二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律

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二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 大正11年法律第20号
種類 行政手続法
効力 現行法
成立 1922年3月25日
公布 1922年3月30日
施行 1922年4月1日
主な内容 20歳未満の者の飲酒の禁止
関連法令 二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律酒税法
制定時題名 未成年者飲酒禁止法
条文リンク 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律 - e-Gov法令検索
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二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(はたち〈にじっさい、にじゅっさい〉みまんのもののいんしゅのきんしにかんするほうりつ)は、20歳未満の者の飲酒の禁止に関する日本法律である。法令番号は大正11年法律第20号。1922年大正11年)3月30日公布された。

2022年令和4年)4月1日民法改正施行(成年年齢の18歳への引き下げ)により「未成年者飲酒禁止法」から改正され、対象も第1条第2項と第3条第2項を除き全て「満二十年ニ至ラザル者」から「二十歳未満ノ者」に改正された。年齢のとなえ方に関する法律により満年齢が適用され、実質的範囲は従来のままである[1]

この記事では、全て満年齢で記述する。

概説

20歳未満の者の飲酒を禁止する(第1条)。また、未成年者親権者やその他の監督者、販売・供与した営業者について罰則を定める。

1922年(大正11年)3月30日に公布され、1947年昭和22年)5月3日日本国憲法施行に合わせて改正された後、「未成年者」の飲酒は喫煙と並んで青少年非行の温床になるという懸念を背景に、その取締りを強化するため、1999年(平成11年)、2000年(平成12年)、2001年(平成13年)に相次いで改正された。

内容

  • 1条
    1. 20歳未満の者の飲酒を禁止する(1項)。
    2. 未成年者の親権者や監督代行者に対して、未成年者の飲酒を知った場合に、これを制止する義務を規定する(2項)。
    3. 酒類を販売する営業者(酒屋コンビニエンスストアなど)または供与する営業者(飲食店居酒屋スナックなど)が、20歳未満の者に対して、飲酒することを知りながら、酒類を販売または供与することを禁止する(3項)。
    4. 酒類を販売する営業者または酒類を供与する営業者に対して、20歳未満の者の飲酒を防止するための、年齢確認その他必要な措置をとるものとされる(4項)。
  • 2条
    • 20歳未満の者が、飲用のために所有・所持する酒類およびその器具について、没収・廃棄などの必要な処置が、行政処分として行われるとしている(後述)。
  • 3条
    1. 20歳未満の者自身が飲酒することを知りながら、酒類を販売・供与した営業者に対して、50万円以下の罰金を科す(1項)。
    2. 未成年者の飲酒を知って制止しなかった親権者や監督代行者に対して、科料を科す(2項)。
  • 4条
    • 酒類を20歳未満の者に販売・供与した法人の代表者または法人もしくは自然人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または自然人の業務に関して前条第1項の違反行為をしたときは、違反行為者を罰するにとどまらず、その法人または人に対し同項の刑が科される(両罰規定)。

罰則

本法は、20歳未満の者の飲酒を禁止し、20歳未満の者自身の飲用目的での販売・供与を禁止しているだけであり、20歳未満の者が酒類を所有・所持することは禁止していない。違反行為をした本人を処罰する規定が無いので、本人に対して、刑事処分または少年法による刑事処分相当処分がなされることはない。ただし、未成年者が保護者の制止を無視して飲酒を繰り返すなどの場合、少年法第3条第1項第3号イの「保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。」に該当し、家庭裁判所の審判により保護処分も可能である。

未成年者の飲酒を知りつつも制止しなかった親権者やその他の監督者は、科料に処せられる[2]。しかしながら、保護者等による制止を振り切り、または無視して飲酒した場合も、その前段階の過程が証明できないことが多く、実際には保護者等が制止したにもかかわらず、「未成年者が飲酒すると知っていて制止しなかった」として扱われることもある。

20歳未満の者の飲酒を知りつつ、酒類を販売・供与した営業者とその関係人は、50万円以下の罰金に処せられる。また、罰金の刑に処された営業者などは酒税法の「酒類販売業免許の取消要件」に該当することになる。

第1条第2項および第3条第2項は未成年者に対する規定、その他の部分については20歳未満の者に対する規定となっている。

営業者などに対する罰金額は、長らく低額のままであったが、2000年に制定された「未成年者喫煙禁止法及び未成年者飲酒禁止法の一部を改正する法律」(平成12年法律第134号) によって、その最高額が50万円に引き上げられた[2]

第2条の行政処分としての「没収」については、関税法第69条の11第2項に「輸入してはならない貨物」(麻薬等に限る)について輸入されようとするものを没収して廃棄することができる規定があり、同規定は現行憲法下で立法されたことから、行政刑罰としての刑罰、または行政上の秩序罰としては過料しか認められていないことをもって無効又は実効性をもたないということはできない。ただし、没収しようとする場合の手続き規定がないこと、没収の対象となる「輸入してはならない貨物」は所持等が厳しく規制されており保安上の必要性があるのに対し、酒類は一般的には所持等が禁止されているわけでもなく、現場で没収することは困難であり、また、本条においては刑罰としての規定もなく、没収は刑罰の付加刑としてしか執行できず、少年法の適用年齢である少年についても、家庭裁判所による同法の「没取」は、刑罰法令に関する物のみ可能であることから、この規定は、20歳未満の者の単純飲酒に対しては、現状では実効性を持たない。

刑罰の付加刑としての没収については、第3条の罰則は科料であり、刑法20条により特別な規定がない限り没収できないとされているためできないが、第5条または第6条の罰則が適用される場合には可能である(刑法19条)。ただし、第5条は販売・供与に対する罰則であり、販売により所有権が移転するため、刑法19条の要件である「犯人以外の者に属しない物」に該当しないことになる。この場合、購入した20歳未満の者の取得が「犯罪の後にその者が情を知って取得したもの」と解する場合は可能である。

また、未成年者については、虞犯少年として保護処分に付することは可能であり、また、未成年者自身による任意提出や廃棄を妨げるものではない。例として、飲酒した未成年者の保護者等を呼び出して未成年者に指導させ、保護者等が非協力的な場合に、その保護者等を検挙することも可能である。

年齢確認

第1条第4項は「営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス」であり、通常の義務規定ではなく[注 1]、直接の罰則規定もない。

ただし、年齢確認を怠ってその結果第1条第3項の結果を招いた場合、同項の責任は免れない。

法令外の処分

本法の範囲外であるが、児童生徒、学生、被用労働者、契約芸能人等である20歳未満の者が飲酒をした場合には、それぞれ所属する学校、企業、事務所などから停退学、処分や解雇、謹慎や契約解除などの厳しい処置が行われる場合もある。法的には学校の教育指導処分権、あるいは自由契約に基づいており、そのような処置は合法とされる。

また、道路交通法における飲酒運転の禁止など、本法以外の法律で飲酒が禁止されている場合、たとえ飲酒可能な20歳以上の者であっても、違反すればその法律に基づき逮捕起訴され、刑事処分が下される。

脚注

出典

  1. ^ 法務省:民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について”. www.moj.go.jp. 2019年2月7日閲覧。
  2. ^ a b 未成年者飲酒禁止法の改正について” (pdf). 警察庁厚生労働省国税庁 (2000年12月12日). 2014年3月30日閲覧。

注釈

  1. ^ 法律用語で「ものとする」は、有斐閣の法律学小事典(第4版)によれば、「しなければならない」「してはならない」という義務付けの意味で使用する場合と単に「する」「しない」の意味で使用する場合と両方があり、一般的に行政機関の行為についてゆるやかに規定するための用語である。

関連項目

外部リンク