終夜運転

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
西鉄太宰府駅に停車中の大晦日-元旦の終夜運転列車(2016年1月1日)。

終夜運転(しゅうやうんてん)とは、公共交通機関深夜時間帯(22:00 - 翌5:00)も含めて24時間運行を行い、駅や停留所などで停車し、旅客扱いを行うことを指す。終夜運行ともいう[1]

ただし、夜行列車夜行バス・長距離の国際線航空便も深夜帯の運転をするがこの範疇には入れない場合が多い。

鉄道[編集]

欧米[編集]

ニューヨーク市地下鉄マンチェスター空港への空港連絡鉄道など、アメリカ合衆国ヨーロッパの比較的規模の大きい都市地下鉄などで行われているのが著名である。手法としては経営路線の多くが緩行線急行線に分かれた複々線であるため、複線ずつを隔日で整備することによって夜間の運行を確保している。

ロンドン地下鉄での終夜運転はナイトチューブと呼ばれている[1]。深夜割増の制度はなく日中と同一料金である[1]。ナイトチューブは2015年のラグビーワールドカップに合わせて導入される予定であったが手当が少ないとして乗組員組合から反発を受け導入が延期されていた[2]。2017年9月現在、金曜日と土曜日の深夜から早朝にかけて5路線で運行されており[1]、2020年には郊外を除くほぼ全線に導入される予定である[2]

日本[編集]

鉄道の場合、最終列車運行後から始発列車運行までの時間は保線などの工事を行う時間であることや、その時間は大部分の住民は睡眠時間であることから、終夜運転実施には注意が払われている。

22時 - 翌朝5時の間に勤務する労働者(深夜勤務。ここでは乗務員駅員)の賃金労働基準法で、通常時間勤務(5時 - 22時)の25%増(いわゆる深夜手当て)となるため、収入の割に支出が多くなることから、この時間帯は運転本数を大きく減らす場合もある。また、大都市周辺の通勤路線では、最終列車が概ね午前0時から1時頃、始発列車が概ね4時30分頃から5時30分頃に運行されることが多い。

新幹線の場合、保線中の鉄道事故防止や、高速運転がもたらす騒音による沿線の睡眠妨害などの影響を防ぐため、悪天候や災害などでのダイヤグラムの乱れなど特殊な事情の場合を除くと、0時 - 6時の営業運転は行わないが、監督官庁や沿線自治体に許可を得た上で、1964年12月から日本万国博覧会(大阪万博)が開催された1970年頃までと、2000年12月31日RailStar 21世紀号[3]2002 FIFAワールドカップ開催の2002年6月に一部区間で0時 - 6時の運転が行われた[4]

全国的に実施された終夜運転の例としては、前述のFIFAワールドカップ時におけるJR在来線私鉄地下鉄各線がある[5]

また、突発的な例としては2011年3月11日東北地方太平洋沖地震が発生し、渋谷駅新宿駅など東日本旅客鉄道(JR東日本)のターミナル駅で、多数の帰宅困難者が発生した際、各地で滞留している帰宅困難者を救済するため、東京地下鉄など一部の大手私鉄では、終夜運転が行われた[6]

大規模な鉄道運行麻痺時の終夜運転としては、首都圏国電暴動1973年4月24日)発生時に、帝都高速度交通営団(東京地下鉄に継承)が日本国有鉄道(国鉄。JR各社に分割継承)の要請を受けて、運行した例がある[7]

日本では、1980年代後半より1990年代前半のバブル景気期にはJR・大手私鉄に対し「社会的な要請」として終夜運転の要請がなされ、また東京の地下鉄でも、前述したニューヨーク市の例に倣って終夜運転をすべきという意見が出されたこともあったが、メンテナンスの時間を確保することや、地下鉄の複々線化が費用対効果上、困難である問題から出来なかった[8]

大晦日から元日にかけての終夜運転[編集]

深夜帯でも需要があり、社会的な習慣でもある年末年始初詣については、終夜運転により対応が行われている場合が多い。日本においては首都圏近畿圏名古屋福岡などの大都市圏を中心に行われているほか、台湾においては台北で、12月31日より1月1日にかけて、主に年越しのために台北101へのカウントダウンを目的としたものが知られている。

伊勢神宮橿原神宮などへの初詣客が見込まれる近畿日本鉄道では、特急の終夜運転も実施されるほか[9]小田急電鉄も一般列車に加え江ノ島方面を中心に特急「ニューイヤーエクスプレス」などを運行する[10]。なお、鉄道事業者によっては、事業者の全線ではなく、利用者の見込める区間や路線を中心とした実施となることもあり、運行間隔は、日中よりも大きく開くことが多い。

ただし、1990年代後半以降、一部の鉄道事業者(大手私鉄では東京急行電鉄[11]西武鉄道[12])では「需要が認めにくい」等の理由により最終列車の繰り下げ(午前2時頃まで)や始発列車の繰り上げ(午前4時頃から)などで対応し、終夜運転とはならない場合もある。また名古屋鉄道では2004年度の運行を最後に中止している[13]。JR各社でも、北海道旅客鉄道(JR北海道)[14]東海旅客鉄道(JR東海)[15]では2014年度の終夜運転を中止した。東京都交通局都営地下鉄)では労働争議により一時期終夜運転を中止していた[16]。 そのため一部鉄道路線では終夜運転を行わない路線が終夜運転を行う路線に振替輸送を行う措置を取った。

現在実施されている事業者においても、利用者の減少や運行コストの増大などにより、本数の削減、あるいは実施路線や運行区間の縮小がされている事業者も多い(京成電鉄京王電鉄、近畿日本鉄道、京阪電気鉄道西日本旅客鉄道(JR西日本)、東京都交通局(都営地下鉄三田線、2016年度より一律30分間隔より午前2時台 - 4時台の間は1時間間隔に縮小)など)。終夜運転に従事する乗務員・駅係員には深夜勤務+正月勤務と二重の手当てが上乗せされるのに対し、乗客から支払われる運賃は日中と同額になっている。

その他の日時での終夜運転[編集]

深夜や早朝に大規模な祭やイベントが開催されるとき、そのアクセスとして、通常は旅客列車が運行されない深夜・未明の時間帯に旅客列車が運行されることがある。

路線バス[編集]

日本[編集]

短・中距離の路線バス高速バス急行バス等を含む)においては、深夜帯には深夜バスを運行している事業者があるものの、鉄道と同じく需要が認めにくいことや、深夜勤務となる乗務員等へ25%増賃金(深夜手当て)を支出することを抑える理由で、終夜運転を実施していない事業者が多い。また、路線によってはバスターミナルパークアンドライド用駐車場が24時間営業ではない理由もある。

ただし、空港との行き来に用いられるリムジンバスの場合は、深夜・早朝の航空機との連絡目的で午前2 - 3時台に始発・終着となる便が設定されている場合もあり、運行時間の区分けが曖昧になっている。この場合、停留所には駐車場を備え、自家用車でのアクセスを想定しているのが普通である。さらには、2015年7月1日以降、関西国際空港大阪駅を結ぶリムジンバスが深夜帯も1時間に1本を運行する終夜運行となった[22]

一般の路線バスでは、神奈川中央交通三重交通京阪バスなどが毎年12月31日から翌年1月1日までにかけて終夜運転を行うことがある。神奈川中央交通では丹沢山系大山が沿線にあり、初日の出目的の登山客や大山阿夫利神社への初詣客が非常に多いため、伊勢原駅および大山小学校(校庭臨時駐車場)より大山ケーブル駅までピストン運転を行う。三重交通では、伊勢神宮参拝客対応として、宇治山田駅と伊勢神宮外宮、五十鈴川駅と伊勢神宮内宮との間を結んでいる。京阪バスでも同様に成田山大阪別院明王院(成田山不動尊)が沿線に存在しているため、京阪香里園 - 成田山不動尊前間でピストン運転を行っている。これらは前述の鉄道における初詣参拝客輸送と同じ理由である。

また、沿線に多数の初詣スポットを抱える京都市営バスでも、鉄道と接続するターミナルと特に参拝客の多い社寺を結ぶ3路線で例年終夜運行を実施している。

南海バス空港営業所の第二ターミナル連絡バスおよび国際貨物地区線では、毎日終夜運転を行っている。特に後者は深夜に出発する貨物便対応の兼ね合いから、1 - 3時台の真夜中においても20分間隔という比較的高頻度で運行されているのが特徴である。

2013年12月20日より東京都交通局都営バスの終夜運転の試行を始めた。金曜深夜の渋谷‐六本木間で、深夜1 - 5時台において1時間10分間隔の運行となっていた[23]。しかし、利用が1便あたり9人程度と低迷、赤字も2014年8月までに270万円に達したこと、推進した猪瀬直樹都知事が辞任し後継の舛添要一はこれを見直すことにしたため、2014年10月31日深夜をもって廃止となった[24][25]

台湾[編集]

台湾では、台北 - 高雄間など幹線を中心に、高速バスを24時間運行している会社が多い。深夜帯は概ね1時間間隔で運行されている。日本と違い、昼間と同一料金となっている。ただし、実際は深夜帯は割引運賃にしている場合が多い。

船舶[編集]

船舶においては、短区間のフェリーを中心に終夜運転(終夜運航)が行われている事例がある。これは、航路がトンネルの代替(いわゆる海上国道区間)となっている場合に多く見られ、乗客よりも大型トラックとそのドライバーが主な顧客となる。

日本では瀬戸内海を隔てた本州と四国を結ぶ航路や、津軽海峡を挟んだ本州と北海道を結ぶ青函航路で多く見られる。特に前者(四国フェリーなど)は、本州四国連絡橋の開通後も料金の安さと乗船中の仮眠が出来るメリットもあって人気が高かったが、2000年代終わり頃から高速道路の深夜割引などが充実し利用が減少している(宇高国道フェリーのように終夜運航を廃止後、航路休止に追い込まれたものもある。競合していた四国フェリーも2014年に終夜運航を中止した)。公営では桜島鹿児島港を結ぶ桜島フェリーが行っている。

その他[編集]

タクシーの場合は、利用者の便を計るために終日運行されていることが多い。ただし、タクシーは定時ダイヤに則って運転されるものではないこともあり、終夜運転と称さない事例が多い。また、一定の条件で運転される乗合タクシーは終夜運転を行うことはない。さらにタクシーは22:00~5:00(大阪府、福岡市など一部)は料金が深夜・早朝割増として加算距離が通常よりも2割短くなる[1]

また飛行機でも過去に日本航空東京国際空港(羽田空港) - 福岡空港(板付空港)間を大阪国際空港(伊丹空港)経由で結ぶ「ムーンライト便」という夜行便があったが、これも終夜運転とは言わない。日本の航空路線の場合、騒音問題からの空港の使用時間の制約や、鉄道や路線バスといった空港アクセス交通機関の運行時間の関係から、終夜運行どころか深夜や早朝時間帯の旅客便の運行は非常に少ない(ただし早朝の便数は事前購入割引などの普及により増加傾向にある)。スターフライヤー北九州5:30発→羽田6:55着の早朝第1便、羽田23:30発→北九州1:15着の最終便が設定されている程度である。

羽田や新千歳、中部、関空など24時間利用可能な空港を結ぶ路線では、午前2時台や3時台に発着する便もあるが、いずれも貨物便である。しかし、騒音規制の緩い国の一部空港では、午前2時台や3時台に発着する便もある。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c d 「終夜運転」始めたロンドン地下鉄の光と影 1 東洋経済オンライン、2017年10月14日閲覧。
  2. ^ a b 「終夜運転」始めたロンドン地下鉄の光と影 2 東洋経済オンライン、2017年10月14日閲覧。
  3. ^ “時をかける旅 2. 「レールスター 21世紀号」運転” (日本語) (プレスリリース), 西日本旅客鉄道, (2000年11月13日), オリジナルの2001年2月15日時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20010215122820/http://www.westjr.co.jp/kou/press/4press/n001113g.html 2015年3月6日閲覧。 
  4. ^ 日本交通公社「新幹線 -夢の超特急20年-」 海老原広一 1985年
  5. ^ 午前3時頃までに運行を終了した路線が多いが、上越新幹線阪和線鹿児島本線など、始発列車に近い午前4時代以降まで運行された路線もある。 - 『JR時刻表』(編集・発行 交通新聞社)2002年6月号、JRニュースpp.23 - 42
  6. ^ 東京メトロ、全線で終夜運転を決定 日本経済新聞 2011年3月12日
  7. ^ ただし、1981年に営団地下鉄が発行した『地下鉄運輸50年史』にはこのことについては全く触れられていない。(朝日新聞東京版 1983年5月7日「地下鉄物語・歴史のきしみに7 正史」)
  8. ^ 電車はなぜ24時間運行にしない? R25 2012年12月20日
  9. ^ 年末から年始にかけて、臨時列車および運転区間延長列車を運転します (PDF, 近畿日本鉄道 2013年11月13日)
  10. ^ 大晦日から元旦の終夜運転のお知らせ (PDF, 小田急電鉄 2013年11月25日)
  11. ^ 東急では長らく一部路線での終電延長・始発繰り上げで対処していたことから、終夜運転を行っていなかったが、2013年大晦日から2014年元日(以下「2013年度」のように呼称)に東横線に限って終夜運転を開始した。また、終電延長・始発繰り上げを田園都市線で実施しているが、残りの路線は通常の土休日ダイヤとなる(年末年始の列車運転について - 東京急行電鉄 2015年11月25日)。なお、2000年度から2015年度までは目黒線でも終電延長と始発繰り上げを実施していたが、2016年度より中止している(年末年始の列車運転について - 東京急行電鉄 2016年11月25日)。
  12. ^ 2008年度の大晦日以降行われていない。なお、2013年度は東京メトロ副都心線・東急東横線・みなとみらい線直通の臨時列車を運行するため始発が繰り上げとなる。2014年元旦に相互直通臨時電車「みなと横浜 初日の出号」を運転します (PDF, 西武鉄道 2013年12月5日)
  13. ^ 平成17年度年末年始輸送について (PDF, 名古屋鉄道 2005年11月15日) (インターネット・アーカイブ)、2015年3月6日閲覧
  14. ^ 年末の臨時列車運転について (PDF, 北海道旅客鉄道 2014年11月17日) 、2015年3月6日閲覧
  15. ^ JR東海は名古屋近郊での東海道本線の終夜運転を2012年度限りで終了、2013年度は名古屋駅 - 伊勢市駅間の快速「みえ初詣」1往復のみとなったが、2014年度はこれも運行されなかった。 - 『JR時刻表』(編集・発行 交通新聞社)2013年1月号、2014年1月号及び2014年12月号
  16. ^ 鉄道図書刊行会「京急ダイヤ100年史」 吉本尚 1999年
  17. ^ 2014年度臨時列車時刻表 (PDF, 熊野市観光協会 2014年8月9日) 、2015年3月6日閲覧
  18. ^ 博多祇園山笠へのお出かけはJRで!「追い山」にあわせて臨時列車を運転します! (PDF) - JR九州
  19. ^ 7月15日 博多祇園山笠(追い山笠) 早朝臨時列車・バスを運行します! (PDF) - 西日本鉄道
  20. ^ 東京五輪、終電を最大90分繰り下げへ JRなど合意”. 朝日新聞(2019年3月15日作成). 2019年5月17日閲覧。
  21. ^ 東京五輪期間中は東京圏の終電を2時過ぎまで延長へ…JRや大手私鉄など19社局が検討”. レスポンス(2019年3月18日作成). 2019年5月17日閲覧。
  22. ^ リムジンバス 関空-大阪駅前線、深夜早朝に増便…7月1日から24時間運行化 Response. 2015年6月19日(2015年9月15日閲覧)。
  23. ^ “東京都交通局、12月20日深夜から都営バス終夜運行を試行…渋谷〜六本木間”. Response.. (2013年11月24日). http://response.jp/article/2013/11/24/211536.html 2014年2月6日閲覧。 
  24. ^ 利用低迷、都バス終夜運行打ち切り 「前知事の思いつき」批判も - 産経ニュース 2014年10月29日
  25. ^ 都バス終夜運行が終了 ハロウィーンの中迎えた最後の夜 - huffingtonpost 2014年11月1日。元記事は朝日新聞デジタル。運行終了当日はハロウィンと重なったため過去最多の512人が利用した