風穴

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風穴(ふうけつ、かざあな、英語名:wind cave)とは、洞窟の内外で生じる気温差や気圧差によりの流れが生じ、洞口(洞窟の開口部、出入り口)を通じて体感的に速い大気循環がある洞窟の一形態である。

呼称[編集]

日本語における「ふうけつ」という読み(音読み)は通俗語・専門用語ともに用いられる。一方、訓読みの「かざあな」は古くからの通俗語であるが、科学分野では地名等、既存の固有名詞以外で用いられることはない[要出典]

人の入ることのできない小規模のものを「かざあな」、洞穴となっているものを「ふうけつ」とも区分する[1].

概要[編集]

比較的新しい時代の火山岩溶岩台地、等)や石灰岩カルスト地形、等)が広がる地域や、海食崖が連なる海岸付近では特徴的に見られる。

世界の大規模な風穴としては、ウインドケーブ国立公園の洞穴(アメリカ合衆国サウスダコタ州)やグヌン・ムル国立公園のウィンドケイブ(東南アジアボルネオ島北部)がある。 日本では富士山麓周辺に多く存在し、著名なものとして万野風穴富岳風穴がある。

地中の空洞が、高低差のある複数の開口部で地表と結ばれている場合に風穴現象が起きやすい。場、空洞内で比重が軽い温かく空気が上方の温風穴から吹き出し、その分、冷たい外気が下方の冷風穴から吸い込まれる。日光が射さない空洞内の空気と岩盤は温度が上がりにくいため、になっても冷気が漏れ出る仕組みである。自然の洞窟だけでなく、金沢城石垣のような人工空洞でも起きる[2]

利用[編集]

開口部が大きく有名な風穴は、一部で観光名所になっている。日本では夏場でも付近が涼しいことから山地の住民に知られるようになった小さな風穴が全国に点在している。これらは野菜漬物などの保管用に加えて、明治時代養蚕に使うの卵の保存に使用された。風穴の上に建てられた「風穴小屋」は全国に少なくとも280カ所程度あった。風穴小屋は電気冷蔵庫が普及した昭和中期以降、ほとんどは使われなくなったが、酒などの保存用に再建・新設された例もある。風穴の研究者や愛好者が集まる全国サミットが開かれているほか、その研究成果をまとめた『日本の風穴-冷涼のしくみと産業・観光への活用』(古今書院)が2015年に刊行された[3]

荒船・東谷風穴蚕種貯蔵所跡群馬県)は世界遺産富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産である。

主要な風穴[編集]

富岳風穴の入り口
日本
日本以外の地域

比喩表現[編集]

日本語では、「風が通り抜ける穴」の意から、別の物体が貫通することによって形成される物体上の穴を「風穴」と書いて「かざあな」と読む。 強力な刺突武器弾丸によって防具人体などといった物体に開けられる穴は比喩表現上、「風穴」と呼ばれ、そのような穴を開けることを「風穴を開ける」と言うことがある。また、より抽象的な用法として、古い悪習などの柔軟性に乏しく澱んだ空気のように閉じた価値観を、別の強力な価値観(新風)によって打ち破り無効化する、あるいは、固執を解きほぐして柔軟性あるものに変える、そのような行いを、空間が開いて通気の良くなった状態に喩えて「○○に風穴を開ける」と表現する。

脚注[編集]

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  1. ^ カルスト-その環境と人びととのかかわり-, p.296;大明堂, 1996
  2. ^ 清水長正:夏もひやひや風穴の不思議◇明治の養蚕支えた「天然の冷蔵庫」、全国に訪ねる◇『日本経済新聞』朝刊2017年6月15日(文化面)
  3. ^ 清水長正:夏もひやひや風穴の不思議◇明治の養蚕支えた「天然の冷蔵庫」、全国に訪ねる◇『日本経済新聞』朝刊2017年6月15日(文化面)
  4. ^ 『信濃毎日新聞』2013年9月22日号
  5. ^ http://www.82bunka.or.jp/bunkazai/result.phpkword_txt=&map=1&bunkazai_area_01=20000&bunkazai_area_02=20217

関連項目[編集]