エリスロポエチン

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エリスロポエチン

エリスロポエチンerythropoietin; EPO、英語発音: /iˌriθrouˈpɔiətn/ イリスロウイァトゥン)とは、赤血球の産生を促進するホルモン。分子量は約34000、165個のアミノ酸から構成されている。血液中のエリスロポエチンは、貧血赤血球増加症などの鑑別診断に用いられる。また、正当な医療目的以外にドーピングに使用されることが知られている。

目次

概要 [編集]

主に腎臓で生成され、補助的に肝臓でも作られる。9割が腎臓で産生されているともされることから、慢性腎不全になると、エリスロポエチンが必要なだけ得られなくなるため、貧血に陥る。腎臓のどの部位において産生されているのかは近年まで議論があり、傍糸球体装置や近位尿細管、血管内皮細胞など諸説存在していたが、トランスジェニックマウスの解析から尿細管間質細胞であることが明らかになった。

医薬品としては、エポエチンアルファ(商品名エスポー)、エポエチンベータ(商品名エポジン)といった遺伝子組換えによるエリスロポエチン製剤があり、腎性貧血に用いられる。日本では保険適応上、腎性貧血にのみ用いられているが、欧米では各種悪性疾患にともなう貧血などにも用いられている。

ドーピング [編集]

エリスロポエチンは赤血球の増加効果を持つことから、筋肉への酸素供給量を高め持久力を向上させる目的で、長距離系スポーツ(自転車競技クロスカントリーなど)のドーピングに使用されている[1]2009年には複数の自転車競技選手から新型EPO(エリスロポエチン)が検出され話題となった[2]。また2013年1月には、ツール・ド・フランスで7回優勝したランス・アームストロングオプラ・ウィンフリーとのインタビューで、かつてエリスロポエチンを使ったドーピングを行なっていたことを認めた[3]

元来体内に存在する自然物質でその使用の判別が難しいため、ヘマトクリット(血液中に占める血球の容積率)、ヘモグロビン、網状赤血球数などを用いてドーピングのスクリーニングを行っているケースが多い。スクリーニング検査による疑い例は、尿を材料として電気泳動法によって遺伝子組換えエリスロポエチンを検出している。

調節機構 [編集]

エリスロポエチンは、腎臓の尿細管間質細胞で産生されている。エリスロポエチンの産生は、血液中の酸素分圧によって調節されている。エリスロポエチンの転写調節機構はいくつか報告されているが、低酸素応答性の転写因子であるHIF (hypoxia inducible factors)が代表的なものである。HIFは酸素濃度が高いときには分解され、低酸素のときには核内に移行してエリスロポエチンの転写を促進する。 つまり、慢性的な低酸素状態となった時にエリスロポエチンの産生が促進されるのである。したがって、貧血などでもエリスロポエチンの産生は促進される。

エリスロポエチンは赤血球上のエリスロポエチンレセプター(EpoR)に結合し、JAK2カスケードを活性化する。このEpoRは多くの骨髄細胞、白血球、末梢・中枢神経に発現しており、Epoに結合することで細胞内のシグナル伝達に関わっている。

分子構造 [編集]

分子式 C809H1301N229O229S5
分子量 18,235.96
配列構造

APPRLICDSRVLERYLLEAKEAENITTGCA EHCSLNENITVPDTKVNFYAWKRMEVGQQA VEVWQGLALLSEAVLRGQALLVNSSQPWEP LQLHVDKAVSGKRSKTTLLRALGAQKEAIS PPDAASAAPLRTITADTFRKLFRVYSMFLR GKLKLYTGEACRTGDR

実際には、24, 38, 83番目の太字の3つのN(アスパラギン)残基にはN結合型糖鎖が、126番目の斜体字のS(セリン)残基にはO結合型糖鎖が付加しており、分子量は遙かに大きい。また、糖鎖を除去するとエリスロポエチンの活性はなくなる。さらに7と161番目のC(システイン)残基間と29と33番目のシステイン残基間にはジスルフィド結合が形成されている。

脚注 [編集]