フェラーリ・SF1000
バルセロナ・テスト仕様 | |||||||||||
カテゴリー | F1 | ||||||||||
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コンストラクター | フェラーリ | ||||||||||
先代 | フェラーリ・SF90 | ||||||||||
後継 | フェラーリ・SF21 | ||||||||||
主要諸元 | |||||||||||
エンジン |
フェラーリ 065 1.6L V6ターボ | ||||||||||
タイヤ | ピレリ | ||||||||||
主要成績 | |||||||||||
チーム | スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ | ||||||||||
ドライバー |
セバスチャン・ベッテル シャルル・ルクレール | ||||||||||
出走時期 | 2020年 | ||||||||||
通算獲得ポイント | 131 | ||||||||||
初戦 | 2020年オーストリアGP | ||||||||||
最終戦 | 2020年アブダビGP | ||||||||||
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フェラーリ・SF1000 (Ferrari SF1000) は、スクーデリア・フェラーリが2020年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カーである。
この年、フェラーリのF1参戦1,000戦目[注 1]を迎えることから命名された[1]。開発コードは「671」[2]。
概要
[編集]2020年2月11日にレッジョ・エミリアのムニキパーレ劇場で正式発表された[1]。
外見は前年のSF90に似た進化型であるが、SF90の弱点であったダウンフォースの少なさを改善するためにリアのタイトな絞り込みをはじめとした全てのエリアで空力の見直しを行っている[1]。
毎年マシンに女性的な名前を付けているセバスチャン・ベッテルは、同車を「Lucilla(ルシッラ)」と命名した[3]。
1,000レース目を迎えた第9戦トスカーナGPは、1950年の初参戦当時の濃いワインレッドをベースとし、エンジンカバーに「1000GP」のロゴを入れた特別カラーリングで出走した[4]。
2020年シーズン
[編集]ドライバーはセバスチャン・ベッテルとシャルル・ルクレールのラインナップを継続。
シーズン成績だが、予選成績は大きく後退し、決勝も表彰台争いどころか何とか入賞争いに絡むのが精いっぱいという状況に陥った。そもそも、プレシーズンテストの時点で前年型より改善した部分[5]もあったが、様々の要因が重なり、戦闘力不足が発生していることが示唆されていた[6]。 そのため、シーズン開幕前の段階でも、改良型のマシンを投入する予定の第3戦までの間は苦戦を覚悟していたが[7]、開幕戦の予選でマシンの戦闘力不足が改めて表面化[8]。決勝後には第2戦にアップデートの前倒しを決断する事態となった[9]。だが、第2戦シュタイアーマルクGPで新パーツの投入を前倒ししても状況は好転せず、同予選および決勝も両者精彩を欠き、特に決勝ではオープニングラップでルクレールがベッテルに追突して何もできないままレースを終えるという散々な結果[10]となってしまった。第3戦は、決勝前までは一定の速さを見せた[11][12]が、肝心の決勝ではベッテルの6位入賞のみにとどまり、逆に2台とも1周遅れという展開になった。 そのうえ、高速サーキットとなるスパ・フランコルシャンでの第7戦の予選の成績[13][14]や決勝で同じフェラーリPUを積むアルファロメオのキミ・ライコネンにストレートで抜かされ、ライコネンの12位完走の後ろでレースを終えるという事態が起き、フェラーリのお膝元第8戦イタリアGPでは予選は2台ともトップ10圏外[15]、決勝は2台とも理由は違えどリタイアで終わり、レース後にベッテルが「今年のイタリアGPはファンがいなくて良かった」とコメントするほどであった[16]。また、フェラーリ1000レース目となったトスカーナGPでは、ルクレールが予選5番手を獲得するもののベッテルはQ2敗退。決勝ではスタートを決めたルクレールが3位に浮上するが、その後はみるみるうちに後続に抜かされる展開となり後退。終盤には前に出たアルファロメオのライコネンを最後まで攻略することができずサバイバルレースとなった影響でダブル入賞は果たしたものの、ルクレール9位(ライコネンのペナルティにより最終結果は8位)、ベッテル10位で終わる結果となった。
シーズン序盤は、2019新型コロナウイルスの世界的流行の影響により、開発スケジュールが狂ってしまったうえ[17]、シーズン中のPUに関するアップデートの事実上の禁止が決定[18]した影響など、複数の要因はあっても、PUの何らかの性能低下に苦しんでいるのであって[19]、第3戦の予選の結果[20]から、シャシー側でカバーできる可能性があるという見方もあった。しかし、第7戦ベルギーGPでの低迷ぶりから今季のフェラーリはPUに加え[21]、シャシー性能にも問題があるという見方もされた[22]。 マシンの不振もあり、個々の成績もルクレールの方は開幕戦[23]と第4戦[24]でレース展開も味方につけて表彰台に上がったが、これは自力というよりは自身の前にいたマシンのリタイアといった棚ぼた的な面があった。それでも、第9戦トスカーナGPからの7戦連続入賞や[25]で予選での4番手獲得を数回記録する活躍を見せた。 だが、ベッテルの方は開幕戦となったオーストリアGPで、フェラーリ加入後から見て、マシントラブル以外の理由で初めて予選Q2敗退を喫する事態[26]となったことを筆頭にシーズンを通じて大苦戦を強いられ[27][28]、結果的に第14戦トルコGPで3位表彰台を獲得したレース[29]がシーズンベストとなり、両者成績という点では大きく低迷することとなった。このように全てにおいて低迷してしまった結果、最終的なコンストラクターズランキング6位という記録は1980年のコンストラクターズ10位に次ぐワースト記録、2016年シーズン以来の未勝利、さらに2台とも11位以下で完走したGPを記録したのは、直近のレースは2010年イギリスグランプリ以来となるが、この時はレース中にペナルティを受けたことで順位が下がった面があるため、ノートラブルで2台とも11位以下での完走は2009年アブダビグランプリ以来となる記録も残してしまうシーズンとなってしまった。
スペック
[編集]シャシー
[編集]- シャシー名:SF1000
- モノコック:カーボンファイバー/ハニカムコンポジット構造、コクピット保護デバイス「Halo」
- ギアボックス:フェラーリ 縦置きギアボックス(8速+リバース1速)
- トランスミッション:セミオートマチック・シーケンシャル電子制御(クイックシフト)
- ディファレンシャル:サーボ制御式油圧リミテッドスリップディファレンシャル
- ブレーキ:ブレンボ ベンチレーテッド式カーボンファイバーディスクブレーキ(前後)、ブレーキ・バイ・ワイヤ・リアブレーキ
- フロントサスペンション:プッシュロッド式トーションスプリング
- リアサスペンション:プルロッド式トーションスプリング
- ホイール:13インチ(前後)
- タイヤ:ピレリ P-Zero
エンジン
[編集]- エンジン名:フェラーリ 065
- 排気量:1,600cc
- 最高回転数 15,000rpm(レギュレーションで規定)
- ターボチャージャー:シングルターボ
- 燃料最大流量:100kg/h
- 燃料容量:110kg
- 気筒数・角度:V型6気筒・90度
- 口径:80mm
- ストローク:53mm
- バルブ数:24
- 燃料噴射方式:直噴(500bar)
- 燃料:シェル V-Power[30]
ERS システム
[編集]- バッテリー出力:4MJ(1周あたり)
- MGU-K 出力:120kW
- MGU-K 最高回転数:50,000rpm
- MGU-H 最高回転数:125,000rpm
記録
[編集](key)
年 | No. | ドライバー | AUT |
STY |
HUN |
GBR |
70A |
ESP |
BEL |
ITA |
TUS |
RUS |
EIF |
POR |
EMI |
TUR |
BHR |
SKR |
ABU |
ポイント | ランキング |
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2020 | 5 | ベッテル | 10 | Ret | 6 | 10 | 12 | 7 | 13 | Ret | 10 | 13 | 11 | 10 | 12 | 3 | 13 | 12 | 14 | 131 | 6位 |
16 | ルクレール | 2 | Ret | 11 | 3 | 4 | Ret | 14 | Ret | 8 | 6 | 7 | 4 | 5 | 4 | 10 | Ret | 13 |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ フェラーリは1950年モナコGPのF1初出走以来、2019年の最終戦アブダビGPまで991戦(ただし、厳密には1950年フランスGPはプライベーターのみの出走であったため、スクーデリア・フェラーリ(フェラーリの北米代理店「ノースアメリカン・レーシングチーム(NART)」による出走も含む)としての出走は990戦となる)に出走しており、2020年の第9戦トスカーナGPで1,000戦目を迎えた。
出典
[編集]- ^ a b c “フェラーリ2020年型F1『SF1000』:ダウンフォース不足等の弱点克服へ。ラジカルなコンセプトの下、全エリアを見直し”. autosport web. (2020年2月12日) 2020年2月12日閲覧。
- ^ a b “SF1000 launched in Reggio Emilia”. ferrari.com. (2020年2月12日) 2020年2月12日閲覧。
- ^ “恒例行事今年も健在…セバスチャン・ベッテル、2020年の愛機「SF1000」に意味深な名を授ける”. Formula1-Data. (2020年3月12日) 2020年8月10日閲覧。
- ^ “F1参戦1000レース目迎えるフェラーリ、ムジェロを駆ける特別カラーリングを発表”. motorsport.com. (2020年9月10日) 2020年10月26日閲覧。
- ^ ベッテル、フェラーリSF1000に好感触「ダウンフォース向上を感じる」www.as-web.jp(2020年2月21日)2020年7月2日閲覧
- ^ 『ハイ・レーキ』採用のフェラーリSF1000、車体&PUに課題あり。大幅改善も必要かwww.as-web.jp(2020年3月3日)2020年7月2日閲覧
- ^ フェラーリ「SF1000」空力面に欠陥…開発方針の大幅修正強いられるformula1-data.com(2020年7月1日)2020年7月2日閲覧
- ^ フェラーリ、グリップとダウンフォースの両方が不足…ポール争い諦めムードformula1-data.com(2020年7月4日)2020年8月10日閲覧。
- ^ “緊急事態”のフェラーリ、計画前倒しで第2戦に空力アップデート実施へjp.motorsport.com(2020年7月7日)2020年7月8日閲覧。
- ^ 弱り目に祟り目のフェラーリF1、母国イタリアから酷評の嵐「バーチャルレースのつもりか?」formula1-data.com(2020年7月14日)2020年7月16日閲覧
- ^ 「アップデートは“革新的なモノ”じゃない」ベッテル、フェラーリの苦戦も予想jp.motorsport.com(2020年7月17日)2020年7月20日閲覧。
- ^ フェラーリ、車体は前戦とほぼ同スペックながらも 手応え掴むベッテルとルクレールformula1-data.com(2020年7月18日)2020年7月20日閲覧。
- ^ 予選でのベストタイムだけ見れば、他チームが前年より改善したのに、フェラーリだけ前年より悪化するという結果を残した。F1技術解説ベルギー編:フェラーリはなぜあれほど遅かったのか。ドラッグに悩んだ末の選択が奏功せずwww.as-web.jp(2020年9月4日)2020年9月4日閲覧。
- ^ フェラーリ、2014年以来のQ2止まり「予想よりも良い結果」とルクレール「これが実力」とベッテルformula1-data.com(2020年8月30日)2020年9月2日閲覧。
- ^ フェラーリ「残念ながら驚きはない」聖地モンツァで36年ぶりのTOP10圏外…Q1敗退のベッテルは不機嫌formula1-data.com(2020年9月6日)2020年9月7日閲覧。
- ^ ファンがいなくてよかった……地元戦で“全滅”のフェラーリ。ベッテルが本音を吐露motorsport.com(2020年9月7日)2020年9月7日閲覧。
- ^ フェラーリの失速最大の要因はパワーユニットと、開発を足踏みさせた世界情勢による不運www.as-web.jp(2020年8月1日)2021年8月8日閲覧
- ^ F1技術解説:フェラーリ後退の原因の7割はパワーユニット由来のもの。パワーを補うためにやるしかない必死のアップデートwww.as-web.jp(2020年7月17日)2021年8月8日閲覧
- ^ フェラーリF1、エンジンパワーの低下は「技術指令書への対処の結果」formula1-data.com(2020年7月18日)2020年8月10日閲覧。
- ^ フェラーリに一筋の光明…堅実に3列目、更に上を伺うベッテルとルクレールformula1-data.com(2020年7月19日)2020年7月20日閲覧。
- ^ 跳ね馬不振の原因はPUのみにあらず……ブラウン「それだけで1.3秒も失わない」jp.motorsport.com(2020年9月2日)2020年9月3日閲覧。
- ^ “腹立たしい”ほど遅いフェラーリSF1000…昨季マシンのパーツを流用しちゃえば?formula1-data.com(2020年9月1日)2020年9月3日閲覧。
- ^ フェラーリ、”まさか”の2位表彰台を喜ぶ一方「俺たちに浮かれてる余裕はない」formula1-data.com(2020年7月6日)2020年7月6日閲覧
- ^ フェラーリ︰自信持てないベッテルの10位、入念な準備と研究で掴んだルクレールの3位formula1-data.com(2020年8月3日)2020年8月3日閲覧。
- ^ Charles Leclerc F1-2020 resultsresults.motorsportstats.com 2021年8月7日閲覧。
- ^ ベッテル、まさかの予選Q2敗退にショック隠さず「驚いた…」F1オーストリアGPformula1-data.com(2020年7月5日)2020年7月6日閲覧
- ^ セバスチャン・ベッテル、悪しき流れ断ち切れず10番手「全く理想的じゃない」formula1-data.com(2020年8月2日)2020年8月3日閲覧。
- ^ 僚友に大差で破れ続けるセバスチャン・ベッテル、フェラーリはルクレールと同じ仕様のマシンを与えているのか?formula1-data.com(2020年10月26日)2021年8月8日閲覧。
- ^ ベッテル、劇的な3位奪取で2020年初表彰台「ドライタイヤに替えていれば勝てたかもしれない」フェラーリ【F1第14戦】www.as-web.jp(2020年11月16日)2021年8月8日閲覧。
- ^ “Shell partner”. ferrari.com 2020年2月12日閲覧。