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井上敏樹

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井上 敏樹
プロフィール
誕生日 (1959-11-28) 1959年11月28日(64歳)
出身地 埼玉県
主な作品
映画人造人間ハカイダー
仮面ライダー THE FIRST
仮面ライダー THE NEXT
アニメギャラクシーエンジェル
牙 -KIBA-
DEATH NOTE
アイアンマン
特撮鳥人戦隊ジェットマン
超光戦士シャンゼリオン
仮面ライダーアギト
仮面ライダー555
仮面ライダー響鬼
仮面ライダーキバ
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井上 敏樹(いのうえ としき、1959年11月28日 - )は日本脚本家埼玉県出身。特撮テレビドラマ作品やアニメ作品を多く手がけている。成蹊大学中退。父親は同じく脚本家の伊上勝

大学では幻想文学研究会に所属し、執筆した短編小説が東映動画の七條敬三プロデューサーの目に留まったことで、在学中の1981年に『Dr.スランプ アラレちゃん』第24話にてデビュー。

1985年に執筆した『どきんちょ!ネムリン』第29話以降、特撮テレビドラマにも本格的に関わるようになる。

作風

多くの作品でシリーズ構成、メインライターを担当しており、『超光戦士シャンゼリオン』、『仮面ライダーアギト』などではほとんどの回を一人で担当している。特に『仮面ライダー555』では50話全話を執筆した[1]。一方で、シリーズ構成を担当しながらも、手掛けた脚本は少ないという作品も存在する。

主人公側であれ敵側であれ、人物の内面の強弱や美醜、人物間の利害関係を描写することを重視し、同一陣営内での対立・確執を描くことを好む。そのため作品内では「アイデンティティ喪失からの劇的な復活」や「衝突や葛藤を乗り越えての団結」といった展開がなされることが多い。特に特撮テレビドラマにおいては、「一致団結しない(出来ない)グループ」が登場する作品も少なくない。敵側に関しても「集権的な組織に従い、絶対的な統率者のもと忠誠を尽くす」という従来形の設定を嫌い、敵組織が全ての悪役を完全には掌握していなかったり、掌握していても縦の繋がりが弱い緩やかな連帯に留まっていたりする場合が見られる。また野望や目的についても、大袈裟な大義よりもそれぞれの個人的な思惑が優先される展開が少なくない。一方で、怪人全てを一概に悪役として規定することはなく、「心優しい怪人」、「人間に対して協力的な怪人」、「平穏な生活を望んでいたが、誰かの意図によって、止むを得ずヒーローとの戦いに突入して悲劇を迎える怪人」[要出典]も(これらのキャッチフレーズはどの?)作中に数多く見られる。

特撮作品に関しては一般的な「完全無欠のヒーロー像」に懐疑的で、トラウマを抱えていたり、だらしない生活態度だったり、打算的だったりする者を主人公に、あるいは主人公周辺の重要人物に配する傾向がある。これらに限らず、登場人物には癖の強いキャラクターが多い。また、登場人物の破滅を描く際には、たとえその破滅が自業自得であったとしても、視聴者の共感を呼ぶ印象的な場面を用意するケースが多い[2]

特撮

平成仮面ライダーシリーズの脚本を多く担当しており、『仮面ライダー電王』『仮面ライダーW』を除く全ての作品に携わり、仮面ライダーシリーズで執筆した話数は200話を超え、劇場版映画も9作品(『FIRST』、『NEXT』を含む)担当した。

シリアスな展開に加え、『鳥人戦隊ジェットマン』のトランザ、『シャンゼリオン』の黒岩省吾、『555』の草加雅人及び北崎など、自身の過剰な性格が災いし自業自得ではあるが壮絶な最期を遂げる者が多い(トランザと北崎はヒーローの攻撃で致命傷を受けたが死なずその後本来仲間であるはずの人物、黒岩に至っては子どもによって倒されるなど従来の「ヒーローが敵を倒す」という形式からは離脱している)。

食事シーンが多いのも特徴で、平成仮面ライダーシリーズのように食品関係の関連商品が多い作品で、それが顕著に表れている。

ちなみに、自身が脚本に参加した『光戦隊マスクマン』、『高速戦隊ターボレンジャー』、『地球戦隊ファイブマン』、『超力戦隊オーレンジャー』では登場人物が敵を欺くために味方を裏切るという似た内容の話を執筆している。

職域の徹底

脚本が映像化の過程で変更・改変されるのを嫌う作家も多い中、井上は「シナリオは映像のための設計図に過ぎない」を持論[3]としており、脚本ではそのシーンの大意を示すにとどめ、台詞の解釈(そこに込められた登場人物の感情の機微など)などの詳細は演出家や俳優・声優に委ねるという執筆スタイルを採る[4]。これには、脚本家という役割において作り上げたシナリオを、演出家と俳優・声優の手で完成させるばかりか、自身の想像を超えた映像なるのを望んでのことであるという[5]。このため、演技、演出する側にとっては「何を仕掛けてくるのか、読めば読むほど挑戦的」(『H〜i! Jack!』記者発表での佐藤健光の発言より[6])と言える。

脚本執筆の前段階であるプロットや箱書きの完成度を重視する。鈴木武幸(のち東映専務取締役)は『超新星フラッシュマン』で初めて井上と仕事をすることになった時、初稿の完成度の高さに驚いたとインタビュー[7]で答えている。そうした丁寧な仕事ぶりの一方、締め切りを厳守する速筆ぶりでも有名で、作品の制作スケジュールが遅れた際に「助っ人」として呼ばれることがしばしばある[8]

作品

テレビアニメ

シリーズ構成

その他

OVA

特撮作品

シリーズ構成・メインライター

※「シリーズ構成」と「メインライター」の違いについては記事「八手三郎」を参照。

その他

その他テレビドラマ

映画

戯曲

  • H〜i! Jack!! - やぁ! ジャックさん!! -(2005年劇団たいしゅう小説家
  • 人生最良みたいな〜!日?〜葬儀と結婚式が同じ日に?!〜(2007年、劇団たいしゅう小説家)原案・監修担当

ゲーム

脚本以外の執筆作品

小説

テレビドラマのノベライズは全て自身が関わった物。

  • 超時空要塞マクロス
  • 超時空世紀オーガス(小学館スーパークエスト文庫 1984年
  • ジェットマン(小学館スーパークエスト文庫 1992年
  • 仮面ライダーファイズ正伝-異形の花々(講談社 2004年
  • アルテミス・コード (メガミ文庫 2008年) - 原作のみ。執筆は古怒田健志
  • 美少女戦隊デュエルーゼ (メガミ文庫 2008年) - 原作のみ。執筆は平林佐和子。
  • 美少女戦隊デュエルーゼ スカーレット・ソルジャー・ソリテュード (メガミ文庫 2009年) - 原作のみ。執筆は平林佐和子。

漫画原作

作詞

脚注

  1. ^ 井上の父・伊上勝も『仮面の忍者 赤影』を全話(52話)執筆しており、親子2代で同じ記録を残している。また伊上勝も昭和仮面ライダーシリーズ(スーパー1まで)の脚本に関わっており、仮面ライダーにも親子2代で関わっていることになる。
  2. ^ 『仮面ライダー龍騎』第44話の佐野満、『仮面ライダー555』第48話の草加雅人、『仮面ライダー剣』第19話の桐生豪、『DEATH NOTE』最終話の夜神月など。
  3. ^ (脚本家の共通認識ではあるが)『仮面ライダー555正伝 異形の花々』(講談社 2004年8月)あとがきより。『ギャラクシーエンジェル エンジェル隊お仕事ファイル2』(メディアワークス 2002年2月)のインタビューでも「アニメは監督のもの。脚本家は脚本を書くだけ。シナリオ以外にはあまりこだわりはない」と語っている。
  4. ^ たとえば『ギャラクシーエンジェル』第1期第24話「闇鍋お笑いペッパー」では寡黙なヴァニラ・Hを笑わせるべくお笑い芸人が奮闘する場面があるが、井上は『GALAXY ANGEL RECIPE BOOK』(徳間書店 2002年12月)のインタビューにて「シナリオでは“笑いの絨毯爆撃”とか書いただけ。芸人の部分は演出だよ」と明かしている
  5. ^ 劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』公開時にテレビ朝日の『555』公式サイトのインタビューでの「脚本家にとって、キャラクターの自立は一番嬉しいことだが、そのためには演出や役者の力が必要。僕が関われる部分では、責任を持って全てのキャラクターを描いていく」という発言はこのことを端的に示している
  6. ^ 東映ヒーローネット・レギュラーアーカイブ「レギュラー・ヒーロー秘宝館 ワンダールーム」記事『松田悟志さんが、天野さん村上さん、原田さん、窪寺さんらヒーロー俳優とも初挑戦!!』より
  7. ^ 「東映ヒーロー偉人伝」第1回 『東映ヒーローMAX』Vol.1(辰巳出版 2002年5月)
  8. ^ 劇場版『仮面ライダー響鬼』の脚本は2 - 3日で完成させたという(角川書店刊「仮面ライダー響鬼」ムック)。