知床 (世界遺産)

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世界遺産 知床
日本
知床五湖と硫黄岳
知床五湖と硫黄岳
英名 Shiretoko
仏名 Shiretoko
面積 71,100 ha[1]
登録区分 自然遺産
登録基準 (9),(10)
登録年 2005年7月17日
IUCN分類 Ia, IV, V
公式サイト ユネスコ本部(英語)
地図
知床 (世界遺産)の位置
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知床(しれとこ)は、日本にある世界遺産登録物件。

2005年(平成17年)に南アフリカ共和国ダーバンで行われた第29回ユネスコ世界遺産委員会で登録された[2]

概要[編集]

北海道の東端にあるオホーツク海に面した知床半島と、その沿岸海域が登録の対象となっている。半島中央部は、千島火山帯が貫き、海岸線は荒く海に削られた地域である。冬には世界で最も南端に接岸する流氷が訪れる。この流氷により大量のプランクトンサケなどの豊富な魚介類が生息する。サケは秋に知床の河川を遡上し、ヒグマオジロワシなどに捕食される。これらの動物の排泄物および死骸は、植物の栄養素として陸地に還元される。このような、海と陸との食物連鎖を見ることのできる貴重な自然環境が残る点が国際自然保護連合(IUCN)に評価され、2005年に世界自然遺産の登録物件となった。

日本では、自然遺産として3件目の登録。また、海岸線から約3 km沖まで登録地域となり[3]、日本で初めて海洋を含む自然遺産登録物件となった。

構成遺産[編集]

登録までの道標[編集]

  • 1964年(昭和39年)6月1日 - 知床半島が知床国立公園に指定[4][5]
  • 1977年(昭和52年)2月 - 「しれとこ100平方メートル運動[6]」スタート
  • 1986年(昭和61年)~1987年]](昭和62年) - 「知床国有林伐採問題[7]」発生
  • 1998年(平成10年) - 斜里町羅臼町の町予算に世界遺産登録事業費が計上
  • 2003年(平成15年) - 日本政府が知床を世界遺産物件としてユネスコに推薦することを決定
  • 2004年(平成16年) - ユネスコに対して推薦状を提出
  • 2004年(平成16年)7月 - IUCNによる実地調査
  • 2005年(平成17年)7月 - 世界自然遺産として正式登録[2]

登録基準[編集]

この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

具体的には以下の重要性が基準(9)と基準(10)に該当するものとして認められた[1]

  • 基準(9) 知床は海洋生態系と陸上生態系の相互作用を示す顕著な例である。そのたぐいまれな生物生産は流氷の形成に大きな影響を受けている。なお、知床は流氷が漂着する海岸としては、北半球で最南端に位置する。
  • 基準(10) 知床はシマフクロウシレトコスミレなどの絶滅危惧・固有の動植物が生育する地域であり、またサケ類やトドクジラ類などの海洋生物の生存にとって重要な海域を含む。さらには、本地域は世界的にも絶滅の危機にある海鳥の生息地であり、渡り鳥にとって重要な場所でもある[8]

世界自然遺産委員会との対応[編集]

羅臼岳から見た知床連山
野生のヒグマ(ルシャ湾)

第29回委員会決議(2005年)[編集]

2005年(平成17年)第29回世界遺産委員会において知床が世界遺産一覧表に記載された際、

  • 海域管理計画の策定
  • サケ科魚類管理計画の策定
  • 海域の保全状況等について

を課題として取り上げ、後日、評価するための調査団を2008年(平成20年)に招くこと等が勧告された。

委員会決議後の対応(2005年-2007年)[編集]

海域の管理と海域の保全については、漁業規制の強化を行わないことを前提として世界遺産への申請を行ったこともあり、新たな規制を盛り込むこととなりかねない課題は漁業者の反発を招いた。こうした背景から、知床科学委員会の海域ワーキンググループは、多利用型統合的海域管理計画の作成を進め、2007年(平成19年)には海洋環境・生態系の保全と持続的漁業の両立(遺産地域の海域を海岸から3kmへ拡張など)を盛り込んだ計画をまとめている。

サケ科魚類の管理面については、河川工作物(砂防ダム、治山ダム、取水施設など)がサケ科魚類の遡上を妨げるものとして取り上げられたことから、知床科学委員会の河川工作物ワーキンググループにより、改良すべき箇所の選定等が行われ、防災上支障のない場所を中心に魚道の設置などの改良工事が進められた。魚類の管理計画そのものは作られなかった。

現地調査による評価(2008年)[編集]

2008年(平成20年)2月には、ユネスコ世界遺産センター及びIUCNの現地調査団が知床に来訪。河川工作物などの現地調査を通じて、地域社会や関係者の参画による管理と、科学委員会及び各ワーキンググループの設置を通した科学的知見に基づく管理を賞賛し、他の世界自然遺産地域の管理のモデルとなると評価した。

第32回委員会決議(2008年)[編集]

第32回世界遺産委員会では、世界遺産の保全のために、さらに各管理計画の策定や取組状況など9項目について勧告が決議されており、2012年(平成24年)2月1日までに世界遺産センターに報告を提出することがリクエストされている。

オホーツク海からの眺め

観光地としての課題[編集]

観光客とヒグマとの接近、エゾシカキタキツネなどへの餌付け行為などが問題視される。

アクセス[編集]

西から国道334号、東から国道335号が通じている。カムイワッカ湯の滝方面へは、国道344号から北海道道93号知床公園線が通じマイカー規制がなされている[9]

ウトロ側[編集]

羅臼側[編集]

ウトロ - 羅臼[編集]

  • 阿寒バス・斜里バス(6月15日~10月15日運行)

上記の他、定期観光バスや周遊バスが運行される。

知床岬知床観光船など遊覧船からの海上遊覧のみで、上陸はできない。

出典[編集]

  1. ^ a b 知床” (英語). ユネスコ世界遺産センター. 2011年8月12日閲覧。
  2. ^ a b “知床その後 世界遺産登録3カ月 下 国と地方 環境保護へ連携課題”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2005年11月2日)
  3. ^ 知床世界自然遺産エリア”. PucchiNet. 2011年8月12日閲覧。
  4. ^ “知床国立公園 30周年を祝う”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (1994年7月27日)
  5. ^ 知床国立公園”. 環境省. 2011年8月12日閲覧。
  6. ^ イギリスのナショナルトラスト運動にならい、乱開発が予想された開拓跡地の保全、原生林再生をめざし当時の斜里町長、藤谷豊氏が発表した、一口8000円で寄付を募った運動。キャッチフレーズは「しれとこで夢を買いませんか」斜里町役場HP内、環境課自然環境係「しれとこ100平方メートル運動」
  7. ^ 1986年4月21日付朝日新聞「ナショナルトラストの地で、国有林伐採計画再び」との報道に端を発した騒動。大規模な反対運動にもかかわらず伐採は強行されたが計画は変更を余儀なくされた。宇仁義和.1994.知床伐採問題その後-7年前の騒動はいったい何だったのか-.RISE(ライズ),4:42-43.ギミック.札幌.
  8. ^ 知床(日本の世界自然遺産)”. 環境省. 2011年8月12日閲覧。
  9. ^ 知床国立公園マイカー規制のお知らせ”. 知床エコツーリズム推進協議会. 2011年8月12日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]