プログレッシブ・メタル

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プログレッシブ・メタル
Progressive Metal
様式的起源 プログレッシブ・ロック
ヘヴィメタル
フュージョン
文化的起源 1980年代中期
アメリカ合衆国
イギリス
カナダ
使用楽器 ボーカル
ギター
ベース
ドラム
キーボード
関連項目
カオティック・ハードコア
マスコア
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プログレッシブ・メタル英語:Progressive Metal)は、ロック・ミュージックジャンルのひとつ。略称プログレメタル(あるいはプログメタル)。あまり明確な定義はないが、プログレッシブ・ロックヘヴィメタルの要素を取り入れたサウンドで、1990年代以降にひとつのジャンルとして確立された。

概要[編集]

そのサウンドは、プログレッシブ・ロックの持つ技巧的あるいは幻想的な音楽性と、ヘヴィメタルの持つハードで大胆な音楽性が合わさったもの。ヘヴィメタルの要素がベースになっているが、長大な楽曲、変拍子転調シンセサイザーの多用、コンセプト性を持ったアルバム構成など、プログレッシブ・ロックの特徴も取り入れられている。

ピンク・フロイドキング・クリムゾンジェネシスイエスなどのプログレッシブ・ロック勢と、アイアン・メイデンジューダス・プリーストメタリカなどのハード・ロック/ヘヴィメタル勢の双方から影響を受けてきたミュージシャンたちが、1980年代後半になって本格的な音楽活動を始めたところに起因する。

代表的なバンドとしては、ドリーム・シアタークイーンズライクフェイツ・ウォーニング、クリムゾン・グローリー、ペイン・オヴ・サルヴェイションなどがあり、マーケットにおいてはドリーム・シアターらの躍進した90年代にプログレッシブ・メタルと呼ばれるタームが定着した。

プログレッシブ・メタルがジャンルとして確立される前から活動しているラッシュは、プログレッシブ・メタルの起源であると考えられている。また、一部のネオクラシカルメタルデスメタルブラックメタルなどには、メンバーが超絶技巧の持ち主であり、曲調もプログレッシブであるようなバンドが存在し[注 1]、そのようなバンドはプログレッシブ・メタルであると解釈される。

日本においては1970年代 - 1980年代前半からシェラザードマンドレイク人間椅子筋肉少女帯といったハードロック/ヘヴィメタルとプログレッシブ・ロック双方の要素を取り入れ独自の音楽性を展開したバンドが散見されプログレ・ハードと呼ばれた。またノヴェラの元メンバーや彼らのフォロワーが結成したハードロック色の強いグループが一時期(アンダーグラウンドな)プログレ・シーンで次々と登場し、これらはノヴェラ系ジャパグレと呼ばれた。他に、クラシックの要素を大きく取り入れたX JAPANがプログレッシブ・メタルであると解釈される。

歴史[編集]

ライブをするドリーム・シアター

プログレッシブ・ロックとヘヴィメタルを組み合わせるスタイルの登場は1960年代後半から1970年代初頭までさかのぼることができる。イギリス出身の最もヘヴィなプログレ・バンドのひとつ、ハイ・タイド[1]は、クリームブルー・チアージェフ・ベック・グループといったメタルの元となったバンドの要素を自分たちのサウンドへと組み込んだ[2]。キング・クリムゾンやラッシュらもメタルの要素を取り入れている[3][4]。他にそのような試みを行っていたバンドとしてはユーライア・ヒープがいる[5]。「Bastille Day」「Anthem」「By-Tor And The Snow Dog」「2112」「The Fountain of Lamneth」「Something for Nothing」などのラッシュの楽曲はプログレッシブ・メタルの最初期の例として見ることができる[6]ルシファーズ・フレンドナイト・サンも早くからこのような音楽性を志向していたバンドのひとつである[7]。だが、1980年代中頃までプログレッシブ・メタルがひとつのジャンルとして結実することはなかった。サイコティック・ワルツ、フェイツ・ウォーニングクイーンズライク、クリムゾン・グローリー、ドリーム・シアターといったバンドはプログレッシブ・ロックの要素[注 2]を取り入れており、ジューダス・プリーストブラック・サバスなど[注 3]から影響を受けたメタルのスタイルと合体させた音楽性を完成させた。

フェイツ・ウォーニング、クイーンズライク、クリムゾン・グローリー、ドリーム・シアターの4つのバンドはこのジャンルをともに作り上げたとはいえ、サウンドはそれぞれ異なっている。クイーンズライクはこの中でも最もメロディに重きを置いたスタイルをとっている。彼らの発表したアルバム『オペレーション・マインドクライム』と『エンパイア』はこのジャンルの中で最も商業的に成功した作品となり、シングル「Silent Lucidity」はビルボード・チャートで9位を獲得した。フェイツ・ウォーニングはこの中で最もアグレッシヴでヘヴィである。背景にはこの時代のスラッシュメタルと多くの共通項を持っていることもあるが、彼らがそもそもジューダス・プリーストやアイアン・メイデンの系譜に連なるヘヴィメタル・バンドとして始動したことも影響している。アルバム『パーフェクト・シンメトリー』は従来のNWOBHM的なサウンドの枠を抜け出し、ドリーム・シアターが後に広めることとなるプログレッシブ・メタルの基礎となるサウンドを作り上げた。ドリーム・シアターは伝統的なプログレッシブ・ロックから強い影響を受けており、メンバーの技術力で多くの聴衆を魅了した。クリムゾン・グローリーは2本の美しいリード・ギターがハーモニーを奏でる点が特徴である。彼らの作品『トランセンデンス』はこのジャンル内でも出色の出来であり、プログレッシブ・メタルの傑作のひとつとして数えられることも多く、ケイジ、トリオスフィア、ラプソディー・オブ・ファイアらに影響を与えた[8][9][10][11]

主なバンド[編集]

アメリカ[編集]

イギリス[編集]

カナダ[編集]

スウェーデン[編集]

ドイツ[編集]

ノルウェー[編集]

日本[編集]

アンドラ[編集]

オーストラリア[編集]

オーストリア[編集]

バングラデシュ[編集]

ベラルーシ[編集]

ブラジル[編集]

チリ[編集]

コロンビア[編集]

デンマーク[編集]

フェロー諸島[編集]

フィンランド[編集]

フランス[編集]

ギリシャ[編集]

ハンガリー[編集]

インド[編集]

イラン[編集]

イスラエル[編集]

イタリア[編集]

オランダ[編集]

パキスタン[編集]

フィリピン[編集]

ポーランド[編集]

ルーマニア[編集]

ロシア[編集]

セルビア[編集]

スロベニア[編集]

スペイン[編集]

スロバキア[編集]

スイス[編集]

チュニジア[編集]

トルコ[編集]

多国籍[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ たとえばシンフォニー・エックスオーペスなど。
  2. ^ 特に演奏面や曲構成の点
  3. ^ この2つのバンドは初期のアルバムでプログレッシブなアプローチをとっていたバンドでもある。

出典[編集]

  1. ^ Neate, Wilson. “High Tide - High Tide”. Allmusic. 2011年10月10日閲覧。
  2. ^ Neate, Wilson (1969年7月8日). “Sea Shanties - High Tide”. Allmusic. 2011年10月10日閲覧。
  3. ^ Buckley 2003, p. 477, "Opening with the cataclysmic heavy-metal of "21st Century Schizoid Man", and closing with the cathedral-sized title track,"
  4. ^ Buckley 2003, p. 749, "Rush were throwing off shackles of prog-rock and heavy metal,"
  5. ^ Thomas, Stephen. “Uriah Heep”. Allmusic. 2011年10月10日閲覧。
  6. ^ [1] Progressive rock reconsidered by Durrell S. Brown
  7. ^ Rivadavia, Eduardo (2006年12月21日). “Lucifer's Friend”. Allmusic. 2011年10月10日閲覧。
  8. ^ Rivadavia, Eduardo. “Transcendence - Crimson Glory”. allmusic. Rovi Corporation. 2011年12月28日閲覧。
  9. ^ Fabian De La Torre (2007-08). “El nuevo U.S. Metal Cage [The New US Metal. Cage]” (スペイン語). Metalica Fanzine (53): 32–34. 
  10. ^ Alex Staropoli”. rhapsodyoffire.com. 2011年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年12月28日閲覧。
  11. ^ CRIMSON GLORY Preparing To Embark On 25th-Anniversary Tour”. Blabbermouth.net. Roadrunner Records (2011年4月18日). 2011年4月18日閲覧。[リンク切れ]