ジャーマン・スープレックス

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クリス・ベノワによるジャーマン・スープレックス。

ジャーマン・スープレックスGerman Suplex)は、プロレス技の一種である。日本名は原爆固め(げんばくがため)。

かけ方[編集]

相手の背後に回り込んで相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。

ブリッジした際に、かかとを上げて爪先立ちになるレスラーとベタ足になるレスラーが存在する。かかとを上げるのはフォール時のブリッジによる相手の首の圧迫を狙ったもの(落差ではなく投げる角度に関係する)。その分、ベタ足より、ブリッジとしての安定感は減少する。

日本名は原爆固め(げんばくがため)。ホールドしないで投げ捨てた場合は原爆投げ(げんばくなげ)と呼ばれる。また、技を仕掛けた形から人間橋(にんげんきょう)という別名も付けられている。

創始者と名手[編集]

レスリングでスープレックス(相手の背後から後ろに反り投げる)と呼ばれたものをレスリング出身のカール・ゴッチがプロレスに取り入れたことが始まりである。日本での初公開は1961年4月に行われた公開練習。モンスター・ロシモフ(後のアンドレ・ザ・ジャイアント)もジャーマン・スープレックスで仕留めた実績を持つ(ちなみに、アンドレの体重は180kgであり、アンドレ相手に成功させたのはゴッチただ1人である)。ヒロ・マツダはゴッチから直接伝授されて名手として知られた。

ゴッチが新日本プロレスに協力した関係でジャーマン・スープレックスは主に新日本出身レスラーに引き継がれていくことになる。アントニオ猪木をはじめとして藤波辰爾(後にドラゴン・スープレックスを考案)、初代タイガーマスク(後にタイガー・スープレックスを考案)、前田日明ヒロ斎藤高田延彦山崎一夫が使い手となる。前座のドン荒川でさえ得意技にしていた。

全日本プロレスではジャンボ鶴田が海外修行から凱旋してジャーマン・スープレックスを使い始めたのがきっかけとなり、大仁田厚越中詩郎三沢光晴(後にタイガー・スープレックス'84タイガー・スープレックス'85を考案)が使い手となる。鶴田のジャーマン・スープレックスは上背を活かした本当に円を描くかの如き見事なブリッジを誇ったがバックドロップフィニッシュ・ホールドとして使用するようになってからは封印しており、理由は「威力がありすぎる上に調節が難しい」等諸説がある。大仁田は膝を痛めて以降は封印している。その後、三沢、川田利明小橋建太田上明による投げっ放し式(ホイップ式)を使用した攻防が過熱して四天王プロレスと言われる独自のスタイルを確立していく。

国際プロレスでも使用回数は少ないがサンダー杉山も使用していた。杉山はマツダに次ぐ日本人レスラー2人目の使い手と言われている。

外国人レスラーではチャボ・ゲレロアイアン・シークボブ・バックランドゲーリー・オブライト、投げっ放し式の第一人者であるリック・スタイナーなどが挙がる。

かつては圧倒的な威力を誇り、芸術的な美しさを持つ技であったことからプロレス技の王と称されてきたが改良を加えた派生技の発展と受身の技術の向上に伴い中盤の痛め技として使われることが多くなっていた。しかし、近年では高山善廣を筆頭に中西学本田多聞福田雅一関本大介ら多くのレスラーがジャーマン・スープレックスを磨き上げることでフィニッシュ・ホールドとして使用している。

派生技[編集]

投げっ放し式
ホイップ式とも呼ばれる。相手の背後に回り込んで相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして体をブリッジさせる際に相手の体を抱えていた両手のクラッチを切って相手を後方へと反り投げる。主な使用者はリック・スタイナースコット・スタイナーゲーリー・オブライトベイダーカート・アングルブロック・レスナークリス・ベノワ三沢光晴諏訪魔
ぶっこ抜き式
デッドリフト式とも呼ばれる。うつ伏せに倒れた相手の足側に移動して相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして投げられまいと踏ん張る相手の体を無理やり宙へと抱えて強引に体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者はゲーリー・オブライト、関本大介高橋裕二郎
低空式
相手の背後に回り込んで相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして相手を高く持ち上げないで素早く体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者はヒロ斎藤
滞空式
2段式とも呼ばれる。相手の背後に回り込んで相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして相手の体を軽く宙に持ち上げて一旦静止してタメを作ってから体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者は佐藤耕平
高角度式
相手の背後に回り込んで相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして相手を高く持ち上げて角度をつけながら体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者は初代タイガーマスク高山善廣エベレスト・ジャーマン・スープレックスの名称で使用)、福田雅一竹下幸之介
ハイクラッチ式
相手の背後に回り込んで相手の背中を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、みぞおちあたりでクラッチして体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者は杉浦貴
ダルマ式
相手の背後に回り込んで相手の右腕の外側に右腕を左腕の外側に左腕を回し、相手の両腕と胴体を抱きかかえるように自身の両手をクラッチして体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者は棚橋弘至風間ルミ中島安里紗
ロコモーション式
連続式起き上がり小法師式とも呼ばれる。ジャーマン・スープレックスを仕掛けたあと相手を両腕でクラッチしたまま横に寝転がって仰向けから、うつ伏せに移って立ち上がりながら相手を起き上がらせてもう1度、ジャーマン・スープレックスを仕掛けてフォールを奪う。主な使用者はゲーリー・オブライト、カート・アングル、クリス・ベノワ、菊地毅茂木正淑日向あずみ紫雷イオ
ローリング式
ジャーマン・スープレックスを仕掛けたあと両足でマットを蹴って自身の下半身を上方向へと跳ね上げてエビ固め風に丸まった相手にもう1度、ジャーマン・スープレックスを仕掛けてフォールを奪う。主な使用者はキャンディー奥津
マヤ式
ジャーマン・スープレックスを仕掛けたあと両足でマットを蹴って自身の下半身を上方向へと跳ね上げてエビ固め風に丸まった相手の両腿の裏の上に跨る格好で着地して相手の体から腕を離しながら体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者はウルティモ・ドラゴンスペル・デルフィンデルフィン・スペシャル1号の名称で使用)。
クロスアーム・スープレックス
右手で相手の左腕を左手で相手の右腕を、それぞれ掴み、掴んだ両腕を相手の胸の前で交差させて体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。主な使用者は保永昇男、ウルティモ・ドラゴン(アステカ・スープレックスの名称で使用)、高岩竜一ツバサ空牙丸藤正道大和ヒロシ、竹下幸之介。
ジャガー・スープレックス
ジャガー横田のオリジナル技。向かい合った相手の右腕を左手で左腕を右手で掴み、自身の右腕の下を相手に潜らせて相手の背後に回り込み、掴んでいた両腕を交差させて体をブリッジさせる勢いで肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。
クラッシュ・スープレックス
長与千種のオリジナル技。相手の背後に回り込んで相手の両肘あたりでクラッチして相手の両腕の動きを封じて体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。
あすなろスープレックスII
山田恵一のオリジナル技。相手の背後に自身の体を回り込ませて相手の右腕を抱き込むような感じで自身の右腕を相手の胸の方に回し、右手で相手の左手首を掴み、背中の方から相手の左脇に差し込んだ左手で自身の右手首を掴み、体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずフォールを奪う。
トルネード・ジャーマン・スープレックス
中嶋勝彦のオリジナル技。相手の背後に回り込んで相手の腰に左腕を引っ掛けて、外腿の方から相手の右腿の裏に右手を回し、相手の、へそのあたりで自身の両手をクラッチして体をブリッジさせて相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。
カオスセオリー・スープレックス
ロールスルー・ジャーマン・スープレックスとも呼ばれる。ダグ・ウイリアムスのオリジナル技。相手の背後に回り込んで腰を両手で抱え込み、相手の体をタックルするような感じで後ろから押して相手の体を正面からコーナーに衝突させて相手が跳ね返る反動を利用して相手を抱えたまま自身の体を後転させて自身の両足がマットに着地したところで素早く体をブリッジさせて無理やり引っこ抜いた相手にジャーマン・スープレックスを仕掛けてフォールを奪う。
スパイダー・ジャーマン・スープレックス
折原昌夫のオリジナル・ムーブ。リングに背を向ける格好で相手をコーナー最上段に座らせて自身もコーナー最上段に登って相手の背後に腰を下ろして相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでクラッチして胴体を抱え込み、自身の両足のつま先をセカンドロープに引っ掛けて、相手の体を投げっ放し式ジャーマン・スープレックスでコーナーからリングに放り投げて腹筋を使って宙吊り状態になった自身の体を引き起こす。主な使用者は天龍源一郎真壁刀義、大和ヒロシ、日向あずみ。

なお、サイド・スープレックスフロント・スープレックスダブルアーム・スープレックスなどもあるが、これらをスープレックスと呼ぶのは厳密には正確ではない。また、以下の派生技も同様である。

防御法[編集]

  • 肘で相手の頭を打ちつけて脱出する(脱出に成功した場合は素早く相手の背後に回り込んで、ひるんだ相手の背後を取ることが可能であり、ジャーマン・スープレックスをかけかえすチャンスがある)。
  • 手で強引に相手の腕のホールドを解いて脱出する。
  • 自身の足を相手の脚の後ろに回してフックする(その後、エルボーなどで脱出する)。
  • 投げようとする隙を突き、相手の腕をホールドしたまま前転して丸め込み、ピンフォールに持ち込む。
  • 後方へと相手の股間を蹴り上げる(急所攻撃のため一般に反則であるが蹴り上げると同時にレフェリーにすがりついて自身の蹴りを見せないようにする者もいる)。
  • 投げられた瞬間、後方へと身体を回転させてバック転の要領で足から着地する(投げっ放し式ジャーマン・スープレックスに対して特に有効である)。
  • 投げられた瞬間、意図的に背後に跳んで背中から落ちることで直接首から落とされることによるダメージを軽減する。
  • ロープに逃れる(このとき、ロープブレイク判定のため、レフェリーはロープを注視する。前述の「相手の股間の蹴り上げる」のチャンスでもある)。
  • ロープに逃れて反動でジャパニーズ・レッグロール・クラッチに持ち込む。

その他[編集]

  • 「ジャーマン」の由来はカール・ゴッチがドイツ出身とされていたためである。ゴッチは単に「スープレックス」と呼んでいる。
  • アメリカではゴッチのジャーマン・スープレックスはアトミック・スープレックスAtomic Suplex)と呼ばれている。
  • ゴッチがジャーマン・スープレックスをはじめて日本で披露した際に東京スポーツ桜井康雄がインタビューで技の名前を訊ねて記事にも、そのように書いた。しかし、「ジャーマン・スープレックス」では紙面を飾りにくいと考えたデスクが「日本語じゃなんて言うんだ」と聞いた際に桜井が米国でカール・ゴッチのスープレックスがアトミック・スープレックスと呼ばれていたことを参考に「原爆固めです」と答えたのが命名となったという(『リングの目激者』〈都市と生活社、1983年〉180Pから181Pより)。
  • 同様の日本語名が付けられた技の代表例は以下の通り。
  • 週刊プロレスでは被爆者等に配慮して「原爆固め」という名称を使用していない。
  • WWEでは首から落ちない(落とさない)ように掛けられる側がリングを蹴って反動をつけて肩から落ちている。とは言え、日本のプロレスでも自身から跳んで叩きつけられるタイミングを捉えてダメージを軽減するのは受身の技術として立派に存在している。
  • 総合格闘技の試合でもレスリング出身レスラーが希に使用することがある。UFCダン・スバーンが連発で使用してファンを歓喜させた。総合格闘技の雑誌や公式サイトでは「ジャーマン」と略称で使用していることが多い。シュートボクシングでは競技確立の手助けをしてくれたゴッチに敬意を表して「ジャーマン・スープレックス」とプロレスと同じ名称で使用している。
  • 1974年3月19日に新日本プロレス蔵前国技館大会で行われたアントニオ猪木ストロング小林戦では一進一退の激闘の末に猪木が決め技として使用して勝利を収めた。日本人レスラー同士の試合という話題性と衝撃的な決め技の結末に観客と視聴者に鮮烈な印象を残した。
  • 2007年11月10日放送分のテレビ朝日系列の番組「タモリ倶楽部」でゴッチの追悼企画として「ジャーマン・スープレックス大賞」と題して有名な使い手(主にゴッチの弟子筋レスラー)が試合でジャーマン・スープレックスを仕掛けるシーンを集めて鑑賞するという企画が放送された。この中で紹介されたレスラーは登場順にゴッチ、藤波辰爾初代タイガーマスク佐山聡)、前田日明高田延彦山崎一夫越中詩郎ヒロ斎藤馳浩リック・スタイナー関本大介であった。

関連項目[編集]