キロロリゾート

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キロロリゾート: Kiroro Resort)は、北海道余市郡赤井川村にあるリゾート

概要

朝里岳と長峰岳の斜面にあるスキー場はじめ、自然を生かしたアクティビティなどを楽しむことができる通年型のリゾート施設となっている。「株式会社キロロアソシエイツ」がスキー場とアクティビティ部門、「株式会社キロロホテルズ」がホテル部門を運営している。「朝里岳山頂『ニイサの鐘』/キロロリゾート」として「恋人の聖地」に選定されている[1]。キロロリゾートのオープンは赤井川村の過疎化対策に一定の役割を果たし、村税が4倍になるなどの大きな影響を与えたとしている[2]

親会社であるタイ王国の不動産会社「プロパティ・パーフェクト」は、コンドミニアム「Yu Kiroro」やコンドミニアムとスキー場を結ぶリフトとゴンドラを建設しているほか[3]、「キロロ2020ロードマップ」として新たなホテル、ヴィラやコンドミニアム、娯楽施設などを整備する計画を発表した[4]

名称の由来

「キロロ」はアイヌ語の「心」、「力」、「才能」などの意味を持つ言葉の響きをヒントに名づけられた[5][6]。なお、「キロロ」と読む地名は浦幌町に「貴老路」、本別町に「嫌侶」があり、それらの名称の由来には「キロ-オ-ル」(kir-o-ru、人が踏み固めた広い道:山田秀三知里真志保説)、「キロロ」(kiroro、勢力:永田方正説)、「ピ-ヲロ」(pi-oro、小石・多い:松浦武四郎説)などの諸説がある[7][8]

女性デュオ「Kiroro」のグループ名は、ボーカルの玉城千春が小学生の頃に地域交流で北海道池田町に行き、耳に残ったアイヌ語「kiroru」(人間が踏み固めた広い路)や「kiroro-an」(強い・健やか・盛ん・大きい・かたくな)の言葉の意味や響きに魅かれたことに由来している[9]。同じネーミングが縁で1998年(平成10年)にはキロロリゾートとタイアップしたほか、2004年(平成16年)にはキロロリゾートでファンの集いとコンサート『ゆんたくさびら vol.3』を開催している。

沿革

赤井川村の産業は農林業を中心としているが、社会経済の変動による人口流出に歯止めがかからないため、1984年(昭和59年)に「赤井川村総合計画」を策定し、後志広域観光の一角として観光に力を入れる施策を立てた[2]。同年、ある企業から村内にスキー場を建設したいという申し出があり、村と共同で「赤井川村森林リゾート開発協議会」を設立したが[5]国有林を活用するため企業側の事業計画に沿った開発をすることができず、1986年(昭和61年)に開発を断念した[5]

そこで、赤井川村はスキー場の開発に関心のある企業を探し、1987年(昭和62年)に日本楽器製造(現在のヤマハ)とともに「赤井川村森林レクリエーション協議会」を設立して朝里岳の西部にある国有林を開発するという計画に着手した[2][5]。1988年(昭和63年)にヤマハは100%出資の子会社「ヤマハ北海道リゾート開発」を設立したほか、当時の林野庁は国有林を活用した開発をする場合は地方自治体が開発主体に加わることを求めていたため、ヤマハ、ヤマハ発動機、ヤマハ北海道リゾート開発に赤井川村も出資した第三セクター「赤井川森林レクリエーション開発公社」(1991年に「キロロ開発公社」と改称)を設立した[2][5]。そして、林野庁が推進していた「森林空間総合利用地域」(ヒューマン・グリーン・プラン)に北海道で初めて認定された[2][5]。1989年(平成元年)に国有保安林の解除手続きが完了すると、赤井川森林レクリエーション開発公社はスキー場の工事を開始した[5]。また、リゾート開発の名称を「キロロ」とすることが決まった[5]。キロロのリゾート開発は、スキー場の「マウンテンエリア」、テニスコートや多目的スポーツ広場の「レクリエーションエリア」、会員制ホテルと飲食・ショッピング街を中心とする「キロロタウン」、約20 km離れた富田地区を開発する「ゴルフエリア」に分けられ、このうちマウンテンエリアとレクリエーションエリアの開発を赤井川森林レクリエーション開発公社が担当し、キロロタウンとゴルフエリアの開発をヤマハ北海道リゾート開発が担当した[5]。1990年(平成2年)に北海道から特定開発行為が許可されると、ゴルフ場の工事が始まったほか[5]、1991年(平成3年)にはキロロタウンの工事が始まった。そして、同年末にスキー場「キロロスノーワールド」、ホテル「マウンテンホテル」と「マウンテンセンター」、多目的スポーツグラウンド「スノーモービルワールド」がオープンした[2][5]

オープン当初の2ヵ月でスキー場には15万人弱の入り込みがあり、マウンテンホテルの稼働率も100%近くとなるなど好調なスタートを切ったが、すでにバブル崩壊が始まっていた時期であり、1992年(平成4年)にはヤマハ北海道リゾート開発の親会社であるヤマハの業績悪化に伴う人員整理問題によってキロロのリゾート開発を推進していた川上浩が社長の職を辞し、キロロタウンに予定していたリゾートマンションなどの建設延期を発表した[5]。1993年(平成5年)には川上が兼務していたキロロ開発公社の社長も交代となった[5]。同年にはゴルフ場「キロロゴルフクラブ」、ホテル「ホテルピアノ」や「キロロタウン」がオープンした[5]。ヤマハ北海道リゾート開発はホテルやゴルフ場のリゾート会員権の販売で投資の早期回収を見込んでいたが、バブル崩壊によって投資金額である約330億円の半分以下となる約120億円に会員権の販売が留まっていた[5]。同社の1993年度(平成5年度)決算では累計損失が42億6,000万円となっており、約150億円の債務超過に陥っていた[5]。そこで、1994年(平成6年)にヤマハ北海道リゾート開発は兄弟会社のヤマハリゾートに営業権を譲渡し、翌年に会社を清算した[5]。一方、キロロ開発公社もオープン以来の経営赤字が続いており、累積赤字が50億円を超えて長短借入金も約150億円まで膨れ上がっていたが、これらは各種施設の工事代金約208億円の支払いで生じていたものであった[5]。1995年(平成7年)にキロロ開発公社は臨時株主総会を開き、減資と増資による経営再建案を議決した[5]。これは、資本金80億円を20億円にまで減資し、差額を前年度末にあった累積損失62億円の処理に充てる[5]。そして、第三者割当増資によって20億円の増資(ヤマハが18億円、赤井川村が2億円を負担)を行い、資本金を40億円とした[5]。これにより、ヤマハのキロロ開発公社への出資比率が60.3%になり、連結子会社となった[5]。さらに、借入金を削減するために多目的スポーツグラウンドなどの施設をヤマハリゾートへ売却したほか、人件費の削減などを行って単年度の損益を改善した[5]。こうして、キロロ開発公社の事業はスキー場のリフト運営とホテルの賃貸業に特化することになった[5]。他方、ヤマハ北海道リゾート開発の清算とキロロ開発公社の経営再建に大きな役割を担ったヤマハリゾートであるが、国際競争やバブル崩壊の影響で業績が低迷していた状況の中でキロロ再建への負担がより経営を悪化させたため、ヤマハが1996年(平成8年)にヤマハリゾートの支援策を発表した[5]

2000年(平成12年)にキロロ開発公社に対するヤマハの持株比率が61.6%から94.3%となり、2002年(平成14年)にヤマハはヤマハリゾートを吸収合併、2003年(平成15年)にキロロ開発公社の赤井川村出資分を買収して100%子会社としたほか、2004年(平成16年)にはキロロ開発公社を吸収合併するなど[10]、ヤマハ本体でリゾート経営を支える体制をとってきたが、2007年(平成19年)にキロロを含むリゾート4施設を三井不動産に譲渡した[11]

2012年(平成24年)にはタイ王国の不動産会社「プロパティ・パーフェクト」(PF)が、日本の企業再生コンサルティング「リプロジェクト・パートナーズ」との合弁会社「シェアグループ」を通じて運営会社の「株式会社キロロアソシエイツ」を買収した[12][13]。2015年(平成27年)には「スターウッド・ホテル&リゾート」と提携し、マウンテンホテルを「シェラトン北海道キロロリゾート」[14]、ホテルピアノを「キロロトリビュートポートフォリオホテル北海道」にリブランドした[15]

年表

施設

キロロスノーワールド

マウンテンセンター

  • スキーショップ ヴァンクール
  • キロロレンタルショップ(スキーシーズンのみ営業)
  • コインロッカー
  • 貸ロッカー
  • レンタルルーム
  • カフェテリア「ルミエール」
  • マウンテンカフェ&ラウンジ
  • ダブルブラックカフェ
  • 和(なごみ)
  • ときわ湯

シェラトン北海道キロロリゾート

シェラトン北海道キロロリゾート
Sheraton Hokkaido Kiroro Resort
キロロスノーワールドから見た施設外観
キロロスノーワールドから見た施設外観
ホテル概要
ホテルチェーン スターウッド・ホテル&リゾート
運営 キロロホテルズ
所有者 キロロリゾートホールディングス
前身 マウンテンホテル
階数 地上1 - 地上5階
部屋数 140室
所在地 〒046-0593
北海道余市郡赤井川村字常盤650
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客室

  • デラックスツイン (22 m²)
  • デラックスキング (22 m²)
  • スーペリアツイン (31 m²)
  • スーペリアキング (31 m²)
  • 和室 (39 m²)
  • グランデルーム (60 m²)
  • スイートツイン (96 m²)
  • スイートキング (77 m²)

レストラン

  • ビュッフェ リビエルージュ
  • 炉端・寿司 北帰

その他

  • フィットネス
  • キロロショップ

キロロトリビュートポートフォリオホテル北海道

キロロトリビュートポートフォリオホテル北海道
The Kiroro, a Tribute Portfolio Hotel, Hokkaido
施設外観
施設外観
ホテル概要
ホテルチェーン スターウッド・ホテル&リゾート
運営 キロロホテルズ
所有者 キロロリゾートホールディングス
前身 ホテルピアノ
階数 地上1 - 地上14階
部屋数 281室
所在地 〒046-0593
北海道余市郡赤井川村字常盤128-1
公式サイト キロロトリビュートポートフォリオホテル北海道 公式サイト
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客室

  • スタンダードルーム (30 m² - 35 m²)
  • スーペリアルーム (38 m² - 50 m²)
  • スーペリアトリプル (42 m²)
  • デラックスキングビューバス (36 m²)
  • デラックスルーム (51 m² - 60 m²)
  • オリエンタルスイート (65 m²)
  • ジャパニーズスイート (65 m²)
  • ジュニアスイート (68 m² - 84 m²)
  • キロロスイート (140 m²)
  • マウンテンスイート (149 m²)

レストラン・バー

  • イタリアンレストラン アラ・モーダ
  • アルパインブラッセリ―
  • ワールドビュッフェ ポップ

MICE

  • グレートルーム (1,125 m²)
  • ライラック/ハマナス (各180 m²)
  • スズラン/ラベンダー (各80 m²)
  • エルムA,B,C,D (各40 m²)

その他

  • 宿泊者専用浴場「喜多の湯」
  • エステ&リラクゼーションサロン「KOTAN(コタン)」
  • ホテルショップ
  • チャペルキロロ

キロロタウン・ネイチャーセンター

  • キロロ温泉 遊湯館
    • 岩盤浴
    • リゾートプール
    • フィットネスセンター
  • 寿司処 風雅
  • ポッケ カフェ&ラウンジ
  • ステーキハウス 旬彩
  • グランシップ
  • カラオケ
  • リゾートマーケット
  • ネイチャーセンター

その他

  • レクリエーションセンター
  • パークゴルフ場
  • テニスコート
  • 森の広場
  • ICE STAR RESORT KIRORO(冬季限定)[27]

アクセス・駐車場

新千歳空港札幌駅小樽駅小樽築港駅などから事前予約制のバスを運行している。また、シェラトン北海道キロロリゾートからキロロトリビュートポートフォリオホテル北海道までは約500 m離れているため、無料のシャトルバスを運行している。

  • 小樽から車で約40分
  • ニセコから車で約50分
  • 札幌から車で約60分
  • 新千歳空港から車で約90分
  • 駐車場:2,000台

脚注

  1. ^ 朝里岳山頂「ニイサの鐘」/キロロリゾート”. 地域活性化支援センター. 2019年2月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 村史紹介”. 赤井川村. 2019年2月5日閲覧。
  3. ^ 北海道キロロリゾート、タイ不動産大手が大規模改修。欧米など外国人観光客を意識”. HOTELIER (2017年4月25日). 2019年2月5日閲覧。
  4. ^ “キロロリゾート拡張 10年間に1000億円投入”. 北海道建設新聞 (北海道建設新聞社). (2019年2月5日). https://e-kensin.net/news/113632.html 2019年2月6日閲覧。 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 河西邦人.
  6. ^ キロロの過ごし方”. キロロトリビュートポートフォリオホテル北海道. 2019年2月6日閲覧。
  7. ^ 山田秀三『北海道の地名』。 
  8. ^ 本多貢『北海道地名分類字典』。 
  9. ^ Profile”. Kiroro official web site. 2019年2月6日閲覧。
  10. ^ 第181期 事業報告書 (PDF) (Report). ヤマハ. 2005. 2019年2月6日閲覧
  11. ^ "リゾート事業4施設の事業用不動産及び運営子会社株式の譲渡について" (PDF) (Press release). ヤマハ. 23 March 2007. 2019年2月6日閲覧決算プロ
  12. ^ タイ プロパティー・パーフェクト(PF)”. ASEAN JAPAN (2012年8月27日). 2019年2月6日閲覧。
  13. ^ “シェアグループ、キロロ買収を発表、東南アジア客に照準”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2012年10月5日). https://www.nikkei.com/article/DGXNZO46904740U2A001C1L41000/ 2019年2月6日閲覧。 
  14. ^ 国内8軒目のシェラトンブランド『シェラトン北海道キロロリゾート』を12月にオープン”. PR TIMES (2015年8月4日). 2019年2月5日閲覧。
  15. ^ アジア太平洋地域では第一号となる新ブランド『トリビュート・ポートフォリオ』を北海道にオープン”. PR TIMES (2015年8月4日). 2019年2月5日閲覧。
  16. ^ <しんそう94>キロロ・ヤマハ道リゾートの営業権譲渡*会員権販売不振 早めの軌道修正”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (1994年5月21日). 2019年2月6日閲覧。
  17. ^ <北方圏フォーラム>経済面での連携強化探る*赤井川で知事サミット*資金不足が課題に”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (1995年9月12日). 2019年2月6日閲覧。
  18. ^ キロロで結婚式チャペルが完成”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (1996年5月31日). 2019年2月6日閲覧。
  19. ^ ヤマハ、キロロGC(北海道)の営業を10月末で終了”. 椿クラブ. 2019年2月5日閲覧。
  20. ^ ヤマハ、キロロ公社吸収へ*「協力関係変わらず」*赤井川村”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2004年3月27日). 2019年2月6日閲覧。
  21. ^ "ヤマハ株式会社所有の4リゾート施設取得に関する基本合意について" (PDF) (Press release). 三井不動産. 23 March 2007. 2019年2月5日閲覧
  22. ^ 赤井川村とキロロリゾート*住民避難の協定締結”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2012年9月14日). 2019年2月6日閲覧。
  23. ^ キロロ買収のシェアグループ*東南アジアから集客*通年型リゾート目指す*「タイムシェア」で客室販売”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2012年10月7日). 2019年2月6日閲覧。
  24. ^ 米スターウッド運営2ホテル*キロロに国際ブランド”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2015年8月4日). 2019年2月6日閲覧。
  25. ^ 米スターウッド キロロ2ホテル運営*「集客、雇用増を期待」*関係者ら歓迎の声*赤井川”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2015年8月8日). 2019年2月6日閲覧。
  26. ^ 米スターウッド運営の2ホテル*キロロで開業式典*ルスツも営業開始”. フォト北海道(道新写真データベース). 北海道新聞社 (2015年12月6日). 2019年2月6日閲覧。
  27. ^ ICE STAR RESORT KIRORO”. 2019年2月7日閲覧。

参考資料

関連項目

外部リンク

座標: 北緯43度04分33秒 東経140度58分56秒 / 北緯43.07583度 東経140.98222度 / 43.07583; 140.98222