緊縮財政政策

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緊縮財政政策(きんしゅくざいせいせいさく)もしくは緊縮財政(きんしゅくざいせい、英:austerity measures, fiscal consolidation, fiscal austerity)とは、政府支出の削減や増税といった手段で政府の財政を均衡させる試みのことである[1][2]

概要[編集]

緊縮財政政策の類義語として収縮的財政政策(contractionary fiscal policy)が挙げられる。緊縮財政は政府が自らの債務を履行できない懸念が高まっていると判断される場合に、政府やIMFによってしばしば求められたり実施される。特に政府が発行する権利がない外貨ユーロで、経済力に見合わない巨額の債務を抱えている場合に緊縮財政を求められることが多い。例えば、ユーロ加盟国米ドルで多額の借り入れを行っている南米諸国が該当する。

しかし、政府支出はそれ自体がGDPの主要な構成項目であり、また増税は民需を縮小させるため、緊縮財政は総需要を圧迫しGDPの毀損やGDP成長率の鈍化につながる可能性が高い。緊縮財政はGDPや税収を減らす効果が強いため、緊縮財政を実行したからといって、その目的の通り財政赤字や政府債務残高の減少や抑制が達成されるとは限らない。1990年代以降、日本や多くのヨーロッパ諸国では緊縮財政に続いてGDP成長率の鈍化が発生し、GDP比の政府債務比率は上昇し続けている[3][4]

緊縮財政においては公的支出が縮小され、具体的には公務員の人員削減や給与カット、社会保障水準の引き下げ、インフラストラクチャー投資の削減などが行われる。研究や教育への政府支出の削減の結果として、研究プロジェクトの規模縮小や学費の値上げが起こる可能性もあるが、教育費には配慮して値上げされない場合もある。

世界金融危機[編集]

世界金融危機ののちに財政赤字に陥った各国で緊縮財政が採用され、特にヨーロッパのユーロ圏に深刻なマイナスの影響を与えた。欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は支援の条件として緊縮財政を要求した[注釈 1]。2011年にはユーロ圏労働人口の10%が失業し、若者(15歳から24歳)の失業率は20%と上昇した。財政赤字が深刻だった国家の失業率は、アイルランド全体が15%・若者が30%、ギリシャ全体が14%・若者37%、のちにはスペイン全体が20%・若者44%となった。不況が続く各国では、緊縮財政を要求する国際機関に対する非難が高まった[5]

IMFは、緊縮財政を行っても景気が回復をすると予想したが、実際には雇用減少・消費低迷・信用下落を招いた。2012年にはIMFは緊縮財政が誤りであると認める結果となった[6]

出典・脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ この3機関はトロイカとも呼ばれた。

出典[編集]

  1. ^ M. Denes et al, Staff Report, Federal Reserve Bank of New York, No. 551 (2012)
  2. ^ G. Eggertsson, German Economic Review 1(1) 1-18
  3. ^ Fiscal austerity in Japan” (英語). Econlib (2019年5月26日). 2021年4月4日閲覧。
  4. ^ Storm, Servaas (2019-07-03). “Lost in Deflation: Why Italy’s Woes Are a Warning to the Whole Eurozone”. International Journal of Political Economy 48 (3): 195–237. doi:10.1080/08911916.2019.1655943. ISSN 0891-1916. https://doi.org/10.1080/08911916.2019.1655943. 
  5. ^ トゥーズ 2020, p. 439-440.
  6. ^ スタックラー, バス 2014, pp. 2316-2322/4865.

関連文献[編集]

関連項目[編集]