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「エリス (準惑星)」の版間の差分

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{{混同|エリス (小惑星)}}
{{混同|エリス (小惑星)}}
{{天体 基本
{{天体 基本
| 幅 =
| 幅 = 360px
| 色 = TNOの準惑星
| 色 = TNOの準惑星
| 和名 = エリス[[ファイル:Five fingered hand of Eris symbol.svg|25px|]]
| 和名 = エリス [[ファイル:Five fingered hand of Eris symbol.svg|25px|]]
| 英名 = 136199 Eris
| 英名 = 136199 Eris
| 画像ファイル = Eris and dysnomia2.jpg
| 画像ファイル = Eris and dysnomia2.jpg
| 画像サイズ = 250px
| 画像サイズ = 250px
| 画像説明 = エリスと衛星ディスノミアの画像
| 画像説明 = [[ハッブル宇宙望遠鏡]]によって撮影されたエリス(中央)と衛星ディスノミア(左下)の画像
| 画像背景色 =
| 画像背景色 =
| 小惑星番号 = 136199
| 仮符号・別名 = {{mp|2003 UB|313}}
| 視等級 = 18.8{{R|AstDys}}
| 視直径 = 34.4 ± 1.4 [[秒 (角度)|ミリ秒角]]{{R|Brown2006}}
| 仮符号・別名 = {{mp|2003 UB|313}}{{R|JPL}}<br>Xena
| 分類 = [[準惑星]]<br />([[冥王星型天体]])
| 分類 = [[準惑星]]<br />([[冥王星型天体]])
| 軌道の種類 = [[散乱円盤天体|散乱円盤]]
| 軌道の種類 = [[太陽系外縁天体]]<br>[[散乱円盤天体]]{{R|MPC_SDO}}
}}
}}
{{天体 発見
{{天体 発見
| 色 = TNOの準惑星
| 色 = TNOの準惑星
| 発見日 = [[2003年]][[10月21日]]
| 発見日 = [[2003年]][[10月21日]]<small>(初観測日)</small>{{R|JPL}}<br>[[2005年]][[1月5日]]<small>(新天体としての発見日)</small>{{R|NewPlanet}}
| 発見者 = [[マイケル・ブラウン (天文学者)|M. E. ブラウン]]<br />[[チャドウィック・トルヒージョ|C. A. トルヒージョ]]<br />[[デイヴィッド・ラビノウィッツ|D. ラビノウィッツ]]
| 発見者 = [[マイケル・ブラウン (天文学者)|M. E. ブラウン]]<br />[[チャドウィック・トルヒージョ|C. A. トルヒージョ]]<br />[[デイヴィッド・ラビノウィッツ|D. ラビノウィッツ]]
| 発見方法 =
| 発見方法 =
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{{天体 軌道
{{天体 軌道
| 色 = TNOの準惑星
| 色 = TNOの準惑星
| 元期 = 2014129日 ([[ユリウス通日|JD]] 2,457,000.5)<ref name="JPL"/>
| 元期 = [[2021]][[71]] ([[ユリウス通日|JD]] 2,459,396.5){{R|JPL}}
<!-- 以下、原則として小数第4位を四捨五入して小数第3位まで表示 --->
| 軌道長半径 = 67.781 [[天文単位|au]]<ref name="JPL"/>
| 軌道長半径 = 68.004 [[天文単位|au]]{{R|JPL}}
| 近日点距離 = 37.911 au<ref name="JPL"/>
| 日点距離 = 97.651 au<ref name="JPL"/>
| 日点距離 = 38.526 au{{R|JPL}}
| 離心率 = 0.441<ref name="JPL"/>
| 遠日点距離 = 97.481 au{{R|JPL}}
| 離心率 = 0.433{{R|JPL}}
| 公転周期 = 558.04 [[ユリウス年|年]]<ref name="JPL"/>
| 公転周期 = 204,832.078 [[日 (単位)|日]]{{R|JPL}}<br>(560.80 [[ユリウス年|年]]{{R|JPL}})
| 平均軌道速度 = 3.436 [[メートル毎秒|km/s]]
| 平均軌道速度 =
| 軌道傾斜角 = 43.87 [[度 (角度)|度]]<ref name="JPL"/>
| 近日点引数 = 150.98<ref name="JPL"/>
| 軌道傾斜角 = 43.909[[度 (角)|°]]{{R|JPL}}
| 昇交黄経 = 35.95 度<ref name="JPL"/>
| 近日引数 = 151.446°{{R|JPL}}
| 平均近 = 204.17 度<ref name="JPL"/>
| 昇交黄経 = 36.007°{{R|JPL}}
| 前回通過 = 1698年頃
| 平均近点 = 206.894°{{R|JPL}}
| 回近日点通過 = 2259
| 回近日点通過 = 2,341,678.626 JD<br>([[1699]][[3月13日]])
| 次回近日点通過 = 2,546,510.704 JD{{R|JPL}}<br>([[2260年]][[1月4日]])
| 衛星数 = [[ディスノミア (衛星)|1]]
| 衛星数 = [[ディスノミア (衛星)|1]]
}}
}}
39行目: 43行目:
| 色 = TNOの準惑星
| 色 = TNOの準惑星
| 赤道直径 =
| 赤道直径 =
| 直径 = 2,326&plusmn;12km<ref name="mike"/>
| 直径 = 2,326 ± 12 [[キロメートル|km]]
| 半径 = 1,163 ± 6 km{{R|Sicardy2011|Beatty2010-NewScientist}}
| 質量 = (1.66 ± 0.02)<br />{{e|22}} [[キログラム|kg]] ?
| 平均密度 = 2.26 ± 0.25 [[グラム毎立方メートル|g/cm<sup>3</sup>]] ?
| 表面積 = (1.70 ± 0.02){{e|7}} [[キロメートル|km<sup>2</sup>]]{{Efn2|name="surface_and_volume"|半径より計算}}
| 表面重力 = 0.7 [[メートル毎秒毎秒|m/s<sup>2</sup>]] ?
| 体積 = (6.59 ± 0.10){{e|9}} [[立方キロメートル|km<sup>3</sup>]]{{Efn2|name="surface_and_volume"}}
| 質量 = (1.6466 ± 0.0085){{e|22}} [[キログラム|kg]]{{R|Holler2021}}
| 脱出速度 = 約 1.3 km/s ?
| 平均密度 = 2.43 ± 0.05 [[グラム毎立方メートル|g/cm<sup>3</sup>]]{{R|Holler2021}}
| 自転周期 = 25.9時間<ref name="JPL"/>
| 表面重力 = 0.82 ± 0.02 [[メートル毎秒毎秒|m/s<sup>2</sup>]]{{Efn2|name="parameter"|既知のパラメーターを基に計算}}<br>(0.084 ± 0.002 [[重力加速度|''g'']])
| 脱出速度 = 1.38 ± 0.01 [[メートル毎秒|km/s]]{{Efn2|name="parameter"}}
| 自転周期 = 25.9 [[時間 (単位)|時間]]{{R|JPL}}
| スペクトル分類 =
| スペクトル分類 =
| 絶対等級 = -1.2<ref name="JPL"/>
| 絶対等級 = -1.11{{R|JPL}}
| アルベド = 0.88
| アルベド = 0.96{{+-|0.09|0.04}}{{R|Sicardy2011}}
| 赤道傾斜角 =
| 赤道傾斜角 = 78°<small>(軌道に対して)</small>{{R|Holler2018}}
| 表面温度 = 30 [[絶対温度|K]]
| 最小表面温度 = 30 [[ケルビン|K]]{{R|NewPlanet}}
| 平均表面温度 = 42 K{{R|ErisFacts}}
| 色指数_BV = 0.71
| 最大表面温度 = 56 K{{R|NewPlanet}}
| 色指数_VR = 0.45
| 色指数_BV = 0.78{{R|Snodgrass2010}}
| 色指数_VR = 0.45{{R|Snodgrass2010}}
<!--
| 色指数_RI = 0.33
| 色指数_RI = 0.33
| 色指数_RJ = 0.56
| 色指数_RJ = 0.56
| 色指数_JH = -0.29
| 色指数_JH = -0.29
| 色指数_HK = -0.40
| 色指数_HK = -0.40
-->
| 金属量 =
| 金属量 =
| 年齢 =
| 年齢 =
| 大気圧 =
| 大気圧 =
| 大気 =
<!--| 大気 = {{天体 項目|xxx|yy%}}を複数並べる
| 外殻 =
| 外殻 = {{天体 項目|xxx|yy%}}を複数並べる-->
}}
}}
{{天体 終了
{{天体 終了
| 色 = TNOの準惑星
| 色 = TNOの準惑星
}}
}}
'''エリス'''<ref>{{cite book|和書|title=[[天文年鑑]] 2019年版|page=161|ISBN=978-4416718025|publisher=誠文堂新光社}}</ref><ref>{{cite web|url=http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/dwarf_planet.html |title=準惑星|publisher=[[JAXA]]|accessdate=2019-03-09}}</ref>('''136199 Eris''')は、[[太陽系外縁天体]]のサブグループである[[冥王星型天体]]の1つ[[準惑星]]に分類され、[[冥王星]]と同じくらいの大きさと考えられている。
'''エリス'''<ref>{{cite book|和書|title=[[天文年鑑]] 2019年版|page=161|ISBN=978-4416718025|publisher=誠文堂新光社}}</ref><ref>{{cite web|url=http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/dwarf_planet.html |title=準惑星|publisher=[[JAXA]]|accessdate=2019-03-09}}</ref>('''136199 Eris''')は、[[太陽系外縁天体]]のサブグループである[[冥王星型天体]]の1つに属する'''[[準惑星]]'''である。準惑星に分類されている[[太陽系]]内の天体の中では最も[[質量]]が大きく、[[冥王星]]に次いで2番目に[[半径]]が大きい。軌道[[離心率]]が大きい楕円軌道を描いて[[太陽]]を[[公転]]しており、[[散乱円盤天体]]にも分類される。[[ディスノミア (衛星)|ディスノミア]]と呼ばれる[[衛星]]を持っている。[[2003年]][[10月21日]]に撮影された画像に写っていたところを、[[マイケル・ブラウン (天文学者)|マイケル・ブラウン]]が率いる[[パロマー天文台]]を拠点とする観測グループが[[2005年]][[1月5日]]に発見し、[[2006年]][[9月]]に[[ギリシア神話]]に登場する[[エリス (ギリシア神話)|不和と争いの女神]]の名に因んで命名された。現在、[[太陽]]を公転していることが知れてる既知[[天体]]の中では9番目に質量が大きく、[[惑星]]を公転している[[衛星]]も含めると16番目となる。[[直径]]は 2,326 ± 12 [[キロメートル|km]] と測定れており{{R|Sicardy2011}}、まだ[[宇宙探査機]]による接近探査が行われたこがない天体の中では最大である。冥王星の方がわずかに[[体積]]は大きいが{{R|nh20150714}}、質量は[[地球]]の0.28%、冥王星の126%とされている{{R|Holler2021}}。[[自転周期]]は25.9[[時間 (単位)|時間]]と、地球に近い周期となっているが{{R|JPL|InDepth}}、エリスの自転周期については意見が分かれている<ref>{{cite journal|last=Holler|first=B. J.|last2=Benecchi|first2=S. D.|last3=Mommert|first3=M.|last4=Bauer|first4=J.|title=The Not-Quite-Synchronous Rotation Periods of Eris and Dysnomia|year=2020|journal=American Astronomical Society|volume=52|number=6|bibcode=2020DPS....5230706H}}</ref>


発見当初、エリスは冥王星よりも大きいと考えられ、[[アメリカ航空宇宙局]] (NASA) は当初エリスを太陽系の「10番目の惑星」と表現した。この発見はエリスと同等の大きさの天体が将来的にさらに発見される可能性を示すもので、[[国際天文学連合]] (IAU) が初めて[[国際天文学連合による惑星の定義|「''惑星''」という言葉を定義する]]きっかけになった。[[2006年]][[8月24日]]に承認された国際天文学連合による定義で、エリスは[[ハウメア (準惑星)|ハウメア]]、[[マケマケ (準惑星)|マケマケ]]、[[ケレス (準惑星)|ケレス]]および当時は惑星とされていた冥王星と共に「準惑星」という新たな分類に属することになり、[[1930年]]の冥王星の発見以前と同様に太陽系の既知の惑星の数は8個に減った<ref>{{cite press release|title=The IAU draft definition of "planet" and "plutons" |url=http://www.iau2006.org/mirror/www.iau.org/iau0601/iau0601_release.html|publisher=[[国際天文学連合|International Astronomical Union]]|date=2006-08-16|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060820075858/http://www.iau2006.org/mirror/www.iau.org/iau0601/iau0601_release.html|archivedate=2006-08-20|deadurl=yes}}
[[2003年]][[10月21日]]に撮影された画像に写っているところを、[[マイケル・ブラウン (天文学者)|マイケル・ブラウン]]、[[チャドウィック・トルヒージョ]]、[[デイヴィッド・ラビノウィッツ]]により[[2005年]][[1月5日]]に発見され、同年[[7月29日]]に発表された。発見当時は太陽から97[[天文単位]]離れたところにあり、[[黄道]]面からかなり傾いた[[楕円軌道]]を約560年かけて[[公転]]していると考えられている。
</ref>。


なお、日本語表記が同じで紛らわしいが、[[ラテン文字]]で“Ellis”と綴られる[[小惑星]]の (11980) [[エリス (小惑星)|エリス]]とは別の天体である。
なお、日本語表記が同じで紛らわしいが、[[ラテン文字]]で“Ellis”と綴られる[[小惑星]]の (11980) [[エリス (小惑星)|エリス]]とは別の天体である。


== 発見 ==
== 発見 ==
エリスは、[[2005年]][[1月5日]]に天文学者の[[マイケル・ブラウン (天文学者)|マイケル・ブラウン]]と[[チャドウィック・トルヒージョ]]と[[デイヴィッド・ラビノウィッツ]]による観測チーム{{R|NewPlanet}}が[[2003年]][[10月21日]]に撮影されていた画像の中から発見された{{R|Brown2005}}。この発見は、[[ハウメア (準惑星)|ハウメア]]の発見が公表された2日後である同年[[7月29日]]に[[マケマケ (準惑星)|マケマケ]]の発見と共に公表された<ref>{{cite news|author=Thomas H. Maugh II|author2=John Johnson Jr.|url=http://articles.latimes.com/2005/oct/16/local/me-planet16|title=His Stellar Discovery Is Eclipsed|newspaper=[[ロサンゼルス・タイムズ|Los Angeles Times]]|date=2005-10-06|accessdate=2021-08-24}}</ref>。このタイミングで発見が公表された要因として、後に引き起こされる[[ハウメア (準惑星)#発見|ハウメアの発見に関する論争]]が原因の1つとなっている。ブラウンらの観測チームは体系的に太陽系外縁部にある天体を探索しており、それまでにも(50000) [[クワオアー]]や(90482) [[オルクス (小惑星)|オルクス]]、(90377) [[セドナ (小惑星)|セドナ]]などいくつかの大型の[[太陽系外縁天体]]の発見に携わってきた{{R|Schilling2008}}。
エリスを発見したグループは系統的に太陽系外周部にある天体を探索しており、それまでにも[[クワオアー]]や[[セドナ (小惑星)|セドナ]]など大型の外縁天体を発見するなど成果を挙げてきた。エリスも、[[パロマー天文台]]のサミュエル・オースチン反射望遠鏡によって2003年の10月に普段と同じように撮影されたが、同じ場所を写した別の写真と比較され、背景の星空に対してゆっくりと移動していることが判明したのは2005年の1月である。その後追加の観測が行われ、おおよその軌道とサイズが見積もられた。


2003年10月21日に撮影された画像は[[カリフォルニア州]]の[[パロマー天文台]]にある口径1.2 [[メートル|m]]のサミュエル・オースチン反射望遠鏡による定期的な観測で得られたものだが、エリスは夜空の中を非常にゆっくりと移動しているため、画像が撮影された時点では発見されなかった。観測チームが使用した自動画像検索ソフトウェアでは誤検出の数を減らすために、1時間あたり1.5[[秒 (角度)|秒角]]未満の速度で動いているように見える全ての物体を除外した{{R|Brown2005}}。しかし2003年にセドナが発見された際、セドナの夜空での移動速度は1.75秒角/時だった。それを考慮して、観測チームは移動速度が下限値程度の物体が写った古いデータを分析し、除外されたデータを目視による調査で分類した。そして2005年1月、再分析によりエリスの背景の恒星に対して非常にゆっくりと進む様子が明らかになった{{R|Brown2005}}。
== 命名 ==
2006年9月に正式に命名された<ref name="IAUC"/>。それ以前は[[仮符号]]である'''{{mp|2003 UB|313}}'''という名前で呼ばれていた。


その後に実施された追跡観測により、エリスの予備的な[[軌道]]が求められ、これによりエリスまでの距離を推定することが出来た{{R|Brown2005}}。観測チームは、さらなる観測と計算が完了するまでエリスとマケマケの発見の公表を延期することを計画していたが、同じように追跡観測を行っていた大型の別の太陽系外縁天体ハウメアの発見が別の[[スペイン]]の観測チームによって2005年[[7月27日]]に先に公表されて物議を醸したことを受けて、2つの天体の発見を2日後の同月29日に公表することになった{{R|NewPlanet}}。
発見者チームは仮符号が付けられる前から、米国のTVドラマ『[[ジーナ]]』の主人公の名である[[:en:Xena|Xena]](ゼナまたはジーナ)という[[コードネーム]]でこの天体を呼んできた。そのためにこの名称がかなり広まったが、正式名称とはならなかった。


[[1954年]][[9月3日]]に撮影された画像にもエリスが写っていたことが後に判明しており、[[JPL Small-Body Database]] のエリスのページにおける初観測日はこの日付で記されている{{R|JPL}}。
[http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/ 発見者の1人ブラウンが発見を公表したウェブページ]の[[Uniform Resource Identifier|URI]]に "planetlila" という文字列が含まれていたため、「{{mp|2003 UB|313}}の名称はライラ (Lila) だ」という噂が立ったこともある。しかし、Lila はブラウンの娘の名前 Lilah に由来する冗談で、ブラウンはただちにライラは{{mp|2003 UB|313}}の名称ではないと否定した。


2005年[[10月]]に公表されたさらに多くの観測結果で、後に[[ディスノミア (衛星)|ディスノミア]]と命名される[[衛星]]を持つことが判明した。ディスノミアの軌道を観測することで、科学者らはエリスの質量を決定させることが可能となり、[[2007年]][[6月]]に行われた計算ではエリスの質量は冥王星よりも約27 ± 2 %大きい (1.66 ± 0.02){{e|22}} [[キログラム|kg]]と求められた<ref>{{cite journal|last=Brown|first=Michael E.|last2=Schaller|first2=Emily L.|url=http://hubblesite.org/pubinfo/pdf/2007/24/pdf.pdf|format=PDF|title=The Mass of Dwarf Planet Eris|year=2007|journal=Science|volume=316|issue=5831|page=1585|doi=10.1126/science.1139415|pmid=17569855|s2cid=21468196|bibcode=2007Sci...316.1585B|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160304053122/http://hubblesite.org/pubinfo/pdf/2007/24/pdf.pdf|archivedate=2016年3月4日|deadurl=yes}}</ref>。
発見者チームはこの天体が惑星である可能性を考慮したが、惑星の命名規則は存在しなかった。そのため、[[太陽系外縁天体]]に属する[[冥王星族]]以外の小惑星の命名規則に従い、創世神話に由来する名前を提案した。提案名は正式決定まで非公開とされたが、XenaでもLilaでもないことは明言された。また、ブラウンはギリシア・ローマ神話の神が残り少ないことを指摘し、以前に命名提案した[[セドナ (小惑星)|セドナ]]などと同様に「別の伝承 (different tradition)」の名前を提案したと述べているため、エリスではなかった可能性が高い。


== 名称 ==
[[国際天文学連合]] (IAU) は、{{mp|2003 UB|313}}が惑星かどうかはっきりするまで命名はしないと発表した。そして[[2006年]][[8月24日]]、IAUで[[国際天文学連合による惑星の定義|惑星の定義]]が決定され、{{mp|2003 UB|313}}は惑星ではなく、外縁天体かつ[[準惑星]] ([[:en:dwarf planet|dwarf planet]]) である新しいグループの天体(この時点では名称未定)に分類されることになった。その直後の[[9月8日]]、[[小惑星センター]]により[[小惑星番号]] (136199) が付けられた<ref name="MPEC"/>。
エリスは[[ギリシア神話]]に登場する不和と争いの女神[[エリス (ギリシア神話)|エリス]](ギリシャ語:Ἔρις)の名に因んで命名された<ref>{{cite web|last=Blue|first=Jennifer|url=https://astrogeology.usgs.gov/HotTopics/index.php?/archives/211-2003-UB313-named-Eris.html|title=2003 UB 313 named Eris|work=USGS Astrogeology Research Program|date=2006-09-14|accessdate=2021-08-24}}</ref>。この名称は[[2006年]][[9月6日]]に[[カリフォルニア工科大学]]の研究チームによって提案され、同月13日に正式にこの名称で命名された{{R|NewPlanet|IAUC}}。それ以前は、小惑星の命名規則に則って国際天文学連合によって自動的に付与された '''{{mp|2003 UB|313}}''' という[[仮符号]]での名称で呼ばれていた{{R|JPL}}。
[[ファイル:2003 UB313 opname.jpg|thumb|left|300px|パロマー天文台のサミュエル・オースチン望遠鏡によるエリスの低速度撮影画像]]
それに先立つ[[9月6日]]、発見者グループは{{mp|2003 UB|313}}を「エリス (Eris)」と名づけることを提案した。IAUの小天体命名委員会と惑星系命名ワーキンググループはこれを認め、[[9月13日]]に[[天文電報中央局]] (CBAT) により正式に発表された。[[エリス (ギリシア神話)|エリス]]は[[トロイア戦争]]の遠因となったギリシア神話の不和と争いの女神であり、ブラウンは神話でエリスが引き起こした争いを、エリスが天文学にもたらした惑星の定義をめぐる論争に喩えている。{{clear|left}}


== 性質 ==
=== Xena ===
{{mp|2003 UB|313}} が惑星として分類されるか小惑星として分類されるかが不確実で、どちらに分類されるかで異なる命名規則が適用されるので<ref>{{cite web|url=http://www.iau.org/IAU/FAQ/2003_UB313.html/|title=International Astronomical Association homepage|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070930155414/http://www.iau.org/IAU/FAQ/2003_UB313.html/|archivedate=2007-09-30|deadurl=yes}}</ref>、名称の決定は2006年8月24日の国際天文学連合総会での惑星の定義の決議後まで待つ必要があった{{R|IAUC}}。正式に命名されるまでのしばらくの間、{{mp|2003 UB|313}}は ''Xena'' という名称で広く一般に知られるようになっていた。この名称は、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]のテレビドラマ『[[ジーナ]]』に登場する主人公の名である [[:en:Xena|Xena]] (ゼナまたはジーナ)に因んだもので、発見チームによって内部的に使用された非公式なものであった。ブラウンはこの名称について以下のように述べている。
=== 軌道 ===
[[ファイル:Orbit of 2003 UB313 on 30 July 2005.gif|thumb|300px|エリスの軌道]]
エリスの軌道は、[[離心率]]がかなり大きい[[楕円]]を描いていると考えられている。発見当時は太陽から 97 [[天文単位|au]]の距離にあったが、[[近日点]]は 35 auと考えられている(冥王星は 29 から 49.5 auの距離を公転している)。また他の惑星とは違い、[[軌道傾斜角]]44°という、かなり傾いた軌道を持つ。


{{Quote|([[惑星X|惑星'''X''']]の)「X」から始まるのでそれを選んだ。この名前は神話から来ているように聞こえる・・・、そして私たちはそこにもっと多くの女神を連れてくるために取り組んできた。また当時、そのテレビ番組はまだテレビで放送されていた。これは、私たちがどれだけ長く名前を探してきたかを示している。<ref>{{cite news|url=http://www.aas.org/cswa/status/Status_Jan06.pdf|format=PDF|title=Xena and Gabrielle|newspaper=Status|year=2006|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120314161828/http://www.aas.org/cswa/status/Status_Jan06.pdf|archivedate=2012-03-14|deadurl=yes}}</ref>}}
この天体は視等級にして19等と、さほど高性能でない望遠鏡でも観測可能な明るさであるが、軌道傾斜角が大きいために発見が遅れたと考えられる。太陽系の質量の大部分が黄道面上に見出されるため、探査の目もその方向に向いているからである。


<!--
=== 大きさ ===
Brown said in an interview that the naming process was stalled:
[[太陽系]]の天体の明るさは、サイズと[[アルベド]](反射率)から決定される。もし天体のアルベドが大きければ、つまり天体が白に近いほど、小さい半径でも明るく見える。エリスのアルベドは知られていないため、正確なサイズを決定することはできない。しかし、もしアルベドが1で太陽の光を100%反射すると考えても、冥王星と同等のサイズ(直径 2,390 km)があるだろうと考えられている。実際にはアルベドは1よりも小さい値になるので、天体のサイズはそれより大きいということになる。


{{Quote|One reporter [Ken Chang]<ref>{{cite book|title=How I Killed Pluto and Why It Had It Coming|author=Mike Brown|year=2012|publisher=Spiegel & Grau|page=159}}</ref> called me up from ''[[The New York Times]]'' who happened to have been a friend of mine from college, [and] ... asked me, "What's the name you guys proposed?" and I said, "Well, I'm not going to tell." And he said, "Well, what do you guys call it when you're just talking amongst yourselves?"&nbsp;... As far as I remember this was the only time I told anybody this in the press, and then it got everywhere, which I only sorta felt bad about—I kinda like the name.<ref name="WGBH" />}}
発見当初、[[スピッツァー宇宙望遠鏡]]で検出することができなかったため、天体の直径は 3,000 km未満と考えられていた。しかし、この観測では望遠鏡が天体とは別の方向を向いていたことが指摘されており、この上限の値は否定されている。その後[[2005年]][[8月23日]]および[[8月25日|25日]]に改めてスピッツァー宇宙望遠鏡により観測が行われ、冥王星より20%ほど大きい 2,700 kmという結果が出た。
-->
=== 正式名称の選択 ===
[[File:Animation showing movement of 2003 UB313-2-.gif|thumb|left|エリスを発見するために使用された画像上におけるエリスの動きを示すアニメーション。繰り返されて表示される3枚の画像は3時間に渡って撮影されたものである。]]
サイエンスライターの Govert Schilling によると、ブラウンは当初、[[ブラフマン]]が遊んだゲームの結果として宇宙の存在を説明した[[インド神話]]の概念に因んで、{{mp|2003 UB|313}}を ''Lila'' と呼ぶことを考えていたという。また、この名称はブラウンの娘の名前 Lilah とよく似ている。ブラウンは正式に名称が承認されるまで名称を公表しないことに留意していた。これは、その1年前にセドナの名称が正式に承認される前に名称を独自で公表し、議定書に違反する行為として多くの批判を受けたためである。セドナについては議定書の違反があった件以外で名称に異議は唱えられず、競合案となる名称も提案されることはなかった<ref>{{cite web|url=http://www.minorplanetcenter.org/iau/ECS/MPCArchive/2004/MPC_20040928.pdf|format=PDF|title=M.P.C. 52733|date=2004-09-28|publisher=Minor Planet Center|accessdate=2021-08-24}}</ref>。しかし、彼は自身が発見した新天体の情報を[http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/ 個人のウェブページ]にてリスト化していたが、[[ハウメア (準惑星)#発見|ハウメアの発見に関する論争]]の混乱の最中であったため、[[Uniform Resource Identifier|URI]]に含まれる ''/~mbrown/planetlila'' という文字列を変更するのを忘れていた。ブラウンは同僚の天文学者らを不必要に怒らせるもの(セドナの名称の件を踏まえたもの)ではなく、Lila は自身の娘の名前に由来すると述べ、Lila を{{mp|2003 UB|313}}の名称案から外した{{R|Schilling2008}}。


ブラウンはまた、[[ローマ神話]]における冥界の王[[プルートー]]の妻である女神[[ペルセポネー]]の名が{{mp|2003 UB|313}}に与えられるのに良い名称になるだろうと推測していた{{R|NewPlanet}}。この名前は[[サイエンスフィクション]]作品で数回使用されており<ref>{{cite web|url=http://www.sunflower-astronomy.com/KCKCC_Docs/NewsArticles/Geek_Trivia_Planet_X_marks_the_spot.pdf|format=PDF|title=Planet X Marks the Spot|work=TechRepublic|year=2006|accessdate=2021-08-24}}</ref>、[[ニュー・サイエンティスト]]誌が実施した{{mp|2003 UB|313}}に相応しい名称に関する世論調査では1位となった(「Xena」もニックネームとして知られていたが4位となった)<ref>{{cite web|last=O'Neill|first=Sean|url=https://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7811|title=Your top 10 names for the tenth planet|website=New Scientist|year=2005|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080501025106/http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7811|archivedate=2008-05-01|deadurl=yes}}</ref>。しかし、同名の小惑星 (399) [[ペルセフォネ (小惑星)|ペルセフォネ]]がすでに存在していたため、準惑星に分類された{{mp|2003 UB|313}}にこの名称が正式に使用されることは不可能となった{{R|NewPlanet}}。
[[2006年]][[2月2日]]、ドイツ・ボン大学などによる[[IRAM30m望遠鏡]]を用いた波長1.2ミリの電波観測により、直径約 3,000 km(誤差は 400 km以下)であることが確認できた旨の論文が[[ネイチャー]]に掲載された。だが、[[4月11日]]に[[アメリカ航空宇宙局]] (NASA) は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果として直径約 2,400 kmで冥王星よりもやや大きい程度であるとの見解を発表した。


惑星の定義についての論争が終わった後の2006年[[9月6日]]に、発見グループは{{mp|2003 UB|313}}を「エリス (Eris)」と名づけることを提案し、[[9月13日]]に国際天文学連合により正式にこの名称が承認されることになった<ref>{{cite web|url=http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/|title=The Discovery of Eris, the Largest Known Dwarf Planet|publisher=California Institute of Technology, Department of Geological Sciences|accessdate=2021-08-24}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.iau.org/iau0605_Eris.409.0.html|title=IAU0605: IAU Names Dwarf Planet Eris|date=2006-09-14|publisher=International Astronomical Union News|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070104194022/http://www.iau.org/iau0605_Eris.409.0.html|archivedate=2007-01-04|deadurl=yes}}</ref>。名称が正式に承認される5日前の[[9月8日]]には、[[小惑星センター]]により[[小惑星番号]]136199番が与えられた{{R|MPEC}}<ref>{{cite web|url=https://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000241.html|title=No.241: 冥王星の小惑星番号と 2003 UB313 の名称|website=[[国立天文台]] アストロ・トピックス|publisher=国立天文台|date=2006-09-15|accessdate=2021-08-24}}</ref>。ブラウンは、惑星と見なされていた時もあったことから、古代ギリシアおよびローマの文化に関する名称に由来しているものが大部分を占めていた[[小惑星]]とは異なり、他の惑星と同様に[[ギリシア神話]]または[[ローマ神話]]に登場する神の名前に因んで命名するに値すると判断した。ブラウンは2006年に「エリスは人々の間で口論を引き起こすことによって争いと不和を引き起こした」と述べ<ref>{{cite news|author=Andy Sullivan|url=http://www.abc.net.au/science/articles/2006/09/15/1741585.htm|title=Xena renamed Eris in planet shuffle|newspaper=[[ABCニュース|ABC Science]]|date=2006-09-15|access-date=2021-08-24}}</ref>、神話上でエリスが引き起こした争いを、エリスが天文学にもたらした惑星の定義をめぐる論争に喩えている。
[[2010年]][[10月]]、[[チリ]]でエリスによる恒星の[[小惑星による掩蔽|掩蔽]]が観測された結果から、エリスの直径は2,326&plusmn;12kmで冥王星とほぼ同じ大きさだという見解が発表された<ref name="mike"/>。


=== 記号 ===
2015年7月14日に、NASAは[[ニューホライズンズ]]による観測結果から、冥王星の直径を2,370 kmであると発表した<ref name="nh20150714"/>。これらの観測結果からNASAは、「冥王星は[[太陽系外縁天体]]の天体で最大」、即ちエリスは冥王星よりも小さいとしている<ref name="nh20150714"/>。
[[占星術]]において使用されているエリスの記号は、[[ディスコルディア崇拝]]のシンボルに使われる[[ファイル:Five fingered hand of Eris symbol.svg|15px|]] (U+2BF0) と⯱ (U+2BF1) の2つがある。後者は[[火星]]の惑星記号に似ているが、矢印は下を向いている。前者の記号はNASAの公式サイトでも使用されている<ref>{{cite web|url=https://www.jpl.nasa.gov/infographics/what-is-a-dwarf-planet|title= What is a Dwarf Planet|work=Jet Propulsion Laboratory|publisher=NASA|date=2015-04-22|accessdate=2021-10-16}}</ref>。[[ポーランド]]の一部の占星術師の間では、冥王星の更に外側にあるとされる架空の惑星[[:en:Fictional planets of the Solar System#Trans-Neptunian planets|プロセルピナ]](ペルセポネー)をエリスと同一視しており、[[宝珠]]に似たプロセルピナの記号♁ (U+2641) をエリスに対して用いている<ref>{{cite web|author=Paula Kaminska|url=https://jarekgronert.pl/en/proserpina-2003-ub313-called-by-astronomers-eris/ |title=Proserpina (2003 UB313) called by astronomers Eris|website=JarekGronert.pl|date=2006 -08-20|accessdate=2021-10-16}}</ref><ref>{{cite web|author=Bogdanker|url=http://www.astrologyurania.com/2008/02/climate-change-and-proserpinakora.html|title=Climate change and Proserpina/Kora|website=astrologyurania.com|date=2008-02-08|accessdate=2021-10-16}}</ref>。


=== 表面 ===
== 分類 ==
{{Main|惑星の定義|国際天文学連合による惑星の定義}}
エリスは、[[マウナケア天文台群]]の[[ジェミニ天文台|ジェミニ北望遠鏡]]により分光分析が行われている。赤外線による観測では、天体表面に[[メタン]]の氷が存在し、冥王星とよく似た性質であることを示している。太陽系外縁天体でメタンの存在が知られていたのはそれまで冥王星のみであった。海王星の衛星で、[[エッジワース・カイパーベルト]]に起源を有すると考えられている[[トリトン (衛星)|トリトン]]にもメタンがあることが分かっている。
[[File:TheTransneptunians 73AU.svg|thumb|upright=1.25|軌道の[[軌道傾斜角]](縦)と[[軌道長半径]](横軸)で比較した太陽系外縁天体の分布]]
エリスは[[準惑星]]([[冥王星型天体]])に分類される[[太陽系外縁天体]]である{{R|iau2008}}<ref>{{cite web|url=http://www.space.com/scienceastronomy/080611-plutoid-planets.html|title=Pluto Now Called a Plutoid|website=Space.com|date=2008-06-11|accessdate=2021-08-24}}</ref>。また、軌道の特性から[[散乱円盤天体]] (SDO) と呼ばれる分類にも属する。これは太陽系外縁天体のうち、[[太陽系の形成と進化|太陽系形成時]]に[[海王星]]との[[重力相互作用]]によって[[エッジワース・カイパーベルト]]よりもさらに遠くで異常な軌道を描くように「散乱」されてしまったものが属する分類である。エリスは既知の散乱円盤天体の中でも特に大きい[[軌道傾斜角]]を持つ珍しい天体だが、理論モデルからは元々エッジワース・カイパーベルトの内縁付近にあった天体は外縁にあるった天体よりも大きい軌道傾斜角を持った軌道に散乱されることが示されている<ref>{{cite journal|author=Gomes, R. S.|author2=Gallardo, T.|author3=Fernández, J. A.|author4=Brunini, A.|title=On the origin of the High-Perihelion Scattered Disk: the role of the Kozai mechanism and mean motion resonances|journal=Celestial Mechanics and Dynamical Astronomy|year=2005|volume=91|issue=1–2|pages=109–129|doi=10.1007/s10569-004-4623-y|s2cid=18066500|bibcode=2005CeMDA..91..109G}}</ref>。


当初、エリスは冥王星より大きいと考えられていたため、アメリカ航空宇宙局 (NASA) や発見を報道したメディアでは「[[惑星X|第10惑星]]」と表現されていた。このようなエリスの立ち位置に関する不確実性と当時は第9惑星とされていた冥王星をそのまま惑星と分類すべきかどうかについての継続的な議論が行われていたことに応えて、[[国際天文学連合]] (IAU) はこの問題を決定するために「''惑星''」という用語の十分に正確な定義を確立するように天文学者らのグループに委任した。そして、[[2006年]][[8月24日]]に行われた国際天文学連合総会で[[国際天文学連合による惑星の定義|惑星という言葉の定義]]が正式に採択された。これにより、エリスは冥王星などとともに、惑星とは異なる新たな分類「dwarf planet([[準惑星]])」に分類されることになった<ref>
メタンは揮発性が高いため、エリスはこれまでずっと太陽から遠方に存在していたことを示している。これと対照的なのが、同時期に発見された[[ハウメア (準惑星)|ハウメア]]であり、こちらはメタンではなく[[水]]の氷が存在する。これは冥王星の衛星[[カロン (衛星)|カロン]]にも見られる特徴である。
{{cite web|url=http://www.iau.org/fileadmin/content/pdfs/Resolution_GA26-5-6.pdf|format=PDF|title=IAU 2006 General Assembly: Resolutions 5 and 6|date=2006-08-24|publisher=[[国際天文学連合|International Astronomical Union]]|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060928081931/http://www.iau.org/fileadmin/content/pdfs/Resolution_GA26-5-6.pdf|archivedate=2006-09-28|deadurl=yes}}</ref>。発見者の一人であるブラウンもこの分類を認めることを表明している<ref>
{{cite web|author=Robert Roy Britt|url=http://space.com/scienceastronomy/060824_planet_definition.html|title=Pluto Demoted: No Longer a Planet in Highly Controversial Definition|website=Space.com|date=2006-08-24|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20101227092545/http://www.space.com/scienceastronomy/060824_planet_definition.html|archivedate=2010-12-27|deadurl=yes}}</ref>。


[[2008年]][[6月11日]]には、[[ノルウェー]]の[[オスロ]]で開かれた国際天文学連合の執行委員会で海王星の外側にある準惑星を「[[冥王星型天体]](プルートイド)」(plutoid) とすると決定したとの発表があった{{R|iau2008}}。現在、冥王星型天体に分類されるのは冥王星とエリス、それに後に追加されたマケマケ、ハウメアの4つである。
== 衛星 ==
[[ファイル:Eris and Dysnomia art.png|thumb|250px|エリスとディスノミアの想像図]]
[[ファイル:2007-24-c-print.jpg|thumb|150px|エリスとディスノミア]]
[[2005年]]9月10日、マウナケア天文台群の[[W・M・ケック天文台|ケックII]]で撮影された画像から、エリスに[[衛星]]の存在が確認されて[[10月2日]]に発表され、[[仮符号]]'''S/2005 ({{mp|2003 UB|313}}) 1'''がつけられた。それによると、S/2005 ({{mp|2003 UB|313}}) 1の大きさは約350km、公転軌道は14日。


== 軌道 ==
エリスの命名と同時に、この衛星には確定符号 (136199) ERIS I が与えられ、'''[[ディスノミア (衛星)|ディスノミア]]''' (Dysnomia) と命名された。この名は、不和の女神エリスの娘である不法の女神[[デュスノミア]]にちなんでいる。
{{multiple image
| direction = vertical
| align = right
| total_width =300
| image1 = Eris Orbit.svg
| caption1 = [[土星]]、[[天王星]]、海王星、冥王星(白/灰色)の軌道とエリス(青色)の軌道。軌道のうち[[黄道|黄道面]]より下に位置する部分は暗い色で示されており、赤丸は[[太陽]]を示す。左図は極方向、右図は異なる2方向の黄道面から見たものである。
|image2 = Eris skypath 1940-2060.png
|caption2 = 地球から見ると[[2020年代]]のうちはエリスは[[くじら座]]の方向に見え、小さな円を描きながら[[うお座]]の方向へ移動している。
}}
エリスの[[公転周期]]は約560年で、最も太陽に近づく[[近点・遠点|近日点]]では約38.5 [[天文単位|au]](約57.6億 [[キロメートル|km]])まで近づき、[[近点・遠点|遠日点]]では約97.5 au(約145.8億 km)まで離れる{{R|JPL|AstDys}}。近日点通過日時は、[[摂動 (天文学)|摂動]]されていない[[二体問題|二体解]](Two-body solution)を使用して選択された[[元期]]に基づいて定義されるため、元期が近日点通過時日時から長く経過しているほど結果の精度は低くなる。近日点を通過する日時を正確に予測するには[[数値積分]]での計算が必要となる。[[JPL Horizons On-Line Ephemeris System]] による数値積分の計算では、エリスは前回は[[1699年]]頃に近日点を通過、[[1977年]]頃に遠日点を通過したとされ、次に近日点を通過するのは[[23世紀|2257年]]12月ごろになると予測されている{{R|horizons}}。一方で、JPL Small-Body Databse では次回のエリスの近日点通過は2260年1月頃としている{{R|JPL}}。軌道がほぼ同一平面上に揃っている8個の惑星とは違い、エリスは[[黄道]]面に対して非常に傾いた軌道を描いており、その[[軌道傾斜角]]は約44度に達している{{R|JPL}}。発見された当初、エリスは太陽から約97 au離れており、[[長周期彗星]]と[[宇宙探査機]]を除いて最も遠い距離にある太陽系内の既知の天体であった{{R|NewPlanet}}。[[2018年]]にさらに遠い距離にある{{mpl|2018 VG|18}}が発見されるまでの間、この最遠記録は維持されることになった<ref>{{cite web|url=https://carnegiescience.edu/news/discovered-most-distant-solar-system-object-ever-observed|title=Discovered: The Most-Distant Solar System Object Ever Observed|publisher=Carnegie Science|year=2018|accessdate=2021-08-24|quote=The second-most-distant observed Solar System object is Eris, at about 96 AU.}}</ref>。


2008年時点で知られていた約40個の太陽系外縁天体のうち、{{mpl|(308933) 2006 SQ|372}}、{{mpl|(87269) 2000 OO|67}}およびセドナはエリス(約97.8 au)よりも遠い[[軌道長半径]]を持つが、いずれも現在はエリスよりも太陽の近くに位置している{{R|MPC_SDO}}。
== 分類 ==
エリスは[[散乱円盤天体]] (Scattered Disk Object, SDO) の一種である。これは太陽系外縁天体のうち、[[海王星]]など他の惑星の影響で軌道の離心率が大きくなったものをさす。発見当時は、太陽の周りを公転しているとみなされている天体の中で太陽から最遠のものだったが、太陽からの平均距離は必ずしも最大ではなかった。


[[File:Eris800yearsb.gif|thumb|left|今後1,000年間における冥王星とエリスの太陽からの距離の推移]]
天体が冥王星より大きいため、当初NASAは第十惑星発見と発表し、各メディアもそれにならっていた。一方、これまでと同じように、この天体が惑星に分類されることはないだろうと見る天文学者もいた。


エリスは軌道[[離心率]]が大きい非常に歪んだ楕円軌道を公転しており、典型的な散乱円盤天体と同様に太陽から40 au以内の距離まで接近する<ref>{{cite journal|last=Trujillo|first=Chadwick A.|last2=Jewitt|first2=David C. |last3=Luu|first3=Jane X.|url=http://www2.ess.ucla.edu/~jewitt/papers/SKBO/tjl2000.pdf|format=PDF|title=Population of the Scattered Kuiper Belt|year=2000|journal=The Astrophysical Journal |volume=529|pages=L103–L106|issue= 2|doi=10.1086/312467|pmid=10622765|s2cid=8240136|bibcode=2000ApJ...529L.103T|arxiv=astro-ph/9912428}}</ref>。これは冥王星軌道(軌道長半径は約39.5 au)よりも内側にあたる距離だが、海王星からの相互作用を受けることはない<ref>{{cite journal|author=Patryk Sofia Lykawka|author2=Tadashi Mukai|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S001910350700036X|title=Dynamical classification of trans-neptunian objects: Probing their origin, evolution, and interrelation|year=2007|journal=Icarus|volume=189|issue=1|pages=213–232|doi=10.1016/j.icarus.2007.01.001|bibcode=2007Icar..189..213L}}</ref>。それに対して冥王星は他の[[冥王星族]]の天体と同様に、軌道傾斜角と軌道離心率が小さく、海王星と[[軌道共鳴]]の状態にあることで軌道が海王星軌道を横断することができる<ref>{{cite web|author=David Jewitt|url=http://www2.ess.ucla.edu/~jewitt/kb/plutino.html|title=The Plutinos|work=UCLA|accessdate=2021-08-24}}</ref>。現在から約800年後には、エリスはしばらくの間、冥王星よりも太陽に近い距離まで近づくとされている。
発見当時の惑星の定義は、「太陽を周り、ある程度の大きさを持ち、軌道を占有している天体」というものが一般的であったが、これは定義としては曖昧であり、より厳密な定義を求めて活発に意見が交わされていた。歴史的な経緯から惑星として扱われていた冥王星についても、同じような軌道上には冥王星に匹敵する質量の天体が多数発見されているため、惑星と見なすのはおかしいのではないかと主張する天文学者は増えつつあった。IAUは[[1999年]]に「冥王星が惑星から降格されることはない」という声明を出していたが、この場合は以下の2つの可能性があった。
* 冥王星の大きさを閾値として、それより大きいものを惑星と定義する。
* 冥王星だけ特例として惑星と認め、それより大きいものが見つかっても惑星とはされない。
発見者のマイケル・ブラウンは、「前者はまだ新惑星発見の可能性が残されており夢があるが、後者ではそれがない」として、新天体が惑星に分類されるべきだと主張していた。


現在のエリスの地球から見た[[見かけの等級|見かけの明るさ]]は18[[等級 (天文)|等級]]で{{R|AstDys}}、一部のアマチュア[[望遠鏡]]でも観測できる明るさになっている<ref>{{cite journal|last=Lin|first=H. -W.|last2=Wu|first2=Y. -L.|last3=Ip|first3=W. -H.|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0273117707006242|title=Observations of dwarf planet (136199) Eris and other large TNOs on Lulin Observatory|year=2007|journal=Advances in Space Research|volume=40|issue=2|pages=238–243|doi=10.1016/j.asr.2007.06.009|bibcode=2007AdSpR..40..238L}}</ref>。好ましい条件下であれば[[CCDイメージセンサ|CCD]]を搭載した口径200 [[ミリメートル|mm]]の望遠鏡でもエリスを観測することができる{{Efn2|アマチュア観測家が実際に撮影したエリスの画像が[http://www.moonglow.net/ccd/pictures/pc/index.html#tnos このサイト]にて確認できる。}}。にもかかわらず、[[21世紀]]に入るまでエリスが発見されなかったのはエリスの軌道傾斜角が大きいことに起因している。大型の太陽系外縁天体の探索は、ほとんどの天体が存在している黄道面付近で集中的に行われる傾向がある。
2006年[[8月16日]]のIAU総会で[[惑星#惑星の概念を拡張する案(いわゆる12惑星案)|惑星の定義の草案]]が発表された。ここで提案された定義に従えば、[[ケレス (準惑星)|ケレス]]及び[[カロン (衛星)|カロン]]と共に、{{mp|2003 UB|313}}も太陽系の惑星として追加されることになっていた。しかし8月24日に議決された[[惑星#惑星の概念を狭く限定する案(いわゆる8惑星案)|修正案]]のもとで、{{mp|2003 UB|313}}(エリス)は他の惑星候補だった天体や冥王星などとともに、dwarf planet(準惑星)に分類されることになった。


軌道傾斜角が大きいため、エリスは地球から見ると[[黄道帯]]にある[[星座]]のうち一部のみを通過する。現在は[[くじら座]]に位置しており、[[1840年]]から[[1875年]]までは[[ほうおう座]]、[[1876年]]から[[1929年]]までは[[ちょうこくしつ座]]の方向に見え、[[2036年]]からは[[うお座]]、[[2065年]]からは[[おひつじ座]]の方向へ移動する{{R|horizons}}。その後は[[天の北極]]方向へ移動し、2128年からは[[ペルセウス座]]、2173年からは[[きりん座]](ここで地球から見た時の最も[[赤緯]]の高い地点に達する)の方向に見えるようになる。
2008年6月11日、ノルウェー・オスロで開いたIAUの執行委員会で海王星の外側にある準惑星を「[[冥王星型天体]](プルートイド)」(plutoid) とすると決定したとの発表があった<ref name="iau2008"/>。現在、冥王星型天体に分類されるのは冥王星とエリス、それに後に追加された[[マケマケ (準惑星)|マケマケ]]、[[ハウメア (準惑星)|ハウメア]]の4つである。

== 物理的特徴 ==
[[File:The occultation of the dwarf planet Eris in November 2010.jpg|thumb|2010年11月に発生したエリスによる恒星の[[掩蔽]]について示した図。異なる場所で行った掩蔽観測から得られるエリスの{{仮リンク|弦 (天文)|label=弦|en|Chord (astronomy)}}は、エリスの円形のシルエットを投影しており、その直径は2,326 kmであると求められた。]]
{| class="wikitable plainrowheaders floatright"
|+ '''推定されたエリスの半径'''
|-
! scope="col" | 発表年 !! 半径 !! 観測手段
|-
! scope="row" | 2005
| 1,199 km
| [[ハッブル宇宙望遠鏡]]{{R|NASA20060411}}
|-
! scope="row" | 2007
| 1,300 km
| [[スピッツァー宇宙望遠鏡]]<ref>{{cite book|author=John Stansberry|author2=Will Grundy|author3=Mike Brown|author4=John Spencer|author5=David Trilling|author6=Dale Cruikshank |author7=Jean-Luc Margot|title=Physical Properties of Kuiper Belt and Centaur Objects: Constraints from Spitzer Space Telescope|year=2007|bibcode=2008ssbn.book..161S|arxiv=astro-ph/0702538}}</ref>
|-
! scope="row" | 2011
| 1,163 km
| [[小惑星による掩蔽|掩蔽]]観測{{R|Sicardy2011}}
|}
発見当初、[[スピッツァー宇宙望遠鏡]]による赤外線での観測でエリスを検出することができなかったため、天体の直径は最大で 3,200 km と考えられていた<ref>{{cite web|url=https://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000126.html|title=No.126: 太陽系の第十惑星、発見か?|website=国立天文台 アストロ・トピックス|publisher=国立天文台|date=2005-07-30|accessdate=2021-10-18}}</ref>。しかし、この観測では望遠鏡が天体とは別の方向を向いていたことが指摘されており、この上限の値は否定されている。その後[[2005年]][[8月23日]]および[[8月25日|25日]]に改めてスピッツァー宇宙望遠鏡により観測が行われ、冥王星より20%ほど大きい 2,700 km という結果が出た。[[2006年]][[2月2日]]には、[[ドイツ]]の[[ボン大学]]などによる[[IRAM30m望遠鏡]]を用いた波長1.2 mmの電波観測によりエリスからの熱放射を捉えることに成功し、エリスの直径が約 3,000 km(誤差は 400 km以下)であることが確認できた旨の論文が[[ネイチャー]]に掲載された<ref>{{cite journal|last=Bertoldi|first=F.|last2=Altenhoff|first2=W.|last3=Weiss|first3=A.|last4=Menten|first4=K. M.|last5=Thum|first5=C.|title=The trans-neptunian object UB313 is larger than Pluto|year=2006|journal=Nature|volume=439|issue=7076|page=563-564|doi=10.1038/nature04494|bibcode=2006Natur.439..563B}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000182.html|title=No.182: 冥王星より大きな天体 2003 UB_313 の直径の推定|website=国立天文台 アストロ・トピックス|publisher=国立天文台|date=2006-02-02|accessdate=2021-10-18}}</ref>。だが、[[4月11日]]に[[アメリカ航空宇宙局]] (NASA) は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果として直径約 2,400 kmで冥王星よりもやや大きい程度であるとの見解を発表した{{R|NASA20060411}}。

[[2010年]]11月、エリスによる[[恒星]]の[[小惑星による掩蔽|掩蔽]]が76秒間に渡って観測され、エリスは恒星への掩蔽が観測された地球から最も遠い天体となった。この観測の予備データは、以前に考えられていたエリスの大きさの見積もりに疑問を投げかけることになり、翌年10月に観測チームは掩蔽観測から得られた最終結果としてエリスの推定直径を冥王星とほぼ同じ 2,326 ± 12 km と発表した{{R|Sicardy2011|Beatty2010-NewScientist|mike}}。

この推定により、エリスの直径と表面積は直径 2,372 ± 4 km の冥王星よりもわずかに小さくなる。一方で、質量ははるかに高い精度で計算することができる。2021年に発表された衛星ディスノミアの[[公転周期]]15.786日に基づくと、エリスの質量は冥王星よりも約26%程度大きくなる{{R|Holler2021}}。エリスの[[密度]]は 2.43 ± 0.05 [[グラム毎立方センチメートル|g/cm<sup>3</sup>]] と冥王星よりもかなり大きくなっているため{{R|Holler2021}}、エリスは主に[[岩石]]で構成されているとみられる{{R|Sicardy2011}}。また、その[[アルベド]](反射率)は0.96に達しており、[[土星]]の衛星である[[エンケラドゥス (衛星)|エンケラドゥス]]に次いでアルベドが高い太陽系内の天体となっている{{R|Sicardy2011}}。この高いアルベドは、離心率が大きい軌道である故に太陽に近づいたり遠ざかったりするので、それによる表面の温度変化で表面の[[氷]]が補充されているためであると推測されている{{R|Brown2006}}。また、この太陽からの距離の変動により表面[[温度]]は30 ~ 56 [[ケルビン|K]](-243.2 ~ -217.2 [[摂氏|℃]])の間で変動すると推定されている{{R|NewPlanet}}。

[[放射性崩壊]]による内部加熱モデルから、エリスが[[マントル]]と[[核 (天体)|核]]の境界に[[液体]]の[[水]]で出来た内部海を持っている可能性が示唆されている<ref>{{cite journal|last=Hussmann|first=Hauke|last2=Sohl|first2=Frank|last3=Spohn|first3=Tilman|url=https://www.researchgate.net/publication/225019299|title=Subsurface oceans and deep interiors of medium-sized outer planet satellites and large trans-neptunian objects|year=2006|journal=Icarus|volume=185|issue=1|pages=258–273|doi=10.1016/j.icarus.2006.06.005|bibcode=2006Icar..185..258H}}</ref>。

[[2015年]][[7月14日]]に、NASAは史上初めて冥王星への接近観測を行った探査機[[ニューホライズンズ]]による観測結果から、冥王星の直径がエリスよりもわずかに大きい 2,370 kmであると発表し、以前から考えられていたエリスは冥王星よりわずかに大きいという推測を覆すことになった{{R|nh20150714}}。これらの観測結果からNASAは、「冥王星は[[太陽系外縁天体]]の天体で最大」、即ちエリスは冥王星よりも小さいとしている{{R|nh20150714}}。これによりエリスは、太陽を公転していることが知られている10番目に大きな既知の天体となった。

== 表面と大気 ==
[[File:2003 UB313 near-infrared spectrum.png|thumb|エリスの[[赤外線]][[スペクトル]](赤線)と冥王星(灰色)の赤外線スペクトルを比較した画像。両者の間には非常に顕著な類似性がみられる。矢印は[[メタン]]の吸収線になっているところを指す。]]
エリスを発見した観測チームは、2005年1月25日に[[マウナケア天文台群]]の[[ジェミニ天文台|ジェミニ北望遠鏡]]を用いてエリスの[[分光]]観測を行った。エリスから放射された[[赤外線]]による観測では、表面に[[メタン]]の氷が存在することが明らかになり、その表面は太陽系外縁天体の中で当時唯一メタンの存在が知られていた冥王星と海王星の衛星である[[トリトン (衛星)|トリトン]]に類似していることが示されている<ref>{{cite web|url=http://www.gemini.edu/index.php?option=content&task=view&id=142|title=Gemini Observatory Shows That "10th Planet" Has a Pluto-Like Surface|work=Gemini Observatory|year=2005|accessdate=2021-10-16}}</ref>。

やや赤みがかった色合いをしている冥王星やトリトンとは異なり、エリスの表面はほとんど白色に見える{{R|NewPlanet}}。冥王星の赤みがかった色はその表面に[[ソリン (物質)|ソリン]]が堆積しているためと考えられており、これらの堆積物が表面を暗くするとアルベドが低くなることで表面温度が高くなり、メタンの堆積物が蒸発するようになる。それと対照的に、エリスは太陽から十分に離れているため、アルベドが低い場所でもメタンが表面に[[凝縮]]する可能性がある。メタンが表面全体で均一に凝縮すると、アルベドの差異が低下し、赤みがかったソリンの堆積物が覆い隠されるようになる{{R|Brown2005}}。

エリスは冥王星よりも最大で太陽から3倍離れる可能性があるが、表面温度が表面の氷の一部を[[昇華]]させるのに十分なほど高くなるまで太陽に近づくこともある。メタンは[[揮発性]]が高いため、エリスはこれまでずっと太陽から遠方に存在していたことでメタンの氷が表面に残り続けるのに十分な低温になっているか、[[大気]]から離散していく[[ガス]]を補充しているメタンの内部供給源が存在することが示している。この特性は、エリスと同時期に発見された、メタンではなく水の氷が存在していることが知られている[[ハウメア (準惑星)|ハウメア]]とは対照的である<ref>{{cite journal|author=J. Licandro|author2=W. M. Grundy|author3=N. Pinilla-Alonso|author4=P. Leisy|url=http://www.aanda.org/articles/aa/pdf/2006/40/aa6028-06.pdf|format=PDF|title=Visible spectroscopy of {{mp|2003 UB|313}}: evidence for N<sub>2</sub> ice on the surface of the largest TNO|year=2006|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=458|issue=1|pages=L5–L8|doi=10.1051/0004-6361:20066028|s2cid=31587702|bibcode=2006A&A...458L...5L|arxiv=astro-ph/0608044}}</ref>。

== 衛星 ==
{{Main|ディスノミア (衛星)}}
[[File:Artist's impression dwarf planet Eris.jpg|thumb|エリスと衛星ディスノミアの想像図。この想像図は[[ヨーロッパ南天天文台]] (ESO) の[[ラ・シヤ天文台]]で行われた観測に基づいて描かれている<ref>{{cite press release|url=http://www.eso.org/public/news/eso1142/|title=Faraway Eris is Pluto's Twin|website=European Southern Observatory|date=2011-10-26|accessdate=2021-10-16}}</ref>。]]
2005年、マウナケア天文台群の[[W・M・ケック天文台|ケックII]]望遠鏡で[[補償光学]]観測を行うチームが、新たに委託された[[レーザーガイド星]]補償光学システムエリスを用いて冥王星型天体に分類されている4つの太陽系外縁天体の観測を実施した。その中で同年[[9月10日]]に撮影された画像から、エリスの周回軌道上に[[衛星]]が存在していることが判明した{{R|BrownVanDam2006}}。ブラウンらの観測チームは、当時使用されていたエリスの愛称 ''Xena'' に合わせて、この衛星にテレビドラマ内の主人公 Xena の相棒の名に因んで ''Gabrielle''(ガブリエル)というニックネームを付けた{{R|NewPlanet}}<ref>{{cite web|url=https://www.astroarts.co.jp/news/2005/10/13moon_2003ub313/index-j.shtml|title=「第10惑星? 2003 UB313」には衛星があった|website=[[アストロアーツ|AstroArts]]|date=2005-10-13|accessdate=2021-10-18}}</ref>。その後、ギリシア神話においてエリスの娘である不法の女神の[[デュスノミア]]に因んで '''[[ディスノミア (衛星)|ディスノミア]]'''({{Lang-en|Dysnomia}})という名称が正式に国際天文学連合によって承認され、エリスと同時に命名された{{R|IAUC}}。 ブラウンは、自身の妻の名前である Diane と似ていたことからこの名称を選んだと述べている<ref>{{cite web|last=Tytell|first=David|url=http://www.skyandtelescope.com/astronomy-news/all-hail-eris-and-dysnomia/|title=All Hail Eris and Dysnomia|website=Sky and Telescope|date=2006-09-14|accessdate=2021-10-16}}</ref>。

{| class="wikitable"
|+エリスとディスノミア
! 名称
! 直径<br>([[キロメートル|km]])
! 軌道長半径<br>(km)
! 質量<br>({{e|22}} [[キログラム|kg]])
! 発見日
|-
| エリス
| 2,326{{R|Sicardy2011|InDepth}}
|
| 1.6466{{R|Holler2021}}
| 2003年10月21日{{R|JPL}}
|-
| ディスノミア
| 700 ± 115<ref>{{cite journal|last=Brown|first=Michael E.|last2=Butler|first2=Bryan J.|title=Medium-sized Satellites of Large Kuiper Belt Objects|year=2018|journal=The Astronomical Journal|volume=156|issue=4|pages=164|doi=10.3847/1538-3881/aad9f2|bibcode=2018AJ....156..164B|s2cid=119343798|issn=1538-3881|arxiv=1801.07221}}</ref>
| 37,273 ± 64{{R|Holler2021}}
| 不明
| 2005年9月10日{{R|BrownVanDam2006}}
|}

== 探査 ==
探査機[[ニュー・ホライズンズ]]による冥王星への接近探査の成功に続いて、[[2010年代]]は太陽系外縁天体の探査を行う後続ミッションに関する複数の研究が発表され、その中でエリスが探査候補として評価された<ref>{{cite web|url=https://www.astrobio.net/also-in-news/swri-team-makes-breakthroughs-studying-pluto-orbiter-mission/|title=SwRI team makes breakthroughs studying Pluto orbiter mission |website=Astrobiology Magazine|date=2018-10-25|accessdate=2021-10-16}}</ref>。[[2032年]][[4月3日]]または[[2044年]][[4月7日]]に探査機を打ち上げて[[木星]]への[[スイングバイ]]を行うとすると、24.66年かけてエリスに到達できると計算されている。この日に打ちあげた探査機がエリスに到達したときのエリスの太陽からの距離は、それぞれ92.03 auと90.19 auとなる<ref>{{cite journal|author=McGranaghan, R.|author2=Sagan, B.|author3=Dove, G.|author4=Tullos, A.|author5=Lyne, J. E.|author6=Emery, J. P.|title=A Survey of Mission Opportunities to Trans-Neptunian Objects|year=2011|journal=Journal of the British Interplanetary Society|volume=64|pages=296–303|bibcode=2011JBIS...64..296M}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<references>
{{notelist2}}
<ref name="JPL">{{Cite web

=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name="JPL">{{cite web
|url=http://ssd.jpl.nasa.gov/sbdb.cgi?sstr=Eris
|url=http://ssd.jpl.nasa.gov/sbdb.cgi?sstr=Eris
|title=136199 Eris (2003 UB313)
|title=136199 Eris (2003 UB313)
|website=[[JPL Small-Body Database]]
|accessdate=2015-08-03
|publisher=[[ジェット推進研究所]]}}</ref>
|publisher=[[ジェット推進研究所|Jet Propulsion Laboratory]]
|accessdate=2021-08-24}} (2021-06-13 last obs.)</ref>

<ref name="AstDys">{{cite web|url=https://newton.spacedys.com/astdys/index.php?pc=1.1.3.0&n=Eris|title=AstDys (136199) Eris Ephemerides|website=AstDyS-2 Asteroids - Dynamic Site|publisher=[[ピサ大学|University of Pisa]]|accessdate=2021-08-24}}</ref>

<ref name="Brown2006">{{cite journal|author=Brown, M. E.|author2=Schaller, E. L.|author3=Roe, H. G.|author4=Rabinowitz, D. L.|author5=Trujillo, C. A.|url=http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/papers/ps/xsize.pdf|format=PDF|title=Direct measurement of the size of 2003 UB313 from the Hubble Space Telescope|year=2006|journal=The Astrophysical Journal|volume=643|issue=2|pages=L61–L63|doi=10.1086/504843|s2cid=16487075|bibcode=2006ApJ...643L..61B|arxiv=astro-ph/0604245}}</ref>

<ref name="MPC_SDO">{{cite web|url=http://www.minorplanetcenter.org/iau/lists/Centaurs.html|title=List Of Centaurs and Scattered-Disk Objects|publisher=[[小惑星センター|Minor Planet Center]]|accessdate=2021-08-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110725075304/http://www.minorplanetcenter.org/iau/lists/Centaurs.html|archivedate=2011-07-25|deadurl=no}}</ref>

<ref name="NewPlanet">{{cite web|last=Brown|first=Mike|url=http://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/|title=The discovery of <del>2003 UB313</del> Eris, the <del>10th planet</del> largest known dwarf planet|publisher=California Institute of Technology, Department of Geological Sciences|year=2006|accessdate=2021-08-24}}</ref>

<ref name="Sicardy2011">{{cite journal|last=Sicardy|first=B.|last2=Ortiz|first2=J. L.|last3=Assafin|first3=M.|last4=Jehin|first4=E.|display-authors=3|url=http://meetingorganizer.copernicus.org/EPSC-DPS2011/EPSC-DPS2011-137-8.pdf|fromat=PDF|title=Size, density, albedo and atmosphere limit of dwarf planet Eris from a stellar occultation|year=2011|journal =Ruropean Planetary Science Congress Abstracts|volume=6|page=137|bibcode=2011epsc.conf..137S}}</ref>

<ref name="Beatty2010-NewScientist">{{cite web|last=Beatty|first=Kelly|url=https://www.newscientist.com/article/dn19697-former-tenth-planet-may-be-smaller-than-pluto.html|title=Former 'tenth planet' may be smaller than Pluto|website=[[ニュー・サイエンティスト|New Scientist]]|date=2010-11-08|accessdate=2021-08-}}</ref>

<ref name="Holler2021">{{cite journal|last=Holler|first=Bryan J.|last2=Grundy|first2=William M.|last3=Buie|first3=Marc W.|last4=Noll|first4=Keith S.|title=The Eris/Dysnomia system I: The orbit of Dysnomia|year=2021|journal=Icarus|volume=355|page=114130|id=114130|doi=10.1016/j.icarus.2020.114130|bibcode=2021Icar..35514130H|s2cid=221995416|arxiv=2009.13733}}</ref>

<ref name="Holler2018">{{cite journal|last=Holler|first=Bryan J.|last2=Grundy|first2=William|last3=Buie|first3=Marc W.|last4=Noll|first4=Keith|title=Breaking the degeneracy of Eris' pole orientation|year=2018|journal=American Astronomical Society|id=509.03|bibcode=2018DPS....5050903H}}</ref>

<ref name="ErisFacts">{{cite web|url=https://space-facts.com/eris/|title=Eris Facts|website=Space Facts|accessdate=2021-08-24}}</ref>

<ref name="Snodgrass2010">{{cite journal|last=Snodgrass|first=C.|last2=Carry|first2=B.|last3=Dumas|first3=C.|last4=Hainaut|first4=O.|title=Characterisation of candidate members of (136108) Haumea's family|year=2010|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=511|pages=A72|doi=10.1051/0004-6361/2009130310|s2cid=62880843|bibcode=2010A&A...511A..72S|arxiv=0912.3171}}</ref>

<ref name="InDepth">{{cite web|url=https://solarsystem.nasa.gov/planets/dwarf-planets/eris/in-depth/|title=In Depth Eris - NASA Solar System Exploration|publisher=NASA|date=2019-12-09|accessdate=2021-08-24}}</ref>

<ref name="nh20150714">{{Cite web
|url=http://www.nasa.gov/feature/how-big-is-pluto-new-horizons-settles-decades-long-debate
|title=How Big Is Pluto? New Horizons Settles Decades-Long Debate
|publisher=[[NASA]]
|date=2015-07-14
|accessdate=2015-07-27}}</ref>

<ref name="IAUC">{{Cite web
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|url=http://www.cbat.eps.harvard.edu/iauc/08700/08747.html
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146行目: 267行目:
|date=2006-09-13
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|accessdate=2015-08-03}}</ref>
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<ref name="Brown2005">{{cite journal|last=M. E.|first=Brown|last2=C. A.|first2=Trujillo|last3=D. L.|first3=Rabinowitz|title=Discovery of a Planetary-sized Object in the Scattered Kuiper Belt|year=2005|journal=The Astrophysical Journal|volume=635|issue=1|pages=L97–L100|doi=10.1086/499336|s2cid=1761936|bibcode=2005ApJ...635L..97B|arxiv=astro-ph/0508633}}</ref>

<ref name="Schilling2008">{{cite book|last=Schilling|first=Govert|year=2008|title=The Hunt For Planet X|publisher=Springer|page=214|isbn=978-0-387-77804-4}}</ref>


<ref name="MPEC">{{Cite web
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153行目: 278行目:
|date=2006-09-08
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|accessdate=2015-08-03}}</ref>
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<ref name="iau2008">{{cite web|url=http://www.iau.org/public_press/news/release/iau0804|title=Plutoid chosen as name for Solar System objects like Pluto|publisher=International Astronomical Union (News Release - IAU0804)|date=2008-06-11|accessdate=2021-08-24|archiveurl =https://web.archive.org/web/20080613121232/http://www.iau.org/public_press/news/release/iau0804/|archivedate=2008-06-13|deadurl=yes}}</ref>

<ref name="NASA20060411">{{cite web|url=http://www.nasa.gov/mission_pages/hubble/hst_xena_20060410.html|title=Hubble Finds 'Tenth Planet' Slightly Larger Than Pluto|publisher=NASA|date=2006-04-11|accessdate=2021-10-16}}</ref>

<ref name="horizons">{{cite web|url=http://ssd.jpl.nasa.gov/horizons.cgi?find_body=1&body_group=sb&sstr=Eris|title=Horizons Online Ephemeris System for Eris|website=[[JPL Horizons On-Line Ephemeris System]]|publisher=California Institute of Technology, Jet Propulsion Laboratory|accessdate=2021-08-24}}「Observer Location:」を「@sun」に、「Time Span:」を任意の日時で指定。「deldot」が負の値から正の値になるときが近日点通過となる。近日点通過日時の[[不確実性]]は[[68–95–99.7則|3σ]]。</ref>

<ref name="mike">{{Cite web
<ref name="mike">{{Cite web
|url=http://www.mikebrownsplanets.com/2010/11/shadowy-hand-of-eris.html
|url=http://www.mikebrownsplanets.com/2010/11/shadowy-hand-of-eris.html
158行目: 290行目:
|accessdate=2015-08-03
|accessdate=2015-08-03
|author=[[マイケル・ブラウン (天文学者) |マイケル・ブラウン]]}}</ref>
|author=[[マイケル・ブラウン (天文学者) |マイケル・ブラウン]]}}</ref>

<ref name="nh20150714">{{Cite web
<ref name="BrownVanDam2006">{{cite journal|last=Brown|first=M. E.|last2=Van Dam|first2=M. A.|last3=Bouchez|first3=A. H.|last4=Le Mignant|first4=D.|last5=Campbell|first5=R. D.|last6=Chin|first6=J. C. Y.|last7=Conrad|first7=A.|last8=Hartman|first8=S. K.|last9=Johansson|first9=E. M.|last10=Lafon|first10=R. E.|last11=Rabinowitz|first11=D. L. Rabinowitz|last12=Stomski|first12=P. J. Jr.|last13=Summers|first13=D. M.|last14=Trujillo|first14=C. A.|last15=Wizinowich|first15=P. L.|url=http://web.gps.caltech.edu/~mbrown/papers/ps/gab.pdf|format=PDF|title=Satellites of the Largest Kuiper Belt Objects|year=2006|journal=The Astrophysical Journal|volume=639|issue=1|pages=L43–L46|doi=10.1086/501524|s2cid=2578831|bibcode=2006ApJ...639L..43B|arxiv=astro-ph/0510029}}</ref>
|url=http://www.nasa.gov/feature/how-big-is-pluto-new-horizons-settles-decades-long-debate
}}
|title=How Big Is Pluto? New Horizons Settles Decades-Long Debate
|publisher=[[NASA]]
|date=2015-07-14
|accessdate=2015-07-27}}</ref>
<ref name="iau2008">{{Cite web
|url=http://www.iau.org/public_press/news/release/iau0804/
|title=Plutoid chosen as name for Solar System objects like Pluto
|date=2008-06-11
|publisher=[[国際天文学連合]]
|accessdate=2015-08-03}}</ref>
</references>


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
178行目: 300行目:
* [[小惑星]]
* [[小惑星]]
* [[小惑星の一覧 (136001-137000)]]
* [[小惑星の一覧 (136001-137000)]]
* [[ディスノミア (衛星)|ディスノミア]]
* [[ディスノミア (衛星)]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2021年10月31日 (日) 02:55時点における版

エリス
136199 Eris
ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたエリス(中央)と衛星ディスノミア(左下)の画像
ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたエリス(中央)と衛星ディスノミア(左下)の画像
仮符号・別名 2003 UB313[1]
Xena
小惑星番号 136199
見かけの等級 (mv) 18.8[2]
視直径 34.4 ± 1.4 ミリ秒角[3]
分類 準惑星
冥王星型天体
軌道の種類 太陽系外縁天体
散乱円盤天体[4]
発見
発見日 2003年10月21日(初観測日)[1]
2005年1月5日(新天体としての発見日)[5]
発見者 M. E. ブラウン
C. A. トルヒージョ
D. ラビノウィッツ
軌道要素と性質
元期:2021年7月1日 (JD 2,459,396.5)[1]
軌道長半径 (a) 68.004 au[1]
近日点距離 (q) 38.526 au[1]
遠日点距離 (Q) 97.481 au[1]
離心率 (e) 0.433[1]
公転周期 (P) 204,832.078 [1]
(560.80 [1]
軌道傾斜角 (i) 43.909°[1]
近日点引数 (ω) 151.446°[1]
昇交点黄経 (Ω) 36.007°[1]
平均近点角 (M) 206.894°[1]
前回近日点通過 2,341,678.626 JD
1699年3月13日
次回近日点通過 2,546,510.704 JD[1]
2260年1月4日
衛星の数 1
物理的性質
直径 2,326 ± 12 km
半径 1,163 ± 6 km[6][7]
表面積 (1.70 ± 0.02)×107 km2[注 1]
体積 (6.59 ± 0.10)×109 km3[注 1]
質量 (1.6466 ± 0.0085)×1022 kg[8]
平均密度 2.43 ± 0.05 g/cm3[8]
表面重力 0.82 ± 0.02 m/s2[注 2]
(0.084 ± 0.002 g
脱出速度 1.38 ± 0.01 km/s[注 2]
自転周期 25.9 時間[1]
絶対等級 (H) -1.11[1]
アルベド(反射能) 0.96+0.09
−0.04
[6]
赤道傾斜角 78°(軌道に対して)[9]
表面温度
最低 平均 最高
30 K[5] 42 K[10] 56 K[5]
色指数 (B-V) 0.78[11]
色指数 (V-R) 0.45[11]
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エリス[12][13]136199 Eris)は、太陽系外縁天体のサブグループである冥王星型天体の1つに属する準惑星である。準惑星に分類されている太陽系内の天体の中では最も質量が大きく、冥王星に次いで2番目に半径が大きい。軌道離心率が大きい楕円軌道を描いて太陽公転しており、散乱円盤天体にも分類される。ディスノミアと呼ばれる衛星を持っている。2003年10月21日に撮影された画像に写っていたところを、マイケル・ブラウンが率いるパロマー天文台を拠点とする観測グループが2005年1月5日に発見し、2006年9月ギリシア神話に登場する不和と争いの女神の名に因んで命名された。現在、太陽を公転していることが知られている既知の天体の中では9番目に質量が大きく、惑星を公転している衛星も含めると16番目となる。直径は 2,326 ± 12 km と測定されており[6]、まだ宇宙探査機による接近探査が行われたことがない天体の中では最大である。冥王星の方がわずかに体積は大きいが[14]、質量は地球の0.28%、冥王星の126%とされている[8]自転周期は25.9時間と、地球に近い周期となっているが[1][15]、エリスの自転周期については意見が分かれている[16]

発見当初、エリスは冥王星よりも大きいと考えられ、アメリカ航空宇宙局 (NASA) は当初エリスを太陽系の「10番目の惑星」と表現した。この発見はエリスと同等の大きさの天体が将来的にさらに発見される可能性を示すもので、国際天文学連合 (IAU) が初めて惑星」という言葉を定義するきっかけになった。2006年8月24日に承認された国際天文学連合による定義で、エリスはハウメアマケマケケレスおよび当時は惑星とされていた冥王星と共に「準惑星」という新たな分類に属することになり、1930年の冥王星の発見以前と同様に太陽系の既知の惑星の数は8個に減った[17]

なお、日本語表記が同じで紛らわしいが、ラテン文字で“Ellis”と綴られる小惑星の (11980) エリスとは別の天体である。

発見

エリスは、2005年1月5日に天文学者のマイケル・ブラウンチャドウィック・トルヒージョデイヴィッド・ラビノウィッツによる観測チーム[5]2003年10月21日に撮影されていた画像の中から発見された[18]。この発見は、ハウメアの発見が公表された2日後である同年7月29日マケマケの発見と共に公表された[19]。このタイミングで発見が公表された要因として、後に引き起こされるハウメアの発見に関する論争が原因の1つとなっている。ブラウンらの観測チームは体系的に太陽系外縁部にある天体を探索しており、それまでにも(50000) クワオアーや(90482) オルクス、(90377) セドナなどいくつかの大型の太陽系外縁天体の発見に携わってきた[20]

2003年10月21日に撮影された画像はカリフォルニア州パロマー天文台にある口径1.2 mのサミュエル・オースチン反射望遠鏡による定期的な観測で得られたものだが、エリスは夜空の中を非常にゆっくりと移動しているため、画像が撮影された時点では発見されなかった。観測チームが使用した自動画像検索ソフトウェアでは誤検出の数を減らすために、1時間あたり1.5秒角未満の速度で動いているように見える全ての物体を除外した[18]。しかし2003年にセドナが発見された際、セドナの夜空での移動速度は1.75秒角/時だった。それを考慮して、観測チームは移動速度が下限値程度の物体が写った古いデータを分析し、除外されたデータを目視による調査で分類した。そして2005年1月、再分析によりエリスの背景の恒星に対して非常にゆっくりと進む様子が明らかになった[18]

その後に実施された追跡観測により、エリスの予備的な軌道が求められ、これによりエリスまでの距離を推定することが出来た[18]。観測チームは、さらなる観測と計算が完了するまでエリスとマケマケの発見の公表を延期することを計画していたが、同じように追跡観測を行っていた大型の別の太陽系外縁天体ハウメアの発見が別のスペインの観測チームによって2005年7月27日に先に公表されて物議を醸したことを受けて、2つの天体の発見を2日後の同月29日に公表することになった[5]

1954年9月3日に撮影された画像にもエリスが写っていたことが後に判明しており、JPL Small-Body Database のエリスのページにおける初観測日はこの日付で記されている[1]

2005年10月に公表されたさらに多くの観測結果で、後にディスノミアと命名される衛星を持つことが判明した。ディスノミアの軌道を観測することで、科学者らはエリスの質量を決定させることが可能となり、2007年6月に行われた計算ではエリスの質量は冥王星よりも約27 ± 2 %大きい (1.66 ± 0.02)×1022 kgと求められた[21]

名称

エリスはギリシア神話に登場する不和と争いの女神エリス(ギリシャ語:Ἔρις)の名に因んで命名された[22]。この名称は2006年9月6日カリフォルニア工科大学の研究チームによって提案され、同月13日に正式にこの名称で命名された[5][23]。それ以前は、小惑星の命名規則に則って国際天文学連合によって自動的に付与された 2003 UB313 という仮符号での名称で呼ばれていた[1]

Xena

2003 UB313 が惑星として分類されるか小惑星として分類されるかが不確実で、どちらに分類されるかで異なる命名規則が適用されるので[24]、名称の決定は2006年8月24日の国際天文学連合総会での惑星の定義の決議後まで待つ必要があった[23]。正式に命名されるまでのしばらくの間、2003 UB313Xena という名称で広く一般に知られるようになっていた。この名称は、アメリカのテレビドラマ『ジーナ』に登場する主人公の名である Xena (ゼナまたはジーナ)に因んだもので、発見チームによって内部的に使用された非公式なものであった。ブラウンはこの名称について以下のように述べている。

惑星Xの)「X」から始まるのでそれを選んだ。この名前は神話から来ているように聞こえる・・・、そして私たちはそこにもっと多くの女神を連れてくるために取り組んできた。また当時、そのテレビ番組はまだテレビで放送されていた。これは、私たちがどれだけ長く名前を探してきたかを示している。[25]

正式名称の選択

エリスを発見するために使用された画像上におけるエリスの動きを示すアニメーション。繰り返されて表示される3枚の画像は3時間に渡って撮影されたものである。

サイエンスライターの Govert Schilling によると、ブラウンは当初、ブラフマンが遊んだゲームの結果として宇宙の存在を説明したインド神話の概念に因んで、2003 UB313Lila と呼ぶことを考えていたという。また、この名称はブラウンの娘の名前 Lilah とよく似ている。ブラウンは正式に名称が承認されるまで名称を公表しないことに留意していた。これは、その1年前にセドナの名称が正式に承認される前に名称を独自で公表し、議定書に違反する行為として多くの批判を受けたためである。セドナについては議定書の違反があった件以外で名称に異議は唱えられず、競合案となる名称も提案されることはなかった[26]。しかし、彼は自身が発見した新天体の情報を個人のウェブページにてリスト化していたが、ハウメアの発見に関する論争の混乱の最中であったため、URIに含まれる /~mbrown/planetlila という文字列を変更するのを忘れていた。ブラウンは同僚の天文学者らを不必要に怒らせるもの(セドナの名称の件を踏まえたもの)ではなく、Lila は自身の娘の名前に由来すると述べ、Lila を2003 UB313の名称案から外した[20]

ブラウンはまた、ローマ神話における冥界の王プルートーの妻である女神ペルセポネーの名が2003 UB313に与えられるのに良い名称になるだろうと推測していた[5]。この名前はサイエンスフィクション作品で数回使用されており[27]ニュー・サイエンティスト誌が実施した2003 UB313に相応しい名称に関する世論調査では1位となった(「Xena」もニックネームとして知られていたが4位となった)[28]。しかし、同名の小惑星 (399) ペルセフォネがすでに存在していたため、準惑星に分類された2003 UB313にこの名称が正式に使用されることは不可能となった[5]

惑星の定義についての論争が終わった後の2006年9月6日に、発見グループは2003 UB313を「エリス (Eris)」と名づけることを提案し、9月13日に国際天文学連合により正式にこの名称が承認されることになった[29][30]。名称が正式に承認される5日前の9月8日には、小惑星センターにより小惑星番号136199番が与えられた[31][32]。ブラウンは、惑星と見なされていた時もあったことから、古代ギリシアおよびローマの文化に関する名称に由来しているものが大部分を占めていた小惑星とは異なり、他の惑星と同様にギリシア神話またはローマ神話に登場する神の名前に因んで命名するに値すると判断した。ブラウンは2006年に「エリスは人々の間で口論を引き起こすことによって争いと不和を引き起こした」と述べ[33]、神話上でエリスが引き起こした争いを、エリスが天文学にもたらした惑星の定義をめぐる論争に喩えている。

記号

占星術において使用されているエリスの記号は、ディスコルディア崇拝のシンボルに使われる (U+2BF0) と⯱ (U+2BF1) の2つがある。後者は火星の惑星記号に似ているが、矢印は下を向いている。前者の記号はNASAの公式サイトでも使用されている[34]ポーランドの一部の占星術師の間では、冥王星の更に外側にあるとされる架空の惑星プロセルピナ(ペルセポネー)をエリスと同一視しており、宝珠に似たプロセルピナの記号♁ (U+2641) をエリスに対して用いている[35][36]

分類

軌道の軌道傾斜角(縦)と軌道長半径(横軸)で比較した太陽系外縁天体の分布

エリスは準惑星冥王星型天体)に分類される太陽系外縁天体である[37][38]。また、軌道の特性から散乱円盤天体 (SDO) と呼ばれる分類にも属する。これは太陽系外縁天体のうち、太陽系形成時海王星との重力相互作用によってエッジワース・カイパーベルトよりもさらに遠くで異常な軌道を描くように「散乱」されてしまったものが属する分類である。エリスは既知の散乱円盤天体の中でも特に大きい軌道傾斜角を持つ珍しい天体だが、理論モデルからは元々エッジワース・カイパーベルトの内縁付近にあった天体は外縁にあるった天体よりも大きい軌道傾斜角を持った軌道に散乱されることが示されている[39]

当初、エリスは冥王星より大きいと考えられていたため、アメリカ航空宇宙局 (NASA) や発見を報道したメディアでは「第10惑星」と表現されていた。このようなエリスの立ち位置に関する不確実性と当時は第9惑星とされていた冥王星をそのまま惑星と分類すべきかどうかについての継続的な議論が行われていたことに応えて、国際天文学連合 (IAU) はこの問題を決定するために「惑星」という用語の十分に正確な定義を確立するように天文学者らのグループに委任した。そして、2006年8月24日に行われた国際天文学連合総会で惑星という言葉の定義が正式に採択された。これにより、エリスは冥王星などとともに、惑星とは異なる新たな分類「dwarf planet(準惑星)」に分類されることになった[40]。発見者の一人であるブラウンもこの分類を認めることを表明している[41]

2008年6月11日には、ノルウェーオスロで開かれた国際天文学連合の執行委員会で海王星の外側にある準惑星を「冥王星型天体(プルートイド)」(plutoid) とすると決定したとの発表があった[37]。現在、冥王星型天体に分類されるのは冥王星とエリス、それに後に追加されたマケマケ、ハウメアの4つである。

軌道

土星天王星、海王星、冥王星(白/灰色)の軌道とエリス(青色)の軌道。軌道のうち黄道面より下に位置する部分は暗い色で示されており、赤丸は太陽を示す。左図は極方向、右図は異なる2方向の黄道面から見たものである。
地球から見ると2020年代のうちはエリスはくじら座の方向に見え、小さな円を描きながらうお座の方向へ移動している。

エリスの公転周期は約560年で、最も太陽に近づく近日点では約38.5 au(約57.6億 km)まで近づき、遠日点では約97.5 au(約145.8億 km)まで離れる[1][2]。近日点通過日時は、摂動されていない二体解(Two-body solution)を使用して選択された元期に基づいて定義されるため、元期が近日点通過時日時から長く経過しているほど結果の精度は低くなる。近日点を通過する日時を正確に予測するには数値積分での計算が必要となる。JPL Horizons On-Line Ephemeris System による数値積分の計算では、エリスは前回は1699年頃に近日点を通過、1977年頃に遠日点を通過したとされ、次に近日点を通過するのは2257年12月ごろになると予測されている[42]。一方で、JPL Small-Body Databse では次回のエリスの近日点通過は2260年1月頃としている[1]。軌道がほぼ同一平面上に揃っている8個の惑星とは違い、エリスは黄道面に対して非常に傾いた軌道を描いており、その軌道傾斜角は約44度に達している[1]。発見された当初、エリスは太陽から約97 au離れており、長周期彗星宇宙探査機を除いて最も遠い距離にある太陽系内の既知の天体であった[5]2018年にさらに遠い距離にある2018 VG18が発見されるまでの間、この最遠記録は維持されることになった[43]

2008年時点で知られていた約40個の太陽系外縁天体のうち、(308933) 2006 SQ372(87269) 2000 OO67およびセドナはエリス(約97.8 au)よりも遠い軌道長半径を持つが、いずれも現在はエリスよりも太陽の近くに位置している[4]

今後1,000年間における冥王星とエリスの太陽からの距離の推移

エリスは軌道離心率が大きい非常に歪んだ楕円軌道を公転しており、典型的な散乱円盤天体と同様に太陽から40 au以内の距離まで接近する[44]。これは冥王星軌道(軌道長半径は約39.5 au)よりも内側にあたる距離だが、海王星からの相互作用を受けることはない[45]。それに対して冥王星は他の冥王星族の天体と同様に、軌道傾斜角と軌道離心率が小さく、海王星と軌道共鳴の状態にあることで軌道が海王星軌道を横断することができる[46]。現在から約800年後には、エリスはしばらくの間、冥王星よりも太陽に近い距離まで近づくとされている。

現在のエリスの地球から見た見かけの明るさは18等級[2]、一部のアマチュア望遠鏡でも観測できる明るさになっている[47]。好ましい条件下であればCCDを搭載した口径200 mmの望遠鏡でもエリスを観測することができる[注 3]。にもかかわらず、21世紀に入るまでエリスが発見されなかったのはエリスの軌道傾斜角が大きいことに起因している。大型の太陽系外縁天体の探索は、ほとんどの天体が存在している黄道面付近で集中的に行われる傾向がある。

軌道傾斜角が大きいため、エリスは地球から見ると黄道帯にある星座のうち一部のみを通過する。現在はくじら座に位置しており、1840年から1875年まではほうおう座1876年から1929年まではちょうこくしつ座の方向に見え、2036年からはうお座2065年からはおひつじ座の方向へ移動する[42]。その後は天の北極方向へ移動し、2128年からはペルセウス座、2173年からはきりん座(ここで地球から見た時の最も赤緯の高い地点に達する)の方向に見えるようになる。

物理的特徴

2010年11月に発生したエリスによる恒星の掩蔽について示した図。異なる場所で行った掩蔽観測から得られるエリスの英語版は、エリスの円形のシルエットを投影しており、その直径は2,326 kmであると求められた。
推定されたエリスの半径
発表年 半径 観測手段
2005 1,199 km ハッブル宇宙望遠鏡[48]
2007 1,300 km スピッツァー宇宙望遠鏡[49]
2011 1,163 km 掩蔽観測[6]

発見当初、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線での観測でエリスを検出することができなかったため、天体の直径は最大で 3,200 km と考えられていた[50]。しかし、この観測では望遠鏡が天体とは別の方向を向いていたことが指摘されており、この上限の値は否定されている。その後2005年8月23日および25日に改めてスピッツァー宇宙望遠鏡により観測が行われ、冥王星より20%ほど大きい 2,700 km という結果が出た。2006年2月2日には、ドイツボン大学などによるIRAM30m望遠鏡を用いた波長1.2 mmの電波観測によりエリスからの熱放射を捉えることに成功し、エリスの直径が約 3,000 km(誤差は 400 km以下)であることが確認できた旨の論文がネイチャーに掲載された[51][52]。だが、4月11日アメリカ航空宇宙局 (NASA) は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果として直径約 2,400 kmで冥王星よりもやや大きい程度であるとの見解を発表した[48]

2010年11月、エリスによる恒星掩蔽が76秒間に渡って観測され、エリスは恒星への掩蔽が観測された地球から最も遠い天体となった。この観測の予備データは、以前に考えられていたエリスの大きさの見積もりに疑問を投げかけることになり、翌年10月に観測チームは掩蔽観測から得られた最終結果としてエリスの推定直径を冥王星とほぼ同じ 2,326 ± 12 km と発表した[6][7][53]

この推定により、エリスの直径と表面積は直径 2,372 ± 4 km の冥王星よりもわずかに小さくなる。一方で、質量ははるかに高い精度で計算することができる。2021年に発表された衛星ディスノミアの公転周期15.786日に基づくと、エリスの質量は冥王星よりも約26%程度大きくなる[8]。エリスの密度は 2.43 ± 0.05 g/cm3 と冥王星よりもかなり大きくなっているため[8]、エリスは主に岩石で構成されているとみられる[6]。また、そのアルベド(反射率)は0.96に達しており、土星の衛星であるエンケラドゥスに次いでアルベドが高い太陽系内の天体となっている[6]。この高いアルベドは、離心率が大きい軌道である故に太陽に近づいたり遠ざかったりするので、それによる表面の温度変化で表面のが補充されているためであると推測されている[3]。また、この太陽からの距離の変動により表面温度は30 ~ 56 K(-243.2 ~ -217.2 )の間で変動すると推定されている[5]

放射性崩壊による内部加熱モデルから、エリスがマントルの境界に液体で出来た内部海を持っている可能性が示唆されている[54]

2015年7月14日に、NASAは史上初めて冥王星への接近観測を行った探査機ニューホライズンズによる観測結果から、冥王星の直径がエリスよりもわずかに大きい 2,370 kmであると発表し、以前から考えられていたエリスは冥王星よりわずかに大きいという推測を覆すことになった[14]。これらの観測結果からNASAは、「冥王星は太陽系外縁天体の天体で最大」、即ちエリスは冥王星よりも小さいとしている[14]。これによりエリスは、太陽を公転していることが知られている10番目に大きな既知の天体となった。

表面と大気

エリスの赤外線スペクトル(赤線)と冥王星(灰色)の赤外線スペクトルを比較した画像。両者の間には非常に顕著な類似性がみられる。矢印はメタンの吸収線になっているところを指す。

エリスを発見した観測チームは、2005年1月25日にマウナケア天文台群ジェミニ北望遠鏡を用いてエリスの分光観測を行った。エリスから放射された赤外線による観測では、表面にメタンの氷が存在することが明らかになり、その表面は太陽系外縁天体の中で当時唯一メタンの存在が知られていた冥王星と海王星の衛星であるトリトンに類似していることが示されている[55]

やや赤みがかった色合いをしている冥王星やトリトンとは異なり、エリスの表面はほとんど白色に見える[5]。冥王星の赤みがかった色はその表面にソリンが堆積しているためと考えられており、これらの堆積物が表面を暗くするとアルベドが低くなることで表面温度が高くなり、メタンの堆積物が蒸発するようになる。それと対照的に、エリスは太陽から十分に離れているため、アルベドが低い場所でもメタンが表面に凝縮する可能性がある。メタンが表面全体で均一に凝縮すると、アルベドの差異が低下し、赤みがかったソリンの堆積物が覆い隠されるようになる[18]

エリスは冥王星よりも最大で太陽から3倍離れる可能性があるが、表面温度が表面の氷の一部を昇華させるのに十分なほど高くなるまで太陽に近づくこともある。メタンは揮発性が高いため、エリスはこれまでずっと太陽から遠方に存在していたことでメタンの氷が表面に残り続けるのに十分な低温になっているか、大気から離散していくガスを補充しているメタンの内部供給源が存在することが示している。この特性は、エリスと同時期に発見された、メタンではなく水の氷が存在していることが知られているハウメアとは対照的である[56]

衛星

エリスと衛星ディスノミアの想像図。この想像図はヨーロッパ南天天文台 (ESO) のラ・シヤ天文台で行われた観測に基づいて描かれている[57]

2005年、マウナケア天文台群のケックII望遠鏡で補償光学観測を行うチームが、新たに委託されたレーザーガイド星補償光学システムエリスを用いて冥王星型天体に分類されている4つの太陽系外縁天体の観測を実施した。その中で同年9月10日に撮影された画像から、エリスの周回軌道上に衛星が存在していることが判明した[58]。ブラウンらの観測チームは、当時使用されていたエリスの愛称 Xena に合わせて、この衛星にテレビドラマ内の主人公 Xena の相棒の名に因んで Gabrielle(ガブリエル)というニックネームを付けた[5][59]。その後、ギリシア神話においてエリスの娘である不法の女神のデュスノミアに因んで ディスノミア英語: Dysnomia)という名称が正式に国際天文学連合によって承認され、エリスと同時に命名された[23]。 ブラウンは、自身の妻の名前である Diane と似ていたことからこの名称を選んだと述べている[60]

エリスとディスノミア
名称 直径
km
軌道長半径
(km)
質量
×1022 kg
発見日
エリス 2,326[6][15] 1.6466[8] 2003年10月21日[1]
ディスノミア 700 ± 115[61] 37,273 ± 64[8] 不明 2005年9月10日[58]

探査

探査機ニュー・ホライズンズによる冥王星への接近探査の成功に続いて、2010年代は太陽系外縁天体の探査を行う後続ミッションに関する複数の研究が発表され、その中でエリスが探査候補として評価された[62]2032年4月3日または2044年4月7日に探査機を打ち上げて木星へのスイングバイを行うとすると、24.66年かけてエリスに到達できると計算されている。この日に打ちあげた探査機がエリスに到達したときのエリスの太陽からの距離は、それぞれ92.03 auと90.19 auとなる[63]

脚注

注釈

  1. ^ a b 半径より計算
  2. ^ a b 既知のパラメーターを基に計算
  3. ^ アマチュア観測家が実際に撮影したエリスの画像がこのサイトにて確認できる。

出典

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関連項目

外部リンク