ジャーマン・スープレックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
クリス・ベノワによるジャーマン・スープレックス。

ジャーマン・スープレックスGerman Suplex)は、プロレス投げ技固め技の名称である。日本名は原爆固め(げんばくがため)。

かけ方[編集]

相手の背後に回り込んで相手の腰を両手で抱え込み、自身の両手を相手の、へそのあたりでしっかりとクラッチさせて体をブリッジさせる勢いで相手の体を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。

ブリッジした際に、かかとを上げて爪先立ちになる者とベタ足の者が存在する。かかとを上げるのはフォール時にブリッジによる相手の首の圧迫を狙ったもの(落差ではなく、投げる角度に関係する)。その分ベタ足よりブリッジとしての安定感は減少する。

日本名は(ホールドした場合は)原爆固め。投げ捨てた場合は原爆投げと呼ばれる。また、その形から人間橋という別名も付けられている。

創始者と名手[編集]

元々レスリングでスープレックス(相手の背後から後ろに反り投げる)と呼ばれたものをレスリング出身のカール・ゴッチがプロレスに取り入れたことが始まり。日本で初公開されたのは1961年4月(公開練習において)。モンスター・ロシモフ(後のアンドレ・ザ・ジャイアント)も、この技で仕留めた実績を持つ(ちなみに当時のアンドレの体重は180kgであり、アンドレ相手に成功させたのはゴッチただ1人である)。ヒロ・マツダはゴッチから直々に伝授されて名手として知られた。

ゴッチが新日本プロレスに協力した関係で、この技は主に新日本出身レスラーに引き継がれていくことになる。アントニオ猪木をはじめとして藤波辰爾(後にドラゴン・スープレックスを考案)、初代タイガーマスク(後にタイガー・スープレックスを考案)、前田日明山崎一夫ヒロ斎藤などが使い手となり、前座の荒川真でさえ得意技にしていた。

全日本プロレスにおいてもジャンボ鶴田が修行を終えて帰国した直後にジャーマンを使い始めたのがきっかけとなり使い手が増え始める。鶴田のジャーマンは上背を活かした本当に円を描くかの如き見事なブリッジを誇ったがバックドロップフィニッシュ・ホールドにするようになって以降は封印してしまった。理由は「威力がありすぎる上に調節が難しい」、「はげるから」等諸説ある。師匠のジャイアント馬場もできたが同じように「俺が使うとシャレにならん」という理由で自ら封印したという話もある。膝を悪くするまでは大仁田厚も使っていた。越中詩郎三沢光晴も使い手である。その後、三沢、川田利明らによる投げっぱなし式を使った攻防が過熱して四天王プロレスと言われる独自のスタイルを確立していく。

国際プロレスでも回数は少ないがサンダー杉山グレート草津が使用していた。杉山はマツダに次ぐ日本人2人目の使い手と言われている。

外国人レスラーではボブ・バックランドゲーリー・オブライト、危険な投げっぱなし式の元祖であるリック・スタイナー、同じく投げっぱなし式のベイダーなどが挙がる。

かつては圧倒的な威力を誇り、芸術的な美しさを持つ技であったことからプロレス技の王と称されてきたが改良を加えた派生技の発展と受身の技術の向上に伴い、中盤の痛め技として使われることが多くなっていた。しかし、近年では高山善廣エベレスト・ジャーマン・スープレックスを筆頭にドン・フジイナイス・ジャーマン中嶋勝彦高角度式ジャーマン・スープレックス、空中で一旦タメを作る佐藤耕平2段式ジャーマン・スープレックス、膝をバネにして威力を増す柿本大地など技を磨き上げることで決め技として使用する選手も増えてきている。

派生技[編集]

ここで紹介するのは複数のレスラーが使用するものにとどめる。

投げっ放し式
投げ捨て式放り投げ式ホイップ式とも呼ばれる。第一人者はリック・スタイナーブリッジさせる際に相手の体を抱えていた両腕のクラッチを切って後方へと反り投げる。主な使用者は三沢光晴スコット・スタイナーゲーリー・オブライトベイダー杉浦貴諏訪魔本田多聞は相手の体を軽く宙に持ち上げて一旦停止して十分にタメを作ったところで後方へと反り投げるのをデッドエンドの名称で使用。また、馳浩は「ブリッジの美しさを壊している」として投げっぱなしジャーマンを否定する旨の発言をしている。
高速式
低空式とも呼ばれる。相手をあまり高く持ち上げないで投げるスピードを速くして後方へと反り投げる。投げるというよりも後方へと相手をスライドさせるようなイメージ。主な使用者はヒロ斎藤、ゲーリー・オブライト、山崎一夫ドン・フジイナイス・ジャーマンの名称で使用)。
高角度式
相手を高く持ち上げて角度をつけて後方へと反り投げる。高山善廣は長身から高い角度で仕掛けることからエベレスト・ジャーマン・スープレックスと呼ばれている。中西学は、これに対抗して富士山ジャーマン・スープレックスと名付けた。主な使用者として初代タイガーマスクが有名だが前述の2人とは若干モーションが異なり、さらにブリッジを効かせた超高角度式ともいえるものである(別名「蔵前ジャーマン・スープレックス」)。
2段式
急角度式とも呼ばれる。相手を持ち上げて空中でクラッチの位置を下げると同時に一気にブリッジさせて後方へと反り投げる。主な使用者は佐藤耕平中嶋勝彦
連続式
連発式起き上がり小法師式ロコモーション式とも呼ばれる。相手を1度後方へと反り投げたあと相手をクラッチしたまま横に寝転がって仰向けから、うつ伏せに移って立ち上がりながら相手を起き上がらせて、もう1度後方へと反り投げる。主な使用者はゲーリー・オブライト、クリス・ベノワ菊地毅
足抱え込み式
トルネード式とも呼ばれる。中嶋勝彦のオリジナル技。相手の腰に左腕を引っ掛けて、外腿の方から相手の右腿の裏に右手を回して相手の、へそのあたりで自身の両手をクラッチして後方へと反り投げる。
ハイクラッチ式
腕をクラッチする位置が腰でなく胸もしくは脇の下から後方へと反り投げる。主な使用者は杉浦貴。
ダルマ式
相手の両腕と胴体を抱え込み、後方へと反り投げる。主な使用者は保永昇男棚橋弘至宮原健斗戸澤陽パッケージ・ジャーマン・スープレックスの名称で使用)、風間ルミ
マヤ式
ウルティモ・ドラゴンのオリジナル技。ジャーマン・スープレックスを決めたあと両足でマットを蹴って自身の下半身を上方向へと跳ね上げてエビ固め風に丸まった相手の両腿の裏の上に跨ぐ格好で着地して相手の体から腕を離しながら自身の体をブリッジさせてフォールを奪う。
派生技としてスペル・デルフィンはジャーマン・スープレックス2連発のあとにフォールを奪うのをデルフィン・スペシャル1号の名称で使用。
ローリング式
ジャーマン・スープレックスを仕掛けた自身が1回転したあともう1度ジャーマン・スープレックスを仕掛ける。主な使用者は茂木正淑関本大介ロールスルー・ジャーマン・スープレックスの名称で使用)、キャンディー奥津
デッドリフト式
ぶっこ抜き式とも呼ばれる。うつ伏せに倒れた相手の足側に移動して相手の腰を両手で抱え込み、投げられまいと踏ん張る相手の体を無理やり宙へと抱えて強引に後方へと反り投げる。主な使用者はゲーリー・オブライト、関本大介、杉浦貴、火野裕士ネヴィル高橋裕二郎、戸澤明。
スパイダー・ジャーマン・スープレックス
折原昌夫のオリジナル技。リングに背を向ける格好で相手をコーナー最上段に座らせて自身もコーナー最上段に登って相手の背後に腰を下ろして相手の腰に両腕を回して胴体を抱え込み、自身の両足のつま先をセカンドロープに引っ掛けて、相手の体を投げっ放しジャーマン・スープレックスでコーナーからリングに放り投げて腹筋を使って宙吊り状態になった自身の体を引き起こす。主な使用者は真壁刀義
クロスアーム・スープレックス
保永昇男のオリジナル技。正面に回した右手で相手の左腕を左手で相手の右腕を、それぞれ掴み、掴んだ両腕を相手の胸の前で交差させて後方へと反り投げる。主な使用者は高岩竜一大和ヒロシ
あすなろスープレックスII
飛燕原爆固めとも呼ばれる。山田恵一のオリジナル技。相手の背後に自身の体を回り込ませて相手の右腕を抱き込むような感じで自身の右腕を相手の胸の方に回し、右手で相手の左手首を掴み、背中の方から相手の左脇に差し込んだ左手で自身の右手首を掴み、体をブリッジさせる勢いで相手を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずフォールを奪う。
ライガー・スープレックス
獣神サンダー・ライガーが獣神ライガーの時代に開発したオリジナル技。相手の背後に自身の体を回り込ませて相手の腰に回した右手で正面にある相手の左腕を掴み、腿の裏の方から相手の股に左手を差し込み、体をブリッジさせる勢いで相手の体を後方へと反り投げて肩口から相手を叩きつけてブリッジを崩さずにフォールを奪う。
カオスセオリー・スープレックス
ロールスルー・ジャーマン・スープレックスとも呼ばれる。ダグ・ウイリアムスのオリジナル技。相手の背後に回り込んで腰を両手で抱え込み、相手の体をタックルするような感じで後ろから押して相手の体を正面からコーナーに衝突させて相手が跳ね返る反動を利用して相手を抱えたまま自身の体を後転させて自身の両足がマットに着地したところで素早く体をブリッジさせて無理やり引っこ抜いた相手の体を急角度ジャーマン・スープレックスで叩きつけてフォールを奪う。

なお、サイド・スープレックスフロント・スープレックスダブルアーム・スープレックスなどもあるが、これらをスープレックスと呼ぶのは厳密には正確ではない。また、以下の派生技も同様である。

防御法[編集]

  • 肘で相手の頭を打ちつけて脱出する(脱出に成功した場合は素早く回り込んでひるんだ相手の背後を取ることが可能であり、ジャーマン・スープレックスをかけかえすチャンスがある)。
  • 手で強引に相手の腕のホールドを解いて脱出する。
  • 自らの足を相手の脚の後ろに回してフックする(その後、エルボーなどで脱出)。
  • 投げようとする隙を突き、相手の腕をホールドしたまま前転して丸め込み、ピンフォールに持ち込む。
  • 後方の相手の股間を蹴り上げる(急所攻撃のため一般に反則であるが蹴り上げると同時にレフェリーにすがりつき、自分の蹴りを見せないようにする者もいる)。
  • 投げられた瞬間、後方に身体を回転させてバック転の要領で足から着地する(投げっぱなし式(リリース式)のジャーマン・スープレックスに対して特に有効である)。
  • 投げられた瞬間、意図的に背後に跳び、背中から落ちることで直接首から落とされることによるダメージを軽減する。
  • ロープに逃れる(このとき、ロープブレイク判定のためレフェリーはロープを注視する。前述の「相手の股間の蹴り上げ」のチャンスでもある)。
  • ロープに逃れて反動でレッグロールクラッチホールドに持ち込む。

その他[編集]

  • 「ジャーマン」の名の由来はカール・ゴッチドイツ出身とされていたため。ゴッチ自身は単に「スープレックス」と呼ぶ。
  • アメリカではゴッチのジャーマン・スープレックスはアトミック・スープレックスAtomic Suplex)とも呼ばれていた。
  • ゴッチがジャーマン・スープレックスをはじめて日本で披露した際に東京スポーツ桜井康雄がインタビューで技の名前を訊ねて記事にも、そのように書いた。しかし、「ジャーマン・スープレックス」では紙面を飾りにくいと考えたデスクが「日本語じゃなんて言うんだ」と聞いた際に桜井が米国でカール・ゴッチのスープレックスがアトミック・スープレックスと呼ばれていたことを参考に「原爆固めです」と答えたのが命名となったという(『リングの目激者』〈都市と生活社、1983年〉180Pから181P)。
  • 同様の日本語名が付けられた技の代表例は以下の通り。
  • 週刊プロレスでは被爆者等に配慮して現在は「原爆」という名称を使用していない。
  • WWEでは首から落ちない(落とさない)ように掛けられる側がリングを蹴って反動をつけて肩から落ちている。とは言え、日本のプロレスでも自分から跳び、叩きつけられるタイミングを捉えてダメージを軽減するのは受身の技術として立派に存在している。
  • 総合格闘技の試合でもレスリング出身の選手が希に見せる。UFCのリング上でダン・スバーンが連発で見せてファンを歓喜させた。総合格闘技のマスコミ誌面やサイトでも「ジャーマン」と略称で呼ばれることが多い。シュートボクシングでは競技確立の手助けをしてくれたゴッチに敬意を表して「ジャーマン・スープレックス」とプロレスと同じ名称をつかっている。
  • 1974年3月19日に新日本プロレス蔵前国技館大会で行われたアントニオ猪木ストロング小林戦では一進一退の激闘の末にアントニオ猪木が決め技としてジャーマン・スープレックスを使い勝利を収めた。日本人同士の試合という話題性、そして衝撃的な決め技の結末に当時の観客および視聴者に鮮烈な印象を残した。
  • 2007年11月10日放送分のタモリ倶楽部においてゴッチの追悼企画として「ジャーマン・スープレックス大賞」と題して有名な使い手(主にゴッチの弟子筋のレスラー)がジャーマン・スープレックスを敢行するシーンを集めて鑑賞するという企画が放送された。この中で紹介されたレスラーは登場順にカール・ゴッチ、藤波辰爾初代タイガーマスク前田日明高田延彦山崎一夫越中詩郎ヒロ斎藤馳浩リック・スタイナー関本大介であった。

関連項目[編集]