ニュー・ホライズンズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| ニューホライズンズ New Horizons | |
|---|---|
ニューホライズンズ
|
|
| 所属 | アメリカ航空宇宙局(NASA) |
| 公式ページ | [1] |
| 国際標識番号 | [2] |
| 状態 | 運用中 |
| 目的 | 冥王星及び太陽系外縁天体の初探査。 |
| 観測対象 | 冥王星、太陽系外縁天体 (エッジワース・カイパーベルト天体) |
| 打上げ機 | アトラス |
| 打上げ日時 | 2006年1月19日 |
| 最接近日 | 2015年7月14日予定 (冥王星) |
ニュー・ホライズンズ (New Horizons) はアメリカ航空宇宙局 (NASA) が2006年に打ち上げた無人探査機で、人類初の冥王星探査機および太陽系外縁天体探査機である。
目次 |
[編集] 概要
打ち上げ費用は、ロケット製造費、施設利用費、装置開発経費及びミッション全体の人件費を含み、約7億ドル(日本円で約800億円)である。
本体の質量は465kg(推進剤77kg含む)。本体を軽量にして、生じた余裕は速度の向上に充てられた。発射後9時間で月軌道(地球から約38万km)を通過し、13ヵ月後に木星をスイングバイする。月軌道および木星までの所要期間は史上最短である。ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所 (APL) のミッションチームが管制を行っている。
太陽から遠く太陽電池を使えないため、原子力電池を搭載している。また、冥王星軌道からの通信速度は僅か800bps弱となるため、64Gbit相当のフラッシュメモリを搭載し、数ヶ月かけて探査データを送り届ける。ミッション用機器の他に、星条旗、公募した43万人の名前が記録されたCD-ROM、史上初の民間宇宙船スペースシップワンの機体の一部だったカーボンファイバーの破片、冥王星を発見したクライド・トンボーの遺灰が搭載された。遺灰については打上げ後に発表された。
なお、当初、打ち上げは2006年1月12日(日本時間)の予定だったが、ロケット本体の点検や天候不順などで再三延期された[1]。
打上げ用ロケットの第1段に使われたアトラスには補助ブースター5基が取りつけられた。史上最も多くのブースターを使用した、アトラスの打上げになった。
打ち上げ直後の速度は、歴代の探査機の中で最高速度である30km/sである[2]。それに応じて使用済みロケットの速度も速く、第2段のセントールは小惑星帯に遠日点を持つ人工惑星となり、最終段である第3段ロケットモーターは探査機を分離した後は徐々に離れつつも、やはり冥王星軌道の外側へ飛んでいく。
冥王星軌道を通過後、ニュー・ホライズンズはさらにエッジワース・カイパーベルト内の太陽系外縁天体を探査することを計画している。目標となる天体はまだ決まっておらず、日本のすばる望遠鏡も参加して捜索が行われている。
[編集] 日程
- 2006年1月19日19時00分 (UTC) / 14時00分 (EST) / 20日4時00分 (JST):フロリダ州のケネディ宇宙センターに隣接するケープカナベラル空軍基地第41番発射台から、ロッキード・マーティン社製アトラスV型ロケットで打ち上げ。
- 2006年4月7日10時00分 (UTC) 頃:火星軌道を通過。
- 2006年6月:小惑星帯に突入。
- 2006年6月13日4時05分 (UTC):小惑星 (132524) APL[3]に101,867kmまで接近。11日から13日にかけて撮影を行った。
- 2006年9月21日~24日:LORRI(望遠カメラ)で初めて冥王星を撮影。
- 2007年1月:装置の試験を兼ねて木星の観測を開始。
- 2007年2月28日:木星に2,304,541kmまで接近。スイングバイを行い、21km/sまで加速。前後の数日間には木星の小赤斑、エウロパ、ガニメデ、イオを撮影し、イオの撮影では同時に3火山が噴火している状態を写真に収めることに成功した。
- 2007年6月:木星の観測とデータ送信を終了。
- 2007年7月以降:Venetia(微粒子カウンター)以外のほとんどの機器を休眠状態中。約半年に一回のペースで、定期的に再起動と点検を行う。
[編集] 今後の予定
- 2010年頃:ケンタウルス族小惑星の (83982) クラントルに接近する。ここで、一部の観測装置を再試験。
- 2014年頃:海王星の後方トロヤ点付近を通過。
- 2015年2月~8月:冥王星とその衛星を観測(詳細は下記)。
- 2016年~2020年頃:エッジワース・カイパーベルトを観測。
- その後は太陽系を脱出する。
[編集] 冥王星探査の詳細
- 2015年2月14日:冥王星探査開始。
- 2015年4月後半:このころには、画像の画質が、ハッブル宇宙望遠鏡による最良のものと同等になる。
- 2015年6月初旬:全ての観測機器が常時観測体制に入る。
- 2015年7月14日:冥王星をフライバイ(接近通過)し、冥王星と衛星カロンを撮影。最接近時の距離は10,000kmで、カロンの公転軌道の内側を通る。そのときの速度は14km/s。
- 2015年8月後半:接近後の探査終了。
- 2016年4月後半:全てのデータを送信完了。
[編集] 搭載機器
- Alice
- 冥王星大気の組成と構造を調べる紫外線イメージングスペクトロメーター(多波長撮像装置)。
- Ralph
- カメラ(白黒とカラー)。
- REX(Radio Science Experiment)
- 探査機の通信システムと一体の実験装置で、冥王星とカロンの大気の温度・圧力・密度・温度を測定する。
- 探査機のわずかな軌道変化を測定して、冥王星、カロン(うまくいけば太陽系外縁天体も)の質量を求める。また、冥王星とカロンによる地球の蝕(地球からの電波が遮られる現象)の時刻を測定する(これから、冥王星とカロンの正確な大きさがわかる)。
- LORRI (Long Range Reconnaissance Imager)
- モノクロ望遠カメラ。
- SWAP (Solar Wind at Pluto)
- 太陽風と冥王星の大気との相互作用を調べる。
- PEPSSI(ペプシ, Pluto Energetic Particle Spectrometer Science Investigation)
- 粒子線観測器。冥王星から宇宙空間に逃げ出した大気物質を測定する。
- ヴェネチア・バーニー学生微粒子計数器(ヴェネチア (Venetia), Venetia Burney Student Dust Counter, VBSDC)
- 彗星、小惑星、外縁天体同士が衝突して出る、微細な塵粒子の個数・速度・質量を計測する。コロラド大学の学生たちによって設計・製作された。名称は、1930年、"Pluto"(冥王星の原語)という名を提案したイギリス人女性、ヴェネチア・バーニー・フェア (Venetia Burney Phair, 1919年 - ) にちなんで、打ち上げ後につけられた[4]。
[編集] ニュー・ホライズンズ・キッズ
ミッションチームは2007年1月、「ニュー・ホライズンズ・キッズ (NHKs)」と称するEducation and Public Outreachプログラムを開始した。これはニュー・ホライズンズが打ち上げられた2006年1月19日に生まれた子供と、その日に10歳の誕生日を迎えた子供をそれぞれ4~6人、合わせて10~12人選び、「キッズ」たちの成長を2016年まで見守りつづけようというものである。
[編集] 註
- ^ アトラスロケットの燃料タンクに亀裂が生じる可能性があることが判明し、点検のため現地時間11日から17日に延期。さらに天候状態の悪化により18日に、管制施設の停電により19日に延期。打ち上げが2月3日以降までずれ込んだ場合は木星スイングバイによる加速が行えなくなり、冥王星到達が3~5年遅れる可能性があった。
- ^ 第1段及びブースターロケットの燃焼終了時に達成した速度が10km/sであり、この時点で地球脱出速度を超えていた。その後、第2段ロケット燃焼時には15km/sに達し、そして第3段ロケット燃焼終了時には30km/sに到達した。この速度は、既に冥王星軌道を越えているボイジャー1号、ボイジャー2号が地球軌道離脱時に達した速度を上回る。
- ^ 近接遭遇することが判明したのは打ち上げ後。当時は仮符号のみで2002 JF56と呼ばれていたが、通過後にAPLと命名された。
- ^ 2006年12月、ミッションチームのメンバーがロンドンを訪問、88歳のヴェネチア・バーニーと対面している。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 公式サイト(英語)
- ニューホライズンズ(月探査情報ステーション)
- Spacecraft Escaping the Solar System - 現在位置、軌道図

