ツーリング (オートバイ)

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南米の広大なパンパを行くツーリング。
キャンプを行うツーリングを「キャンプツーリング」と言う。キャンプ地での様子(2008年、アメリカ合衆国ヴァージニア州にて)
ホンダ・カブでツーリングを楽しむ若者たち(2010年、UKにて)

オートバイツーリング(: touring) とは、オートバイを移動手段として利用しながら観光地や景勝地などを訪れたり、単なる移動手段としてではなく、オートバイで走ることを楽しむために山岳地や海岸沿いなどをルートに選んで走ることなどの総称である。

概要

ツーリングに付帯する条件に応じて接頭辞を付けて呼ばれる場合もある。たとえば、走行する距離が短い場合は「ショートツーリング」、長い場合は「ロングツーリング」と呼び分けられ、複数の人数が同行する場合は「グループツーリング」や「マスツーリング」、1人で行動する場合は「ソロツーリング」と呼ぶ場合もある。日帰りの場合は「日帰りツーリング」とも呼ばれ、宿泊先の確保や宿泊に必要な手回り品の積載は必要ない。出先でキャンプする場合には「キャンプツーリング」とも呼ばれ、テントや調理器具などを積載しての移動となる。移動経路に高速道路を利用する場合は「高速ツーリング」、林道を走ることを目的としたツーリングは「林道ツーリング」と呼ばれる。二人乗りで行うツーリングは「タンデムツーリング」と呼ばれ、2台に分かれて移動する場合に比べ、互いにコミュニケーションがとりやすい。

日本は隣国と地続きではないという地理的な理由や車両登録にかかわる制度の制約により、日本の国境を越えるツーリングには出入国手続きと同時に車両の輸送手段や自動車カルネ国際ナンバーの取得が必要となる。ただし、アメリカ合衆国と日本、大韓民国と日本は互いに自動車カルネ国際ナンバーを必要としない特例条約が結ばれているうえ、日本と韓国の間にはフェリーが定期運行されている。また日本からは、渡航先にレンタルバイクを用意してガイドが同行するツアーパッケージも商品化されている[1]

周遊地の特徴

日本国内

北海道

北海道は本州に比べると平坦で直線が長い道路や、信号機や渋滞が少ない道路が多い。平均気温は真夏でも20℃以下の地域が多く[2]、湿度が低い気候で、冷房装置のないオートバイでも比較的快適に移動できる反面、天候が悪化すると真夏でも防寒着が必要になる場合がある。景色や味覚も本州とは異なる、特徴的なものが多い。無料ないしは低料金のキャンプ場やライダーハウスユースホステルなども多く、宿泊にかかる費用を安く抑えられる。しかし、オートバイツーリングを安全に行える季節は本州より短く、路面が積雪あるいは凍結する地域がほとんどである。また、北海道外からは地続きで移動ができず、フェリーや航空路線、車両輸送サービスなどで運搬するか、現地でレンタルバイクを借りる方法がとられる。かつて、北海道をツーリングするライダーが「ミツバチ族」と呼ばれていた1970年代から、荷物満載で道内を旅行するライダーの姿は北海道の夏の風物詩となっている。

留萌市士別市紋別市などから北の道北地方は幹線道が少なく、南北へ移動する際には内陸の天塩川沿いか日本海沿岸、オホーツク海沿岸のいずれかに限られ、いずれも道路構成は変化に乏しい。沿岸部は宗谷丘陵に代表されるような周氷河地形によって緩やかな丘陵帯が地形の大半を占める。日本最北端の宗谷岬サロベツ原野の日本海沿岸を北上する日本海オロロンライン朱鞠内湖を一周するルートなどがツーリングの好適地として紹介されている[3]。また、フェリーを利用して利尻島礼文島などの離島に渡るライダーも見られる。

日高山脈より東の道東地方は国立公園や国定公園が多く、世界遺産知床ラムサール条約指定湿地の釧路湿原などがある。十勝地方は広大な平野部を利用した畑作地帯を貫く人工的かつ計画的に区分けされた見通しの良い直線路が多く、郊外に出るとほとんど信号や住宅地が無い。オートバイや自動車の速度が出やすく、毎年、重大な交通事故が発生している。中央部から北東部へかけては山がちで、阿寒岳や知床山脈といった山岳地帯の道路や、起伏のある丘陵地に作られた酪農地帯の中を貫く直線路など変化に富んでいる。開陽台などのキャンプ場や美幌峠などのワインディングロード、道東スーパー林道といった、オートバイツーリングならではの観光地も数多くガイドブックに紹介されている。このほか、トド肉やブドウエビなど、道東地方特有の珍味もいくつかある。

北海道の中央部からやや西寄りの道央地方には、札幌市旭川市室蘭市といった北海道内でも比較的大きな都市があり、これらの都市部では給油や買い物などの面では沿道の利便性が比較的高く、高速道路が古くから開通している反面、交通量が多く信号機のある交差点が多い。日本の国道で一番長い直線は道央の美唄市から深川市にかけての国道12号であるが、信号の多い幹線道路である。道央東部は日高山脈の西麗にあたり、富良野市美瑛町などでは丘陵地に広がる畑作地帯を抜ける直線路が見られ、夕張市などでは炭鉱で栄えた町に通じていた鉄道の廃線路がある。南東部の日高地方は競走馬を生産する牧場が多い。長距離フェリーのターミナルである苫小牧港苫小牧東港小樽港があり、本州から上陸する基点とされることが多い。道央西部の日本海側は入り組んだ海岸線に沿ってカーブする国道や、急峻な山地を越える峠道が多い。

北海道西部の道南地方は、北海道と本州を最短距離で結ぶフェリーのターミナルである函館港があり、昔から「北海道の玄関口」と認識されることが多い。道南地域の景観や気候、風土は地理的条件や歴史から東北地方と似ており、地形も北海道の中では平坦でまっすぐな道路は少ない。

本州・四国

東北地方は北海道よりも近い避暑地として、とくに首都圏から出かけるツーリングライダーが昔から多い。東北地方を南北に貫く東北自動車道を中心にして、東西への枝道となる山形自動車道秋田自動車道八戸自動車道が整備され、各地に点在する景勝地や温泉へ行きやすくなった。名古屋から仙台、あるいは敦賀から秋田へのフェリー便も運行されていて、これらのフェリーを利用して関西や東海圏から訪れるライダーもある。

関東地方の代表的な目的地としては、群馬県榛名山赤城山栃木県日光那須東京都奥多摩埼玉県秩父地方千葉県の南房総・九十九里地域、神奈川県静岡県にまたがる箱根山周辺や伊豆半島、などが挙げられる。伊豆諸島の三宅島では噴火災害の復興策の一環として、観光に訪れるライダーを誘致するため、2007年からチャレンジ三宅島モーターサイクルフェスティバルが開催されている。

甲信地方は、中京圏首都圏からのアクセスが容易で、観光用道路や飲食店、宿泊施設などが多く、長野県や富士山周辺を中心にライダーに人気が高い。

近畿地方の日本海側は京阪神からアクセスしやすい温泉地や景勝地としてオートバイツーリング以外でも多くの観光客が訪れる。沿岸にはワインディングも多い。瀬戸内海側は六甲に山岳道路が多くあり、訪れるライダーは多い。都市部は京都奈良などの観光地が多く積雪なども少ないことから、一年を通じてオートバイツーリングで訪れることができる。南部は沿岸部、山間部共にワインディングが多いが、近畿地方の他の地域に比べると高速道路が発達していないため、移動に時間がかかる。

中国地方は九州や四国と比べて、豪快なワィンディングに恵まれていないものの、瀬戸内海の島々を巡るルート、日本海の雄大な風景を楽しむ日本海ルートなど様々な面が楽しめる。海だけではなく中国山地沿いには山並みを楽しむルートも多い。比較的、道の駅の整備も進んでいるため、ツーリング中の休憩に利用しやすいポイントが多い。

四国地方へは、本州の瀬戸内海沿岸や九州から複数の航路でフェリーが運行されているほか、東京と徳島を結ぶフェリーも運航されている。1980年代からは本州四国連絡道路が利用できるようになり、オートバイツーリングが容易になった。名所や旧跡、讃岐うどんをはじめとする郷土料理などが多い。四国八十八箇所巡りを目的としたツーリングを行うものもいる。

九州・沖縄

九州地方は景勝地や温泉が多く、ツーリング好適地として海岸線では西海国立公園雲仙天草国立公園玄海国定公園日豊海岸国定公園日南海岸国定公園、山間地では阿蘇くじゅう国立公園霧島錦江湾国立公園(旧霧島屋久国立公園)、耶馬日田英彦山国定公園などがある。特に阿蘇くじゅう国立公園内にある通称「やまなみハイウェイ」や阿蘇外輪山周辺は、休日は九州各地のみならず本州方面からツーリングに訪れるライダーは多い。福岡県北部の海岸線や福岡市東区の海の中道、福岡県西北部の糸島半島や佐賀県北部の唐津市や松浦半島は、弓なりの長大な砂浜海岸と松原が多い。

国道3号線と10号線を利用した九州一周コースは、観光を省略すれば一泊二日の簡便なコースである。このコースに大分県の国東半島、鹿児島県の大隅半島薩摩半島、長崎県島原市からフェリーで熊本市へ渡り、天草五橋を経て天草市本渡へ、さらに同市牛深から鹿児島県の長島へのフェリーを利用する天草縦断コース、佐賀県と長崎県を巡るコース等を加えれば、二泊三日から三泊四日のさまざまな変化に富んだツーリングが楽しめる。

このほか、北九州市から福岡市、熊本市、阿蘇市、延岡市、宮崎市を経由し、鹿児島市までの九州S字コース等も楽しめる。

沖縄県は本土から遠い離島にあるため、ライダーは空路で往復し、車両を別にフェリーで航送したり、現地でレンタルオートバイを利用したりといったケースが見られる。

欧州

EU加盟国間では国境でのパスポートの提示を省略していることも多く、国内移動と同様に複数の国にまたがって移動することができる。

スカンジナビア半島南部はストックホルムマルメオスロといった大きな都市が点在していて利便性は高く、フェリーエーレスンド橋などを利用してドイツやデンマークから渡りやすい。スウェーデンは平坦な地形で湖が多く、湖畔のキャンプ場などを利用したキャンプツーリングも可能である。ノルウェーU字谷によって山間部から沿岸部まで起伏が大きく、谷の斜面を一気に下るワインディングも多い。ノルウェー海沿岸は深く入り組んだリアス式海岸となっていて、海岸線に沿って曲がりくねった道路しか整備されていないため海岸に沿っての移動は時間がかかる。また、沿岸部と内陸部、あるいは岬と湾の奥では寒暖の差が大きくオートバイでの移動では服装による寒暖の調節が必要となる。ノルウェーの地方都市には、都市を出入りする自動車に課せられる通行料を支払う必要がある場所もある。

ドイツ北部やデンマーク、オランダは平坦な地形で、沿岸部も含めて比較的緩やかな曲率の道が多い。オランダには跳ね橋がかけられた道路が多く、高速道路も例外ではない。跳ね橋が上がる際、橋の手前では高速道路上で赤色の信号機が点灯し、通行車両は停止が求められる。

ベルギーとルクセンブルクでは、幹線道路は台地や尾根の上を通り急カーブは少ない。一方、古い市街地は谷間にある地形が多く、市街地へ出入りする支線は急カーブの連続する道路になっている。

ドイツ南部やオーストリア、スイス、リヒテンシュタインならびにイタリア北部は急勾配の山並みを縫うように曲がりくねった道路が多く、オートバイツーリングに訪れるライダーが多い。しかしドイツ国内にはオートバイの通行が禁止されている山岳路がいくつかある。高速道路(アウトバーンやアウトストラーダ)も良く整備されていて、短時間で長距離を移動することも、郊外の一般道で沿道の景色をゆっくりと楽しむこともできる。冬季は日の出から日没までの時間が短く、路面凍結や積雪の危険性がある。夏期は20時頃まで明るく、空調のないオートバイでも快適に走れる気温と湿度である場合が多いが、落雷を伴った局地的な豪雨に見舞われることもしばしばある。特にアルプス山脈を越えてドイツ南部とイタリア北部を結ぶルートを走行するツーリングは「トランスアルプス」(trans Alps)と呼ばれる。

ドイツ、オランダ、ベルギーなどでは高速道路の料金が不要である。スイスやオーストリアなどではヴィネット方式で、高速道路の出入り口に料金所はなく、一定期間有効な通行証を購入して車体に貼付することが求められる。フランスやイタリアなどの高速道路は料金所で通行料を支払う方式で、距離に応じた料金体系の区間や距離によらず一律の料金となっている区間がある。

北米

アメリカ合衆国の南東部(サウスカロライナ州やテキサス州など)は、郊外に緩やかなアップダウンとカーブのある道路がある地域がある。年間を通じて降水量が少なく冬季でも温暖で、オートバイツーリングが可能な季節は長いが、夏期は気温40℃に達することもある。スカンクの生息域でもあり、しばしば路上にスカンクの轢死体が放置されて、強い異臭を放っている。路上に広がった体液をうっかり踏むとしばらくオートバイの車体ににおいが残ることがある。

オートバイの輸送手段

  • フェリー
    日本では北海道や離島、韓国へ渡る手段として広く利用されている。欧州ではドーバー海峡や北海を渡る手段として利用される。日本の フェリー会社においては、バイクは車両ではなく特殊手荷物として扱われ、四輪車に比べ運賃が大幅に安くなっている。また出発港でバイクを引き渡し、到着港で引き取る「無人航送」と呼ばれるサービスが用意されている航路もあり、ライダーは別の交通手段を利用して移動できる。特に長距離航路において、ライダーの拘束時間を大幅に短縮することができる。
  • 航空路線
    日本国内では 全日空の子会社であるANAセールスが最低1泊の宿泊込みツアーとして、夏期限定で「スカイツーリング 北海道」を催行している。このツアーではライダーとバイクが同じ便で運ばれる。発着空港は近年では新千歳⇔羽田、新千歳⇔伊丹となっている。期間は年によって異なり、開始は5月か6月、終了は9月か10月である。
  • オートバイ輸送サービス
    日本国内では専門業者や引越業者によるオートバイをトラックに載せて運ぶサービスがあり、全国各地で利用可能である。デポと呼ばれる集配拠点で受け渡しが行われる場合と、指定した住所まで引き取りと配達を行うサービスがある。ライダーは車両を預けた後に別の交通手段で車両の受け取り先へ移動する。多くの場合、オートバイの輸送にかかる時間はライダーの移動時間より長い。
  • レンタルバイク
    北海道や沖縄にはレンタルバイクのサービスを行うバイクショップなどがある。北海道では1日の走行距離に制限を設けている場合もある。
  • カートレイン
    英仏海峡トンネルでは自動車やオートバイを乗客と一緒に輸送するカートレインとしてユーロトンネルシャトルが運行されている。日本では1986年から一時期、上野駅大阪駅函館駅の間を「モトとレール・MOTOトレイン」が運行されたことがあったが、2010年現在存在しない。
  • トランスポーター
    欧州や北米では乗用車で牽引するトレーラーにオートバイを積載して遠くへ出かけ、目的の地域だけをオートバイで周遊するツーリングスタイルも一般的である。

オートバイのジャンルごとの特徴

基本的にどのジャンルの車種でもツーリングは可能で、大きな荷物を載せて長距離を旅行する用途を主眼として設計されていないような車種であっても、ツーリングに利用するユーザーは少なくない。むしろ、創意工夫や達成感を楽しむユーザーも多く、オートバイの嗜好性の高さを表している。

ツアラー
ツーリングを主な用途として設計された車種のジャンルで、走行安定性や荷物の積載性、後席乗員の快適性などを重視した車体構成となっている。大型の風防(カウル)を持つ車種が多く、走行風を受けることによる乗員の疲労を軽減している。標準装備としてパニアケース(荷物入れ)を装備する車種もある。ABSトラクションコントロールシステムなどといった安全装備は降雨の中を移動する機会の多いツーリングでは有用で、搭載が始まったのもツアラーに分類される車種からであった。また、基本的にはツアラーの車体構成を持ちながら、スポーツライディングも可能な乗車姿勢や動力性能とした車種も存在し、「スポーツツアラー」などと呼ばれている。かつては排気量250ccの車種も生産されていたが、現在では1000ccクラスが中心である。
スーパースポーツ(レーサーレプリカ)
レースやサーキット走行を考慮して開発されたような車種が多く、旋回性を重視した車体構成のため直進安定性は比較的低い。乗車姿勢は前傾が強く、ライダーの腕や首に負担がかかり長時間の走行で疲れやすい。カウルを装備しているがツアラーのものと比べると小さめで、乗員の疲労軽減よりも高速走行時の空気抵抗の軽減が目的である。車体端部の軽量化や小型化を徹底した造りとなっていて、荷物の積載性は犠牲となっている。後席乗員の快適性も考慮されておらず、タンデムシートが無い車種もある。長距離のツーリングには短所となる面が多いが、山岳路などのワインディングを走ることを主体としたツーリングでは高い運動性能を発揮する。
ネイキッド
オートバイとして基本的で汎用性の高い車体構成を持つ車種が多いジャンルである。重量級のツアラーやクルーザーに比べると軽量で旋回特性が扱いやすく、スーパースポーツなどに比べると楽な乗車姿勢でエンジンの出力特性が低回転から扱いやすい設計となっている車種が多い。ユーザーの好みに応じてビキニカウルやハーフカウルと呼ばれる後付けのカウルや荷台(キャリア)、パニアケースなどを装備して、よりツーリングでの快適性や利便性を拡張することができる。一方、「ストリートファイター」などと分類される車種やカフェレーサースタイルの車種は前傾姿勢が強く、積載性が考慮されていない場合が多い。
クルーザー
日本では「アメリカン」と呼ばれる、北米大陸などでよく見られるカーブも起伏も緩やかな道路を長く移動する用途を背景とするジャンルである。長いホイールベースと浅いキャスター角などにより直進安定性は高く、乗車姿勢が楽なため、カーブが少ないルートでは長時間の走行でも疲れにくい。しかし市街地や山岳路などで狭く、カーブや右左折が連続する運転状況では他のジャンルの車種に比べると疲れやすい。大型のカウルウィンドスクリーン、サドルバッグや大型トランクなど、ツーリングを快適で便利にするオプションやアフターパーツが豊富なジャンルである。
デュアルパーパス
未舗装路や不整地(オフロード)での走行を考慮した装備や車体構造を持ち、なおかつ舗装路や公道(オンロード)での走行にも対応しているものを指す。「オフロードバイク」や「オン・オフモデル」または「オフロードタイプ」などと呼ばれることもあるが、公道を走るための保安基準を満たしていないオフロード専用の車種とは区別してデュアルパーパスと呼ばれる。オフロードでの走行性能を重視した車種から、舗装された道路で長距離を快適に走れることを重視した車種まで、幅広い車種が販売されている。
ビッグスクーター
250cc以上で比較的大型の車体を持つスクーターも広くツーリングに利用されている。オートマチックトランスミッションを採用していて運転操作の負担が少なく、クルーザーのような楽な乗車姿勢により、長時間の運転でも疲れにくい。大型のウィンドシールドを装備した車種もある。シート下に大容量の荷室を持つ車種が多く、車体外部にバッグをくくりつけたりしなくても数日程度の宿泊荷物ならば積載できる。後席も大型でタンデムツーリングが容易である。
小排気量車・小型スクーター
日本では125cc以下など、高速道路あるいはハイウェイを通行できない区分の車種は、都市間の距離が近く郊外の幹線道の走行速度が比較的低い[4]、日本国内の道路事情ではツーリングに用いられる場合がある。長距離の移動は疲れるが、訪問地の市街地などをゆっくりと散策するツーリングに向いている。あるいは、非力なエンジンや小さな車体の走行特性を嗜好するユーザーもある。また、スーパーカブなどのビジネスバイクは大きくて重い荷物を積んで走ることも想定して設計されているため、ツーリングでの積載性も高い。燃費が良く旅費がかからないことも利点である。また、信頼性が高く修理や消耗品の交換が可能な店舗も多い。

装備

オートバイのツーリングでは乗員が道中の天候の変化を受けやすいため、変化に対応できる装備があると快適かつ安全に走行できる。衣服は寒暖の変化に対応できるように重ね着すると疲労を軽減し、体調の悪化を回避して安全な運行の一助となる。

雨具
オートバイ用の雨合羽は一般的用途のものと比べると、走行風とともに前面に受ける雨粒が浸透しにくいように、ファスナーやポケットの蓋の形状が工夫されている。袖や裾がばたつくと乗員が疲労しやすく生地の傷みも早いため、絞れるようになっている製品が多い。ブーツを履いたままでも着脱が可能なように裾を広げることができたり、側面がすべて開く製品もある。リュックサックを背負ったままでも上から着ることができるように後ろ身頃を広くすることができる製品もある。ゴアテックスなどの防水透湿素材を採用した製品も多い。
地図またはポータブルナビゲーション装置
ツーリングマップルなどのライダー向けの地図帳は、小判でページを開いたままタンクバッグなどの地図ポケットに収納できるようなものが多数出版されている。ポータブルナビゲーション装置はオートバイ用に防水性や耐震性を持たせ、グローブをはめたままでも操作しやすい製品がある。
バッグ
ツーリング用バッグはハンドバッグ程度の容量のものからキャンプ道具を収納できる大容量のものまで、ツーリングスタイルに応じた製品が数多く販売されている。オートバイに固定する形態としては、後席あるいはリヤキャリアに乗せるものや、リヤフェンダーの左右にぶら下げるもの、タンクの上部に固定するもの、ハンドルバーやトップブリッジに固定するものなどがある。乗員の身につける形態としてはデイパックやウエストバッグ、ボディバッグなどがオートバイ用品メーカーから販売されている。防水性のある製品や、車体に直接固定できる機能を持ち、車体に乗せたままでも内容物を出し入れできる製品がある。乗員の身につけるバッグはオートバイを離れる際に身につけたまま運べる利点があるが、容量の大きなデイパックなどに多くの荷物を詰めて乗車すると、バランスを崩すきっかけとなったり長時間のツーリングでは疲労の元となりやすい。車体に直接固定できるバッグの中には着脱が容易な機構を備えたものも多い。
整備用品
長期間のツーリングや、すぐに整備工場が見つからない可能性がある地域でのツーリングでは、工具や油脂類などを携行することで故障などのトラブルを回避できる。オフロード走行などで転倒する可能性があるツーリングでは、粘着テープや針金、壊れやすい部品のスペアなどを携行すると山中で走行不能になる危険性を避けられる。同様にタイヤのパンク修理に必要な工具類を携行するとパンクで立ち往生する危険性が回避できる。
ワイヤー錠
長いワイヤー錠を用意してオートバイから離れる際にバッグやヘルメットなど車体につなげて固定すると、盗難を抑止する効果がある。
テント
オートバイ用品メーカーから販売されている製品には、ブーツやヘルメットを夜露に濡らさないで済むように前室が備えられた製品がある。
ラジオなど
携帯用のラジオやテレビ、インターネット接続できる携帯電話を携行すると、天気予報や災害時の情報を得て旅程の安全に役立つ。
無線機
複数人でツーリングする際に、給油や休憩、トラブルなどの連絡に便利である。日本においては法令の適用によりいくつかの種類があり、このうち特定小電力トランシーバーは免許が不要で安価だが100m程度しか通信できない。アマチュア無線は免許が必要で無線機の貸し借りはできず、比較的高価だが10km以上離れていても通信できる。デジタル簡易無線は免許が不要で、アマチュア無線と遜色ない距離の通信ができ、レンタルも可能である。

トラブル対応

日本国内では日本自動車連盟(JAF)や日本ロードサービス株式会社(JRS)がオートバイ対象のロードサービスを行っている。任意保険にもロードサービスを付帯した商品がある。特定メーカーのオーナーズクラブなどがメンバー向けにロードサービス会社と契約している場合もある。

日本ではツーリング中にケガや病気をして出先の病院で治療を受ける場合でも、健康保険証を提示しないと治療費の全額を負担しなければならない。

脚注


出典
  1. ^ 道祖神 海外バイクツアー MOTORCYCLE TOUR THE WORLD”. 2011年7月4日閲覧。
  2. ^ 北海道の気候情報:各都市平均気温”. 株式会社ツーリストサービス北海道. 2011年7月4日閲覧。
  3. ^ 昭文社「ツーリングマップル北海道版」
  4. ^ 欧州の法定最高速度は80 - 100km/h、北米では55mph

関連項目