]

    黄色ベスト運動の参加者の動画。(フランス語)

    起源と組織[編集]

    2018年5月、セーヌ=エ=マルヌ県の女性がchange.org(外部リンクのウェブサイトで10月中旬を期限に30万件の署名を申請した。さらに11月17日、同じ県の2人の男性がFacebook上で「すべての道路をブロックする」イベントを企画した。彼らは燃料価格の値上がりが過度だとして抗議を始めた。このグループが撮影した拡散動画の1つに、「黄色いベスト」を使用するというアイデアがあった[33]

    フランスの学者ベアトリス・ギブリン(英語版は、黄色いベスト運動と2013年の抗議運動「ボネ・ルージュ(英語版)」を比較して、ボネルージュ運動は「カレ=プルゲール 市長やブルターニュのボスなど、実際の指導者たちが手を取りあっていた」と述べたが、これは黄色いベスト運動には当てはまらない。黄色いベスト運動は「リーダーレス」で横向きに編成されている。非公式の指導者があらわれ、すぐに拒絶される。ジョン・リッチフィールドによれば、運動の中には政治家に対する憎しみを抱く者もおり、彼らは自分の階級からあらわれた政治家にさえも憎しみを抱く[34]。また黄色いベスト運動は、特定の政党や労働組合と関係しておらず、ソーシャルメディア上で急速に拡散した[35]

    フランス労働組合の歴史専門家であるステファン・シロット(フランス語版)は、黄色いベスト運動には伝統的な労働組合が代表していない労働者(ビジネスオーナーや自営業者)が含まれており、フランスの労働組合は共同歩調を取ることを躊躇し、彼らとは交渉したくない人たちも存在していると述べる。運動の中の極右の要素の存在はCGTの参加を思いとどまらせた[36]

    運動に関して多くの誤解を与えかねないイメージや情報がソーシャルメディアで閲覧されており、 パスカル・フロサァは、リーダーシップのない水平方向の動きは、誰もソーシャルメディアでの制限を加えないため、誤まったイメージやフェイクニュースを拡散させていると指摘する[37]

    他の運動との比較[編集]

    プラカードを掲げた運動の参加者のひとり。
    火を放たれたのちの車の残骸。

    アメリカの著述家アダム・ゴピック(英語版)は黄色いベスト運動は、少なくとも1995年のストライキからの一連の「フランスの街頭抗議シリーズ」の一部として見ることができると書く。彼は、歴史家のヘーリック・チャップマン(英語版)を引用し、フランスの第5共和政創設時、街頭抗議がこそ唯一の「政府政策のダイナミックな代替」とされ、それが今に引き続いているとする[38]

    1968年の5月危機フランス革命、オーヴァニズムなどと比較する記事もある[39]

    パリに拠点を置くベテラン・ジャーナリストのジョン・リッチフィールド氏は、1968年の五月危機の時、パリの通りにはそのような暴力はなく、そこには喜びがあったと述べた。喜びの部分は黄色いベスト運動には不在のように見える。 リッチフィールド氏はまた指導者がいないという点で2005年のパリ郊外暴動事件と類似していると指摘した[40][41]

    タイムライン[編集]

    2018年11月17日第一週―「アクトⅠ」[編集]

    2018年11月17日に抗議は始まり、フランス全土でおよそ30万人もの人が参加し、抗議者がバリケードを建設し道路を閉鎖した[42]。その光景を目撃したジャーナリストのジョン・リッチフィールドによれば、これらのデモは抗議ではなく、「暴動(insurrection)」であった[43]とする。

    道路にくわえて、抗議者は最大十か所もの燃料貯蔵所を閉鎖した[44]。その結果、11月21日までに585人の市民が負傷し16人が重傷、115人の警察官が負傷、3人が重傷を負った[45]

    抗議はまたインド洋に浮かぶレユニオン島(フランスの海外県)でも発生し、状況は略奪暴動にまで悪化した。抗議者が道路へのアクセスを遮断し、島にある学校は3日間閉鎖された。 11月21日、マクロン大統領は暴力の緩和処置として島に軍隊を配備するよう命じた[46]

    2018年11月24日第二週―「アクトⅡ」[編集]

    前の週にパリでの抗議運動で緊張が高まったため、内務省は11月24日にシャン・ド・マルス公園での集会を許可することに合意した[47]。抗議行動はフランス全土で106,000人を集めた。パリでは抗議が激しさを増した。抗議者は街頭で火を焚き、標識を破壊し、バリケードを建て、石畳を引きはがした。警察は、催涙ガスと高圧放水砲を使って、抗議者を分散させた。 11月26日、当局者は2日間に渡るパリ暴動で最大150万ユーロの損害を被ったと推定した。清掃と修理作業を支援するため200人の追加労働者が割り当てられた[48]

    2018年12月1日第三週―「アクトⅢ」[編集]

    12月1日の「ACT Ⅲ」にともなった暴動後のパリの落書き。

    12月1日、「ActⅢ-Macron Quits(マクロン終了)」と呼ばれる抗議が組織された[49]

    黄色いベストたちはナントアトランティック空港の滑走路を占領し、ニース・コートダジュール空港へのアクセスを阻止した。 道路会社ヴァンシVinci Autoroutes)の報告ではフランス全土の主要な料金所の20ヶ所がブロックされた[50][51]

    マルセイユでは、11月5日以来頻繁に抗議デモが行われ、周辺住民の避難が行われている[52]。シャッターを閉めようとしていた80歳のアルジェリア人女性が警察の放った催涙ガス弾の破片に被弾し、手術中に亡くなった[53]アルル郡で走行中のバンがバイパスのトラックのバリケードに衝突し、運転手が3週目の週末に亡くなった[54]

    12月1日の抗議中にパリで100台以上の車が燃やされ、凱旋門が破壊された[55]。次の月曜日、パリ市長は損害を300万から400万ユーロと推定した[56]

    2018年12月8日第四週―「アクトⅣ」[編集]

    抗議活動はル・ピュイ=アン=ヴレイの2週連続で激しくなった。市民の不安はリヨンサン=テティエンヌの両方で催されていた「光の祭典(Fête des lumières)」を陰らせた[57]。 A6高速道路は再び北リヨンヴィルフランシュ=シュル=ソーヌで閉鎖された[58]

    パリは4週間連続で抗議活動が起きた。ルーヴル美術館エッフェル塔パリオペラ座も閉鎖され、多くの店が襲撃を予想して、店に板を打ち付けた[59]。警察はエリゼ宮殿の周りに鉄柵を立て、暴力を抑制するために路上に装甲車を配備した[60]

    2018年12月10日「マクロンのTVスピーチ」[編集]

    12月10日、マクロンは抗議に応えるためにテレビで演説し、2019年の最低賃金の100ユーロ/月の増加、2019年の残業時間、年末ボーナスからの課税の除外を約束した。また、毎月の年金額が2千ユーロ(約26万円)未満の退職者には、社会保障税(CSG)の増税から除外するとした。しかし就任時に廃止した富裕税を復活させることは拒んだ[61][62][63]

    2018年12月11日「ストラスブール銃乱射事件」[編集]

    12月11日の夜、ストラスブールで銃乱射事件が発生した。

    クリスマスマーケットで賑わう街の市民を男が銃撃、5人が死亡、11人が負傷し、男はタクシーで逃亡した。この襲撃者は過去に複数の犯罪歴を持つイスラム過激派の疑いのあるシェリフ・シェカット容疑者であった。シェカット容疑者は総勢700人による追跡の後、12月13日の夜フランス警察との銃撃戦によって射殺された[64]

    2018年12月15日第五週―「アクトⅤ」[編集]

    ストラスブール銃乱射事件の後、政府は抗議者に街路から離れるように要請した。

    パリ警視庁の推定によるとパリではおよそ2,200人のデモ参加者と8000人の警察官が街路に出た[65]。 フランス内務省は12月15日、フランス全土でおよそ6万6000人が抗議デモに参加したと推定した。 ボルドートゥールーズマルセイユリヨンパリで衝突が起きた。

    15日の終わり、内務大臣クリストフ・カスタネールは11月17日以来の占拠されていた円形交差点は解放されるだろうと述べた。またリチャード・フェラン国会議長はデモ隊の減少による動員の削減を歓迎し、「対話の時は来た」と語った[66]

    2018年12月22日第六週―「アクトⅥ」[編集]

    規模こそ小さくなったものの、デモは全国各地で続いた。 内務省は15日のほぼ半分の参加人数を発表した。警察庁の発表によると、フランス全土で38,600人がデモに参加し、そのうち2,000人はパリで行進した[67][68]。予防措置として、 ヴェルサイユ宮殿が閉鎖された[69]

    抗議者はラ・クリューズ=エ=ミジューでスイスへの国境通過を阻止した[70]。 1時間後、彼らは警察によって解散させられた。 スペイン、イタリア、ドイツ、ベルギーの国境でも同様のブロックが行われた[71]。モンテマールでは、イージーディスとアマゾンの2つの配信プラットフォームがブロックされた[72]

    全体では、パリでの142人を含む少なくとも220人が逮捕された。 12月21日、運転手がフランス南部ペルピニャンの封鎖で停止していたトラックに衝突し、運動を通じて10人目の死亡者が出た[73]

    2018年12月29日第七週―「アクトⅦ」[編集]

    クリスマスシーズンもあってか最初の数週間のフランス全土での運動規模に比べると、はるかに静かなものとなった。ノルマンディー地方ルーアンではフランス銀行支店の前に火が放たれた後、バリケードが築かれ、警察との間で対立が起きた[74]

    パリでは、抗議者たちがBFM-TV、Libération、FranceTélévisionsなどのテレビメディア本社の前でデモを行なった。ビクター・グラッドは、国民の主導による国民投票を動機付けることと同様の危機が、伝統的なメディアに対する黄色いベストたちの批判の背後にあることを指摘した[75]

    2019年1月5日第八週―「アクトⅧ」[編集]

    2019年1月5日、装備したフランス共和国保安機動隊(CRS)
    隊列を組んで、デモ隊を待つフランス共和国保安機動隊(CRS)。
    催涙弾に顔を覆う参加者たち。
    「ACT-Ⅷ」のデモに参加する黄色いベスト着用者。胸には「Révolte(革命)」のシールが貼られている。

    2019年の最初のデモは、パリ左岸、グルネル通り沿いの政府省庁ビルへの襲撃によって開始された。 政府スポークスマン、ベンジャミン・グリヴォー(フランス語版)は、黄色いベストの抗議者たちと破壊集団「カセウルス(フランス語版)」が建物のドアを壊し、建設車両をハイジャックしたと発表した。 レンヌの市庁舎の建物の扉も破壊された。

    フランス全土で、先週29日を大きく上回る約50,000人もの抗議者がデモに参加したと内務省は発表した。フランス国内での暴力事件の発生にもかかわらず、依然として国民のデモに対する高い支持がある[76]

    円形交差点にてコミュニケーションを図るという女性たちの運動が始まった[77]。 彼女たちはパリトゥールーズカーンで別のデモを組織した。 主催者の一人によると、その目標は「暴力以外のコミュニケーション手段」を持つことだと言う[78]

    内務大臣は、国内道路に備えられた自動レーダー[79]とスピード監視用カメラ[80]の60%以上が破壊されたと発表した[81]。 これは12月上旬の推定50%から上昇した。

    2019年1月12日第九週―「アクトⅨ」[編集]

    パリ北部のパン屋でガス漏れによって引き起こされた「大規模爆発」により、現場にいた2人の消防士を含む4人が死亡し、さらに十数名が負傷した[82]

    爆発は土曜日の早い時間に起こり、その日のデモの警戒を強めている最中での事故となった[83]

    パリで約8,000人、ブールジュで約5,000人、ストラスブールでの約2,000人を含むフランス全土でおよそ84,000人もの参加者が、のべ9週間続く週末の抗議運動に参加した[84]。抗議者は「経済政策の改善」を要求した[85]。政府は全国に8万人の治安部隊を派遣し、暴力に対する「寛容なし(zero tolerance)」を誓った。パリの路上で、フランスの国歌を歌いながら、行進する抗議者たちに5000人の機動隊員、装甲車両およびバリケードが設置された。少数グループが指定された抗議ルートを離れ、警察に投石をした。凱旋門の周りで機動隊は石やペンキによる襲撃を受け、高水圧砲と催涙ガスで対応した。この12日、パリでの156人をはじめとし、フランス全土で244人が逮捕された。

    フランスの内務大臣はメディアに、「政府は対立を乗り越え勝利」し、抗議者たちは「大きな事件なく」パリを行進したと語った[86]

    2019年1月19日第十週―「アクトⅩ」[編集]

    先週とほぼ同様に、警察はトゥールーズのピーク時に1万人、パリで7,000人(左岸で初めてデモが行われた)、ボルドーで4,000人、アンジェマルセイユの2500人を含むおよそ84,000人がフランス全土でデモを行なったと推定した。19日の抗議行動は、エマニュエル・マクロン大統領による「大国民討論会」の発足後に初めて起きたものであり、その鎮静効果は限定的であったことを示唆するものとなった[87]

    2019年1月26日第十一週―「アクトⅪ」[編集]

    全国的なデモが11週連続で続けられ、内務省はフランス全土で69,000人の参加者、地元の警察はパリで4,000人を見積もった。自称平和主義者で抗議運動のリーダーのひとりジェローム・ロドリゲーズはバスティーユ広場で警察から暴動鎮圧用ゴム弾「LBD (フランス語版)」を顔面に撃たれ右目を失った。同様に抗議行動中、何十名もの人々が負傷した[88]。 「私は意図的に標的にされました。少なくともパリの抗議行動において私は運動の象徴であり、警察は以前のデモのあいだ何度も指をむけていたので、彼らは誰を撃っていたのかがよくわかっていたと思います」とロドリゲスはメディアに語った。翌日、黄色いベスト運動に対して「赤いスカーフ」を巻いた約一万人もの反対派が暴力行為をやめるように促すプラカードを掲げパリ​​を行進した[89][90]

    2019年2月2日第十ニ週―「アクトⅫ」[編集]

    デモ前日の2月1日、エドゥアール・フィリップ首相は南西部の都市ボルドーへと向かい、各週毎に渡るデモによって生じた保険の損害賠償請求を単一のものとして請求できることを合意したと業者に知らせた。フィリップ首相はまた、ボルドーも含む被害を受けた10都市に30万ユーロの手当を支給すると発表した。東部都市ヴァランスのショッピングエリアでは自衛用に板が打ちつけられ、ゴミ箱、公園のベンチ、保護柵など障害物になるもの取り除かれた。舗装石は投石を防ぐため、タールが塗られた[91]

    2月2日、およそ1万人もの人々がパリのデモに参加しし、トゥールヴァランスマルセイユボルドートゥールーズ、および他のフランスの都市で計58,600人もの人々が抗議に参加した[92][93][94]

    「アクトXII」では、先週のロドリゲスの負傷を受けて、これまでのデモでの警察の鎮圧による負傷者数を非難することに焦点が当てられた[95]。フランス政府によれば、これまでに4人の眼の重傷を含む約2,000人の一般市民が抗議行動中に負傷している。警察暴力を調査する政府機関は、抗議行動中に116件もの調査を開始したが、そのうち10件は抗議者の眼の負傷に関するものだった。 59人の弁護士のグループが、抗議者の処遇を裁判所で非難する公開書簡を発表した。これは警察自身の暴力報告に対する遅いペースの調査とは対照的だった[96]

    週初め、フランスの最高裁判所は、多くの負傷者を出していると非難が高まっている警察による直径40ミリメートルのゴム弾、「LBD(フランス語版)」の使用禁止の要求を却下した[97]。内務大臣クリストフ・カスタネールは、メディアとのインタビューに答え、この武器は黄色いベストデモが始まって以来9,000回以上使用されており、怪我をする可能性があることを認めた[98]

    それでも「アクトXII」の前日、政府は警察がデモ隊による暴力鎮圧のためにランチャーを使用することを躊躇しないと警告した。これを受けてパリでは数千人が武器の使用禁止を求める「負傷者の行進」に参加した。負傷した抗議者が行進し、そのうち何名かは銃撃の目標となるようにターゲットサインを付けたアイパッチを着用していた。先週のデモで片目を失った運動のリーダー、ジェローム・ロドリゲーズは、群衆から拍手を浴び、歓迎された[99][100]

    先週と同様、パリでの5,000人を含む80,000人の警備職員が動員された。パリでは、警察は市内中心部のレピュブリック広場で催涙ガスと高圧放水砲を使用しデモ隊と衝突し、デモ隊を押し戻した。マスクをしフードをかぶった何名かがゴミ箱とスクーターに火を放った。メディアは「運動は先週末とくらべると、比較的落ち着いたものとなった」と報じた[101][102]

    フランス議会は、マクロンの党が提案する抗議者の権利を制限する新しい法律の検討にはいった。提案された法案では、路上デモでの顔の覆い隠し(ヘルメット、仮面、スカーフを問わず)を違法とし、15,000ユーロの罰金または懲役刑により処罰される。さらに地元警察が街頭デモに参加を許されない者のブラックリスト作成を許可する。提案された法律は何人かの党内外の国会議員から反対を受けた[103]

    2019年2月9日第十三週―「アクトⅩⅢ」[編集]

    2月9日のデモで道路に放たれた炎。
    2月9日のデモ参加者。

    2月7日、マクロン大統領はアンチエスタブリッシュ(五つ星運動)で知られるイタリアの副首相ルイジ・ディマイオが黄色いベスト運動のリーダーと面談したことを受けて、在イタリア大使の召還を発表した。これにより両国の関係は第二次大戦以後最悪なものとなった。ディマイオは「新しいヨーロッパは黄色いベストから生まれる」と述べ、フランス政府はこれは「挑発」であり、受け入れることは出来ないとした[104][105]

    13週目の抗議活動ではシャンゼリゼ通りから市内の国会議事堂までのデモ行進がおこなわれた。一部の暴徒が防御壁を取り壊し、警察に投げつけた。警察は催涙ガスとゴム入り手榴弾でこれに対応した。抗議者のひとりが催涙弾だと思いゴム入り手榴弾を拾い、暴発した弾に指を飛ばされた。

    フランス政府の発表によると、およそ51,400人が抗議に参加、そのうち4,000人がパリで抗議した。先週に比べると参加者はやや減少した。

    マクロン大統領と親しい国会議長リチャード・フェランの自宅への放火攻撃が起き、政治家たちは共同で非難した。フェランは放火によって焦げ付いた居間の写真をTwitter上にアップし、「選ばれた共和国の議員に対する脅迫や暴力を正当化するものはなにもない」とツイートした[106]

    2019年2月16日第十四週―「アクトⅩⅣ」[編集]

    2月16日のデモで批判と攻撃の矢面に立たされたユダヤ人思想家アラン・フィンケルクロート氏。

    マクロン大統領はツイッタ―上で運動の反ユダヤ主義的ヘイト・スピーチを非難する声明をだした(後述の「反ユダヤ主義の再燃」参照)。ユダヤ人思想家アラン・フィンケルクロートが攻撃の対象となり、抗議者は「汚いユダヤ主義」「汚い人種」などと罵った。これに対してフィンケルクロートは「わたしは強い憤りを感じた。そして残念ながらこれは最初のことではない」と述べた。フィンケルクロートは黄色いベストを支持する姿勢を打ち出していたものの、ル・フィガロ紙のインタビューで運動のリーダーを「傲慢」だとして非難し反発を招いた[107]

    最近の調査では半数以上のフランス人が運動の「終息」を望んでおり、現在の抗議は運動初期の要求を反映していないと感じていることが明らかとなった[108]

    フランスの内務省は「アクトⅩⅣ」にフランス全土で、およそ41,500人(パリ約5,000人)が参加したと発表した[109]

    運動はロンドンにも飛び火して、反緊縮主義と親ブレクジットの抗議者ら、およそ100名がイギリスのユニオンジャックの旗を掲げ、イギリスのEUからの離脱を求めて街を行進した。先週も似たような運動がおこり、議事堂周辺の道路を封鎖していたが、今週も引き続いた。のちに運動を主宰したジェームス・ゴダードは警察により拘束された[110]。さらに警官と臨時職員を襲撃したとして6人が告訴された[111]

    2019年2月23日第十五週―「アクトⅩⅤ」[編集]

    12月の激しい抗議の最中に急激に低下していたマクロン大統領の支持率は、フランス各地での一連の対話と討論(全国討論大会)、とりわけ農村地帯で有権者との交流などから回復基調に変わった。23日土曜日、うら若き大統領はパリで毎年催されている恒例の農場ショーに参加し、大歓迎を受けた。それから大統領は人と動物たちのあいだを何時間も散歩しながら、応じられるままにスマホでセルフィー写真をとり、農場主らと気軽におしゃべりをした[112]

    内務省によると、首都パリでの5,800人を含む約46,600人が全国で抗議運動に参加した。先週の41,500人からやや増加した。警察の発表では28人がパリで逮捕された。抗議者たちは首都パリの裕福な地域を、警察に周囲を取り囲まれながら行進した。フランス中央の都市クレルモン=フェランではおよそ18人の人々が逮捕され、危険と見なされた物品が押収された。さらに西部レンヌでは18人が逮捕され、6人の警官が軽傷を負い、6人の抗議者が警察が発砲した暴動鎮圧用ゴム弾(LBD)により負傷した[113]

    欧州連合当局は反政府デモの取り扱いに対して、フランス当局を非難し、より「人権を尊重するように求めた」と言う。とりわけ焦眉となっているのはフランスのみが使用しているとされる暴動鎮圧弾であり、出来るだけ早急の見直しが望ましいとした。また抗議者の拘留についても懸念を表明している[114]

    イエローベスト運動は来たる3月16日を「決定的なデモ」にすると宣言したという報道が流された[115]

    2019年3月2日第十六週―「アクトⅩⅥ」[編集]

    プロテクションを装着した鎮圧部隊。

    戦後フランスのデモのなかでもっとも長い期間に及ぶこととなった「黄色いベスト運動」は3月にはいり、第16週目へと突入した。

    「Yellow Vests Acte 16:Insurrection(暴動)」と名付けられた今週、フェイスブックを通じて運動者に呼びかけられたのは、デモが継続してゆくなかで薄れがちとなった「原点回帰」であり、11月、12月の「自発的」な勢いを取りもどそうと試みた。マルセイユニースボルドーストラスブールナントトゥールーズなどのフランスの都市のみならずベルギードイツなどの近隣諸国でも、市内に集まるようにイエローベストたちに呼びかけた。 「戦いは国際的だ」とイベントページ上で声明を出した[116]

    内務省によれば、2日土曜日、およそ39,300人のイエローベストたちがフランス全土でデモを行い、そのうち首都ではおよそ4,000人を数えた。先週の46,600人を下回るものとなったが、内務省の公式の数字は、運動者の抗議により論争が起きた[117]。また、首都ではフェイスブック上で「Act 16: Yellow Vests united: We will not give up(イエローベストの団結、わたしたちは諦めない)」と名付けられた運動がおよそ2,000人もの人々の注目を集めたという[118]

    南東部の都市リヨンのオーガナイザーは「黒の行進」を計画した。 それは、「反―啓蒙主義者」となることが運命づけられている仮想の未来に対して警告するため、「喪の象徴」として黒い服を着て行進をし、2月16日に問題となったような「軽蔑」を目的とする運動者とは一緒に行動をしないというものだった[119]

    3月1日金曜日、マクロン大統領は運動による「容認しがたい」暴力を非難し、「平静に戻る」ことを求めた。しかしながら、最新の世論調査によると、フランス人の85%が大統領は人々の懸念にもっと注意を向けるべきだと考えていることを明らかにした。また、調査はフランス人の大多数は、大統領がそのアプローチをイエローベスト運動に適応させていないと考えていることも示した[120]

    2019年3月9日第十七週―「アクトⅩⅦ」[編集]

    週初め、マクロン大統領は直前に迫った英国のブレクジットをEUに対する脅威とし、ナショナリズムポピュリズムを非難、EUを保護するという姿勢を明確にした。「EUは平和同様に自明なものではない。EUは分裂と孤立に抗する新しいルネッサンスの時を今迎える」と言う[121]。これは、ベルギーの元首相で欧州自由民主同盟(ALDE) 議長ヒー・フェルホフスタットがあらわしたような「ナショナリズムによる危機」「ポピュリズムによる悪夢」にEUが直面しているという認識を背景としている[122]

    デモは初期の燃料税への不満から拡大して、富裕層への攻撃、そして国民投票の実施の要求へと移り変わった。政府の100億ユーロ規模での財政出動もあってか、デモへの参加者は減少傾向にあり、内務省の発表によればフランス全土で28,600人が参加した[123]。首都パリではおよそ7000人が参加、6日の国際女性デ―ののちということもあわせて、女性が平等な権利と平等な給与を主張して行進した。また失業補助金改革に反対する女性たちがピンクのベスト、ピンクの衣装、ピンクの風船を携えて行進をおこなった[124]。シャンゼリゼ大通りのデモ隊に高圧水砲が使用され、19人もの逮捕者をだしたものの、抗議行動はほぼ平和裡に終了した。また、リヨン、ボルドー、トゥールーズなどの都市では警察との散発的な衝突が発生した[125][126]

    3月7日と8日にオンラインニュースサイトAtlanticoで行われた世論調査では、54%が「黄色いベスト」に共感を示した。これは2月中旬の50%から上昇したが、ピークの72%のピークからは低下した[127]

    2019年3月16日第十八週―「アクトⅩⅧ」[編集]

    ひきつづく参加人数の減少と以前の大規模デモの予告を踏まえて、主催者はソーシャル・メディア上で人々に参加要請を強化した。リーダーの一人、エリック・ドローエはYou tube上に声明を発表し、16日は黄色いベストとは別の環境問題デモと100万人規模でおきたアルジェリアの大統領退陣デモ[128]ともリンクして、フランスの歴史上でもユニークな抗議の日となると述べた[129]。またこの日は11月17日にはじまったデモの4カ月記念日、さらにマクロン大統領の全国討論大会の最終日にあたり、反=マクロンの抗議者は大統領の討論大会は「失敗」だったと主張した。

    フランス内務省は、「アクトⅩⅧ」ではフランス全土でおよそ32,300人、首都パリでおよそ10,000人の参加者、そのうち1,500人の「超過激破壊者」を含んでいたと発表した[130]。以前から唱えられていた「原点回帰」の姿勢があらわれ、街の中心シャンゼリゼ通りに火が放たれ、母子がビルの炎と煙から辛うじて命を救われた。高級品を扱う資本主義のシンボルが狙い撃ちされ、ファッション、ハンドバッグ店、ニューススタンド、高級レストランとして知られる「フーケ」のガラスが割られ、破壊・略奪され、銀行には火が放たれた。凱旋門近くではデモ鎮圧部隊とデモ隊とが衝突した。ドイツから参加した43歳の工場労働者は彼自身が「世界最大の問題」と考える銀行の放火に同意したとコメントした。また2児の母である他の女性は「暴漢がいるのは嬉しいわ。だって、もし彼らがいなかったら、わたしたちの行動は何の注目も受けられないでしょうから。わたしたちの声を広めるためには暴力が必要なんです」と語った[131][132]

    同時にパリではこの日45.000人規模で環境問題のデモがおこり、フランス政府に炭素の排出量削減の公約を守るよう要求した。トランプ大統領はツィッタ―上でパリ協定に対するマクロン大統領の姿勢を揶揄するツィートを飛ばした[133]

    「フランスでパリ協定はうまくいってるのか?18週つづく黄色いベストの後でわたしにはそううまくいってないように思われる。その間にアメリカでは環境問題はリストのトップになっている[134]

    マクロン大統領はスキー休暇を切り上げ、閣僚との対策会議のため16日夜パリに戻った。マクロンは警察の準備が十分ではなかったと非難を受け、「わたしたちは憲法上の権利にこだわっているが、どうしても共和国を壊し、モノを破壊し、人々を殺すというリスクを冒したい人々がいる」と語った。パリ警察は192人がパリで逮捕され、60人が負傷し、うち18人が警察と消防士だったと発表した[135]

    反=中心、アンチ=エスタブリッシュメント[編集]

    郊外の反乱[編集]

    少なくともその前半においては、黄色いベスト運動はパリが運動の舞台の一角とはなっているものの、そのメインステージではなかった。メインステージは、むしろマージナルな郊外の円形交差点(rond point)の占拠にあり、中心都市(パリストラスブールマルセイユ)はメディアによってショーアップされた破壊と略奪の舞台となった[136][137]。これは都市の資本や富の集中に対する郊外からの反応であり、その意味で郊外生活者が都市で進行する資本システムの結果としてもたらされる「格差社会へアンチテーゼ」を突きつけた側面があった。また、学生が先導し、メディア的にも運動的にもパリを主な舞台としたちょうど50年前、1968年の、五月危機とはその意味で異なっている。都市は組み込まれているが、都市中心の運動ではなかった。

    2016年、米国でトランプ政権を誕生させた原動力となったのは、グローバリズムによる豊かさの恩恵にあずかれなかったマージナルな人々の支持であったといわれている[138]が、「周辺からの中心への反発」というコンテキストにおいて、この米国の動きとの共通性が見られる。黄色いベスト運動は、ブリュッセルマクロンに代表される記名性や署名性、個人によって機能するエリート官僚主義的な中心ではなく、無記名でアノニマスで集団主義的、すなわち、より各自各々の民衆に身近な周辺の運動であり、資本の進行をより民衆に引き寄せようとしている(ベルギーで運動の中心がブリュッセルではなく南部のワロン地域だった[139]ことは象徴的であり、ブレクジットもその成否如何をさておけば、同じようなコンテキストに支えられている)。マスメディアの変化(テレビからソーシャルメディア)に伴い、これらの運動は中心をより多くの場所にしようとしている(究極的にはソーシャルメディアの「いいね!」や「♡」ボタンを介した、個人になるだろう)。

    かつて、アンチ=エスタブリッシュメントが「ソフトパワー」として、世界変革のうねりとなるまでに高まったのは、1960年代のベトナム戦争下の米国だった。彼らは中国の人民公社=パブリック・コミューンを引用しながら、闘争よりも「平和」を重んじる独自のコミュニティ形成(ヒッピー)を試み、試みはやがてオルタナティブな価値に結実し、エスタブリッシュメントに対する「もうひとつの価値(カウンターカルチャー)」を用意した[140]

    黄色いベスト運動はそういったアンチ=エスタブリッシュメントの流れの、分岐したより性急かつ暴力的な側面の強い運動として見ることもできる。

    脱炭素社会の蹉跌[編集]

    2015年12月、パリで採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(パリ協定)を経て、フランスは「脱炭素社会[141][142]」を掲げるリーダー的な存在だった。マクロンは米国が抜けた世界的な環境会議において各国企業や識者と供託し、2030年までに温室効果ガス排出量を国内で少なくとも40%削減する目標を掲げ、「脱炭素化」を推進した。反面ではフランス民衆に対する配慮が不足していた面は否めず、今回の運動はこの環境汚染意識に端を発する「脱炭素社会」への躓き[143][144]となった。

    経済格差問題[編集]

    テキサス大学の経済学者ジェームス・K・ギャルブレイス(英語版)によれば、黄色いベスト運動の背景にはブレクジット同様の経済的な危機意識があるという。ギャルブレイスは「ヨーロッパの現状は持続可能ではない」、 「われわれが目にしているのは、雇用基盤を衰えさせてきた一連の緊縮政策によって、収入を低下させ積り積もった人々の不満の反乱である」と述べている[145]

    フランス国外の反応[編集]

    黄色いベスト運動のブリュッセルで抗議(2018年12月8日)

    ガーディアン紙のキム・ウィルサーによると、黄色いベスト運動はイタリアで「親イタリア運動」に模倣されており、イタリアのオーガナイザーは「黄色いベストに触発されている(...中略...)しかしながら私たちは他の問題に動機づけられている。 私たちはフランス人と違って、私たちの政府を支えている。 私たちが抗議するのはヨーロッパだ。 欧州がイタリアの政治に干渉しないようにしたい」と述べたという[146]

    2018年11月30日、ベルギーブリュッセルの暴動警察はビリヤードボールや街路石の投石を受け、高圧放水砲で対応した[147]。治安を乱したとして60人が逮捕された。ブリュッセルでロシアのルコイル社の貯蔵所に対する抗議者の試みは速やかに警察により阻止されたが、11月16日、ワロン地域でいくつかの油田がブロックされた。この運動は現在、2019年のベルギーの選挙のため、「Mouvement citoyen belge」という名の党をつくろうとしている。12月8日、シャルル・ミシェル首相の辞任を求める抗議者がバリケードをつくろうとした時、警察は催涙ガス弾と高圧放水砲を使ってデモ隊を解散させた。抗議者は、警察に石や火などを投げつけ、結局約100人が逮捕された[148]

    12月1日、オランダの都市で少数の「黄色いベスト」のデモンストレーターたちが抗議した[149]。さらなるデモは12月8日に行われ、平和な抗議者がロッテルダムを行進した。

    12月4日、セルビアの右派Dveri党首のリーダーであるBoškoObradovićは12月8日に高騰する燃料価格に対する抗議デモを求めた[150]

    ドイツではシンボルは「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」を含む「反移民団体」によって採用された[151]

    12月5日、イラクで黄色いベスト運動に触発された抗議者が、より多くの雇用機会とより良いサービスを求め、イラクのバスラでデモを起こした[152]

    フランス国内の反応[編集]

    オランド大統領の政策の延長にもかかわらず、運動の矢面に立たされるマクロン大統領。

    2018年11月下旬の世論調査では、この動きがフランスで広範に支持されていることが示された(73%から84%に及ぶ)。12月1日、抗議後に実施された世論調査では、フランス人の72%が「黄色いベスト」を支持し、85%がパリでの暴力に反対していることが分かった[153]

    トラック運転手は、抗議者の標的にされ、業界は公開書簡で政府に不満を訴えた[154]。2つの労働組合、CGTとFOは次の日曜日にストライキを開始するようにトラック運転手に呼びかけたが、政府と組合員に相談した後、12月7日に呼びかけを撤回した[155]

    11月には政党の一つである「人民共和連合」が、憲法68条を根拠にマクロン大統領を免職することを呼びかけている[156]

    内務大臣のクリストフ・カスタネールは政敵の国民連合党首マリーヌ・ル・ペンが11月24日にシャンゼリゼ通りへ行くように抗議者たちを促したとして批難した。これを受けてル・ペンは、シャンゼリゼで人々を集めることは政府の責任であり、内務大臣が運動を信用せず緊張を高めようとしていると逆に非難し返した[157]

    当初、マクロン大統領は燃料税の引き上げが計画通りに進むと主張していたが、2018年12月4日、政府は税金の引き上げが保留になると発表した。エドゥアール・フィリップ首相は「国の統一を危うくする税金はない」と述べた[158]。12月9日、エリザ宮に労働組合や雇用者団体の代表者を招き、12月10日、マクロン大統領はテレビ演説を行い、予定する措置を国民に告げることが出来た[159]。演説の中でマクロンは暴力を非難したが、抗議者の怒りを「深く、そして多くの点で合法である」と認めた[160]

    12月13日、野党がフィリップ内閣の対応を批判しフランス国民議会(下院)に不信任決議案を提出したが、採決の結果は賛成70票にとどまり、可決に必要な289票に届かず否決された[161]

    アムネスティ・インターナショナルは、警察に「フランスの抗議者および高校生に対する過度の武力行使の終結」を求めた[162]

    12月20日に締結された協定により警察の給与は、他の公共機関職員とは異なり、月額120〜150ユーロ引き上げられた。また、法改正案の可決により年間300ユーロのボーナスを受け取った[163]。 外交官ニコラス・シャピュイ(フランス語版)はル・モンド紙に寄稿し、これはおそらく最近の警察組合選挙の85%の投票率と(デモ対応のための)過重勤務によるものであると述べた[164]

    学生たちの運動[編集]

    マクロンの教育改革と中学卒業試験バカロレア(baccalauréat)変更プランに怒る学生は、フランス全土の都市で抗議した[165]。学生はこれらの改革が都市、都市近郊、農村地域の学生間の高等教育へのアクセスの不平等をさらに深刻化させることに懸念を表明した[166][167]。大学生からの報告によれば、非EU諸国からの留学生の授業料引き上げの計画を非難して、運動に加わった学生もいるという[168]

    2018年12月6日、マント=ラ=ジョリーの学校の外で140人以上もの学生が逮捕された。大量逮捕のビデオでは背後に手で組み、膝まづかされた学生が映し出されている。教育大臣ジーン・ミシェル・ブランカー(Jean-Michel Blanquer)は、場面に「ショックを受けた」が、それは「文脈の中で」見る必要があると述べた[169]。同日、ラジオ局France Bleuはフランス東部の町サン=テティエンヌが「包囲されている」と放送した[170]。このような状況のなか、サン=テティエンヌ市長は、リヨン近郊での「光の祭典(Fête des lumières)」が中止され、地域の警察が警備から解放されることをツイートした。

    赤いスカーフ[編集]

    2019年1月27日、パリでは「赤いスカーフ(フランス語ではFoulards Rouges)」と呼ばれる黄色のベストに対するカウンターデモが行なわれた。「赤いスカーフ」は他のグループと共同で「わたしたちは黄色いベスト運動により引き起こされた暴力的な空気を非難します。わたしたちはまた絶え間ない言葉の濫用と脅しを拒絶します」との声明を発表した[171][172]

    反ユダヤ主義の再燃[編集]

    2019年2月、フランス内務省は2018年の反ユダヤ主義関連の事件が2017年の311件から541件に74%増加したと発表した。マクロン大統領はこの傾向を「容認できない」と非難し、「共和国とその価値観の否定」だと閣僚に語った。 反ユダヤ主義は黄色いベスト運動の前から増加傾向にあったが、アンチ・エスタブリッシュを標榜し、金の価値観を否定する運動者によって、さらに増幅されたとみられている。

    マクロン大統領自身、以前の経歴(ロスチャイルド銀行)を含めて運動の標的となっている。 最近の世論調査では、「シオニスト・プロット(ユダヤ人陰謀論)」を信じている抗議者は全体のほぼ半分にも上ることが示された[173]

    脚注[編集]

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    関連項目[編集]