ブラック・ジャック (架空の人物)

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ブラック・ジャック > ブラック・ジャックの登場人物 > ブラック・ジャック (架空の人物)
ブラック・ジャック/ 間 黒男
ブラック・ジャック』のキャラクター
作者 手塚治虫
大塚明夫
詳細情報
性別 男性
職業 医師(無免許)
家族 父、母
国籍 日本の旗 日本

ブラック・ジャックは、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』に登場する架空の人物・医師

人物像[編集]

無免許の天才外科医。本名は間 黒男(はざま くろお)。学生時代は普通に本名を使っていた[1]。血液型はO型。年齢は作中の描写から30歳前後と思われる(年齢については下記に詳述)。

幼い頃、宅地造成業者らによるずさんな不発弾処理が原因で母親と共に爆発事故に遭い、大手術を受けて奇跡的に助かった。全身の傷跡はその時に付いたものである。また、その際に数箇所の皮膚を取り替えたことと爆発時の恐怖心によって、髪の毛の右半分が白髪になる。手術後は半身不随に近い状態であったが、必死のリハビリによって、負傷前と同様の身体能力を回復する(広島から大阪まで400キロメートルのハイキングもしていた。これは後に恩師・本間丈太郎がファイルにして世に出している。BJも「元の体に戻るために色々と無茶苦茶をやったもんだ」と語っている。)。しかし母親とは死に別れ、父親は愛人と共にマカオ(『U-18は知っていた』・『笑い上戸』では香港と記載されているが、手塚が長期連載を予定していなかったため、設定の矛盾が発生している)に去ったため(後に死亡)、天涯孤独の身である。母親を大事にしない人間に対してはしばしば激怒し、「腹の虫が煮えくり返る」「私なら母親のためならどんな大金(100億でも安い)でも払う」と手厳しい態度をとったほか、父親から後妻を「世界で最も美しい顔」に美容整形するよう依頼された際には母親と同じ顔に整形し、「自分が世界で最も美しいと思う顔にした」と発言する。もう母を愛していないという父親の言動も、その理由の1つであった。

子供の頃から、後述の復讐のためにダーツの腕を磨いており、悪漢に襲われた時などメスを投げることで応戦する描写がある[2]。だが、ダーツが原因で当時通っていた学校の友人・ゲラに重傷を負わせ、結果的に死なせてしまった時は激しく後悔している[3]

医学界では評判が悪いが、その一方で、同じ医大出身の手塚本人がモデルの医者をはじめ医者友達が複数いる。しかし、自分と同等の技術を持つ友人がいないことで孤独感を抱いており、自分に匹敵する技術の人物を求めているところがある。また、自分の医療技術に関しては絶対の自信を持っているが、医療以外でも何らかの高い技術を持つ人間には敬意を払うこともある。

顔の皮膚の左半分は、治療の際に黒人混血児(ハーフチルドレン)の親友・タカシの皮膚を貰ったものである。そのため、誌上ではわからないが、その部分は若干色が濃い[4]。その後、別の皮膚と取り替えてはどうかと勧められても、皮膚をくれた親友への義理からそれはできないと拒んでいる(第99話『友よいずこ』)。

医者になった理由は、自分の主治医であった本間丈太郎に憧れたことが上げられる。

手を施しても無意味に終わる、他の治療手段の方が良いなどの事情があれば手術を行わないか、途中で止めてしまうことがある。作中、爆発物によって視力を失った女性について警察から「犯人を見つけるために眼球の移植手術で視力を回復させてほしい」と依頼された時は、BJの技術を用いても5分しか視力が戻らないため、二度も視力を失う苦しみを味わうことになるとして、手術を拒否している[5](第44話『目撃者』)。

自らを「命を何よりも大切に思う男」と称しているが、それは生きようとする命を指す。第21話『その子を殺すな!』でも描かれているように無頭児脳死患者など、生きる意志が失われた命を救おうとはせず、むしろ命を絶っている。ただし、脳死判定の難しさについてのエピソードもある。

一緒に暮らしているピノコに対しては突き放したような言動を取ることも多いが、実際には彼女の無茶なワガママを聞いてやるなど、結構甘い。もっともブラック・ジャックの「おくたん(奥さん)」を自認するピノコは、自分を娘として扱うその態度に不満な様子。原作においてピノコ登場前はほぼ無表情な性格だったが、ピノコ登場後はやや表情もやわらかくなっている[6]

女性関係に対しては(ピノコは別として)、はっきり恋人関係であったことが語られているのは医局員時代の同僚の如月めぐみだけである(第50話『めぐり会い』)。他に、自分が手術した患者などの女性に想いを寄せられることは多いが、いずれもクールに断ったり相手の前から姿を消したりと、恋仲にはなっていない。ただ、一時ブラック・ジャックは如月めぐみ以外に、冷酷にメスを振るうことから「ブラック・クイーン」の異名を取る女医、桑田このみに想いを寄せたことはある。しかし恋人がいると知り、「ジャックからクイーンへ」と書かれた手紙を渡さず破り捨てるエピソードがあった(第57話『ブラック・クイーン」』)。その後のエピソードで、桑田このみは終電車でブラック・ジャックと再会したことがある。既婚である彼女がブラック・ジャックに自分の想いを告白するが、ブラック・ジャックは「確かに、私はあなたが心に焼き付いたことがありますがね、それももう過ぎた話です」と丁寧に断った(第199話『終電車』)。

年齢についてはシリーズ中ではっきりと示されたことは一度もなかった。ただ、爆弾事故にあって瀕死の重傷を負ったときの年齢が8歳であることは数回明示されている。そのことと作中で何度か示された「爆弾事故は○○年前」という言及から、おぼろげに年齢の推測はつく。第202話『20年目の暗示』では、爆弾事故は「20年前」と語られている。よって、この時点ではブラック・ジャックの年齢は28歳と設定されていたと考えられる(手塚がブラック・ジャックの年齢を28歳と決めたのは、当時担当だった2代目の担当編集者の年齢にちなんだと言われる)[7]。また、第233話『骨肉』では爆弾事故が「25年前」と語られており、この時点では年齢は33歳ということになる。以上の点から、シリーズ中での年齢は20代後半から30代半ばぐらいであったと推定できそうである。

容姿、服装[編集]

  • 頭髪の色は黒色で、前髪と襟足が長めの髪型であるが、一部分は白く変色している。これは、幼少時に母の死を目の当たりにした恐怖から頭髪の半分が白髪になったものであるが、連載当初は手塚治虫曰く「髪の艶」だったそうで、現在の説は後付けである[8]
  • 整った顔立ちをしており、作中で何度か周囲の人物がそれを認めるシーンがある。右眉の上から左頬にかけて顔面に大きな縫合痕(傷痕)があり、皮膚は縫合痕を境に左右で色が異なっている。原作のカラーだと左側が青色、アニメでは左側が地肌より少し濃いめの茶色となっている。なお、この色の異なる皮膚は前述の通り、タカシから移植されたものである。目鼻立ちは父親の面影が強く、父親とは顔が非常によく似ている。
  • 外出中は真夏や熱帯でも黒を基調としたコート(アニメではマント)やスーツを着ている。インナーは白のシャツで、青色-赤色-緑色(アニメでは赤色に統一)のリボンタイを使用している。大学を出たばかりの当時は普通のネクタイを締めていたため、現在のようなリボンタイを締めるようになった理由は住まいを建てた丑五郎にちなんでいると考えられる[9]。黒色のベストを着用している場合もあるが、外出時に前述の格好以外をしていることは非常に少なく、喪服とタキシードぐらいしかない。真っ黒のコートを羽織った格好でハワイを訪れ、現地民に「どうしてそんな暑そうな格好をしているのか」と尋ねられたことがある。シューズは革靴を履いている。コート(マント)に関しては、多少の防弾性能を持たせられるほどの密度になるような着こなし方をしている。

携行品など[編集]

  • コートの内側にメスやハサミなどの簡易な医療器具、場合によっては医薬品が収納してあり、有名なナイフ投げならぬメス投げの際に使用するメスはここから取り出す。このメスは、鍛冶師・憑二斉の手によって鍛えられた逸品である。
  • ポケットには大量のてるてる坊主を入れていて、雨の日の診察の際の患者全員に手渡しているらしい[10]
  • 外出時には常時医療器具の入ったバッグ(トランク)を携帯している。
  • どんな場所でも手術できるよう、膨らませて使用するビニール製の透明なテント状の無菌室を携行している。
  • 作中で一度医療器具を手放してしまった際には適切な治療を行えず、凍傷にかかったヴァイオリニストの指を切り落とさざるを得なかったこともあった(第55話『ストラディバリウス』)。

家族[編集]

幼い頃に母親を亡くし、父親に捨てられ、半ば孤児として育つ。ただし孤児院や里親などの描写は無いため、幼少から少年時代の詳細は不明である。

現在は自称・妻のピノコとふたり暮らし。ピノコは、双子の姉の体内に内臓が一通り揃う形で存在する奇形嚢腫だったところをブラック・ジャックの手術によって人間として再生され、法的にはこの時に誕生したことになっている。ブラック・ジャックとの法律的関係は不明だが、ピノコを学校に入れるためにブラック・ジャックが尽力したこともあり、保護者と被保護者の関係のようである(第116話『ハッスル・ピノコ』)。

異母妹に小蓮がいるが、ブラック・ジャックは彼女の存在を知らない(第233話『骨肉』)。小蓮は空港で母親が雇った暴漢による銃撃からブラック・ジャックを庇って死亡してしまう。しかし、他者によるリメイク作品『ブラック・ジャック ALIVE』ではブラック・ジャックも小蓮の存在を知っており、小蓮は暴漢の襲撃時に失明の危機に陥るが、ブラック・ジャックの手術で助かるという描写になっている。

無免許医・技術[編集]

無免許といっても独学で医療を学んだわけではなく、地方の三流医科大学で正式な教育を受けて卒業している。免許を取得しないことについてはさまざまな描写があり、明確ではない。作中で紹介された限りでは、日本医師会の姿勢に反発している、法外な治療費を要求するためにあえて免許を取得しないなどの思想的な理由の他、ある病気を前にするとトラウマから手が震えてメスを持てなくなるという心理的な理由があった。ただ、医師免許に全く未練がないわけではないらしく、世界医師会連盟から「技術と数々の業績により、特例で医師免許を与えたい」という申し出を受けたときは上機嫌で受諾しようとしている。しかし、その後はピノコに起こったトラブルにより委員達と会う約束を果たせず、破談に終わった。テレビアニメ版では、大学病院の勤務医時代に日本では禁じられている移植手術をするかしないかで上層部と対立したため、医師免許を剥奪されたというオリジナルエピソードが描かれている。

医師としての専門は外科だが、一般外科だけでなく特別な知識と技術の必要な心臓外科や脳外科もこなせる。外科以外にも、内科眼科薬学、果ては獣医学までも含めて医療全般に造詣が深く、それら専門外の治療も行うことができる。さらには、中国人医師からもらった本で針麻酔を勉強し(第55話『ストラディバリウス』)、自身の患者に対して催眠術までをも使っていた(第9話、第10話『ふたりの修二』)。また、コンピュータ(増刊号『U-18は知っていた』)や宇宙人、数千年前のミイラや幽霊など医者の仕事の範疇を超えた存在をも「治療」している[11]が、患者が何者であろうとその態度は終始一貫しており、宇宙人に対しても治療費を請求していた(第211話『未知への挑戦』)[12]。もっとも、内科の範疇にある治療については専門外として拒否したこともある。また、自分自身を手術する際に局所麻酔を打ち、鏡を見ながら開始したことも作中で数度あるが、それを最初に行った際には自分の手の届く範囲に十分な数の止血鉗子を置くことを忘れるというミスを犯したため、危うく失血死するところであった(第16話『ピノコ再び』)。以降の自分の手術についてはミスは無い(第123話『ディンゴ』、第233話『骨肉』)。

病理学に関しても関心があるようで、強く好奇心をそそられた珍しい症例に対しては無報酬で手術を引き受けることもある(第206話『山猫少年』)。また、手術で稼いだ報酬を投入して個人的な研究を行うこともあるようである。恩師の本間丈太郎を引退に追い込んだ謎の血腫「本間血腫」を駆逐するために7000万円もつぎ込んで研究を重ね、人間の心臓のサイズと変わらない精密な小型の人工心臓「ブラック・ジャック式人工心臓」を開発したり(第163話『本間血腫』)、本職の技師顔負けの見事な義手・義足を作り上げたこともあった(第142話『盗難』)。

報酬[編集]

ほとんどの場合は患者に高額の手術料を請求する[13]ため、無免許であることと合わせて医学界では評判が悪いが、高額の手術料に反して請求方法はかなり良心的であり、ブラック・ジャックをよく知る者たちからは純粋にその腕を評価されている。エピソードの中には公然と大学病院で患者の指名による執刀をしているものもあり、無免許であるが半ば医学界からは黙認されているところもあるようである。

高額な治療費を請求するのは金持ちに限らず、患者が貧乏な身寄りであってもほぼ同じである。その理由については、ある依頼主が「金額が高すぎて、私たち普通のサラリーマンじゃ払えない」と愚痴をこぼしたとき、「私は人の命を助けるための覚悟を確認しているんだよ。お前さんにはその覚悟はあるのか? 命が助かるならこんな金も安いもんだ」と発言している[14]。また、高額な治療費を請求する一方で支払期限は一切設けず、長々と待ってくれることも多い[15]。ただし、治療費を払おうとしない患者には借金取りのように付きまとっている。

一方で、患者の置かれた状況によっては周囲に冗談と思われるほど低額の手術料しか受け取らなかったり[16]、全くの無償で手術を行ったこともある。その他、無理難題を突きつけて手術料代わりにしたこともあった。一旦受け取った高額の手術料のほとんどを、患者に返却することもある[17]。ただし、慈善行為として困った人には低額ないし無料で診療する旨を本人が明言したことは一度も無く、あくまで気まぐれで免除したかのように振る舞っている。報酬を払えない患者に対して容赦なく誓約書を書かせたうえ、それを故意に紛失してわざとらしく紛失届を警察に提出したこともある。一度低額で治療を約束した後は徹底し、ラーメン1杯分代だけを請求した一文無しの患者が、後に裕福になって「望むだけの手術料を払う」と言ったにもかかわらずそれを断り、最後までラーメン1杯分にこだわった。

無免許であることを理由に警察に捕まった場合、釈放を条件に無料で手術することがほとんどである(これを逆手にとり、ブラック・ジャックに何度も無料で手術させている刑事がいる。その刑事の一言でブラック・ジャックは嫌々ながらも毎回動くので、彼だけはどうしようもないと思っているようである。)。

また、完治した直後に何らかの事故等によって患者が死んでしまった際は全額返却するか、治療費の受け取りを拒否する。例えば銃殺刑にされた患者について治療費の支払いの用意があったにもかかわらず、受け取りを拒否して立ち去っている。

少年時代に苦労した経験から子供には優しく、手紙を送ってきた子供の相談に無償で応じたりもしている。また、非常に義理堅い人物でもあり、世話になった人物や恩人、その肉親、ピノコと親しい人物などに対しては無償で治療する。自分の無実を証言してくれた会社員のため、自動車、モーターボート、さらには病院まで買い取ったことがある。患者に対しても一度引き受けたからには献身的に治療し、回復後に家族の下へ戻る途中に交通事故で患者が死んでしまった際は事故を起こした人物を追いかけ続け、遺族に謝罪させたことがある[18]

以上の例に対し、生への醜い欲求などの自己本位的な動機に基づく依頼には、容赦なく高額な料金を即支払うよう請求する傾向がある。人物像が全く定まっていなかった頃ではあるが、第1話では患者を結果的に殺害している。

基本的に自殺を嫌う傾向にあり、睡眠薬を飲んで自殺しようとした見ず知らずの女性から薬を3000万円で買い取ったり、愛着のあるケヤキが切られることになった老人の自殺を察知して張り込み、自殺に踏み切ったところをすぐに助けて手術したり、目の前で飛び降り自殺を図った少年を勝手に手術したり、作り話を使って自殺しようとした人を何度も助けたりと、かなり徹底している。中には自分の患者(金貸し)の取り立てによって自殺に追い込まれた家族を救った際、治療費をほとんど請求しないどころか、金貸しの治療費として受け取った一家の財産に関する書類を「予防薬」と称して患者に返還した[19]うえ、落胆する金貸しに対しても今後の発病の際に無料同然で治療することを確約したことすらある。なお、自殺を嫌うといっても無条件で自殺志願者に優しいわけではなく、「助からないと言われて自殺するやつは生きてたって意味がない」という叱咤を行ったこともある。その一方、一家心中した家族の遺体の皮膚を「誰も文句を言わないから」と手術に使ったこともあり、自分が関知しない場での自殺、あるいは既になされてしまった自殺には無関心、あるいは目の前の患者を救うことを最優先させている。安楽死を商売とするドクター・キリコとはたびたび衝突しているが、彼自身も医者であることや共通の目的のために手を組むこともあり、お互いの腕は認め合っている(なお、ドクター・キリコも決して安易な気持ちで安楽死を行っているわけではなく、安楽死はあくまで手の施しようのない重傷患者を苦痛から解放するために行う最終手段であって、通常は「治せる患者は治す」のが彼の基本方針である)。ドクター・キリコが「グマ」という謎の伝染病に感染した際には、肝臓を半分切り取って命を助けている。

以上のようにブラック・ジャックは膨大な金を稼いでいるように見え、ある闇組織は100億ドル稼いだと推測している。しかし、空き巣がブラック・ジャックの家に入った時は大量の現金や預金通帳を見つけられず、ある闇組織が金融機関口座を調べた時には1000万円程度しか確認されなかった。その一方、現金で20億円を軽く用意した場面もある(第211話『助け合い』)。金の使用方法は自然保護や老人ホーム等への援助(第25話『灰とダイヤモンド』)、そして後述の不発弾処理の関係者に対する復讐用の資金等である。また、上記のように医療技術の研究についても使っているようでもある。作中に請求した最も多額の治療費は150億円であり、詐欺めいた方法ではあったが、話の流れからこれはしっかり受け取ったようである(第73話『こっぱみじん』)。

ライバル[編集]

ドクター・キリコ、白拍子、琵琶丸などは出演回数やブラック・ジャックとの衝突などから、ライバル医師であると思われがちである。ただし技術を競う間柄ではなく、むしろ医学・医療に対する考え方の相違により、衝突している立場である。もっとも琵琶丸に関しては、鍼灸師としての能力は非常に高い。

本人がライバルであると作中で明言したのは、『過ぎ去りし一瞬』に登場した外国の神父で医師でもあったファスナーという人物だけである。ただしライバルとして敵対するというよりは、むしろ敬意を表していた。他にもブラック・ジャックに比肩する優れた医療技術を持つ医師は何人か登場したことがあるが、ブラック・ジャック自身が彼らを敵対視したり腕を競おうとしたことはほとんどない。嫉視とはあまり縁がなく、むしろ同じくらいのレベルの医療技術を持つ「仲間」を欲している様子であった。上述の通り、「ブラック・クイーン」の異名を取る女医・桑田このみに対しては、恋心のようなものを抱いた事すらある。

逆に、自分の地位や名声を鼻にかけるだけで実際の実力が伴わない医師に対しては容赦無い。海外から訪れた有名な難病患者の手術を前にして「自分以外でこの手術をする者は身の程知らずだ」とテレビの取材で大言壮語し、その一方で同じ病気の別の患者の治療を(無名の一般庶民だからという理由で)冷淡に拒否したA大病院の板台教授に対しては激しく敵愾心を燃やし、「男としての意地(本人談)」から板台教授が治療拒否した同じ病気の患者の手術を、自分が執刀したことを伏せるのを条件に引き受けたことがある。その際には手術の開始時刻まで板台教授に合わせて術式を開始し、「こうなれば教授と勝負だ」などと発言するなど、徹底的な対抗心を露わにしていた。結果は、板台教授の手術は失敗して患者は死亡し、逆にブラック・ジャックの手術は見事に成功して、板台教授の面目は完全に潰されることとなった(『はるかなる国から』)。

趣味・嗜好[編集]

作中ではブラック・ジャックが趣味に興ずる場面は描かれておらず、趣味を持つのかどうかも明らかにされていない。ただし小説家の延命治療を依頼された際に、モチベーションを高めるためにその小説家の小説を読んで、自らを「小説の続きがぜひ読みたい」という心理にもっていった事があり、少なくとも読書はするようである。学生時代はダーツが好きだったようである。

食事に関しては庶民的でありグルメではない。お茶漬けボンカレーラーメン・寿司等が好物と思われる。「ボンカレーはどう作ってもうまいのだ」と発言しているが、その一方でピノコが作るカレーがいつまで経っても不味い事に嘆いていた。もっとも、美味しいという評判の寿司屋にわざわざ遠方から通い詰めた事もある(この時は寿司を食わせる事を条件に、高額の手術の報酬の代わりとしている)。また居酒屋での一ヶ月飲食無料を手術代の代わりとした事もある。

この他、煙草を吹かしたり酒を煽る様子も散見される。喫煙に関しては愛用のパイプを所持しているが、通常の煙草を吸っている場面もある。飲酒に関しては酒の種類・店ともに様々であり、バーが前述の桑田このみとの出会いの場になったり、東南アジアから帰国した同期の医師・安東と居酒屋で同じ杯を嫌々ながら口にしたことがコレラ感染の疑いを持つきっかけになる[20]など、作中でも重要な場面を担うことが度々ある。

住居など[編集]

人里離れた崖の上の一軒家に、ピノコと暮らしている。住所は「T県××町○○番地」と伏せ字で表現されている。ブラック・ジャックが医師を開業したての頃に見つけて、住みついている。

家屋はかなり老朽化しており、早急な建て替えが必要な状態である。ただし家を建てた当人である老大工が、是非自分にやらせて欲しいとリフォームにやってきたものの、広島原爆での被爆による白血病を発病し、当時まだ新米だったブラック・ジャックの手に余る病気だったため、中断を余儀なくされた。ブラックジャックは彼の病気が治って帰ってくるのを信じて、建て替えずに今も待っている。家にはシャワー室はあるが風呂は無く、高級車で銭湯に通うという生活を送っている。

復讐[編集]

前述の不発弾爆発の原因であった土地の請負に関係した5人を探し出し、報復することを誓っていた。作中で登場したのはそのうちの2人で、1人は大量の地雷の埋まった孤島のど真ん中へ水筒とサンドイッチを持たせて置き去りにして恐怖を味わせた。脱出する寸前に油断して(のどが渇いたところに水溜りを見つけ、喜んで水筒を放り出してしまいその水筒が地雷に当たり爆発した)爆発を起こしてしまい大怪我をしたものの、ブラック・ジャックが完治させている。(爆発現場の立入禁止の看板を撤去したことを認める供述を録音している)もう一人はブラック・ジャックが見つけたときには末期の癌であった。復讐をするため(と別条件を付加して)低額で(とはいえ自分の持ち家を処分して費用を捻出する必要があった)手術をし完治させたものの、復讐を実行する前に心臓発作で死亡してしまう。残りの3人に対しては、作中において復讐は実行されていない[21]

ブラック・ジャックを演じた人物[編集]

アニメ声優[編集]

ラジオ声優[編集]

実写俳優[編集]

  • 宍戸錠:映画『瞳の中の訪問者』(1977年)
  • 加山雄三:テレビドラマ『加山雄三のブラック・ジャック』(1981年)
  • 隆大介:オリジナルビデオ版(1996年)
  • 本木雅弘:TBSスペシャルドラマ版(2002年)
  • 岡田将生:日本テレビスペシャルドラマ版(2011年)

他作品での登場[編集]

本来ブラック・ジャックは、同名の漫画作品の主人公であるが、作者の手塚治虫が自分の作品でスター・システムを採用しているため、他作品においても登場している。同じくブラック・ジャックの名で医師として登場するもの、同名だが医師以外の立場で登場するもの、別名で単に容姿が同じだけのもの(俳優が別の役柄を演じるようなノリ)など、いろいろなパターンがある。

100万年地球の旅 バンダーブック
ブラック・ジャックとして登場。宇宙海賊という設定で、主人公たちの行く手を阻む。
海底超特急マリンエクスプレス
ブラック・ジャックとして登場。設定もそのままであり、手術代が未払いの伴俊作(ヒゲオヤジ)を追ってマリンエクスプレスに乗り込む。ピノコと電話で会話するシーンもある。
ブレーメン4 地獄の中の天使たち
ブラック・ジャックとして登場。反体制レジスタンスのリーダーであり、終盤に意外な正体が判明する。
火の鳥2772
ブラック・ジャックとして登場。政治犯の労働キャンプの所長であり、主人公ゴドーの旅立ちに協力する。
手塚治虫が消えた!? 20世紀最後の怪事件
ブラック・ジャックとして登場。設定もそのままであり、天才的な外科医としてストーリーにかかわっていく。
鉄腕アトム (アニメ第2作)
第27話「ブラックジャックの大作戦」に、原作準拠の天才外科医として登場。時間旅行者による事故を収拾するため、アトムとともに活躍する。この話は原作者の手塚治虫が脚本を担当しており、他にロック・ホームサファイア、『W3』のプッコ、さらには手塚自身(にそっくりなキャラクター)が登場する。
ミッドナイト
ブラック・ジャックとして登場。設定もそのままであり、天才的な外科医としてストーリーにかかわっていく。
火の鳥(望郷編)
「フォックス」という名の暴走族のリーダーとして登場。
『四谷快談』
1コマのみ登場。
ブッダ (漫画)
登場人物、アマンダが病気で苦しんでいるとき、同行していた人物のアヒンサーが病気のせいでブラック・ジャックに見えたというシーンがある。また、ブッダがルリ王子に「つまり、私は医者だ」と発言するコマのブッダの顔には縫い目が走り髪型もブラック・ジャックのそれになっている。

手塚作品以外の登場作品[編集]

作者とは関係のない漫画にもゲストキャラとして登場するようになる。ギャグ漫画などでは、ツギハギや白黒の髪といった特徴的なキャラクターからパロディキャラにされやすく、もっぱら難癖のある外科医として登場している。以下は手塚プロダクション公認の作品。

RAY
吉富昭仁の漫画作品。
劇中でブラック・ジャックと思わしき人物が主人公に物体を透視させる眼球を移植する[22]
アニメ版では彼本人であると明確に描写された。ただし、意図的に顔は描かれなかった。
PLUTO
浦沢直樹の漫画作品。手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』内の一エピソード「地上最大のロボット」が原作。
「日本人の医者」が登場する場面がある。顔は描写されていないものの、無免許、法外な値段、「正確にはもぐりの医者」という表記、確かな腕等からブラック・ジャックを髣髴とさせる。
『神は天にいまし 世はすべてことも ないわきゃあない』
田中圭一によるパロディ漫画。手塚治虫トリビュート特集号(手塚プロダクション公認)の巻頭に掲載された。
絵柄も似せた上、友人(ロック・ホーム)を「おまえさん」呼ばわりした。職業を匂わす描写は無い。
ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-
セガ発売、トレジャー開発によるゲームボーイアドバンス用ゲームソフト。『鉄腕アトム』をメインの題材とした手塚作品のクロスオーバー作品。
ブラック・ジャック本人として登場。終盤でアトムの依頼によりある人物がかかっている「ドルメヒカ症候群」の手術を行う。

その他 [編集]

  • 地獄先生ぬーべー』の主人公.鵺野鳴介が黒いネクタイとズボン姿はブラック・ジャックのイメージだと作者は語っている。鵺野鳴介とは「過去の事件がきっかけで身体に普通の人とは違う部分を持ち、亡くなった恩師に助けられたことが現在の職業に繋る」、「幼少時代に母親を亡くし、そのことから父親とは因縁がある」など共通点も多い。

[編集]

  1. ^ 作中ではほとんど「ブラック・ジャック」と呼ばれているが、別に本名を隠しているわけではなく、親しい友人からは「間」高校の同級生のゲラからは「間君」、父からは「黒男」、命の恩人のタカシからは「クロちゃん」と本名で呼ばれている。むしろ、同窓会においては本名を名乗ったものの、同窓生から「ブラック・ジャック」と呼ばれてムッとしている場面もあった。
  2. ^ 『ご意見無用』では、漂流する木造船の上で、襲い掛かってきたに対してメスを投げて応戦している。この他、素手での腕っ節も相当強く、『U-18は知っていた』でU-18の治療を中止させようとワットマン博士の部下がブラック・ジャックの背後から拳銃を突きつけた際、手にしていた回線を目を狙ってはじき飛ばしてひるませ、即座に手刀を叩き込んで危機を脱しており、危険な状況においても判断力が失われない冷静さも窺える。
  3. ^ ゲラの家にサラ金の業者が上がりこんで彼に乱暴し、それを止めるためにブラック・ジャックがダーツを投げて業者の腕に刺さり、逆上した業者がそのダーツを引き抜きゲラの体に刺したため。ゲラはこの時の傷が元で後に重い病気に罹り、笑い声を上げることができなくなってしまった。ブラック・ジャックが手術を行うも二次感染により死亡。
  4. ^ 単色印刷の場合。カラーにおいてははっきり色分けされている。もっとも手塚治虫得意のスター・システムによって、他作品に出演した際には肌の色の違いの無いブラック・ジャックが描かれる場合もある。しかし、現実には移植された皮膚は新陳代謝によって入れ替わるため、このようなことは起こらない。
  5. ^ 結果的に「事件の全捜査費用3,000万円を払う」という捜査官の言葉に応じて手術を行ったものの、事件解決後に「3,000万円は患者に渡して欲しい」と頼んでいる。
  6. ^ アニメでピノコにジュースと間違えられ、患者に出すバリウムとも言えるものを飲まされ、腹痛を起こして苦し紛れに「アッチョンブリケ」と叫んだのもこのためである(ただし、これは声優の大塚明夫のアドリブである)。
  7. ^ 秋田文庫BLACK JACK Treasure Book P137より
  8. ^ 白髪というのは本来、加齢による髪の色素不足からできるものである。
  9. ^ 「やり残しの家」より。
  10. ^ ただしこの描写が見られるのは、第133話『てるてる坊主』の一話のみに限られ、常時入れているのかは不明。
  11. ^ 宇宙人の治療に関しては、当の宇宙人曰く「身体の構造は地球人とあまり変わらない」とのこと。地球人と異なる青い血がブラック・ジャックをかなり困惑させたが、イカタコなど青い血の地球上の生物は実在する(血液中で酸素を運搬する媒介がイオンイオンかの違いである)。
  12. ^ その際、宇宙人が地球貨幣を概念は知っていたが理解はできなかったため、ブラック・ジャックは宇宙人に見せた100ドル紙幣と通し番号や皺まで同じ偽札をつかまされることになった。
  13. ^ 原作の連載は1970年代であり、当時の貨幣価値が現在より数倍高いことも考慮されたい。
  14. ^ この依頼主はブラック・ジャックに覚悟を認められ、治療費を実質無料にされた。
  15. ^ 患者が貧乏な場合に多い。しかし「ある生徒と先生」の患者はブラック・ジャックに「一括で払え」と言われ、生命保険金で出そうと自殺未遂を起こした。
  16. ^ ブラック・ジャックから希望をもらった少年に1か月10円のローン、一家心中した家族の全員分に50円請求して30円に負ける、何らかの才能を持つ子供が関わった場合は「将来それを活かして金を稼いだ時に返してもらう」とその場での手術料を保留にするなど。
  17. ^ 1億円請求しながらも、後で9,999万9,999円の釣銭を返すなど。
  18. ^ 『黒潮号メモ』より。
  19. ^ 一家からの取り立てが済んだあとの飲みの席で、金貸しがうっかり「これからは先生(ブラック・ジャック)のやり方を真似ていく」と口にしてしまったため、この際に金貸しが受け取った分もブラック・ジャックのやり方に従って返還させられることとなった。
  20. ^ 安東の体調が優れない様子であったことを気にしており、彼と別れたあとに東南アジア旅行の医師団がコレラに集団感染したというラジオ放送を聞いたことで決定的となった。
  21. ^ リメイク作品『ブラック・ジャック ~黒い医師~』では前述の2人だけが不発弾爆発の関係者となっており、2人目の病死によってブラック・ジャックの復讐は終わっている。
  22. ^ ブラック・ジャックの作品内においては、そのような特殊な眼球ではなく、普通の眼球であっても、ブラック・ジャックといえど移植は不可能と描写されている。