精巣
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精巣 | |
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ファイル:Male reproductive system lateral ja.png 男性器の断面図 | |
ラテン語 | Testis |
英語 | Testicle |
器官 | 男性器 |
動脈 |
左精巣静脈 右精巣静脈 |
静脈 |
左精巣静脈 右精巣静脈 蔓状静脈叢 |
神経 | 精索 |
精巣(せいそう、英語 Testicle、ラテン語 Testis)とは、動物の雄がもつ生殖器の1つ。雄性配偶子(精子)を産生する器官。哺乳類などの精巣は睾丸(こうがん)とも呼ばれ、左右1対ある。俗称は、金玉(きんたま)、玉(たま、en:Balls(ボール))、ゴールデンボール、ふぐり、など。また 魚類の精巣は、白子(しらこ)と呼ばれ、魚の種類によっては食用にする。
脊椎動物の精巣は精子を作り出す他に、ホルモンであるアンドロゲンを分泌する内分泌器官でもある。
構造と機能
精巣と陰嚢
ヒトの精巣は、直径4 - 5cm程度の卵型をしており、下腹部にある陰嚢(いんのう)と呼ばれる皮膚が袋状に垂れ下がった部位の中におさまっている。精巣の隣には精巣上体(副睾丸)があり、精巣で作られた精子はまずここに運ばれる。精巣上体には精索(せいさく)というヒモ状の構造がつながっており、精巣へ出入りする動脈、静脈、神経、および精子が通る精管(せいかん)がその中を通っている。精索は、鼠径部の鼠径管を通って腹の中へとつながる。精巣と精索全体は、陰嚢の中で精巣挙筋という腹筋の一部が変わった筋肉に包まれ、ぶら下がっている。精巣挙筋が収縮すると、精巣は腹部の方へと引き上げられる。平均的に右側に片寄っていることが多い。精巣容量が4mlに達した頃が第二次性徴・思春期の起点となり、起点の年齢は平均して11歳6ヶ月前後である[1]。
精子
精巣の中には、精子を作る場である精細管(せいさいかん)と呼ばれる直径数百μmの管が蛇行しながらびっしりと詰まっており、その管の内側で精子の元になる精祖細胞(精原細胞)が減数分裂を経て、精子になる過程(精子発生、あるいは精子形成)が起こっている。出来上がった精子は、管の中を流れていき、精巣の端に集められ、精巣の隣の精巣上体へと運び出され、そこで成熟し、射精を待つ。ヒトの場合、精巣上体で最大10億程の精子が貯蔵できると考えられている。精子発生は、体温よりも温度が低くないとうまく進まないことが知られている。精巣が陰嚢の中にあり、体外にぶら下がっているという構造は、精巣の温度を体温より低く保つのに役立っている。そのため静脈血(比較的低温)が動脈血(体温)に巻きつく様に位置している。
アンドロゲン
アンドロゲンを分泌する細胞は、精巣内で、精細管の隙間に多数存在する、ライディッヒの間質細胞(ライディッヒ細胞)である。ここには血管が豊富で、分泌されたアンドロゲンは血流に乗って全身へと運ばれる。ライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは、ほとんどがテストステロンである。
精巣の疾患
- 男性不妊症 - 様々な原因で精子の産生がうまくいかず、女性が妊娠するに至らない症状。精索静脈瘤が疑われる場合が多い。
- 精巣がん - 精巣に悪性の腫瘍ができる疾患で、若年者にも多い。自覚症状は少ないが、睾丸が急に肥大化かつ硬化するので発見は容易である。検査・診断も容易で、医師の触診と超音波検査、血液検査でほぼ見つけることができる(確定診断は、摘出後の組織検査によることが多い)。進行の早いのが特徴だが、約7割のもの(比率には各種統計により異同がある)は悪性腫瘍の中ではきわめて性質が良く、早期に発見し適切に処置(摘出およびその後の放射線照射)しさえすればほぼ完全に治る。まれに肺や骨に転移することもあるが、化学療法が非常に有効で完治する。残り約3割の予後は良くない。
- 停留精巣 - 片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態。腫瘍化することが多い。
- 精巣捻転症 - 精索捻転症、睾丸回転症とも。腹部と精巣を繋ぐ精索が捻じれる症状で、激しい痛みや全身症状を見る。処置までに時間を要すると精巣への血流が絶たれて精巣が壊死する危険がある。
精巣の利用
食材
魚類の精巣は、食材として用いられる。一般にクリーミーな口どけやまったりとした独特の味わいを楽しむ。白子が特に美味いとされる魚は、フグ類(トラフグなど)、タラ類(マダラ、スケトウダラなど)などである。ヒラメなどの精巣は、取り出して別途調理する事は多くないが、体内に残したまま、煮たり、焼いたりして食用にされる。
ウシなどの精巣はタマあるいはホーデン(ドイツ語由来)と呼ばれる食材である。焼き肉などに用いる。雌や去勢された雄には精巣がないので、流通量は少ない。
このように、睾丸は世界の多くの地域で珍味として食べられている。アメリカではローストまたは茹でて、ヨーロッパでは睾丸を材料とする料理があり、それに用いられる。精巣上体~輸精管は硬いが、味わいはジューシーで肉厚なため除去する必要はないが、陰嚢は除去する必要がある。なお、精巣内に脂肪は存在していない。食用として用いるためには、この他専用の調理方法を学ぶ必要がある。
精巣には、タンパク質の一種であるヌクレオプロテインやプロタミン、核酸の一種であるデオキシリボ核酸(DNA)が豊富に含まれるため、俗に食べると精が付くと言われ、実際に疲労回復、免疫力向上、記憶の改善、新陳代謝の促進、老化防止、美容などの効果があるという研究報告がある。
工業原料
サケ類(シロザケなど)やニシン類の白子は、食用としての利用度が低いが、デオキシリボ核酸(DNA)やプロタミンを豊富に含み、比較的大量に得られるため、酵素処理などによって、これらの成分を抽出することが行われている[2]。プロタミンは食品保存料として用いられている。サケのDNAは調味料、強化剤などの食品用途、医薬用途の他、創傷被覆材などの医療用途、分離膜、フィルター材などの工業用途も開発が行われている。
精巣に由来する名前
- ラン
- 英語名orchidは、ギリシア語で睾丸を意味するορχις (orchis)に由来する。
- イヌノフグリ
- 果実の形状から。
- アボカド
- スペイン語名aguacateは、ナワトル語で睾丸を意味するahuacatlまたはauacatlに由来する。